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輪廻がイヤなら異世界転生。底辺職の先行斥候だけど『出納』スキルで好き勝手に生きてやる!  作者: 秋乃せつな
第6章 DAY6~7

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第114話 冒険者になりたいか

 あっという間に『夕暮れの泉亭』に到着。この馬車、変だ。ぜんぜん揺れないし、外から見た時より中が異様に広い。


 キュロスとサリアが堂々とスマートに馬車から降りるのに対して、俺は無意識に御者に頭を下げながらお礼を言ってしまう。でもそれはもはや俺のアイデンティティだからしょうがない。だが、俺は見た! オルカが俺を真似て「アリガトウゴザイマシタ」を誇らしげに言った時に完璧御者の紳士の口元がわずかに綻ぶのを! おっさんキラーは健在だった。最後に御者が「御武運を」と言ってくれた。なんかあの人にそう言われると自分が物語の主人公になったような気になるなぁ。なんかやれそう。


 今夜のレストランバーは閉店だ。店内では兵たちが防戦の準備をしたり休憩したりしている。中庭では野戦テントが張られ『夕暮れの泉亭』も厳戒態勢になっている。そういう空気を察してか、馬車の車窓からは街を出歩く人も道端で転がってる奴も見かけなかった。


 宿には馬車が何台も停まっている。ウォーカーがここにいるのだろう。ウォーカーも自宅は壁の中だ。早く戻りたいだろうから急いで会わなければ。いつもの用心棒(バウンサー)が声を掛けてきて、そのまま上に行けと言う。ひとつ頷いて身体強化を使って三階まで外壁を駆け上がってテラスに降り立つ。後ろを振り返るまでもなくサリア含めて全員が付いて来ている。テラスにいる守備兵(ガーディアン)が俺たちの到着を部屋の中に声掛けしている。そのまま通されて部屋に入るといつものソファーにウォーカーが座っていた。今日は武装して帯剣している。初めて見るな。帯剣といっても手の届くところに無造作に立て掛けているだけだ。剣は両刃の直刀だろうが片手用にしては長い。盾もなんだそれは。歴戦の武具のくせに傷ひとつ無いじゃないか。


「よお、来たな。悪いな、部屋、借りている」


 ここは俺たちの部屋ということで割り当てられているが、一番外側に面している部屋なので出入りがしやすい。守りには向いていないが一時的なことなので使い勝手が良かったのだろう。


「ぜんぜん気にしません。どんな状況ですか」


 俺の言葉が届いていないのかウォーカーが俺の後ろを指さして困惑している。


「あれ? キュロスとサリア?」


 そうだけど? 武装が珍しいか。サリアがドヤりながら返事をする。


「そうなの。わたしたち身請けされてロックの女にされてしまったのよ」


 あー、そっちか。っていうか言い方!


「いや、そうだけどそうじゃないでしょ。ウォーカーさん、シェリルさんはまだです。すいません。もう少し掛かります」


「お、おう。え? あれぇ? だって、お前たちって千枚単位で、あれぇ?」


 なんかウォーカーが壊れ気味だな。疲れてるんだろうな。まぁ、いろいろ同時に起こってるからなぁ。


「ウォーカーさん、どこまで聞いてます?」


 ウォーカーがハっとして俺を見た。


「ちょっと信じられない話をいろいろだ! そろそろオーサーの私兵が案内のためにゲットーの事務所に着く頃だ。それで、だ。お前、単独でデミトリーのところに行くって話になってるのは本当なんだな」


「見つけたら()ります。それで案内を頼んだんですけど」


「なんでこんな子供が。ええとな、バーズを付ける!」


 え? 大丈夫なのかそれ。


「いいんですか? そちらの守りは」


「屋敷の方はな、私兵を数名置くが今回は何かあればそのまま放棄する。俺の家の者たちは既にここの別室に待機させてる。俺もここに詰める。オーサーのところに戦力を集中させなければならん。信頼している冒険者がいてな。フロンティアと森の現状調査を頼んでいたんだが、ちょうどさっき戻ったところだ。そっちはそっちで危機的状況だが彼らをオーサーのところに回した。『誓いの(つるぎ)』だ。名前ぐらいは聞いたことあるだろう。え? ない? マジで?」


