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輪廻がイヤなら異世界転生。底辺職の先行斥候だけど『出納』スキルで好き勝手に生きてやる!  作者: 秋乃せつな
第5章 DAY5

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第93話 尊い犠牲

 今日は防具も武器も汚れとか無いから拭き掃除ぐらいかな。俺の装備と一緒にオルカの装備も『出納』で一瞬で片付ける。ミリィさんは部屋の入口の部屋で待機なのでリビングにはいないからもう平気で三人娘の前で『出納』を使いまくっている。その度にサリアが頭を抱えているが、一回も百回も同じだろう。


「それでは行ってまいります。ちょっと早いですがみなさんもお風呂を済ませておいていただけますか。食事のあとにお話ししたいので」


 みんなはそれでだいたい察してくれてくれた。オルカとガウンの上に丹前を羽織ってライズの部屋に向かう。館内に職員の死角は無い。必ず誰かが見える位置にいる。セキュリティがすごい。これならライズたちも俺がいなくても自由に歩けるだろう。まぁ出歩かないと思うけど。いや、女性陣は風呂に通うかもな。


「オルカ、カレンさんとルシアに風呂の作法を教えてやってくれ。身体と髪は女中さんを付けてもらうように頼んであるからオルカはちょっとフォローして、自分のことに集中してて大丈夫だからね。自分でうまくいかなさそうなら部屋に戻ればみんなが手伝ってくれるから心配しないで。ふたりはオルカが一緒にいてくれるだけで心強いはずだから。ほら、最初に俺がオルカをここに連れて来た時みたいに」


 そう言ったら具体的なイメージとその時のことを思い出したのか笑顔になった。


 ライズの部屋のドアをノックすると中からカレンさんが返事をしてドアを開けてくれた。このクラスの部屋は当然ながら女中さんは付かない。いったん部屋の中に入ってチェック。


「どうですか。落ち着きましたか」


「ぜんぜん落ちつかねぇ」


 ライズが椅子に座って緊張している。みんなガウンだ。いいねぇ。まだ風呂前だけどね。みんな薄布一枚しか着ていないという連帯感がいいよね! チェックインの時に借りた丹前を羽織ったら風呂に出発だ! ルシアが緊張しだした。


「ルシア、大丈夫か? なにか聞きたいことがあればなんでも聞くよ?」


「中では、は、裸になるって聞いたんだけど」


 俺は自分のガウンの襟元をぐいっと(まく)りながらルシアに向き直る。


「そうだよ。だから中は何も着ていないでしょ? みんな同じだから気にしなくていいよ。これはそういう異国の文化だから。慣れないから最初は戸惑うと思うけど、せっかくだから他の国に来たとでも思ってさ、思いっきり楽しんでしまうといいよ。オルカもそう思うでしょ?」


「ルシア、お風呂はね、とおおってもきもちいーよ」


 オルカを見て何らかの覚悟を決めるルシアとその母。


「身体と髪を洗うのに女中さんを付けているからお任せしているうちに終わるから、本当に力を抜いてリラックスしていればいいだけですから」


「えっ!」


 カレンさんが鋭く反応する。ルシアはそれを見てまた不安に駆られている。ライズにも付けていることはこの場では黙っておいてやろう。この二人もちゃんとした風呂は五年ぶりになるのかな? コンシェルジュのアレリアさんにはこの二人にできることは全部してあげてと頼んである。ユセフさんとはまだまだホスピタリティに関しては充分な話し合いはできていないが、コンセプトだけは伝えてある。あくまで女性冒険者向けではあるが、高位(ハイクラス)冒険者なら身だしなみにも興味があるはずだ。


 あっという間に一階の大浴場前。ここで男女で別れる。知らないお風呂に知り合いと入れると遊び感覚のオルカに対して、決死の覚悟で挑まんとする母娘との対比が凄い。思わず敬礼で見送りそうになったけど、ここは笑顔の「ごゆっくり~」で見送る。


 よし、ライズ、いくぞー。脱衣所に入るとまだ夕方前の早い時間なので貸し切りだ。ラッキー。


「ライズ、ここでガウンを脱げ」


 そう言ってさっさと脱いで脱衣カゴに入れる。ライズは慌てて(なら)うが恥ずかしそうだ。こういうのが地球の外国人とかと同じ感覚でおかしい。厚めの麻布を一枚持っていざ、風呂場へ。


 おお~。広いねー。これはいいね。壁の大部分が取り払われていて半分、外みたいなものだ。湯舟がそのまま外まで出ていて露天風呂も兼ねている。なんだこの設計? ひょっとして日本人転移者とか転生者がいるのか? ちょっと今度ウォーカーにここの設計の話を聞かないとダメだな。


 紳士の(たしな)みとしてタオルで局部を隠して歩く。ちゃんと洗い場があるんだな。なるほどね。俺なら「もっとこう!」って思うところもいろいろあるなぁ。


「ライズ、風呂は最後にあの湯舟の中のお湯の中に入るんだ。でも、汚れた身体と頭で入るのは礼儀として絶対にダメだ。だから湯舟に入る前に身体と頭を徹底的に洗ってきれいにしなければならない!」


 とりあえず掛け湯を教える。ライズはすぐに掛け湯の気持ちよさを知る。そして頭にお湯を掛けろと言ったが、やはりこれがうまく出来ない。怖いのだ。ここでスラっと扉の開く音がした。振り返ると白い麻布の貫頭衣を着た獣人の女性が一人で入ってきた。もちろん俺の分は頼んでいないが、意外だった。男しかいない空間に若い女性ひとり? こっちは全裸で彼女も裸同然だぞ。しかも契約紋の従業員だ。見覚えある娘だ。たしか最初に足を洗ってくれた少女だよな? 少女は俺を見つけると笑顔で近付いて来る。


