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ここの現実世界。偽の貴仁はいつものように目を覚ました。もうすぐ元の世界に帰らなければならない。わかっているけど、寂しいな。だけど、本物の貴仁を現実世界に帰して、正しい夫婦の元で育てなければ。その方が貴仁にとって幸せだから。
偽の貴仁は1階にやって来た。そこには優太郎と名津子がいる。だが、それもあさってまでだ。明日の夜更けに連れ去られる。そして、偽の彼らとすり替える。これで完璧だ。
「おはよう」
「おはよう・・・」
2人はいつものように朝食を作っている。2人は知らない。もうすぐ連れ去られる運命なのを。いつものように起き、いつものように過ごしている。
「どうしたの?」
名津子は偽の貴仁の様子が気になった。何を気にしているんだろうか?
「いや、何でもないよ」
「本当」
偽の貴仁は椅子に座った。目の前には朝食がある。今日はご飯とみそ汁に加えて、ベーコンエッグだ。
「いただきまーす」
偽の貴仁は朝食を食べ始めた。貴仁は優太郎を気にしている。普段はどんな仕事をしているんだろうか?
「お父さん」
「どうした?」
貴仁はどんな仕事をしているのか聞こうとした。だが、本物の貴仁は知っているだろう。なのに聞いたら、疑われそうだ。何も言わないようにしよう。
「いや、何でもないよ」
「そっか。そろそろ仕事に行く準備をしないと」
優太郎は2階に向かった。身支度をして、職場に向かうためだ。
「僕もいつか、こうなるんだね」
「どうしたの貴仁」
名津子は偽の貴仁の表情が気になった。どうしてこんなに仕事に対して興味を持っているんだろうか? それまで貴仁は、仕事に就いて考える事はなかったのに。まさか、何日かいなくなった時に考えるようになったんだろうか?
「本当に何でもないよ」
「帰ってきてから、何かおかしくて」
名津子は変に思っていた。ひょっとして、偽物ではないか?
「自分を見つめなおしただけだよ」
「そうだったらいいよ」
名津子はほっとした。どうやら本物の貴仁のようだ。名津子はまだ知らない。これは偽の貴仁だという事を。
「ふぅ・・・」
食べ終わった偽の貴仁は、リビングでぐったりしている。名津子はその様子を見ている。こんな子だったかな? これもいなくなっている間に変わったのかな?
「どうしたの?」
「いや、何でもないよ」
偽の貴仁は立ち上がった。これから宿題をしないと。その前に歯を磨こう。
「さて、今日も宿題をしないと」
と、そこに身支度を終えた優太郎がやって来た。これから職場に出発するようだ。
「行ってくるね」
「行ってらっしゃい」
偽の貴仁は2階に向かった。これから勉強するためだ。名津子は後姿を見ている。帰ってきてからとても頼もしくなって。
だが、偽の貴仁は、2階で宿題をしていなかった。スパイを話しをしていた。
「どうだ?」
「バレそうな時があったけど、何とか大丈夫だったよ」
目の前には龍がいる。だが、偽の貴仁は元々魔界の人間なので、全く普通だと思っている。
「よかったな。見つかったら、とんでもない事だからな。うまくやり過ごせよ。貴仁くんも待ってるからな」
「ああ」
そして、龍は去っていった。龍は知っていた。いよいよあさって、この子の両親を連れ去るんだと。
10時過ぎ、名津子は近くのスーパーにいた。名津子はいつもそこで買い物をしている。今日はスパゲッティのつもりだ。麺とミートソースを買わないと。
「うーん・・・」
名津子は考えていた。ちょっといなくなるだけで、こんなに人って変わるものかな? 貴仁がまるで別人のようになってしまった。いない間に、何をしていたんだろうか?
「どうしたの?」
名津子は隣の女の声で目を覚ました。近所に住んでいる中村だ。
「貴仁、いなかった時に何をしてたのかなと思って」
「わからないの?」
中村は不思議に思っている。帰って来た時に、何か話さなかったのかな?
「何にも話さないのよ」
「そうなんだ。どうしてだろう」
何も話していないようだ。どうして話していないんだろうか?
「何かやってきたんじゃないかな?」
「どうだろう」
名津子は首をかしげている。何をしてきたのか、聞きたいな。
「まぁ、あんまり気にしないようにしよう。無事に帰ってきたんだから」
「そうだね」
結局、何も聞かないようにしよう。一緒にいられるのが、何より大切だし、いない間、何をしていたっていうのは、知ってもしょうがない事だろうから。
「名津子さん、もう追いだしたりしちゃ、ダメよ」
「うん」
中村は怒っていた。先日、貴仁が行方不明になって、みんなで探す羽目になったからだ。もうそんな騒動はごめんだからな。
「じゃあね」
「じゃあね」
中村はスーパーを去っていった。名津子はその後姿を見ている。
昼前、名津子は家に帰ってきた。今日はスパゲッティだ。早く作らないと。
「ただいまー」
「おかえりー」
その声を聞いて、偽の貴仁がやって来た。貴仁はかわいらしい表情だ。だが、かまっていられない。早くスパゲッティを作らないと。
「どうしたの?」
「いや、何でもないよ」
どうして偽の貴仁はそんなに名津子を見つめているんだろう。何か気になっている事があるんだろうか?
