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輪廻がイヤなら異世界転生。底辺職の先行斥候だけど『出納』スキルで好き勝手に生きてやる!  作者: 秋乃せつな
第2部 第1章

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第175話 湖畔にて

 これはね「()めろ」って言う方が(こく)ってもんだよ。わかるよ。生まれて初めて遊ぶトランポリンだもんね。しかもこの(ひと)たちってオリンピック選手どころか戦隊ヒーロー以上の運動能力持ってるからね。


 というわけで(かもど)でガンガンに肉を焼くことにした。東屋(あずまや)にはちゃんと煙突を付けてある。煙突の先は雨が入り込まないように傘付きだ。遊びを止めさせるには食い物の匂いで釣るしかない! まずはさっぱりした鳥肉、ではない。脂の乗ったボア肉だ。鳥はその横で油のプールで泳がせる! じゅわー! もうね、とにかく量だ。うちの子たちは食べ盛りなので。並べまくったステーキと下味を付けて揚げた唐揚げが出来上がった! みんなに声を掛けようと振り返ってビクっとなる。全員着席してこっちをじーっと見てる。みんな薄っすら汗かいてるね。どんだけはしゃいだんだ。わんぱくか。


 大皿で新鮮な生野菜の上にカラアゲを山のように盛り付けてテーブルにドン! と置く。味変に塩とレモンと香辛料もどうぞ。ビールとエールもワインも置いておくね。全員が手を合わせて「いただきます」と言っていた。いつの間にかウチで定着したごはんの挨拶。俺もつまみ食い。


「なんで野営でご法度のお酒をこんなに美味しくいただいちゃってんのよ」


 一部不満の声が聞こえてくるが無視して良さそうだ。


「これは誰が下味を付けてくれたのかな。すごく美味しいね」


 カラアゲは正義だろ? 異論は認めない。どんどん揚げるし、どんどん焼く。マジで料理が間に合わない。肉を薄く切って野菜と一緒に切り込みを入れたパンに挟んで食べるのも当家では人気のメニューだ。自分で作らせることで少しでも時間稼ぎをしてその隙に肉を焼きまくる。俺が食うのはあとでいい。材料ならあり余ってるからあとで足りなくなって食べられないということはない。精米した米もあるが、炊いている時間は無いな。今日みたいにハラペコの時に貯め込んだ米を出すとあっという間に食い尽くされるから黙っておこう。


 まず最初にサリアがご馳走様になった。彼女も女の子にしてはそこそこ食べるが、この面子の中では小食と言ってもいいだろう。食べ終わるとこっちに来て料理を手伝いだした。「あんたも食べなさいよ」とか言ってやさしい。任せっきりなんてもったいない! となりで一緒に料理しながらつまみ食い程度でいいよ。「料理の邪魔なのよ」とか悪態をつくが決してあっちに行けとは言わない。わかりやすい。次にシェリルが脱落。今日は運動もしたし、よく食べた方だろう。残りのふたりはまだまだ入りそうだ。シェリルも来たことで俺の役目は終わった。三人で喰らう!


 というか、きみたちの食いっぷりは見ていて気持ち良いぐらいなのだが、その細いウェストのどこにそんなに入るんだい? 食べ終わるころにはぽっこりしているのに、翌朝にはすっきりしている。とんでもないエネルギー消費量だ。この二人ってエネルギーを貯めておける器官でも持っているのだろうか?


 俺の食べ終わるタイミングでシェリルとサリアにソファーに行ってもらって紅茶と甘いデザートを並べておく。サリアがまもなく夕焼けの湖を見ながら紅茶を傾けてボーっとしながら「わたしはどこ? ここはだれ?」とか言っている。久しぶりの森で疲れているのかな? シェリルに任せておこう。


 わんぱくケモミミ娘たちの食べるペースが落ちたところで東屋と湖の間に土台とその上に湯船を【排出】する。土台には階段も設置。階段の手前の簀子(すのこ)の上で靴を脱げば足元汚れずに入浴可能。どうせここには誰もいないから衝立(ついたて)もいらん。大自然露天風呂だ。湯船に水魔法でちょっと熱めのお湯を溜める。さて、ふたりいっぺんに入ってもらうか。


「シェリルー、サリアー、こっちに来てー」


 シェリルに手を引かれてボーっとしたサリアも来た。サリアが露天風呂を見つけるとだんだんと目が見開(みひら)いていった。


「な、な、なにやってんのよあんた! これは、これはさすがに許されないわよ!」


 サリアが変なことを口走っている。いったい誰が何を許さないのだろう?


