第127話 事後報告
オルカと共に屋敷に向かって全力疾走! 火球はいつの間にか消火していた。急げ! 後ろから第三部隊の連中も何人か来ている。屋敷内部にデミトリー死亡、全面降伏を周知に来たのかな。
俺は、バーズを探すために『走査』を掛けながら正面玄関から飛び込んで一気に三階まで駆け上がる。まだ三階でやりあってる気配がある。バーズ相手にこの時間までやってるのか? 相手も大したものだな。
三階に飛び出すと大きい声で呼び掛ける。
「デミトリーは死んだぞ! お前らの負けだ! 大人しく降伏しろ!」
バーズと切り結んでた獣人の男が一瞬のバックステップで下がる。向こう側には傷を負った冒険者達が何人も見える。こちらに背を向けているバーズもトントンと下がって来たけど構えは解かないまま声を掛けてくる。殺さないように手加減していたのかな?
「デミトリーを殺ったのか。どこにいた?」
「最初に見た指揮所の天幕の中にいました」
「そうか。よくやった」
おー、バーズに褒められた。嬉しいねぇ。
「ありがとうございます。オーサーさんの方にも一報を入れさせていますが、どうなるかわかりません。バーズさんはそちらに行ってください」
そこに俺たちの会話を聞いていたのだろう、相手の方が先に声を掛けてきた。
「デミトリーが死んだ? 殺しただと? おい、小娘、そりゃ本当か」
だーれが小娘だこの野郎! バーズがチラっと俺を見てビクッっとなった。え?
あー! 俺! メイド服着てる! ち、違うんだ、これには訳が!
「ちょっとこれには訳があって! この服だと怪しまれないで動けるんですよ!」
対戦相手がイラ立った声を出す。
「おい! 俺が聞いてんだ! 答えろ!」
「うるせーな! ぶっ殺すぞてめー!」
バーズが俺に手を翳して静止してきた。いけね、普通にブチ切れちゃった。向こうで「なんて口の悪いメイドだ」って言ってる。すると正規兵がデミトリー死亡、第一、第二部隊拘束を口々に叫びながら屋敷を走り回っているのが聞こえてきた。バーズと対峙していた冒険者達から殺気が抜けていく。
「マジか。こりゃ、こっちの負けだな。俺らはこのまま逃してもらえるか」
今度はバーズが答える前に俺が前に出ながら答える。
「はぁ? なに虫が良いこと言ってんだ。寝言は寝て言えよ。お前らはこのまま捕らえられたら反逆罪で死刑に決まってるだろ。逃がす? なーんで俺がそんなことしてやらなきゃならないんだよ」
オルカが二刀流メイドのまま俺の横に並ぶ。奥にいる怪我人が反転して逃げる気配を感じる。
「ストーンウォール」
右の手のひらを廊下の先に向けながら詠唱。冒険者たちのすぐ後ろの廊下を塞ぐ大きさの石が現れて退路を断つ。重すぎて廊下がミシミシいってる。床、抜けるなよ? オルカが今にも飛び掛かって行きそうだ。冒険者たちは降参したところで死刑になるだけだ。それがわかっているから降参などするわけがない。代替案が必要だ。
「お前らの命が助かる方法がひとつだけあるから親切な俺様が教えてやろう」
どう見ても怪しさしかないメイド服を着た美少女の言葉だ! ありがたく拝聴しやがれ。
「俺の奴隷になれ。そうしたら冒険者として飼ってやる。あー、ちなみにな、ゲットーファミリーは今日、俺が潰して乗っ取った。死ななかった奴の二百人以上が俺の奴隷になった。そいつらを使ってクランを立ち上げる。死にたくない奴はそこに入れてやる。『流星群』」
再び手のひらを向けて詠唱。俺の目の前から冒険者たちの目の前まで、無数の握りこぶし大の岩石が時速百五十キロでぶっ飛んでは消える。次に廊下の天井からシャワーのように落として床に当たる前に『収納』する。ひとつひとつの石がブオンブオンと唸りを上げる。手のひらを下ろすのと同時に停止。
「ちなみにこの速さでお前らの身体に当たる直前の距離から出せるからな。頭の後ろと股間をまず守っておけよ。あー、この大きさなら当たっても大丈夫とか思うのか? 『彗星』」
次の瞬間、俺の目の前に出した高さ二メートルの岩石が奴らに向かって時速三百キロで三メートルだけ進んで消えた。これ以上進めると当たっちゃうし床を削るからね。岩石が消えたあとに風が吹いて冒険者たちの髪を揺らした。
「これ一個でもいいけど、どっちがいい?」
バーズと切り結んでいた獣人が長剣を俺に向かって放り投げると床にどっかりと座り込んだ。それを見て後ろにいた奴らも武器をこっちに投げて寄越して座り込んだ。長剣を放り投げた獣人戦士が独り言のように話しかけてきた。
「なんてこった。デミトリーを殺したってのはひょっとしてお前なのか? こんな女の子ひとりに負けたのか。信じられねぇがすげぇもん見せられちまったからなぁ。あ? なんだよ、契約紋が消えてるじゃねーかよ」
デミトリーと直接契約したのかわからないけど、相手が死んでしまったようだ。でもそんなことより俺はひとつだけ言いたいことがあるのだ。
「おい、お前。とりあえずひとつだけ訂正させろ。俺は男だ」
奴らの全員が「は? 何言ってんだお前」って顔をした。これ以上は何を言っても時間の無駄だから放置だ。バーズが走り回っている兵士に拘束具を持って来るように声を掛けていた。
「バーズさん、ここはもう大丈夫です。行ってください」
「そのようだな。お前たち、よくやった」
そう言って俺とオルカの頭を撫でようとしたがカチューシャとヘアスタイルが崩れるのを気にしたのか、途中で手を止めると肩をポンポンとするだけで部屋の中に駆け込んで行った。階段で降りるより飛び降りた方が早いもんね。
兵士が拘束具を持って来るまでに武器だけではなく、防具も外させて完全武装解除させた。治療薬を持っている者には治療も許可する。契約書を持っている奴はそれも出させた。デミトリーの悪事を暴くための証拠のひとつだ。ついでに現金も出させた。奴隷にはもう必要ない。武装解除させたらオルカに見張らせて、一番近くの部屋に入る。入った瞬間に手あたり次第『収納』して部屋の中を空っぽにする。冒険者たちを空っぽの部屋に入れ終わったところで兵士が拘束具を持って来たので部屋の中で拘束させる。部屋に入った瞬間、みんなポカンとしていたけど俺は知らんで通す。
廊下に誰もいなくなった瞬間に武器防具を『収納』。この場所で『収納』したという意識付けをして『収納』したらすべてのアイテムにその情報がラベリングされていた。これでこいつらに装備を返すのが楽になった。
槍を持った兵士二名に見張りをさせて俺は仕事に戻る! まずは一階だ!
「オルカ! 一階の食堂だ! 奴隷の人たちに会って話を聞くぞ!」




