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Families  作者: 口羽龍
前編 2つの世界
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6

 ここの現実世界。偽の貴仁はいつものように目を覚ました。もうすぐ元の世界に帰らなければならない。わかっているけど、寂しいな。だけど、本物の貴仁を現実世界に帰して、正しい夫婦の元で育てなければ。その方が貴仁にとって幸せだから。


 偽の貴仁は1階にやって来た。そこには優太郎と名津子がいる。だが、それもあさってまでだ。明日の夜更けに連れ去られる。そして、偽の彼らとすり替える。これで完璧だ。


「おはよう」

「おはよう・・・」


 2人はいつものように朝食を作っている。2人は知らない。もうすぐ連れ去られる運命なのを。いつものように起き、いつものように過ごしている。


「どうしたの?」


 名津子は偽の貴仁の様子が気になった。何を気にしているんだろうか?


「いや、何でもないよ」

「本当」


 偽の貴仁は椅子に座った。目の前には朝食がある。今日はご飯とみそ汁に加えて、ベーコンエッグだ。


「いただきまーす」


 偽の貴仁は朝食を食べ始めた。貴仁は優太郎を気にしている。普段はどんな仕事をしているんだろうか?


「お父さん」

「どうした?」


 貴仁はどんな仕事をしているのか聞こうとした。だが、本物の貴仁は知っているだろう。なのに聞いたら、疑われそうだ。何も言わないようにしよう。


「いや、何でもないよ」

「そっか。そろそろ仕事に行く準備をしないと」


 優太郎は2階に向かった。身支度をして、職場に向かうためだ。


「僕もいつか、こうなるんだね」

「どうしたの貴仁」


 名津子は偽の貴仁の表情が気になった。どうしてこんなに仕事に対して興味を持っているんだろうか? それまで貴仁は、仕事に就いて考える事はなかったのに。まさか、何日かいなくなった時に考えるようになったんだろうか?


「本当に何でもないよ」

「帰ってきてから、何かおかしくて」


 名津子は変に思っていた。ひょっとして、偽物ではないか?


「自分を見つめなおしただけだよ」

「そうだったらいいよ」


 名津子はほっとした。どうやら本物の貴仁のようだ。名津子はまだ知らない。これは偽の貴仁だという事を。


「ふぅ・・・」


 食べ終わった偽の貴仁は、リビングでぐったりしている。名津子はその様子を見ている。こんな子だったかな? これもいなくなっている間に変わったのかな?


「どうしたの?」

「いや、何でもないよ」


 偽の貴仁は立ち上がった。これから宿題をしないと。その前に歯を磨こう。


「さて、今日も宿題をしないと」


 と、そこに身支度を終えた優太郎がやって来た。これから職場に出発するようだ。


「行ってくるね」

「行ってらっしゃい」


 偽の貴仁は2階に向かった。これから勉強するためだ。名津子は後姿を見ている。帰ってきてからとても頼もしくなって。


 だが、偽の貴仁は、2階で宿題をしていなかった。スパイを話しをしていた。


「どうだ?」

「バレそうな時があったけど、何とか大丈夫だったよ」


 目の前には龍がいる。だが、偽の貴仁は元々魔界の人間なので、全く普通だと思っている。


「よかったな。見つかったら、とんでもない事だからな。うまくやり過ごせよ。貴仁くんも待ってるからな」

「ああ」


 そして、龍は去っていった。龍は知っていた。いよいよあさって、この子の両親を連れ去るんだと。




 10時過ぎ、名津子は近くのスーパーにいた。名津子はいつもそこで買い物をしている。今日はスパゲッティのつもりだ。麺とミートソースを買わないと。


「うーん・・・」


 名津子は考えていた。ちょっといなくなるだけで、こんなに人って変わるものかな? 貴仁がまるで別人のようになってしまった。いない間に、何をしていたんだろうか?


「どうしたの?」


 名津子は隣の女の声で目を覚ました。近所に住んでいる中村だ。


「貴仁、いなかった時に何をしてたのかなと思って」

「わからないの?」


 中村は不思議に思っている。帰って来た時に、何か話さなかったのかな?


「何にも話さないのよ」

「そうなんだ。どうしてだろう」


 何も話していないようだ。どうして話していないんだろうか?


「何かやってきたんじゃないかな?」

「どうだろう」


 名津子は首をかしげている。何をしてきたのか、聞きたいな。


「まぁ、あんまり気にしないようにしよう。無事に帰ってきたんだから」

「そうだね」


 結局、何も聞かないようにしよう。一緒にいられるのが、何より大切だし、いない間、何をしていたっていうのは、知ってもしょうがない事だろうから。


「名津子さん、もう追いだしたりしちゃ、ダメよ」

「うん」


 中村は怒っていた。先日、貴仁が行方不明になって、みんなで探す羽目になったからだ。もうそんな騒動はごめんだからな。


「じゃあね」

「じゃあね」


 中村はスーパーを去っていった。名津子はその後姿を見ている。




 昼前、名津子は家に帰ってきた。今日はスパゲッティだ。早く作らないと。


「ただいまー」

「おかえりー」


 その声を聞いて、偽の貴仁がやって来た。貴仁はかわいらしい表情だ。だが、かまっていられない。早くスパゲッティを作らないと。


「どうしたの?」

「いや、何でもないよ」


 どうして偽の貴仁はそんなに名津子を見つめているんだろう。何か気になっている事があるんだろうか?