「サリアは変なことを言うなぁ。俺はね、たとえ女神が許さないって言っても言うことを聞くつもりはない男なのだよ」


 そう言いながらイスに座らせると(かが)んでサリアのブーツを脱がす。シェリルのブーツも脱がせると二人の手を引いて階段を上る。まずサリアを休憩用のイスに座らせると、シェリルの金縁が美しい純白の防具を脱がせる。次に冒険者服の紐とボタンを外して上、下と脱がせる。最後に肌着、下着を脱がせて簀子の上に立たせてシャワーを浴びせる。湖を背景に温かい湯を全身に浴びる女神の立像が完成した。美しすぎてエロスを感じない。俺と一緒にサリアもボーっと眺めてる。良いタイミングでお背中を流しに行く。洗い場用の背もたれのないイスに座らせて前側は自分で洗っているが手足は俺のものだ。洗髪はあとにするので頭にタオルを巻いたら手を取って湯船へ誘う。「はぁ」と(つや)っぽい声を出しながら湯船へと裸体を沈める女神。「奥様、ごゆっくり」と恭しく礼をしてサリアの元へ。彼女たちは『妻』を意識した言葉を使うと喜んでくれるんだよね。


 サリアに手を差し出すと湖と立ち昇る湯気に視線を漂わせたままボーっとしながら手を取って立ち上がる。戦闘女中服(バトルメイドドレス)(ほど)いて上から下へとストンと脱がせる。脱いだドレスを【収納】したところでサリアがハッとした。


「あんた、なにわざわざ手で脱がせてるのよ。そんなことしないで【収納】すればいいだけでしょ!」


「ははは。バレたか! やりたいからやってるだけだから気にしないでいいよ」


「気になるでしょうが!」とか言うけど「好きな女の子の服を手ずから脱がせる男の夢を奪わないでよ」と(ささや)くと無言で肌着と下着を脱がされるに任せるかわいいサリアだった。


 シャワーを降らせて「どうぞ」と促した。


「これ、またおかしな魔法の使い方してるのね」


 何もない空間から土砂降りの雨だ。俺から言わせれば別に変じゃないよ。水魔法って最初からこんな感じだったよ。そう言う意味では最初っから変なんだよ。これはただの応用。


「これがシャワーだよ。そのまま浴びてごらん」


 温かい豪雨の中に手を差し出しながら進むサリア。自然と表情が緩んでいく。身体が温まったところで座らせて軽く頭を拭いてまとめ上げる。俺も暑いから全裸だ。次に石鹸と洗い布で身体を洗う。背中を洗っていると「わたしにもよこしなさいよ」と言われた。「バレたか。言われなかったら前も全部俺が洗おうとしたのに」って言ったら「バッカじゃないの」って言ってたけどその後に少し悔しそうな表情だった気がする。ひょっとして洗って欲しかったのかな。手足を洗い終わって湯船に案内するころにはシェリルは湯船から出てアイスペールから氷を入れたグラスで、最近作って好評だったアイスティーを飲んでいた。ドリンクバーコーナーには各種ガラスピッチャーに飲み物がいっぱい入れてある。


「シェリル、頭洗おうか?」


「もう少し涼みたいわ。貴方(あなた)も一緒に入りましょ」


 誘われたら断る選択肢は無い! 急いでシャワーを浴びる。なんてこった。大自然の中のシャワーの爽快なことよ。汗を流したら風呂イスに座って身体を洗うのだがいつの間にかシェリルとサリアが近くにいて石鹸と洗い布を要求される。湖を前に洗われるに任せると何かもが開いていく感覚に陥る。素晴らしい体験だ。洗い終わると三人で湯船に浸かる。


