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輪廻がイヤなら異世界転生。底辺職の先行斥候だけど『出納』スキルで好き勝手に生きてやる!  作者: 秋乃せつな
第3章 DAY3

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第50話 Confession~告白~


 オルカと『夕暮れの泉亭』のテラスで荒野とその先に霞む森を見ていた時、グランデールへの興味が薄れてしまった。元からそうだったと思うが、壁の中への憧れっていうのが俺の中に無いってことを自覚してしまった。それよりも打ち寄せる白波や、どこまでも続く水平線、見渡す限りの砂山の砂漠、天を衝くほどの高山を見せてやりたいと思ってしまった。


 この星にそんな場所があるかどうかは知らないが、だったら尚更だ。こんな差別だらけの野蛮人どもの巣窟(そうくつ)よりもっと美しいところがあるだろう。探しに行けばいい。


 昨日知り合ったばかりの少女に秘密を打ち明ける理由が自分でもよくわからない。自暴自棄になりかけているのだろうか……それともこの世界で心から信頼できる人間を一刻も早く見つけたいという願望の現れだろうか。まだ後者の方がマシな理由だなと思いながら口を開く。


「オルカ、俺の秘密を話すよ」


 フードを脱ぎながら言う唐突な告白にもまったく動じた素振りもなく至って平静に俺を見返すオルカ。


 オルカがフードを脱ぐと窪地に吹き込む風が艶煌銀青クリア・シルバーブルーの髪を揺らす。


「俺はスキルを持っている。そのスキルがちょっと変わってるんだ」


 その表情からは感情を読み取るのが困難なポーカーフェイス。


「俺のスキルは物をしまったり出したり出来るんだ」


 出来るだけ簡易な言い回しで話す。十二歳の、教育とは無縁だった子供に大事な話をするのに難しい言い方は誤解の元だ。それでもオルカは常に難解な俺の言葉を理解しようと必死だ。わからない言葉をしゃべるとちゃんとその意味を聞き返してくる。俺はそれがおもしろくて時にわざと難しい言い方をする。


「見ててごらん。そこのバックパックをしまうよ」


 さっき置いた俺のバックパックに右手の人差し指を向ける。オルカがそれを見る。次の瞬間消えた。


 オルカは黙って見ている。


「今度はしまったバックパックをそこに出すよ」


 オルカの足元に指を向ける。俺のバックパックが音もなく現れた。続けて指を差さずに俺のバックパックとオルカのバックパックを収納。


「今しまったバックパック。どこに出して欲しい?」


 オルカが地面を指差す。次の瞬間、そこにふたつのバックパックが並ぶ。


「俺もまだこれでどこまでのことが出来るのか正確にはわかっていない。ただ、オルカが思うよりもたくさんの物や大きいものもしまえると思う」


 収納してある 草原狼(グラスウルフ)を一頭出す。そして再び収納。


「あとは、俺は魔力の扱いがすごく上手なんだと思う。容量も多そうだ。ただし、魔法の知識が無いからほとんど魔法は使えない」


 オルカの口が開きかける。


「あー、身体強化はスキルとは無関係、とは言わないけどスキルとは別な部分が大きい。これは訓練で伸びたところの方が大きい。オルカが望むならいくらでも教えるよ」


 教えると言ったらにっこりと笑った。訓練で伸びると言いはしたが、もちろん生まれ持った才能が最も重要だ。オルカにはそれがもう見えているのであえてここでは指摘していないだけだ。この世界は努力でどうにもならない部分が大きすぎる。階級社会の構造が変わる未来がこれっぽっちも見えない。


「まぁ、とりあえずこんなところかな」


 ジョッキを二個出して魔法で水を入れて、ひとつをオルカに渡す。ノドが乾いた。ふたりで喉を潤す。飲み終わったジョッキの余った水を捨てて『収納』


「どうかな?」


「すごく便利そう」


「うん。すごく便利なんだよこれ」


 笑っちゃった。コンビニじゃないんだから。


「だから人がいなくなったら重い荷物は俺の中に入れてしまえばいいから。ただね、これって便利過ぎるんだ。他の人がこれを知ると俺を利用するか邪魔になって殺すかだと思うんだ。だからできれば誰にも知られたくない」


