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輪廻がイヤなら異世界転生。底辺職の先行斥候だけど『出納』スキルで好き勝手に生きてやる!  作者: 秋乃せつな
第6章 DAY6~7

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第133話 ほうれんそう

 ウォーカーが来たけど俺は徹夜明けで寝落ち寸前だった。ダメだ。俺ってばまだ身体が子供だったんだ。痩せてて基礎体力も低いんだよね。しかもさっき朝ごはん食べて余計に睡魔が。


「あー、ウォーカーさん、おはよーございます」


 ウォーカーが脱力した顔で俺のことを見て立ち尽くしている。どうした?


「あー、うん。おはよう。眠そうだな。まぁ、子供だしな。しかし、お前なんでまたそんな恰好なんだよ。やっぱりお前、そうなのか?」


 『そう』ってなんだよー。あー、メイド服か。また着てること忘れてた。


「いや、オルカも見てくださいよ。潜入する時に二人で着替えたんですよ。これだとぜんぜん怪しまれなくて自由に動けて便利だったんです。しかも奴隷紋も契約紋も無いのに誰も気が付かなくて笑いをこらえるのが大変でしたよ」


 って言ったらライオネルが「ああっ!ホントだ!」っていう感じに目を見開いた。それをウォーカーが見逃すはずもなく、ライオネルに声を掛ける。


「そうなのか?」


 ライオネルが観念したようにがっくりとうなだれながら声を絞り出す。


「はい。暗かったこともありますが、まったく気になりませんでした」


 到着した馬車からバーズが降りてこっちに歩いてくるのが見える。ライオネルは良いヤツだから少し助けてやろう。


「現場では誰一人として気付きませんでしたからね。まさか子供の女中が暗殺者だとは思わないでしょう。それに、たぶんデミトリーの前に三男のドストエルが死んでますよね? それだとドストエルの支配下だった者は奴隷紋も消えていたはずですから」


 言いにくそうにライオネルが口を挟む。


「あのーですね、ドストエルはそちらのサリア様が倒しました」


 ぽやぁっとしたサリアが俺にもたれかかって半分寝ていた。


「んん~。わたしがなぁにぃ?」


「はい、タイミング的にはロック様がデミトリーを倒す直前です。サリア様が電撃で倒した者の中にドストエルも含まれております」


 話の途中でサリアはもう俺の右膝を枕にして寝ていた。サリアが電撃で倒したのって返り血を浴びてパニックになって逃げようとしてた奴らだよな。あの情けない連中の中にいたのか。到着したバーズに挨拶をすると荒れた庭とサリアを見て首を振っていた。


「範囲攻撃魔法か。凄まじい破壊力だな。さて、こっちの戦功第一はデミトリーを討ったロック、戦功第二は大魔法で攪乱(かくらん)してドストエルも討ったサリアだな」


 向かいのソファーに座りながらウォーカーがやれやれといった感じで俺を見ている。


「しっかしまぁ、本当にデミトリーを討ってしまうとはな。しかもドストエルも一緒にか」


 俺の力だけじゃないからなぁ。ドストエルのことはぜんぜん気にしてなかったから本当に偶然だし。


「いや、でもバーズさんが敵を引きつけてくれてたお陰ですよ。潜入の手はずも、手段も全部バーズさんに着いて行っただけですから。それに、そもそもこっちの戦力ってキュロスさんも入れて四人だけですから誰が一位とか二位って話でも無いと思うんですよね」


 ウォーカーがでっかいため息をつきながら独り言のように言う。


「そうなんだよなぁ。お前ら四人だけで本当にやっちまうんだもんなぁ。しかもほとんど子供だけじゃないか。だけどなぁ、そもそもお前がこれをやると言い出していないとこうはなっとらんのだ。戦功っていうものはな、これはもうそういうもんだ。だが、もちろんキュロスも戦功モノだ。もっと言えばオーサーからも報告を受けていてだな、あっちでも元ゲットーファミリーの奴らがいなかったら裏を破られて危なかっただろうってな」