「どお? シャワーも野外露天風呂も最高でしょ?」


 背中抱っこしてくれてるシェリルの声が頭の上から聞こえる。

「そうね。これはもうやめられそうもないわぁ」


 サリアは湖をぼーっと眺めている。風呂のふちに腕を乗せてあごをついているのだが、その後ろ姿はおしりがぽっかり浮かんでいる。本人気付いてないな。黙って眺める。


「オルカの言っていたことがわかったわ。こんな贅沢、世界のだれもやっていないわよね。さっきから夢か現実かわからなくなりそうよ」


 そう言うとシェリルに背中抱っこされている俺をそのまま抱きしめに来た。


「ロックありがとう」


 何に対してのありがとうかはわからないけれど、誰よりも気高(けだか)い彼女にそう言ってもらえて、ただただ俺は嬉しかった。


「こちらこそ、喜んでくれてありがとう」


「ふふっ。そんな言葉、この世には無いわよ」


 背中抱っこの俺の上に向かい合わせで座るサリアが(ほう)けたように言う。


「あの世の経験者はやる事も言う事も違うってことだよ」


 そう言ったら二人の抱きしめる手に力が入った気がした。


 順番に頭を洗いっこして、身体を冷やすためのイスも増やす。シェリルとサリアが裸のまま冷たい飲み物を飲む。サマーベッドを出したらサリアがめまいを起こしたようにフラフラとそれでも横になった。シェリルもそれが欲しいと言うので並べて置いてゆったりしてもらう。俺もアイスティーを湯船に腰掛けて、そんなふたりを眺めながら飲んだ。空が茜色になりかけている。


 ようやく食事を終えたオルカとキュロスが瞳を夕日にキラキラと輝かせながら歩いて来るのが見える。


「ロックー! あたしも入りたい!」


 キュロスが両手を広げているので全てを【収納】しながらシャワーを出すとなんの躊躇(ちゅうちょ)もなくその下に進み出る。見上げるようにして全身に湯を浴びる。健康そのものの肌が湯を弾いて玉のように滑り落ちていく。シェリルとは別の意図でつくられた芸術品のような裸体があった。美しすぎてエロスを感じないもうひとつの完成品だ。


「ロックー、洗ってー」


 キュロスの全身を洗ってる横でオルカもシャワーを楽しむ。


 ちなみに今、この瞬間に近付いて来ていた八頭目の魔獣を(ほふ)って【収納】済みだ。


 水面が赤く染まる中、キュロスに背中抱っこされながらサリアがぽつりと呟いた。


「ねぇ、ロックに出会う前にこの体験をすることになるわよって言われたらどう思ったでしょうね」


「そーねー、たぶんこれの百分の一の光景も想像出来なかったでしょうねー。でも、昨日言われてもあまり想像の中身に違いは無かったと思うわー」


 サリアは「そうね」と言いながら両手を突き上げるように伸びをした。そしてオルカの身体を洗ってる俺に向かってとびきりの笑顔で言ったんだ。


「ロックー! これ、最高だわ! 愛してるわよー!」


 これだからサリアはかわいい。ちょっと泣きそうになったのを誤魔化すために大きい声で「俺も愛してるよー」と言い返すのが精一杯だった。オルカの身体を流すためにシャワーを出して顔を洗った。


 太陽が落ちても光源の魔法を使ってお湯に出たり入ったりして過ごした。途中でアイスクリームを出せと言われたり、冷めた湯を張り替えたり結構忙しかった。全員に背中抱っこされたが、オルカの背中抱っこがサリアより完全に高さがあった。それは背中の感触含めてオルカの圧勝だった。そこはサリアが今もっとも気にしているトピックなわけだが、俺がサリアの背中抱っこでもいかに気分良く過ごしているかを微に入り細に入り語ると顔を真っ赤にしながら止めさせられた。


「サリアって自分が褒められるの苦手だよね。二人きりの時にもそうなるのかな」


「そうなるのかな、じゃないわよ! そんなこと気にするようなことじゃないでしょ!」


 俺が背中抱っこしてる上で全身を許しながら偉そうに言っても説得力はゼロだ。






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