 偽の貴仁は2階に向かった。もちろん勉強のためではない。また仲間に報告するからだ。


 偽の貴仁が2階にやって来ると、そこにはスパイの龍がいる。だが、周りの人には全く見えない。


「どうしたの?」

「バレそうだったんでな」


 偽の貴仁は少し焦っていた。本物の貴仁とすり替わるまで、ばれない事が任務だ。


「そうだね。来月の31日まで騙せばもう大丈夫だ。ずっと人間のままだ。うまくやれよ」

「わかった!」


 そして、スパイの龍は消えていった。偽の貴仁はいつものように青空を見ている。だけど、あさってには元の世界に戻らないと。本物の貴仁が待っているだろうから。




 本物の貴仁は夢を見た。あまりにもリアルすぎて、本当にこれから起こる出来事のように見えた。


「あれっ、ここは?」


 と、貴仁は昨日、明の背中に乗って魔界を旅した時の事を思い出した。ここは地獄だ。どうして地獄にいるんだろう。僕は何も悪い事をしていないのに。貴仁は首をかしげた。


 と、目の前にはある夫婦がいる。それを見た瞬間、貴仁は呆然となった。そこにはやせ細った両親がいる。どうしてここにいるんだろう。


「えっ、お父さんとお母さん?」


 貴仁は両親に向かって走り出した。


「お父さん! お母さん!」


 その声を聞いて、両親は振り向いた。両親は元気がなさそうだ。


「貴仁、ごめん。私たち、地獄流しにされてしまったの・・・。もうここで死ぬしかないのよ・・・」


 だが、両親は先に行ってしまう。このままどこに行くんだろう。もうこのまま死んでいくのかな?


「お父さん、お母さん、帰って来てよ・・・」

「それはできないんだ。ごめんな・・・。貴仁と過ごした日々、楽しかったよ・・・」


 そして、両親はまるで蜃気楼のように消えていった。


「そんな・・・。行かないで、お父さん、お母さん!」


 貴仁は目を覚ました。やはり夢だったようだ。でも、どこか現実っぽいな。どういう事だろうか?


「ゆ、夢か・・・」

「どうしたの?」


 貴仁は横を向いた。そこには嶺亜がいる。嶺亜は心配そうな表情だ。悪夢にうなされていたのを知っていたようだ。


「いや、何でもないよ・・・」

「本当に?」


 貴仁は焦っている。本当は大丈夫じゃない。怖い夢を見ていただけで、気にしないでほしいな。


「うん。本当だよ」


 貴仁は1階に向かった。こうしてここで暮らすのも、今日と明日だけだ。しっかりと思い出に残しておかないと。


 貴仁は1階のダイニングにやって来た。そこには紀夫と瑠奈、明がいる。


「おはよう」

「おはよう」


 貴仁は椅子に座り、朝食を食べ始めた。


「どう、魔界での生活に慣れてきた?」

「うん。魔界もいいもんだね。だけど、やっぱり元の世界がいいな」


 どうやら、貴仁はやっぱり元の世界がいいようだ。地獄もある世界よりも、元の世界がいいよ。平和だし、みんながいるし。


「そりゃそうだもんな。生まれ育った世界がいいよな」


 ふと、貴仁は気になった事がある。それは、昨夜の夢だ。両親が地獄流しにされた夢だ。本当にまた一緒に暮らせるんだろうか? とても不安になってきた。


「本当にまた一緒に暮らせるのかなって」

「どうした?」


 紀夫は貴仁が夢を見た事が気になった。夢の事で何か気になる事があるんだろうか?


「裁かれて、地獄流しにされないかなって」


 それを聞いて、紀夫は少し焦った。どうしたんだろうか? 貴仁は不思議に思った。


「そんな事ないさ! どうしたの?」

「いや、そんな予感がしただけで」


 貴仁も少し焦っている。こんなの、夢なんだ。現実にはそんな事、ないんだ。地獄流しなんて、そんなの元の世界には存在しないさ。


 突然、明が貴仁の肩を叩いた。貴仁は驚いた。どうしたんだろう。


「大丈夫だって!」

「うーん・・・」


 だが、貴仁は不安だ。家から追い出した事で、地獄流しにされてしまうのでは?


「ほらほら、心配しないで!」


 だが、明は励まそうとしている。明の表情を見ると、大丈夫だと思ってしまう。どうしてだろう。貴仁は安心した表情で、朝食を食べ始めた。紀夫と瑠奈はそんな貴仁を、温かい目で見ている。だけど、そんな貴仁とも、もうすぐお別れだ。寂しいけれど、元の世界に戻さないと。

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