「そうみたいですね。まあ、役に立ったのなら良かったですね」


 そういえばあいつら、今どこで何してるんだろうという疑問にはバーズが答えてくれた。


「俺が向こうに着いた時はほぼ勝敗は決まっていてな。裏が危ないと聞いて駆け付けた時には出発前にうるさかった連中がだいぶ役に立っていたぞ」


 バリウスとかスティングあたりかな。バーズが続ける。


「怪我人も死人も出ていたからな。希望者以外はオーサーの敷地のテントを救護所にして治療と休憩をさせている」


「え、いいんですかそんなに甘えちゃって。帰れって言って追い出していいですよ」


 ウォーカーが「うわぁ」って顔をしながら俺を見た。


「お前なぁ、がんばった部下は(いた)わってやらないとダメだぞ」


「いやいや、あいつら元ゲットーファミリーのクズどもですからね? そもそも部下じゃないですよ。奴隷ですから」


 そう言うと「それはそうなんだよなー」とか言ってる。でしょ? 「でもまぁクランとして請け負った仕事なのであとで貰うものは貰いますから」と、言うことはしっかり言っておいた。というかあいつらのことはどうでもいいんですよ。


「そんなことよりですね、こっちの話です。まず、守備隊の第三部隊は今回のデミトリーの屋敷の争乱における功労賞ものの働きをしています。デミトリーの死後、速やかに私に指揮権を譲渡して、(のち)に的確に戦後処理をしました。今もそうです。過程に多少の問題があったかもしれませんが、結果として私とオルカをこの野戦指揮所に案内したことにより解決も早まったということはいつどこでも証言しますよ」


 ウォーカーがホッとした顔でライオネルの方を向いた。


「だってよ。良かったな」


 ライオネルは俺に向かって目礼をしただけだったがなかなか頭を上げなかった。歩哨に就いているライオネルの部下にも俺たちの話し声は聞こえている。彼らは後ろ姿でしか見えていないが明らかに肩の位置が下がったのがわかった。これで最低でもお(とが)めナシ確定だ。


「それとですね、この屋敷で奴隷として使役(しえき)されていた使用人の方々に関してです。特にカローネというメイドの少女に助けられました。あの混乱の中、俺たちにこのメイド服の着付けをしてくれて、奴隷の身でありながらデミトリーの居場所に関して重要な示唆(しさ)を与えてくれました。彼女の協力がなければデミトリーを倒すまでもっと時間を要したかもしれません。民間人ですが戦功に値する働きです。その後、元奴隷の使用人の方々は、今もですが、屋敷の維持、守備隊への食事の提供など、非常に献身的に活躍されています。今後のことなのですが、彼ら各人の希望を聞いて身の振り方など優遇していただければと思います。それでですね、その希望を聞く際にですね、俺って壁の中に商会とか屋敷がもらえるんですよね?」


 長々と言いたいことをしゃべりまくってウォーカーに確認を入れる。


「うむ。そうだ。それは約束だからな。商会に関してはオーサーと話し合うのがいいだろう。屋敷と商会本部の方はこれから候補を出していこう。デミトリーは完全失脚だ。カルチェンコ家の終焉(しゅうえん)と言ってもいい。俺としてはカルチェンコ家お取り潰しまで持って行くつもりでいる。長男が実質的には後を継いでいるからな。そこまで完全に潰せない可能性はあるが、デミトリーがギルド長官になった五年前からの不正に関しては間違い無く取り締まれるだろう。グランデールにおけるカルチェンコ家の財産は全て俺とオーサーで押さえる。バーランド伯爵家にも文句は言わせん。だから相当な不動産などの所有財産の整理があるからな。そこから適当なものを割り当てることになるだろう」


 そうだよね。というわけで俺の欲しいものだ。


「商会店舗、商会本部、クラン本部、屋敷、それらを頂いた後、管理維持に人が必要になります。解放された人たちに今後の身の振り方の希望を聞く際に私のところも候補として伝えていただけますか。私以外のところを希望した場合も、彼ら彼女らには便宜を図ってやってください」


 ウォーカーは、ここの整理で当分世話になるのでその間も給金などきちんと出すこと、その後の進路を優遇することも約束してくれた。ちなみに、奴隷じゃなかった女中や執事は会っていないのでわからん。そっちは知らないし、不要だと伝えておいた。


「あー、あとですね、デミトリーが持ってた約定書は全部俺が持っているので、必要に応じて声を掛けてください。ということで今日はそろそろ休ませてもらってもいいですか?」


 約定書を俺が全部持っているというところに違和感を感じまくっているみたいだが、サリアとオルカが完全に寝落ちているので、さすがに今日はもうウォーカーが乗って来た馬車をそのまま使って帰って休めということになった。元ゲットーファミリーの奴らに『良くやった。しばらく休んでろ。近い内に顔を出しに行く』という伝言を頼んだ。




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