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翌日、いよいよ明日、元の世界へ帰る。魔界も楽しくて、ここの方がいいと思う点もある。だが、本来いるべき場所に帰らなければ。自分はここにいるべきじゃない。元の家族に戻らなければ。そして、一緒に住まなければ。
貴仁はいつものように起きた。すでにみんなは起きていて、寝室にはいない。貴仁は1階に向かった。
貴仁がダイニングに来ると、4人ともいる。
「おはよう」
「おはよう」
いつも通り挨拶をしているが、それも今日で最後だ。明日の早朝、元の世界に戻るからだ。
「いよいよ明日だね」
明は笑みを浮かべている。だが、本当は寂しい。もっと遊びたかったのに、もっと一緒にいたかったのに。もうすぐ貴仁は元の世界に戻ってしまう。
「うん」
「いろいろあったけれど、もうすぐお別れだね」
嶺亜は悲しんでいる。もっと一緒にいたかったようだ。だが、帰らなければならない。
「こんな世界があったなんて、驚いたでしょ?」
「うん。ここにいた事、忘れないよ」
確かにそうだ。住んでいる世界の他に、こんな世界があるなんて、知らなかった。いつごろからこの世界はあるんだろう。それだけではない。絵でしか見た事のない龍のような魔獣が目の前にいるからだ。これは素晴らしい体験だった。これは一生の思い出になるだろうな。
「そっか・・・」
と、明は貴仁の表情が気になった。何を考えているんだろう。
「どうしたの?」
「い、いや、何でもないよ」
貴仁は何やら言いたそうだ。一体何だろうか? お父さんやお母さんは元気にしているのか、聞きたかったんだろうか?
「ふーん・・・」
「どうしたんだい?」
貴仁は横を振り向いた。そこには紀夫がいる。紀夫も貴仁の表情が気になったようだ。
「本当に、お父さんとお母さんに会えるのかなって思って」
それを聞かれて、紀夫は戸惑った。本当の両親は今日の深夜、帰りの電車から家の最寄り駅で降りた所で、魔界に連れ去る予定だ。そして、偽の両親とすり替わる予定だ。判決はすでに決まっている。地獄流しだ。貴仁は本当の両親にもう会えないからだ。だが、その方が貴仁にとっては幸せだろうと言うのが私の判断だ。
「大丈夫だよ。いつも通りに生活してるよ。明日帰れるってのも知ってるよ」
「それはよかった」
貴仁はほっとした。もう両親に会えないだろうと思っていた。また会えると聞いて、安心した。これからは両親との時間を大切にしたいな。できれば、もう家から追い出さないでほしいな。
「だから、安心して帰ってもいいよ」
「わかった! 楽しみにしてるね」
貴仁は笑みを浮かべた。その表情を見ると、紀夫も笑顔になった。
「よかったよかった」
「お父さんお母さん、早く会いたいと思ってるよ」
紀夫は笑みを浮かべた。だが、その笑顔は偽りで、本当は偽の両親と会う事になる。その方が幸せだろう。
「追い出した事、反省してるのかな?」
「反省してると思うよ」
貴仁はほっとした。反省しているようだ。もう追い出さないと思っているようだ。もう追い出して、近隣住民に迷惑をかけるのはいけないからな。そのたびに、冷たい目で見られたくない。そう思ったんだろう。
「反省してるんだ・・・」
だが、貴仁は不安な表情になった。反省したとはいっても、またやることが何度もあった。もう反省なんて、意味をなさないんじゃないかな? いつやるんだろうと思ってしまう。
「どうしたの?」
「何度もこんな事あったんだから、またされるかもしれないと思って」
それを聞いて、紀夫は戸惑った。何度もこんな事があったのか。相当本物の両親は懲りないやつのようだな。よほど重い罪にすべきだな。
突然、紀夫は貴仁の肩を叩いた。貴仁は驚いた。
「今度は大丈夫だって」
「そうかな?」
貴仁は首をかしげた。信じられないようだ。何度もこんな事があったからだ。
「いい子になれば、きっと大丈夫だと思うよ」
「僕、いい子になるから。頑張るから。もうやめてほしいな」
さすがに先日の事は心に響いた。それを機に反省してほしいんだけどな。本当に反省するんだろうか?
「そうなんだ」
「とりあえず、明日帰れるからね」
瑠奈は笑顔を見せ、貴仁を安心させた。もう両親の事で心配しないでほしい。
「わかった」
貴仁は椅子に座り、朝食を食べ始めた。2人は幸せそうにその様子を見ている。
「さて、今日も勉強を頑張らないと」
「頑張ってね!」
瑠奈は貴仁を応援している。きっと両親も、その頑張りを認めてくれるんだろうな。
「頑張ってるわね」
「まさかここまで反省しているとは」
紀夫も感心していた。まさかここまで頑張るとは。
「これは両親も納得するだろうな。まぁ、本当の両親じゃないんだけどな」
「そうだね」
2人は笑みを浮かべていた。だが、その裏には、本当の両親とすり替える今夜の事を思い浮かべている。
ここは現実世界。夜になり、9時になった。そろそろ飲みに行く時間だ。名津子は楽しみにしていた。今日は週末の飲み会だ。とてもの楽しみだな。
「そろそろ時間だ」
「貴仁ー、行ってくるからね」
「はーい!」
そして、名津子は居酒屋の最寄り駅に出かけていった。その帰りに、とんでもない事になると知らずに。
「フッフッフ・・・」
その様子を、偽の貴仁は笑みを浮かべながら見ていた。任務は達成した。あとは連れ去り、本物の貴仁と入れ替わるのを待つだけだ。
名津子は居酒屋の最寄り駅で待っていた。今日はこの駅の近くの居酒屋で飲む予定だ。すでに優太郎は予約をしてある。あとは優太郎を待つだけだ。早く来ないかな?
