第172話 ある日、森の中
パーティー名:神々の黄昏(冒険者ギルド未登録)
ロック:10歳 黒目黒髪ロング。どこから見ても美少女の健全な男子。30歳男日本人の記憶あり。【死女神】
シェリル:23歳 茶色髪&瞳でタレ目超絶美人。左目に涙ぼくろ。大双丘完備の完璧我儘ボディ。【女神】
オルカ:12歳 天蓋孤独の天然天才殺し屋気質の銀狼獣人少女。艶煌銀青の髪と透き通る青灰色の瞳。絶賛成長期。【疾風の銀狼】
キュロス:21歳 黄色髪に琥珀の瞳。女豹獣人。完璧に均整の取れた究極締まった身体の美双丘。【一閃の剣姫】
サリア:15歳 薄桃色の髪に桃色金剛石の瞳。人形のように可憐な毒舌娘。クォーターサキュバス。魔人特性で微双丘の発育途上。【人形姫】
ここから一歩進めば恐怖の森の中だ。
「でもまぁ、俺たちにとっては楽しい休日のピクニックみたいなものか」
「ピクニック? なによそれぇ」
綺麗な薄桃色の髪にゴシックロリ服のツインテールの美少女があごをツンと上げて不満気に言う。この娘に偉そうにされるたびに腰骨のあたりがぞわりとする。そして何か言い返さないといけない気になる。きっとこの娘が強気な言葉とは裏腹に打たれ弱いせいだろう。最早やり返されたくてわざとこんな態度を取っているのではないかとさえ思えるほどだ。期待には応えなければ。
「ピクニックというのはね、好きな女の子と一緒に自然の中でイイことをする楽しいイベントのことだよ」
「へ、へぇ。そーなのね。さすがヘンタイニッポンジンはやることが違うわね」
「楽しみだよね」などと言いながらサリアへ左手を伸ばすと黙ってその手を握る。かわいい。
「シェリル、おいで」
右手を伸ばすと女神の微笑みを浮かべて腕を絡めてきた。たぶんサリアへの無言の対抗だ。最近、やっと少しずつわかってきた。大事にするよ。俺の背がもう少し伸びたら右腕がもっと幸せな感じになるのだろうが、まだもう少し足りない。
サリアは冒険者をやっていたから森の経験はあると強気な発言をしていたが、それも二年前のことだし、前に森に入っていたっていうのも冒険者になり立てぐらいのことだから、そんなに経験があったとは思えない。シェリルに至っては外の世界を、街中でさえ自由に歩き回った経験はほとんどないはずだ。完全に森の初心者。この笑顔は知識が無さ過ぎて恐怖心が無いのかもしれない。
「オルカ、斥候をよろしくね。動物は肉食獣は駆除のために狩ってもいいけど、それ以外はパスで」
「ん」
ふさふさの尻尾を振りながら羽のようなステップで先行していく。キュロスは俺たちの後ろからのんびりと、こちらも森の空気を楽しむように穏やかな表情のままついてくる。これでも誰よりも頼りになる殿だ。
デミトリーの騒ぎから三か月ほど経った。奴は相手を契約や誓約で縛っていたため、証拠の書類が出るわ出るわ。あまりにも杜撰なやり方にあきれてしまった。よほど世の中思い通りに出来ていたのだろう。この証拠を使ってウォーカーが生家のジラール家を使ってカルチェンコ家の退路を断った。
俺の方は、プライべートでは壁の中の屋敷の準備があと少しというところ。仕事の方は、カレンとユーリという優秀な経営者のおかげで『偏西風商会』が順調に売り上げと勢力を伸ばし続けている。都市部では開業した飲食店が爆発的な人気になっていて、庶民には屋台、セレブには高級レストランまでが連日大賑わいだ。
容姿に自信のある女性が自分も働かせて欲しいというムーブメントが大変なことになっている。元々仕事を求める声は大きい。給仕は女性の仕事の中では女中の次に『まともな仕事』という世界だ。そこに突如として現れた制服ブーム。客から追っかけやストーカー、金を払うからどうこうという輩まで問題には事欠かないわけだが、うちのお店はすべての場所で奴隷紋のある強面が従業員を守るという健全経営。どなたでも安心して働けます!
遅れた世界において巨大な資本に任せて立ち上げる事業での金儲けは簡単だった。今は冒険者を使って魔獣の間引き作業をしている。使っているのが奴隷の冒険者なのでランニングコストが衣食住ぐらいだから思い切った方法が取れる。
三パーティー、十五人を一小隊として編成し、森や荒野に広く差配した。大人数で魔獣に対処させることで負傷のリスクを大幅に減らせた。大型魔獣の素材や肉を取りこぼすことなく運んで飲食業や自分たちの食糧に回すことも出来ている。
今日は久しぶりに休みが取れたので念願のピクニック、ではなく森への修行に来た。部下の奴隷ばっかり強くなって自分たちの成長が止まっているようでは裏の組織なんか運営していけないからね!