「こんばんは。お手伝いに参りましたぁ」

「わあ!」


 頭にお湯を掛けるのに必死だったライズが突然若い女性の声がしてデカイ声を出した。俺が笑うと女中の少女もくすくすと笑う。


「え? え? え? なに? ロック? なに?」


 ライズが普通にパニックになっている。うむ。お前はパーティーリーダーとして度胸を付けておけ。キャバクラは行ったって聞いたし平気そうだったのに、この手のことはまだか。まぁ言うても十四歳だもんな。


「あー、ライズに言うの忘れてた! お前もひとりじゃキレイにできないのわかってたからな。ルシアと同じように手伝いを頼んでおいたんだよ。俺もまさかこんな可愛い女性が来てくれるなんて思ってなかったよ! これなら俺が頼んでおけばよかったよ! あはははは」


「あらぁ、だったらロックさんも指名していただいていいんですよぉ」


 やべー! この世界やべー! 見た目の年齢だけで日本みたいに考えてると女性に支配されてしまうんだ!


「それはなんとも魅力的なお話しですね。うちの女性たちが良いって言ったらぜひ」


「あーん、それは難しいですねぇ」


 たぶん、俺たちの年齢設定が十歳ぐらいおかしい。野蛮な世界はいろいろな意味で怖い。


「よし、ライズ! 彼女に任せれば大丈夫だ! すみません、お名前をまだお伺いしていませんでしたね。あらためまして、俺はロックです。彼が今回お願いするライズです。『銀狼(ぎんろう)の牙』という冒険者パーティーで、彼がリーダーです」


「はい。よろしくお願いします。わたしはノーラといいます。ロックくんはいつも見てるからよぉく知ってるわよ。ライズさん、よろしくお願いします」


 こ、この娘、ちょっと怖い。ライズはしどろもどろだ。俺は自分が冷えないようにたまに掛け湯をしながらライズの横で付き添いだ。さりげなーく俺はいなくてもいいかなぁみたいな話をしたら、じょうずにいっしょにいろって言われた。それが、若い男と二人きりにするのがマズイから防犯的にいて欲しいなのか、違う意味なのかは判断がつかなかった。


「それにしても男湯の手伝いで若い女性ひとりはあまりオススメできないなぁ。特にこんなかわいい女の子なら」


「あらぁ、かわいいだなんてありがとぉ。うふふ。たまたまわたしが空いてたから行ってもいいですよーって言って入れてもらったんですぅ。ロックくんが一緒ならいいわよってアレリアさんが入れてくれたんです~。たぶんもうすぐアレリアさんも来ますよぉ」


 おい! お前今なんて言った! なんでアレリアさんが来るんだよ! 意味がわからん! お前ら、いったい何を企んでやがる!


 これはなにかマズイ気がする。ノーラは一瞬「あ、余計なこと言っちゃった」みたいな顔をしたぞ。アレリアさんはひじょーに魅力的な女性ではある。だけどな、俺はそういうのはもうエエねん。


 と、いうわけで離脱することにした。


「おー! そうなんですね! アレリアさんも来てくれるなら安心ですね!」


「あ、やっぱりそうですよねー! よかったぁ」


 ライズの頭を泡立てて洗いながらノーラがホッとしている。その隙に俺はサッと立ち上がって現場を去る!


「じゃあ、すぐにアレリアさんを呼んできますね! じゃー、ライズ! また明日な! 朝飯食い終わったら俺の部屋に三人で来てくれ!」


 さらばだライズ! 俺はノーラに言葉を発する間を与えず逃げるようにして風呂場を後にする。扉の向こうに『走査(スイープ)』の反応がっ!


 スラっと扉が開いて薄布一枚のアレリアさんが現れた! あぶねー! 間にあった!


「あ、アレリアさん、こんばんは。ノーラさんに聞きました! ライズのことよろしくお願いしますね! いやーのぼせそうだ」


「え、ええ、はい」


 アレリアさんの横をすり抜けてスっと扉を閉めるとガウンをひったくるようにして羽織って脱衣所を出る。脱衣所の扉を閉める瞬間に風呂場の扉が再び開いたような気がしたが俺は振り返ることなく三階への階段を駆けあがった。


 道中の女中さんがはだけた俺のガウン姿を見てどっちだと思うだろうな。事前か事後か。完全に事前の事故る前なんだけど説明させてくれないかなぁ。そう思って前を通り過ぎようと挨拶をしたら呼び止められた。


「ロック様、当館支配人のユセフがお時間のある時にお会いできればとの伝言でございます」


 ああ、そうだ。ユセフさんからシェリルのことで話を聞かなければ。今がいいタイミングだな。


「こんなカッコではあるのですが、できれば今がタイミング良さそうです」


「はい。結構でございます。ではこちらへ」


 女中さんの後をついて歩く。階段のところにいる女中さんが廊下の方に出てきて兼用の御用聞きになった。さすがだ。


 一階の支配人室に案内されて中に通される。


「お呼び立てして申し訳ありません。ふむ。大丈夫でしたかな」


「こんなカッコで申し訳ありません。いろいろ楽しませていただいているので何も問題ありません」


 さて、何を聞かされるのかな。




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