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Families  作者: 口羽龍
前編 2つの世界
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8/11

8

 翌日、いよいよ明日、元の世界へ帰る。魔界も楽しくて、ここの方がいいと思う点もある。だが、本来いるべき場所に帰らなければ。自分はここにいるべきじゃない。元の家族に戻らなければ。そして、一緒に住まなければ。


 貴仁はいつものように起きた。すでにみんなは起きていて、寝室にはいない。貴仁は1階に向かった。


 貴仁がダイニングに来ると、4人ともいる。


「おはよう」

「おはよう」


 いつも通り挨拶をしているが、それも今日で最後だ。明日の早朝、元の世界に戻るからだ。


「いよいよ明日だね」


 明は笑みを浮かべている。だが、本当は寂しい。もっと遊びたかったのに、もっと一緒にいたかったのに。もうすぐ貴仁は元の世界に戻ってしまう。


「うん」

「いろいろあったけれど、もうすぐお別れだね」


 嶺亜は悲しんでいる。もっと一緒にいたかったようだ。だが、帰らなければならない。


「こんな世界があったなんて、驚いたでしょ?」

「うん。ここにいた事、忘れないよ」


 確かにそうだ。住んでいる世界の他に、こんな世界があるなんて、知らなかった。いつごろからこの世界はあるんだろう。それだけではない。絵でしか見た事のない龍のような魔獣が目の前にいるからだ。これは素晴らしい体験だった。これは一生の思い出になるだろうな。


「そっか・・・」


 と、明は貴仁の表情が気になった。何を考えているんだろう。


「どうしたの?」

「い、いや、何でもないよ」


 貴仁は何やら言いたそうだ。一体何だろうか? お父さんやお母さんは元気にしているのか、聞きたかったんだろうか?


「ふーん・・・」

「どうしたんだい?」


 貴仁は横を振り向いた。そこには紀夫がいる。紀夫も貴仁の表情が気になったようだ。


「本当に、お父さんとお母さんに会えるのかなって思って」


 それを聞かれて、紀夫は戸惑った。本当の両親は今日の深夜、帰りの電車から家の最寄り駅で降りた所で、魔界に連れ去る予定だ。そして、偽の両親とすり替わる予定だ。判決はすでに決まっている。地獄流しだ。貴仁は本当の両親にもう会えないからだ。だが、その方が貴仁にとっては幸せだろうと言うのが私の判断だ。


「大丈夫だよ。いつも通りに生活してるよ。明日帰れるってのも知ってるよ」

「それはよかった」


 貴仁はほっとした。もう両親に会えないだろうと思っていた。また会えると聞いて、安心した。これからは両親との時間を大切にしたいな。できれば、もう家から追い出さないでほしいな。


「だから、安心して帰ってもいいよ」

「わかった! 楽しみにしてるね」


 貴仁は笑みを浮かべた。その表情を見ると、紀夫も笑顔になった。


「よかったよかった」

「お父さんお母さん、早く会いたいと思ってるよ」


 紀夫は笑みを浮かべた。だが、その笑顔は偽りで、本当は偽の両親と会う事になる。その方が幸せだろう。


「追い出した事、反省してるのかな?」

「反省してると思うよ」


 貴仁はほっとした。反省しているようだ。もう追い出さないと思っているようだ。もう追い出して、近隣住民に迷惑をかけるのはいけないからな。そのたびに、冷たい目で見られたくない。そう思ったんだろう。


「反省してるんだ・・・」


 だが、貴仁は不安な表情になった。反省したとはいっても、またやることが何度もあった。もう反省なんて、意味をなさないんじゃないかな? いつやるんだろうと思ってしまう。


「どうしたの?」

「何度もこんな事あったんだから、またされるかもしれないと思って」


 それを聞いて、紀夫は戸惑った。何度もこんな事があったのか。相当本物の両親は懲りないやつのようだな。よほど重い罪にすべきだな。


 突然、紀夫は貴仁の肩を叩いた。貴仁は驚いた。


「今度は大丈夫だって」

「そうかな?」


 貴仁は首をかしげた。信じられないようだ。何度もこんな事があったからだ。


「いい子になれば、きっと大丈夫だと思うよ」

「僕、いい子になるから。頑張るから。もうやめてほしいな」


 さすがに先日の事は心に響いた。それを機に反省してほしいんだけどな。本当に反省するんだろうか?