「もうすぐかな?」
と、そこに優太郎が現れた。優太郎は行った時に着ていたスーツを着ている。一目見ただけで、名津子はそれが優太郎だとわかった。
「あなたー」
「おう!」
その声に、優太郎は反応した。約束通り来てくれたようだ。
「今日は飲もうね」
「うん」
優太郎は笑みを浮かべている。いろいろあったけれど、今週も乗り越えた。今日はその疲れを取るために、ここで飲もう。
「今週はどうだった?」
「順調に仕事をこなせたよ」
名津子も笑みを浮かべた。それはよかった。今週末はしっかりと疲れを取ろう。
「そう。よかったね」
しばらく歩くと、その店の前にやって来た。その店は焼き鳥屋で、庶民的な雰囲気だ。
「さて、ここだったな」
「うん」
店の前には店員がいる。この店員に予約していた人だと言わなければならない。
「すいませーん、2名で予約しました、島田ですけど」
「はーい」
2人は居酒屋に入った。予約していた島田夫妻だとわかって、店員はカウンターに案内した。
「こちらでございます」
「ありがとうございます」
2人はカウンターに座った。
「本日はご来店ありがとうございます。お飲み物はどうなさいますか?」
「生中で! あと、ねぎまたれとレバーのたれで」
「黒霧島のロックで! それと、つくねの塩とささみの塩で」
2人は注文を店員に伝えた。毎回毎回つまみの注文は違うが、最初の一杯はいつもこれだ。
「かしこまりました!」
名津子は貴仁を思い浮かべていた。行方不明になって大騒ぎだったけれど、無事に帰ってきた。それだけでも嬉しい。あれから反省している。みんなから注意された。もう追い出すのはやめよう。
「貴仁、どうなるかなと思ったけど、帰ってきてよかったね」
「ほんとほんと」
と、そこに店員がやって来た。注文の品を持ってきたようだ。
「おまたせしました。生中と、黒霧島のロックです」
「はーい、ありがとうございます」
優太郎はジョッキを、名津子はグラスを手に取り、乾杯の準備をした。
「カンパーイ!」
「カンパーイ! まぁ、いろいろあったけど、飲もう!」
「そうだね」
2人は注文した酒を飲んだ。とてもおいしいな。1週間頑張った分、お酒がおいしく思える。
「これからも、貴仁に愛情を注いでいこうね」
「うん」
しばらくすると、、店員がやって来た。注文したつまみが出来上がったようだ。
「お待たせしました、ねぎまのたれ、レバーのたれ、つくねの塩、ささみの塩です」
「ありがとうございます」
優太郎はねぎまのたれをほおばった。とてもおいしい。お酒によく合う。
「これからまた、頑張っていこうじゃん!」
「うんうん! もうこんなひどい事をしないと誓おう!」
「ああ」
その後、2人とも4合飲んだ。すっかり酔っぱらってしまった。
2人は帰りの地下鉄に乗っていた。今日の終電で、そんなに混んでいない。とても静かな車内だ。これがいつもの終電の風景だ。2人はその雰囲気に慣れていた。それに、この風景が好きだ。まるで自分だけの貸し切りのようで、とても素晴らしい。
「今日はいろいろ飲んだなー」
「ほんとほんと」
優太郎は酔っていて、ぐったりとしている。だが、乗り過ごしには気を付けないと。もう帰る手段がタクシーしかないのだから。
「やっぱり週1の飲み会はやめられないなー」
「そうだね」
と、名津子は何かを感じた。何かが飛んでいく。あれは龍だろうか? まさか、そんな事はない。龍はこの世に存在しない。想像上の生き物だ。
「あれっ・・・」
「どうしたの?」
優太郎は名津子の表情が気になった。一体どうしたんだろう。何か見たんだろうか?
「いや、何でもないよ。なんか変なのが見えたんで」
「変なの?」
「龍が」
それを聞いて、優太郎は驚いた。龍なんて、この世にいないだろう。想像上の生き物だろう。どうしたんだ? 酔っているから変なのが見えるんだろう。
「そんなの空想だけだよ。酔ってて変なのが見えるんじゃない?」
「そ、そうだよね」
名津子は少し笑みを浮かべた。確かにそうだ。酔っていると、変なのが見えるって、よくある事だ。今回もそうだろう。
そろそろ降りる駅が近づいてきた。2人はゆっくりとロングシートを立った。
「さて、そろそろ駅だ。降りよう」
「うん」
2人はいつものように最寄り駅で降りた。深夜でも暑い。今日も熱帯夜になりそうだ。冷房をつけたいけれど、つけたら風邪になるかもしれない。どうにかできないだろうか?
2人は改札を出ようとした。その時、辺りが暗くなった。何が起こったんだろうか? 停電だろうか?
「えっ!?」
その時、1匹の龍があっという間に2人を連れ去った。まさかこんな事が起こるとは。突然の出来事に、2人は驚いている。
「キャッ!」
「な、何だ?」
あっという間に、龍は2人と一緒に異空間に消えていった。だが、停電していて、誰もそれを知らなかった。
再び駅の照明が点灯すると、そこには優太郎と名津子がいる。だが、2人は魔界が用意した偽物だ。本物の優太郎と名津子は魔界に連れ去られた。
「大丈夫ですかー?」
「は、はい。大丈夫です」
2人はまるで本物のようにふるまった。
「ご迷惑をおかけいたしました」
「いえいえ」
そして、2人は家に向かっていった。駅員は思っていた。今さっきの停電は何だったんだろうか?




