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輪廻がイヤなら異世界転生。底辺職の先行斥候だけど『出納』スキルで好き勝手に生きてやる!  作者: 秋乃せつな
第6章 DAY6~7

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第119話 エキスキューショナー

 ゲットーファミリーの本部建物は地上二階、地下一階のかなり大きい建物だ。一階部分は実務に割り振られ、地下は倉庫や監禁など、大きな声では言えないようなことに使われていたみたいだ。二階部分が個室や武器、金銭的価値のある物の倉庫、作戦室や応接室に使われていた。ベッドが置いてある部屋もひとつやふたつではない。誓約が解けた給仕の女性や奴隷だった女性はここで共同生活を送ることになる。良い思い出などないこの場所だからすぐにでも別の場所を手配しないとだなぁ。


 ボスの部屋ということで事務応接、私室、寝室が用意されていた。俺、頼んでないんだけどね。ここに住むわけでもないし。何も言わなかったのがいけないのか中の整理を任せていた女性陣が優先的に用意してくれたんだよね。せっかくなので用意していただいた部屋でみんなの夕食の用意をした。貯めておいたパンと焼き立て肉を生木のまな板に載せる。バリエーションは少ないが量だけはたっぷりあるぞ! ワインとエールと果実水もある。給仕の女性にはパンとボア肉の塊を渡す。隠して自分たちだけで食べるように言い含めたついでにパーティーメンバーを呼んでもらった。


「あら、美味しそうな匂いじゃない。よくこんなもの用意できたわね」


 サリアよ、あまり突っ込むな。バーズがいるんだ。空気読めよ。


「ほう? ゲットーではボア肉なんか食ってるのか? ずいぶんと贅沢してるな」


 ドキーッ! 見た目か? 匂いか! 一発でボアってバレた! なんとか誤魔化せ!


「うーん、やっぱりスラムを仕切るだけはあるってことですかね」


 まあ俺がボアの串肉屋をやってるし何言っても説得力無いわ。このタイミングでさっきの給仕の女性たちが何人かで食べ物を持って来てくれた。


「ロック様のご指示を受けまして食糧庫を開けさせていただきました。私どものためにありがとうございます。こちら、ご用意したものをお持ちいたしました」


 なんというナイスタイミング! 誤魔化せ!


「気を使ってもらってこんなにありがとうございます! 先ほどいただいた分でも充分なほどです。これ以降はこの建物にある食料はすべて皆さんで使ってください。足りなくなる前に誰でもいいから補充の指示をくださいね。食料以外にも必要なものがあるでしょうから遠慮なく言ってください。今後はみなさんの中で希望があれば家政婦、女中として働いていただける環境がご用意できるかもしれません。それも今夜の結果次第なのでまだ確約できませんが、どうか希望は捨てずにいてください」


 そう言うと女性たちは滂沱(ぼうだ)の涙を流しながら感謝の言葉を繰り返した。まだ情緒(じょうちょ)が不安定なんだろうなぁ。この建物内にはかなりの人数の女性がいる。ろくでもない理由で拘束されていた人がほとんどだ。なんとかせんとなぁ。女性を(なだ)めて見送ってから振り返るとみんなが俺を見ていた。


「あんた。ほんとに一体何者なのよ。ちょっと一生着いてくからその先もちゃんと見せなさいよね」


「どうなんでしょうね? 解放感でちょっと大げさになってる部分も大きいとは思うんですけどね」


 なんかさりげなくとんでもないこと言われた気がするが気のせいか。俺はこの先の私利私欲でしか考えてないから感謝されてもピンと来ないんだよなぁ。もちろん、騙すつもりも使役するつもりもないから罪悪感を感じることもないけどな。さっき言ったことだって特別なことなんかなかったろ?


「それと、今夜をちゃんと乗り切らないと全てが泡と消えるのはホントですからね。いくら今、偉そうなこと言ってもまだ何もしてないのと同じだし、嘘ついてるようなもんですよ」


「っく! 年下のくせに生意気で冷静正論すぎてカッコいいじゃないのよ。さすがわたしの男ね」


 サリアがなにかぶつぶつ言ってるけど早口の小さい声で何言ってるかわからん。まぁ、怒ってるわけではないから放っておこう。さて、メシを


「うにゃー!」


「うわぁああ!」


 キュロスが飛び乗ってきた! うおおおお! 身体強化発動! ギリギリ間に合った! これ、前にもあったよな!


「男の子エライ!」


 そうそう、そんな感じのやつだ! なんの時だっけか? 俺からするとデッカいキュロスが正面から俺の腹を足でカニばさみして頭を抱えて髪をわしゃわしゃしてくるのを必死に抱っこで支える! キュロスがお姉さんっぽくなったってのはウソだったかー! もう顔面が女の子の大事な柔らかいところに埋もれ、ないんだよ! 鎧! 鎧!


「きゅ、キュロスさん、これやってくれるのは鎧の無い時にして! それなら二十四時間いつでも受け付けますから!」


 言い終えたらキュロスがすぐに謝りながら開放してくれた。顔面が痛てー。オルカとバーズはもうメシを食い始めていた。いいんだよー。オルカには『許可はいらない、俺とオルカの仲だ』って言ってあるからねー。


「とりあえず冷める前に食べましょう」


 女性たちが食料庫から出してくれたスープに蒸し野菜とチーズ、ハム、ベーコンもいい感じだった。焼いた肉はそちらでどうぞと返したんだけどね。この部屋はボス部屋で、いろいろ変なものがあったんだけど、ガンガン『収納』してやったからけっこう広い。


 出撃前にパーティーメンバーだけでゆっくり食事と休憩が出来てよかった。急遽結成のパーティーの初陣が敵の本陣への暗殺行(あんさつこう)という超ハードコアモードなんだよね。少しでもコミュニケーションが取れたのは大きいと思う。


 バーズとも話したけど、やっぱり守りは固いだろうから、実際にはデミトリーだけ殺して終わりっていうのは難しいだろうなってことだった。そりゃそうだよね。オーサー邸への攻撃の成否報告を待っているだろうしね。向こうも首脳陣で集まってるわけだし、防御も固めてるよな。


 状況次第だけど、こっちをド派手にして、暗殺はダメになるかもしれないけど、オーサー邸への攻撃部隊の一部を引き寄せるのもアリなんじゃないかって話にもなった。戦力が分散すればトータルではこっちが有利になる。うん、それもいいよね? あとはやっぱり出たところ勝負だな。初見の暗殺なんて聞いたことないよね。下手したらただの特攻だもの。ウォーカーが心配するのもわかる。ただね、こっちにはチート持ちがいるのでね。ふふふ。この世界の誰もできないことだってやれちゃうのさ。


 五年前の俺が戦災孤児になって記憶さえ失くして奴隷落ちしたのも全部デミトリーが悪いってことにしよう。


 ほーら、俺の中のドス黒いものが首を持ち上げてきたぞ。俺が憎む奴隷制度への復讐だと思えば楽しくなってきた。訳あってデミトリーの屋敷は壊したくないんだけどね。デミトリーとその仲間にはこの街の別の権力者達から死刑が宣告されているのも同然だ。


 執行人は俺たちだ。




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