「そうなんだ」

「とりあえず、明日帰れるからね」


 瑠奈は笑顔を見せ、貴仁を安心させた。もう両親の事で心配しないでほしい。


「わかった」


 貴仁は椅子に座り、朝食を食べ始めた。2人は幸せそうにその様子を見ている。


「さて、今日も勉強を頑張らないと」

「頑張ってね!」


 瑠奈は貴仁を応援している。きっと両親も、その頑張りを認めてくれるんだろうな。


「頑張ってるわね」

「まさかここまで反省しているとは」


 紀夫も感心していた。まさかここまで頑張るとは。


「これは両親も納得するだろうな。まぁ、本当の両親じゃないんだけどな」

「そうだね」


 2人は笑みを浮かべていた。だが、その裏には、本当の両親とすり替える今夜の事を思い浮かべている。




 ここは現実世界。夜になり、9時になった。そろそろ飲みに行く時間だ。名津子は楽しみにしていた。今日は週末の飲み会だ。とてもの楽しみだな。


「そろそろ時間だ」

「貴仁ー、行ってくるからね」

「はーい!」


 そして、名津子は居酒屋の最寄り駅に出かけていった。その帰りに、とんでもない事になると知らずに。


「フッフッフ・・・」


 その様子を、偽の貴仁は笑みを浮かべながら見ていた。任務は達成した。あとは連れ去り、本物の貴仁と入れ替わるのを待つだけだ。




 名津子は居酒屋の最寄り駅で待っていた。今日はこの駅の近くの居酒屋で飲む予定だ。すでに優太郎は予約をしてある。あとは優太郎を待つだけだ。早く来ないかな?


「もうすぐかな?」


 と、そこに優太郎が現れた。優太郎は行った時に着ていたスーツを着ている。一目見ただけで、名津子はそれが優太郎だとわかった。


「あなたー」

「おう!」


 その声に、優太郎は反応した。約束通り来てくれたようだ。


「今日は飲もうね」

「うん」


 優太郎は笑みを浮かべている。いろいろあったけれど、今週も乗り越えた。今日はその疲れを取るために、ここで飲もう。


「今週はどうだった?」

「順調に仕事をこなせたよ」


 名津子も笑みを浮かべた。それはよかった。今週末はしっかりと疲れを取ろう。


「そう。よかったね」


 しばらく歩くと、その店の前にやって来た。その店は焼き鳥屋で、庶民的な雰囲気だ。


「さて、ここだったな」

「うん」


 店の前には店員がいる。この店員に予約していた人だと言わなければならない。


「すいませーん、2名で予約しました、島田ですけど」

「はーい」


 2人は居酒屋に入った。予約していた島田夫妻だとわかって、店員はカウンターに案内した。


「こちらでございます」

「ありがとうございます」


 2人はカウンターに座った。


「本日はご来店ありがとうございます。お飲み物はどうなさいますか?」

「生中で! あと、ねぎまたれとレバーのたれで」

「黒霧島のロックで! それと、つくねの塩とささみの塩で」


 2人は注文を店員に伝えた。毎回毎回つまみの注文は違うが、最初の一杯はいつもこれだ。


「かしこまりました!」


 名津子は貴仁を思い浮かべていた。行方不明になって大騒ぎだったけれど、無事に帰ってきた。それだけでも嬉しい。あれから反省している。みんなから注意された。もう追い出すのはやめよう。