偽の貴仁は2階に向かった。もちろん勉強のためではない。また仲間に報告するからだ。
偽の貴仁が2階にやって来ると、そこにはスパイの龍がいる。だが、周りの人には全く見えない。
「どうしたの?」
「バレそうだったんでな」
偽の貴仁は少し焦っていた。本物の貴仁とすり替わるまで、ばれない事が任務だ。
「そうだね。来月の31日まで騙せばもう大丈夫だ。ずっと人間のままだ。うまくやれよ」
「わかった!」
そして、スパイの龍は消えていった。偽の貴仁はいつものように青空を見ている。だけど、あさってには元の世界に戻らないと。本物の貴仁が待っているだろうから。
本物の貴仁は夢を見た。あまりにもリアルすぎて、本当にこれから起こる出来事のように見えた。
「あれっ、ここは?」
と、貴仁は昨日、明の背中に乗って魔界を旅した時の事を思い出した。ここは地獄だ。どうして地獄にいるんだろう。僕は何も悪い事をしていないのに。貴仁は首をかしげた。
と、目の前にはある夫婦がいる。それを見た瞬間、貴仁は呆然となった。そこにはやせ細った両親がいる。どうしてここにいるんだろう。
「えっ、お父さんとお母さん?」
貴仁は両親に向かって走り出した。
「お父さん! お母さん!」
その声を聞いて、両親は振り向いた。両親は元気がなさそうだ。
「貴仁、ごめん。私たち、地獄流しにされてしまったの・・・。もうここで死ぬしかないのよ・・・」
だが、両親は先に行ってしまう。このままどこに行くんだろう。もうこのまま死んでいくのかな?
「お父さん、お母さん、帰って来てよ・・・」
「それはできないんだ。ごめんな・・・。貴仁と過ごした日々、楽しかったよ・・・」
そして、両親はまるで蜃気楼のように消えていった。
「そんな・・・。行かないで、お父さん、お母さん!」
貴仁は目を覚ました。やはり夢だったようだ。でも、どこか現実っぽいな。どういう事だろうか?
「ゆ、夢か・・・」
「どうしたの?」
貴仁は横を向いた。そこには嶺亜がいる。嶺亜は心配そうな表情だ。悪夢にうなされていたのを知っていたようだ。
「いや、何でもないよ・・・」
「本当に?」
貴仁は焦っている。本当は大丈夫じゃない。怖い夢を見ていただけで、気にしないでほしいな。
「うん。本当だよ」
貴仁は1階に向かった。こうしてここで暮らすのも、今日と明日だけだ。しっかりと思い出に残しておかないと。
貴仁は1階のダイニングにやって来た。そこには紀夫と瑠奈、明がいる。
「おはよう」
「おはよう」
貴仁は椅子に座り、朝食を食べ始めた。
「どう、魔界での生活に慣れてきた?」
「うん。魔界もいいもんだね。だけど、やっぱり元の世界がいいな」
どうやら、貴仁はやっぱり元の世界がいいようだ。地獄もある世界よりも、元の世界がいいよ。平和だし、みんながいるし。
「そりゃそうだもんな。生まれ育った世界がいいよな」
ふと、貴仁は気になった事がある。それは、昨夜の夢だ。両親が地獄流しにされた夢だ。本当にまた一緒に暮らせるんだろうか? とても不安になってきた。
「本当にまた一緒に暮らせるのかなって」
「どうした?」
紀夫は貴仁が夢を見た事が気になった。夢の事で何か気になる事があるんだろうか?
「裁かれて、地獄流しにされないかなって」
それを聞いて、紀夫は少し焦った。どうしたんだろうか? 貴仁は不思議に思った。
「そんな事ないさ! どうしたの?」
「いや、そんな予感がしただけで」
貴仁も少し焦っている。こんなの、夢なんだ。現実にはそんな事、ないんだ。地獄流しなんて、そんなの元の世界には存在しないさ。
突然、明が貴仁の肩を叩いた。貴仁は驚いた。どうしたんだろう。
「大丈夫だって!」
「うーん・・・」
だが、貴仁は不安だ。家から追い出した事で、地獄流しにされてしまうのでは?
「ほらほら、心配しないで!」
だが、明は励まそうとしている。明の表情を見ると、大丈夫だと思ってしまう。どうしてだろう。貴仁は安心した表情で、朝食を食べ始めた。紀夫と瑠奈はそんな貴仁を、温かい目で見ている。だけど、そんな貴仁とも、もうすぐお別れだ。寂しいけれど、元の世界に戻さないと。




