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輪廻がイヤなら異世界転生。底辺職の先行斥候だけど『出納』スキルで好き勝手に生きてやる!  作者: 秋乃せつな
第8章『審判』

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第168話 採スンッ

 刀の製法というほど立派なモノではないが、伝説の職人なら俺の動画知識を活かして結果を出してくれるだろう! あとは頼む! っていうのも無理だろうから時間を見つけて顔を出そう。刀は一人で打つのは大変だと思う。ドワーフ異世界スキルとかパワーで一人でも出来たりするかな?


 ガイアは刀の製法の譲渡と関係なくみんなの武器を作ってくれそうだったが、対価も無しにモノをもらうのは嫌だからちょうどよかったな。ティアナは性格が終わってるけど、防具作りの腕は補償付きだから、みんなの分の防具を作ってもらえるなら僥倖(ぎょうこう)だ。


 ティアナが最初の採寸にサリアを指名した。


「それじゃあさっきの小さいあんた、採寸するからいらっしゃい」


 サリアを挑発しているのは明らかだ。大丈夫かこれ。なんでこんなに相性悪いんだ?


「ロック。わたくしの装備を出してくださいな」


 声でわかる。サリアさん、ぶち切れてますやん! 下げた右手のひじを曲げて手のひらを上にした。女の子がバッグを腕に引っ掛ける時のポーズだが、求めているのは戦闘礼装(バトルドレス)だ。ここで『排出』しろって言ってる。恐らく彼らには知られても大丈夫と言っているのだろう。ぶち切れているのもそう見せているだけなのだろう。たぶんね。ここは大人しく従うしかないな。サリアの手にバトルドレスを乗せるように『排出』。


「ふん」と言いながらティアナに着いて行くサリア。一瞬、キュロスに目をやると軽く頷いてサリアを追ってくれた。


「なんじゃそら。今のはロックか? なんか変なことしよるの。お前さんが武器にこだわり持っとらんのはそれと関係しとるんかの。まぁええわ。じゃあ、嬢ちゃんからいくかぁ。まだあれから何日かしか経っとらんが何があった。また壊れたんか」


 ガイアの興味はあっさりと仕事に戻った。自分と関係ないことにはあまり首を突っ込むのを良しとはしないのかな。


「いえ、単純にオルカの技量が上がって短剣(ショートソード)では威力が足りなくなったんです。片手剣(ソード)の二刀流でいいと思うんですけど」


 ガイアは「そうか」と言って、でっかい壁に向かって行くと、壁の下の方を叩いた。叩いた壁の一部がくるっと回って把手(とって)が出て来るとそれを(つか)んで引っ張り上げる。壁全体が持ち上がってガレージのドアのように天井に平行にスライドすると、その中は広い兵器庫だった。中には所狭しと武器防具が並んでいた。知識が無い俺でもここに並ぶものが凄いっていうことだけはわかる。この中にあるものには、機能を追求した先にある美しさが兼ね備わっている。ずかずかと中に入っていったガイアが片手剣を何本か手に戻ってテーブルの上に置くのを繰り返した。


「嬢ちゃん、どれかしっくり来るもんがあるかね」


 オルカがテーブルまで行って眺めると無造作に片刃の剣を手に取る。両手で軽く振ったあとに右手で持ってくるくると回す。次に左手でくるくる。そのままトンと肩に刃を乗せる。


「右手はこれでいいけど左手は両刃の方がいいから、これより重くなるとちょっと振れないかなぁ」


 右利きだからかな。片刃で斬って、左手の両刃はあまり気を使わずブン回したいんだろうな。左手だけ脇差のようにショートソードというわけにはいかないんだよね。剣で斬り合う対人戦が前提じゃないから。


「両刃の片手剣で軽くすればいいんだな。軽くなると威力が落ちるからな。あんまり軽くするのは勧めないんだが。嬢ちゃんの場合は叩き斬るんじゃなくて速さで切るって感じか。素材変えて軽くする代わりに切れ味上げるか。とりあえずその片刃はそのままでええかの。グリップはどうする」


「皮一枚分細くしたい」


 そう言いながら片手剣を返す。ガイアも満足そうだ。片手剣を受け取ったガイアがそれを俺に渡す。


「お前さんはどうだ」


 これがガイアの造った片手剣か。両手で持って正眼(せいがん)に構える。振りかぶってゆっくり下す。ぴうん。と刃が鳴いた。ゆっくり振ったつもりなんだけど、これ、すごいんじゃないか?


