表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輪廻がイヤなら異世界転生。底辺職の先行斥候だけど『出納』スキルで好き勝手に生きてやる!  作者: 秋乃せつな
第1章 DAY1

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/161

第17話 横断

 おおおい! おい! おい! おーい!


 いったいどうなってんだ! 今何時だと思ってんだ! 早くしないと夕方になっちゃうよ! 俺は風呂に入りたいだけなんだって!


「ライズ! 商業ギルドはどこだ! 急ぐぞ! 時間がない!」


 日の出前から行動していて、身体強化で走り回ってるから今はまだ午後三時前ぐらいだ。商業ギルド編を一時間以内に終わらせてやるぜ!


「お、おう。時間? 商業ギルドはあそこだ」


 ライズは冒険者ギルドがある円形広場の向かい側、対面を指さした。おお! 近いやーん! ステキ! とっとと行こうぜ!


「ロ、ロック! 商業ギルドには査定に出せないんだって!」


 屋台の隙間を縫って速歩行進(そくほこうしん)開始!


「なんでだ」


 串肉を焼いてるおっさんがでっかい毛皮と大量の肉を持って歩く俺たちを見て驚いている。


「冒険者は冒険者ギルドでっていうルールがあるんだよ!」


 でっかい毛皮とでっかい生肉がスラムで一番のセントラルパークを横断してゆく。


「それはわかった。でも俺は冒険者じゃないからな!」


 こどもたちが集まって来る。まだ冒険者たちの帰還前なのにそこそこ客はいるんだな。南スラムより金があるのかな?


「「えっ?」」


 『銀狼の牙』のメンバー全員がハモった。ここは西スラムでも比較的金を持ってる連中が来る場所って感じがするな。


「だから、俺は冒険者じゃない。十歳だし。さっきも登録なんかできる雰囲気はこれっぽっちもなかっただろう。だから誰に売ろうと問題ない!」


 (いち)が立っている中を子供たちと共に急ぎ足! 個人出店か。スラムだけに怪しい店が多いな。


「それはまぁ、そうだけど。そう、だけど! お前、冒険者ギルドに喧嘩売ることになるぞ!? 冒険者になれないぞ!」


 なんだなんだと串をツマミに飲んでる連中が注目し始めるのを感じる。ここいらで個人出店するにはどうすればいいんだろうな。


「この先も商業ギルドで買い取ってもらうように交渉する!」


 おっさんたちがこっちを目指して歩き始めた。手に持ったエールは離さない。なんで俺たちこんなに注目集めてるんだ?


「だけど、冒険者階位(ランク)が!」


 円形広場全体が騒然としてくる。あー、ライズも頭固いな。英雄願望か厨二病かなぁ。


「冒険者()()()階位(ランク)ってそれ、本当に必要なのか?」


 ライズの方へ振り向いてぎょっとなった。ライズも俺の言ったことにあっけに取られている。いや、それよりも後ろに冒険者ギルドでギャラリーだった連中がジョッキやら串肉やら片手にぞろぞろ付いて来ていることに驚いた。やけに『走査(スイープ)』に人が大勢いると思ったらお前らかよ! 最前列のジェイが俺たちの会話を伝言ゲームのように後ろに伝えているらしい。それ、大丈夫か? なんかだんだん内容が変わっていって最後とんでもない話になってないか? 不安しかないな……。


冒険者章(ドッグタグ)が必要ないっていうのか!?」


 あー、その辺は俺も社会の仕組みについて勉強不足な部分があるからまだ断言は出来ないんだよな。


「それ、なんのために必要なんだ? 受けたい依頼があるのか? 商業ギルドの依頼じゃダメなのか? 冒険者ギルドに首輪付けられて飼われるのって不自由じゃないのか? そもそも俺は相手が誰でも素材さえ買ってもらえれば困らんと思ってるが?」


 ライズとパーティーメンバーと話を聞いていたジェイも絶句している。後ろの方から「何て言ってんだ!」と催促の声が聞こえる。


「俺は狩人でいいよ」


 商業ギルドに着いた。


 急げ! お風呂屋さんが閉まっちゃうでしょ!


 商業ギルド前にたむろっていた商人たちが、突然押し寄せる人波に襲撃か! と驚いて蜘蛛の子を散らすように道を開けてくれた。すまんな! 俺には時間がないんだ!


 すいません、すいませんと手刀で空を切りながら進んで行く。


 すると外の騒ぎに気が付いたギルド職員らしい人が出てきた。

 が! 押し寄せる集団に驚いてヘタり込んでしまった。しかし、俺に彼を気遣ってやる時間は無い!