「サリア、ティアナが作ってくれた装備はどんな感じなの?」
「くっ、まぁ、悪くはないんじゃない」
サリアとティアナはものすごく仲が悪い。ティアナがめちゃめちゃサリアを煽るからだ。言うのが悪口じゃないから始末に負えない。サリアはサキュバスの血の影響で身体の成長速度が遅い。美少女だけど『少女』なのが問題といえば問題。ティアナの容姿が人類を超越した美しさなのだから、それを持ち出されると誰も勝てないんだよね。『鉄槌と金床』に行くといつもこの問題が発生して、からかわれたサリアがティアナに見せつけるために俺に必要以上にベタベタとくっついて溜飲を下げるという変なコントになる。そのサリアが『悪くない』と言ってティアナの作った防具を身に着けているのだから、良いモノなのだろう。
「うん、黒のゴスロリ服だけど重すぎないデザインが良いよね。かわいいしカッコイイ。サリアの顔が良いから余計にそう見えるよね」
「顔が良いとかまたあんたはよく平気でそんな本当のことを。でもね、いいこと! 顔が良いのはあんたなのよ! わたしに向かってその顔でそういうこと言わないで!」
相変わらずの自分のことを棚に上げつつ褒めながらブチ切れるという職人芸。怒りながら笑う人みたいだ。思わず握った手を離して頭をぽんぽんとしてしまう。
「ん~、くぅっ! 年下に頭を撫でられてもうれしくなんかないのよ!」
赤い顔して言われても説得力は無い。それに、
「うーん、でも俺の精神年齢はたぶんサリアよりだいぶ上だと思うんだよね」
「くっ! ホントにあんたはああ言えばこう言う!」
そう言いながらも頭ぽんぽんも繋いでる手も振り払おうとはしないんだよね。かわいい。
「シェリルは大丈夫? 初めての森で怖くない?」
にこにこしているシェリルは一番何を考えているかわからない。彼女こそ笑いながら怒る人だから。
「うふふふ。大丈夫よ。とっても澄んだ綺麗な空気ね。息をするだけで楽しいわ」
それはそう。スラムの下水の改善はやっと開始されようかというところだ。都市内は下水が発達しているのだが、清浄化にはスライムが使われていた。今、そのスライムを分けてもらって、冒険者クランの『再生の大地』で培養してるところだ。森からの風が無い時間帯など、やはり臭いは気になる。ここはそれに比べれば天国のように清涼だ。
「そうだね。『夕暮れの泉亭』はとても過ごしやすいけれど、森での野営も悪くないと思うよ」
「それがわっかんないのよねー。オルカもずっとそう言ってるわよね。あたし、野営で楽しいことなんてなんにもなかったし、楽しい野営ってのが想像できないんだけどなー」
ぷらぷらと歩いているようにしか見えないキュロスが後ろから声を掛けてきた。
「そういう風に思う気持ちもわかるけどね。まぁ、楽しみにしててよ。しばらくは天気も良さそうだし、気持ちよく過ごせると思うよ」
「まぁ、あんたがそう言うってことはそうなんでしょうけどね。わたしも野営は嫌いだったわ」
基本的にソロぼっち冒険者だったサリアだから、たとえ臨時でパーティーを組んでいても野営に良い思い出はないのだろう。
「サリアはモテてたって言ってたし嫌な思い出も多そうだね。でもまぁ、それは今夜から上書きすればいいよ。たのしいことしよう」
森の中を無駄話をしながらどんどん奥へと進んで行く。声を出しているからか熊も出ない。つまらないと思ったのかオルカが見えなくなるほど先に行ってしまった。しばらくすると、そのオルカの動きが『走査』の中で止まったことがわかる。しばらくして追いつくと巨大な熊の前にポツンと立つオルカがいた。
「ずいぶん大きいね。それはどっちだった?」
「ん。魔獣だったよ」
サリアが呆れていた。
「まったく、なんで十二歳の女の子がひとりで角魔熊獲ってんのよ」
オルカは魔法を使っていないから余計に不思議だよね。新調した剣との相性が良さそうだ。
オルカはこの三か月で見違えるように成長した。獣人特性なのか、ごはんをいっぱい食べさせて運動もいっぱいして、熟睡できる環境を与えたらすごい勢いで成長した。いや、本来の身体を得たんだろう。身長は明らかに俺を超えている。くやしくないよ? 俺、二歳も年下だし。オルカが後ろに手を組んで俺のところまで飛んで来て腰を折って頭を下げてる。
「オルカは本当に強くなっているね。いっぱい訓練して、いっぱい勉強もして偉いよ」
そう言って頭を撫でる。どんなに強くても、この娘は親の愛も知らない十二歳の女の子なのだ。俺の次はシェリルがその豊な双丘に顔を埋めるようにして「オルカちゃん、かわいいわ」とやさしく抱きしめる。ほぼ愛玩。オルシェル尊い。
ここは誰もが常に死を意識する『恵みの森』の奥深く……
お読みいただきありがとうございました。
ちょっと早いですが第2部開始いたします。
第1部 完 としたばかりでしたが、ペースを抑えてでも投稿を続けようと改心しました。
書き貯めはありません!
また、
『最弱スキル『地図』が『こうしえん』になった!? - 高度戦術支援地図で最強クランに成り上がれ!』
こちらの投稿連載を開始しました。
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