「いいですね。ただ、今これを振ってみて思ったんですけど、俺は二刀流じゃなくて片手剣一本がいいかもしれません。もう少し重くてもいいかな。少し刃長(はちょう)を長くしたいですね」


「そのようだな。タッパが無いのによう振り回せるな。相性がええんかの。片手剣だと短くて両手剣では重くて長すぎるんじゃな。よし、ほんじゃ次はそっちの姉ちゃんじゃな」


「ふふふ。よろしくお願いいたします」


 ガイアがシェリルを見たあと俺に向き直った。


「ロックよ。この姉ちゃん、何者じゃ。わしが口きいて面倒ごとになりゃせんのか」


 今頃気にするのかよ。目の前のことしか興味ないのか。


「シェリルは俺の婚約者です。もちろん普通に話しても大丈夫ですよ」


「婚約者ぁ?! お前十歳とか言うとったろ。もう結婚するんか。人族ってなせっかちじゃのお。ほんで、ロックの嫁さんは何を使いたいんじゃ」


 やけにニコニコ顔のシェリルがそれはうれしそうに答える。


「私は両手持ちの槍でしょうか。刃が少し長めのよく斬れるものが良いですね。石突(いしづき)を多少重くしてメイス代わりにしてみたいですね」


 なんだかあまり聞いたことのない武器だな。


「ほう。そんなもんが欲しいんか。そりゃ見たことないわな。ちょっと待っとれ」


 そう言うとガイアは武器庫に戻って次々に槍とメイスを持って来た。シェリルはまるで流行りの店でパンプスを選ぶかのように笑顔のまま、武器を手に持って吟味(ぎんみ)中だ。女神の微笑みで手にするのは必殺の撲殺(ぼくさつ)武器。ギャップが異次元だ。そして最後に一本持つとみんなから少し離れた。ドワーフの工房兼自宅だ。多少広くはあるが、天井は低めだ。ゆっくりと長物を回す。その速度が段々と速くなる。槍が身体にくっ付いているんじゃないかというほど密着して高速でブン回る。まるでシェリルが踊っているかのように軽くステップを踏む。俺がパートナーになってもダンスでここまで華麗に舞うことは出来ないだろう。槍に負けた! 舞い終えたシェリルは変わらず女神の微笑のままだ。息も乱れていない。


「形も機能も良いですね。欲を言えばもう少し太く、重く、長くてもいいですね」


「むぅ。ロックよ、お前もえらい嫁さんもらうんじゃな。シェリルと言ったか。石突はどうするね」


 石突の大きさ、重さ、刃の形状、ずいぶんと細かく打ち合わせたようだ。その間にテーブルセットとお茶セットを『排出』してライラに煎れてもらう。さすがにお湯まで出した時にライラの許容量がパンクしそうになっていたので『出納』スキルについて話した。モノを出し入れすることが出来るっていうことだけね。


 オルカのために小型のソファーを出して寝かせた。昼の運動もあったし昼寝は成長促進にもなりそうだ。シェリルが打ち合わせが終わったらしくこっちに来る。椅子を勧める。ガイアも誘ってお茶休憩にする。


「なんでワシは自分のウチの中で知らんテーブルセットでお茶に呼ばれとるんじゃ」


 そう言いながら見知らぬソファーで寝息を立てているオルカを見ながらお茶を飲んでいた。


 足音が聞こえたので振り返ると、採寸を終えたらしいサリアとキュロスが帰ってきたのだが、サリアの機嫌は出て行った時と変わらず悪いままだった。ダークエルフのティアナがニコやかなのでなにか言いたいだけ言われて来たのだろう。採寸と言えば何に関する話題だったかはわかる気がするのでそこは聞かない。


 とりあえず立ち上がってサリアを迎えに行く。(うやうや)しく手を取ってテーブルまでエスコートすると俺が先に座って手を引いて左の太ももに俺の顔が見えるように座らせる。ライラにお茶を淹れさせるとソーサーを持ってサリアの前に差し出す。サリアは流し目でティアナを見ながら小指を立ててあごを上げ気味に紅茶を飲むという流石の嘲笑技(ちょうしょうわざ)を披露した。とりあえずこれで溜飲(りゅういん)が下がったみたいだ。怖いし疲れる。






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