 オルカは考えている。俺が言った利用するか俺を殺すっていう部分だ。一生懸命考えてくれてる。なぜそうなるのか? たぶんオルカの持ってる知識だと難しいだろう。


「この能力は物をたくさん運びたい人にとってはとても欲しい能力だろ? だから俺を使いたくなるんだ。たとえば軍隊。あらゆる武器、食料を俺一人で戦場まで運べる。たとえば行商人。珍しいものをたくさん買って簡単に遠くまで運んで高く売ることができる。わかるかい?」


「わかる」


 理解できたことがうれしいのか激しく首を振る。


「誰かにとってはとても便利だけど、その人を相手にして戦っている人にとっては俺はとても邪魔な存在になる。俺が手に入らないならせめていなくなって欲しいと思うだろう。俺はどっちの人の味方になる気もない。もう一生誰かの下で奴隷のようになる気はないんだ。誰にも俺に命令させるつもりはない。そして誰かを従える気もない。だから、できれば誰にも知られたくない。知られると敵が増える。敵とは戦わなければいけなくなる。戦うと殺さなくてはいけなくなるけど、できればそうしない方がいいと思うんだ」


 足元に落ちてる岩を両手で拾う。目の高さまで上げて手を放す。落下した岩は地面に着く前に消える。斜め上の空を見上げる。オルカがそこを見る。岩が現れて落ちる。消える。落ちる。消える。落ちる。消える……


 今いる窪みの壁部分を指さす。ドゴッ! さっきの岩が壁に激突する。オルカの首が傾く。


「今のはね、最後に()()()()()()()()んだ」


 オルカが口を開けて、あーなるほどー、という感じで頷く。


「これさ、いっぺんに百個ぐらいは余裕でできるんだ」


「おー」


 それがオルカの感想だったらしい。


「というわけで、俺、けっこう強いんだ」


 笑顔で言ってみた。


「うん、ロックは強い。私も強くなりたい」


 フンス! ってなった。


「そうだね。きれいになったから次は強くなろうね」


 オルカは顔を赤くして頷いた。美人さんな自覚があって何よりだ。


「わたしはねー。あんまりなにもないかなー。ちょっと速く走れるだけ」


「いや、充分すごいよ。最初に会った時にも速いって思ったから。きっと魔力操作を練習したらもっともっと身体強化も強く掛けられるようになるし、強くなれるよ」


 俺の言葉を真剣に聞いている。俺はオルカには嘘はつかない。変にごまかしの希望も与えない。


「ロックはどうやったの?」


「うん、俺がやってきたことは全部教えるよ。秘密はなしだ。俺たちはパーティーだから」


「わたしも秘密はないよ」


 女の子は秘密のひとつふたつあってもいいんだよって言ったら「変なロック」と言って笑われた。


 窪地から出る時に繋いだ手をそのままに森に向かって歩きながら魔力操作の鍛錬方法を教える。魔力の練り方、循環方法、溜め方……


「でもこれは全部ヒントだから。たぶん魔力の使い方は人によってちょっとずつ違う。誰かにとっては美味しくても他の人にとってはそんなに美味しくないってこともあるでしょ? それと同じで感覚としてのとらえ方が違ってくるからだと思う。だから人のやり方は参考程度に聞いて、自分のやり方や考え方を見つけるんだ。その方が早く上達すると思う。あ、そうだ。あと俺は『探索(サーチ)』が得意だったんだ。近付いて来る敵とかがわかる」


「あ、それ、わたしも時々ある」


 マジか! 大当たりだ!


「それはすごいよ! 今日からさっそく練習しよう! 『探索(サーチ)』を鍛えたらものすごく便利だから! 『身体強化』と『探索(サーチ)』を持ってるのか! 俺と同じだね!」


 俺の興奮が伝わったからか俺と同じと言われたからなのか、オルカがうれしそうだ。速度と探知か。俺がふたりいるみたいなもんだな。俺がパーティーを組む相手としては相性がいい。今は移動速度で圧倒したい。


 バックパックも持たずおしゃべりしながらブラブラと散歩するみたいに手を繋いで荒野を歩く。事情を知らない人が見たらどう思うだろう。さて、せっかく装備を手に入れたし習熟訓練でもしてみようか。


 と、その前に早めの昼食にでもしましょうかね。



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