 知らん。というか俺は鉄等級(アイアン・クラス)の『銀狼(ぎんろう)の牙』しか知らん! あとはジェイとマイクだ。


「俺、西地区に来てまだ一週間も経ってないし、冒険者ギルドはスラムに一回行っただけですから。こっちの冒険者事情は何も知らないんですよ」


「あー、そうだったな。お前と話してるとなんでも知ってるかと思ってしまうんだよな。お前の知識と行動の偏りはどうなってんだ? えーと、同じフロアに部屋を与えてるヤツらだ。これが終われば紹介する」


 あー、三階の部屋を貸し与えてるっていう有名なパーティーっていうやつか。ぜんぜん見かけないと思ってたけど出張してたのか。だけどそれって、ここがずいぶん手薄になるんじゃないのか。


「本来はこんな時のためにここに詰めさせていたんだけどな。オーサーが狙われたんじゃしょうがない。今回は向こうに冒険者が混ざってるんだろ? 普通の兵隊と違って冒険者はクセが酷いからな。同じ冒険者をあてがった方がいいだろう」


 そうかもね。さっきもそうだったけど、殺しのライセンスを発行してもらって一見必殺という条件じゃなきゃ俺もそっちには参戦したくない。この前のキュロス救出戦の時に痛感した。俺は正々堂々と戦うのは一対一の身体強化戦ぐらいしかない。あとは手練がいるとなると大量虐殺するしか勝ち筋が無い気がする。そういう意味では魔法使いと同じかな。


「わかりました。俺は単独じゃなくなりました。四人で行きます。バーズさん、よろしくお願いします」


 オーサーの隣に控えるバーズに挨拶する。なんだかんだ世話になってばっかりだな。


「隠密を考えていたんだがな。ロック、戦争でも始めるつもりか?」


 なーんでそうなるかなぁ。至って隠密で行きますよ。っていうかバーズも入れたら俺とオルカで斥候が三人のパーティーがなんでそうなるんだ? そう思ってバーズの視線を追うと……サリア?


「サリアさん、俺に何か言うことがあったりします?」


「なぁによぉ。なんにもないわよぉ。暗殺でしょ? あんたがチャチャっとヤればいいのよ。チャチャっと」


 まぁ、ね。それはそう。でもさ、俺って敵を知らないのはまだしも味方のこともわかってないというか。あー、そういうことか。魔法使いってのは対人戦では大量虐殺兵器なんだな。え? サリアが? えーと、とりあえず今後の流れは、


「オーサー邸への襲撃が始まった時点でデミトリー邸への侵入を開始します」


 先に仕掛けてこっちに兵を回されたらどうにもならない。


「それでいいだろう。オーサーが自衛に成功するだけでもこちらの勝ちだ。お前たちがデミトリーの暗殺を成功させるのは必須じゃない。それは覚えておけ。だいたいだな! なんでお前らみたいな子供と女の子にこんな危険なことさせなきゃならん! おかしいだろ!」


 お、出たな。時々出るウォーカーがまともなこと言うやつ。


「まーまー。俺も充分メリットがあると思ってやることなので!」


「あぁ、聞いている。行きがけの駄賃ぐらいでいいって言ったらしいじゃないか」


「いや、ちゃんといろいろ頼んでますよ? 商会とか、クランとか、なんでも持って帰っていいとか、税率とか、家とか」


 ウォーカーが胡散臭いものを見るような目で見ている。気付くなよ。


「なーんか怪しいなぁ。まぁいい。お前、オーサーとは握手しただけで契約も結んだことないんだよな? まったく、いい加減なんだか狡猾なんだかわからんな。とにかく全員無事で帰れよ。お前らに望むのはそれだけだ。戻ったら冒険者にしてやるから」


 冒険者になるのはまぁ別にどうでもいいけどそれは言わないでおこう。ってことで軽く頷くに留めた。


「では、行ってきます。馬車は不要です。走った方が目立たないし速そうなので」


 五人で窓からテラスに出るとそのまま飛び降りて走りだす。


 テラス利用が便利すぎて、もう二度と玄関を使うことが無くなりそうな嫌な予感しかしない……。



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