「突然すいません、私は狩猟を生業(なりわい)にしている者で名をロックといいます。このような汚い(なり)で突然押しかけて申し訳ありません。後ろにいる冒険者たちはただの野次馬で危険はないのでご安心ください。ちょっとこちらをご覧いただきたいのですが、草原狼(グラスウルフ)の素材の逸品(いっぴん)になります。素材はこの毛皮の(ぬし)の分が全て揃った状態です」


 俺は魔石と牙を取り出して見せた。


「先ほども申し上げました通り、私の本業は狩猟です。年齢のこともあり、まだ冒険者登録もしていません。ちょっとそのことであちらと齟齬(そご)がありまして。もしご興味があればこちらの商品を商業ギルドで買い取っていただけないかと思った次第です。いかがでしょうか?」


 一気に(まく)し立てた。

 お前も商人なら一度で理解しろ、チャンスを逃すなよ……もう一押しするか。


「ああ、そういえばこの辺りには商人の方がたくさんいらっしゃいますね。公共の場所ならどなたとでも商売の話ができそうですねぇ」


 にっこり。


 どっちかと言うとそっちの方がいいかもしれんな? それと屋台とか市に出店する規約が知りたいな。


 脇にどいて事の成り行きを見守っていた商人の中でも目ざとい連中がズイっと身を乗り出したのが見えた。ゆっくりと周りを見渡してそいう連中とわざと目線を合わせてやる。


「た、ただいま担当の者を呼んで参ります。あの、あの、すぐです! すぐに参りますので! ああ、そうだ! 裏にお回りください! 搬入口がありますので! そちらで!」


 そう言うとすごい勢いで中に戻っていった。おお~ どこかのシゴデキ君とは違って本当のシゴデキ若者かもしれない。そういえばさっきの冒険者ギルドの可愛らしいおねえさん、ぜんぜん仲良くなれなかったなぁ。こういうのってだいたいそのまま担当になってくれて「こらっ、おねえさんに心配ばかり掛けちゃダメなんだぞ」「てへっ」っていうまでが台本(シナリオ)なんじゃないのか? なんでまた汚い棒になっちまったんだよ。やっぱりこれ売れないクソゲーなんじゃないか? やっと出てきたまともな女子展開だと思ったのに名前も聞く前に汚い野郎とおっさんしか出て来ないとかふざけんなよ! 風呂展開まだなのかよ……


 裏口に急ごうとライズに声を掛けるために振り返ると、全員がぽかーんと俺を見ていた。


「な、なんだ? どうした?」


 みんなを代表するようにジェイが声を絞り出す。

「いや、お前なに(もん)だよ。よくもそんなにペラペラと」


「そんなことどうでもいい! ライズ! 急げ! 裏だ!」 


 俺の異世界転生生活一日目が長すぎて気が遠くなりかけながら裏の搬入口に到着。商人の馬車が建物に直接乗り付けられるようなっていて、それぞれ横が見えないように壁で仕切られている。入りきらない馬車は待機列に並んでいる。


 ほほう、なるほどね。商業ギルドの裏はこうなってるのか。冒険者ギルドでいう解体所の受付みたいなもんか。ここから商材載せた馬車ごと入って商談できるようになってるんだな。グランデールの『恵みの森』とフロンティアの『黒の森』から入ってくる素材の集積所じゃないか。グランデールの冒険者からの仕入れが無いからほとんどフロンティアからの仕入れって感じなんだろうか。あとはやっぱりグランデールに対する輸出入の商売人っていうよりは素材を仕入れるついでにグランデールに商品を(おろ)してるって感じか? グランデールの冒険者が商人ギルドに素材を卸してないってことは、付け入る隙がありそうな気がするが……


 あとからゾロゾロと付いて来た冒険者も「こーなってたんだー」とか言ってる。来た事ない冒険者もけっこういるんだな。でもそいつは商人の護衛依頼とか出来ない低級冒険者だな。もっと(こころざし)を高く持て! あともうちょっと清潔にしろ!


 これ以上は中に入れないとわかった冒険者たちがライズに、広場で待ってるから後で絶対に報告に来いとか言ってる。ライズはライズで「それ、俺たちに良いことあるのかよ」とか言い返してる。いいぞ、ライズ。情報ってのは高く売れるところに売るんだ。見極めなさい。「メシ奢る」だの「酒奢る」だの言われてるな。まぁ何事も勉強だな。


 さあ! 商業ギルドに殴り込みだ!

 速攻で交渉まとめてやるぜ!


 俺の今日中の風呂のためにっ!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