「貴仁、どうなるかなと思ったけど、帰ってきてよかったね」

「ほんとほんと」


 と、そこに店員がやって来た。注文の品を持ってきたようだ。


「おまたせしました。生中と、黒霧島のロックです」

「はーい、ありがとうございます」


 優太郎はジョッキを、名津子はグラスを手に取り、乾杯の準備をした。


「カンパーイ!」

「カンパーイ! まぁ、いろいろあったけど、飲もう!」

「そうだね」


 2人は注文した酒を飲んだ。とてもおいしいな。1週間頑張った分、お酒がおいしく思える。


「これからも、貴仁に愛情を注いでいこうね」

「うん」


 しばらくすると、、店員がやって来た。注文したつまみが出来上がったようだ。


「お待たせしました、ねぎまのたれ、レバーのたれ、つくねの塩、ささみの塩です」

「ありがとうございます」


 優太郎はねぎまのたれをほおばった。とてもおいしい。お酒によく合う。


「これからまた、頑張っていこうじゃん!」

「うんうん! もうこんなひどい事をしないと誓おう!」

「ああ」


 その後、2人とも4合飲んだ。すっかり酔っぱらってしまった。




 2人は帰りの地下鉄に乗っていた。今日の終電で、そんなに混んでいない。とても静かな車内だ。これがいつもの終電の風景だ。2人はその雰囲気に慣れていた。それに、この風景が好きだ。まるで自分だけの貸し切りのようで、とても素晴らしい。


「今日はいろいろ飲んだなー」

「ほんとほんと」


 優太郎は酔っていて、ぐったりとしている。だが、乗り過ごしには気を付けないと。もう帰る手段がタクシーしかないのだから。


「やっぱり週1の飲み会はやめられないなー」

「そうだね」


 と、名津子は何かを感じた。何かが飛んでいく。あれは龍だろうか? まさか、そんな事はない。龍はこの世に存在しない。想像上の生き物だ。


「あれっ・・・」

「どうしたの?」


 優太郎は名津子の表情が気になった。一体どうしたんだろう。何か見たんだろうか?


「いや、何でもないよ。なんか変なのが見えたんで」

「変なの?」

「龍が」


 それを聞いて、優太郎は驚いた。龍なんて、この世にいないだろう。想像上の生き物だろう。どうしたんだ? 酔っているから変なのが見えるんだろう。


「そんなの空想だけだよ。酔ってて変なのが見えるんじゃない?」

「そ、そうだよね」


 名津子は少し笑みを浮かべた。確かにそうだ。酔っていると、変なのが見えるって、よくある事だ。今回もそうだろう。


 そろそろ降りる駅が近づいてきた。2人はゆっくりとロングシートを立った。


「さて、そろそろ駅だ。降りよう」

「うん」


 2人はいつものように最寄り駅で降りた。深夜でも暑い。今日も熱帯夜になりそうだ。冷房をつけたいけれど、つけたら風邪になるかもしれない。どうにかできないだろうか?


 2人は改札を出ようとした。その時、辺りが暗くなった。何が起こったんだろうか? 停電だろうか?


「えっ!?」


 その時、1匹の龍があっという間に2人を連れ去った。まさかこんな事が起こるとは。突然の出来事に、2人は驚いている。


「キャッ!」

「な、何だ?」


 あっという間に、龍は2人と一緒に異空間に消えていった。だが、停電していて、誰もそれを知らなかった。


 再び駅の照明が点灯すると、そこには優太郎と名津子がいる。だが、2人は魔界が用意した偽物だ。本物の優太郎と名津子は魔界に連れ去られた。


「大丈夫ですかー?」

「は、はい。大丈夫です」


 2人はまるで本物のようにふるまった。


「ご迷惑をおかけいたしました」

「いえいえ」


 そして、2人は家に向かっていった。駅員は思っていた。今さっきの停電は何だったんだろうか?

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― 新着の感想 ―
自分のことを毒親は毒親と思っていないのが良かったです。 彼らが改心することはあるのか? というか、毒親化の原因は何か? その辺が見所ですわな。
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