第62話 大きすぎるのも
まだちょっと距離があるけどボアを見つけたので行軍を止めてオルカのところに戻る。
「この先にボアがいるんだけどわかる?」
「わからない」
「まだ遠いか。ボア以外の魔獣はいないみたいだ。『探索』にボアの反応がどう出るのか知って欲しいからここからはふたり一緒に移動しよう。危なくなる前に止めるから俺の左ひじを触ったまま付いて来て。『探索』に反応したら引っ張って教えてね」
ボアのいる方に隠密行軍で近付いていく。ほどなくしてオルカが袖を引く。気配を消してしばらくその場でじっとする。ボアはこちらにはまったく気づいていない。目視は出来ないが何か大きな生き物がいる気配も感じる。オルカの様子を伺うと『探索』は出来ているが気配までは感じていないみたいだ。探知には引っ掛かっているからその方向に集中してごらんと言ってしばらくその場で待機する。俺の『走査』ではボアが鼻面を地面に突っ込みながら何かを食っているらしいことがわかる。木の根か芋のたぐいだろう。五分ほどそのまま『探索』を続ける。この緊張感がいい! 『探索』の習熟度もグっと上がりそうだ。そろそろ集中が続かなくなるかもしれないので切り上げて狩りに移行しよう。
オルカに目線と指差しで木の上はどうだと聞くと軽く頷いたのでハンドサインで「行け」の指示。オルカが軽々と音もなく頭上の枝に到達する。それを追って俺も登ってふたたびオルカの横に付く。頬が触れるほど顔を寄せる。
「このまま太い木の上の枝を伝ってボアが見えるところまで寄ろう。付いて来て」
オルカが頷いたのを確認して数本の枝を飛ぶ。隙間からボアが見下ろせる場所に着いてオルカを待つ。すぐにピタリと寄り添うようにオルカが来る。オルカが前になるようポジションチェンジ。
「いくよ」
背後から耳元で囁く。そのまま左肩を抱いてわかりやすいように視線に入るように右腕を伸ばして人差し指をボアに向ける。俺たちは一匹の獣だ。指を少し上に向けたあとに振り下ろす。
ドゴッドゴッドゴッ!
ちょっとやり過ぎたかな。ボアの討伐練習はまだ不十分で加減がよくわからない。ひとかかえほどある石をボアの首の付け根に三連発でぶつけた。五十キログラムほどの石が時速三百キロオーバーで激突だ。幹線道路を走ってる車に轢かれたぐらいの衝撃なはずだ。しかも一度轢かれたあと後続車二台に連続で轢かれてる……。収納を掛けたけど入らない。まだ死んではいない。ただ、声も出てないし動いてもいない。オルカの耳元で囁きで指示を出す。
「オルカ、短槍を渡す。アイツまだ生きてる。首の急所を一度だけ突いてすぐに木の上に退避だ」
収納から短槍を渡す。ハンドサインで「行け!」
オルカが枝の上を飛んでボアの死角に回り込むと一気に下降から急接近、首の柔らかい血管のある場所を正確に刃を立てて一突きして軽く捻ってから抜くとボアから目線を切らずに離脱してすぐに太い木を駆け上がる。ボアは意識が戻ることなく、しばらくして失血死した瞬間に収納された。ボアが収納された瞬間、その場に細かい何かが舞ったのが見えた。寄生虫とかだろうな。オルカにはそうなることは伝えているので風下から少しずれたところにいる。そもそも高さがあるから大丈夫だけど。ハンドサインで戻ってくるように指示。
「理想的ないい動きだったよ。ボアと俺のことも同時に見てたし、残心もその後の探索も忘れないでえらかったね。あっちでボアを出して見てみよう」
オルカが付いて来ているのを感じつつ少し開けているところを探して枝の上を移動。
安全確保したらさっき仕留めたばかりのボアを出す。体高は俺たちの身長ほどもある。デカい。少しでも血抜きをしておこうと言う事で俺がシャベルで首の下を大急ぎで掘るとオルカが首の傷を短槍を使って切り広げる。すごい勢いで流血していく。そのまま血抜きの場所を増やしつつ観察を続ける。血抜きの場所はそのままそいつの急所だ。所々槍や短剣の刃を当てて攻撃が通りそうか確認する。
「やっぱりボアぐらい大きくなると槍とか短剣ぐらいの刃の長さがないと攻撃が入らないな。力技で戦うのは無理だから一人が気を引いてるうちにもう一人が刺したり斬ったりして少しずつダメージを与えていくしかなさそうだ。でもやっぱり短剣はリーチが足りなくて危ないよね」
オルカは初めてボアを目の前にして、ダガーと短剣では火力不足という俺の話が実感出来たみたいだ。『赤竜の爪』は火力があったので俺はボアを引き寄せれば仕事が終わっていただけに『出納』なしの斥候だけのチームでは大物を獲るのは無理がある。
「短剣で倒すなら目から突き入れて脳を壊すしかないね」
オルカが冗談だと思ったらしく少し笑った。俺が笑ってないのを見て表情が変わる。
「それ、本気だった?」
「いや、まあ、やりたいかやりたくないかで言ったらやりたくないけどさ。不意打ちでスピードで圧倒すれば出来なくはないっていう話し。前に不意打ちで草原狼をそれで倒したから」
オルカは想像してみたけどうまくいかなかったっぽい。
「俺はスキル使うからいいんだけどね。他に人がいる時にこういうのが出た時にどうするかっていう話もあるよね。まぁそんなこと今から考えててもしょうがないんだけど。さて、こいつどうしようかな。せっかくだから少し削って晩飯の時に食おうか」
オルカの顔が花が咲くように明るくなった。
今度こそはっきりと熱々の分厚いステーキがイメージ出来たみたいだ。
あとがき
ぜひ、ブラウザのブックマークではなくアカウント取得してログインか公式アプリを使ってください。
そして、そこでブクマとイイネ、感想をお願いします。
なろうで執筆している全ての作家が苦しんでいます。
無償で小説を投稿することを続けさせてやってください。
その燃料が「いいね」であり「ブックマーク」です。
小説が未完のまま投稿が途絶えるのは読者反応が無いからです。
よろしくお願いいたします。
既にログイン後のブックマーク、いいね、いただいている皆様、応援ありがとうございます。
励みになります!
X アカウント開設しました。
投稿のお知らせなど掲載予定です。
アカウントは「作者マイページ」ー「プロフィール」にてご確認いただけます。
あ、ちなみに感想は「おもしろかったです」「続きが気になります!」みたいなひと言で充分なの知ってました?
その一言で続きを書き始めるのが作者なんですってヨ。
読者とボクだけの秘密だぜ?




