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早朝、紀夫は瑠奈を呼んだ。こんな早朝に何だろう。何か重要な話だろうか? 貴仁に関係する事だろか? ならば、貴仁の両親の判決が決まり、いつ帰るか決まるのだろう。誘われた瑠奈はそう思っていた。
「どうしたの?」
紀夫は真剣な表情だ。とても重要な話のようだ。
「貴仁くんの両親の判決が決まった! 地獄流しだ!」
やっぱりそうだったか。裁判官ではなく主婦だが、貴仁にした事を見る限り、こうなるだろうと思っていた。もう貴仁は本物の両親に会えないけど、その方が貴仁にとっては幸せだろう。
「そう・・・」
「ただし、貴仁くんには内緒だぞ。もし死ねば、複製人間が新しい貴仁くんの親になるんだ。その方が貴仁くんには幸せだろうと思って」
紀夫は考えていた。偽の両親を送るが、絶対にばれないようにしないと。もしばれたら、貴仁が悲しむかもしれない。そして、会いたいと思うかもしれない。
「私もそうだと思う」
2人は家の中に戻ってきた。すでに明と嶺亜は起きていて、空を飛んでいる。いつもの光景だ。2人は空を飛ぶのが好きで、毎朝空を飛んでいる。朝の風を浴びながら空を飛ぶのはとても心地よいのだという。
「おはよう」
2人は振り向いた。貴仁がいる。貴仁は眠たい目をこすっている。まだ眠いようだ。
「おはよう」
貴仁は何かが気になっているようだ。何を気にしているんだろうか? 話してほしいな。
「どうしたの?」
「いつ帰れるのかなと思って」
2人は驚いた。そろそろ聞いてくると思っていたが、まさか今日聞いてくるとは。そんなに元の世界が、実家が、そして両親が恋しいんだろうか?
突然、紀夫は貴仁のを肩を叩いた。どうしたんだろう。
「大丈夫。いつかは帰れるさ」
「やっぱり元の世界がいいよ」
貴仁は悲しそうな表情だ。魔界よりも、元の世界がいいよ。早く帰りたいよ。
「確かにそうでしょ?」
瑠奈には、貴仁の気持ちがわかった。早く元の世界に帰さなければ。ただし、それまでに本物の両親を捕まえないと。
紀夫は貴仁の悲しそうな表情が気になった。生まれ育った世界がいいというのは、自分にもわかる。
「わかるの?」
「うん。表情からわかる」
どうやら、元の世界に戻りたいという気持ちは、紀夫にもわかるようだ。
「そっか。ここの子じゃないもんね」
「うん」
と、貴仁は何か考え事をしていた。何を考えているんだろう。
「どうしたの?」
だが、貴仁は元の表情になった。言いたくない事があるようだ。
「いや、何でもないんだよ」
「ふーん・・・」
と、瑠奈は手を叩いた。朝食ができているのだ。貴仁に伝えないと。
「朝食ができてるわよ。さぁ、食べなさい」
貴仁はダイニングに向かった。テーブルには、ご飯とみそ汁とベーコンエッグがある。貴仁は椅子に座った。
「いただきます」
貴仁は朝食を食べ始めた。それを見て、紀夫と瑠奈も食べ始めた。明と嶺亜はまだ帰ってきていないようだ。
「お父さんとお母さんが気になるの?」
その声を聞いて、貴仁は顔を上げた。どうしてそんな事を言っているんだろう。そんなに両親が気になるんだろうか? 僕にとっては普通の両親だと思っているのに。
「うん」
「きっと会えるよ」
瑠奈は笑みを浮かべている。その笑顔を見て、貴仁は思った。いつか帰れるんだな。そうなら、夏休みが終わるまでがいいな。新しい気持ちで夏休みを終えて、また小学校に行きたいから。
「本当?」
「うん」
紀夫は顔を上げた。何か話したい事があるんだろうか?
「きっと元気にしてると思うよ。そして、貴仁くんを探してると思うよ」
貴仁は見当がつく。あれだけ見つかっていないのだから、きっと捜索願が出ているだろうな。でも、まだ見つかっていないだろうな。だって、この世界にはいないんだから。
「そうかな? 今頃、捜索願が出てるだろうな」
「きっと出てると思うよ。だけど、絶対帰れるから信じててね」
瑠奈は励ましている。だが、貴仁は不安だ。何日も姿をくらまして、両親は怒っていないだろうか? 心配していないだろうか? また家から追い出されないだろうか? そう思いながら、貴仁は朝食を食べていた。
「ごちそうさま!」
貴仁は食べ終わり、リビングでくつろいでいた。リビングにはテレビがあり、ニュース番組が映っている。魔界にもテレビ局があり、テレビ番組があるんだな。知らないテレビ局の、知らないテレビ番組って、どこか新鮮で、見入ってしまうな。
貴仁の元気な姿を見て、2人は笑みを浮かべている。家を追い出されたショックからすっかり立ち直ったようだ。これからもっと頑張っていくだろうな。
「元気だね!」
「あれから反省してるみたい」
これで元の世界に帰れる準備は整ったようだ。あとは、本物の両親を捕まえ、地獄に送ればそれで完了だ。そして、本物の両親が死んだ時、偽の両親が本物の両親になるだろう。
「いつでも帰れる状態になって、よかったね」
「元の世界に帰っても、頑張ってほしいね」
紀夫は考えた。そろそろ元の世界に戻る日を考えないと。その為には、貴仁の家に送り込んだスパイが、本物の両親の行動を探り、さらうタイミングをつかめるようにしないと。
「そろそろ帰る日を考えないと」
「うん」
貴仁は全く知らない。本物の両親が連れ去られ、地獄流しにされる事を。
その頃、貴仁の家では偽の貴仁が両親とともに夕食を食べていた。いまだに両親は知らない。目の前にいる貴仁が偽物で、自分を地獄に送り込むスパイだという事を。そして、もうすぐ連れ去られ、裁判にかけられ、地獄流しにされる事を。いつも通りの日々を過ごしていた。
「ねぇ」
偽の貴仁は聞きたい事があった。両親はどうやって知り合ったのか。そして、毎日の生活についてもっと知りたいな。
「どうしたの?」
「お父さんとお母さんって、いつ知り合ったの?」
名津子は考えた。どうしてこんな事を聞きたいと思ったんだろう。今まで全く聞いてこなかったのに。帰ってから、まるで別人のようだ。いない間に、何かあったんだろうか?
「どうしたの、急に?」
「いや、聞きたいなと思って」
偽の貴仁は焦っている。本当にそれでいいのかな?
「今から12年前に、会社で知り合ったわ。11年前に結婚して、あなたが生まれたの」
2人はかつて、会社の同僚で、会議で知り合い、意気投合した。よく一緒に居酒屋に行き、ますます仲が良くなって、結婚に至ったという。結婚式には、会社の同僚が多く駆け付けたという。結婚を機に、名津子は仕事を辞め、専業主婦となった。
「そうなんだ。父さんは何をしてるの?」
「会社員で、夜7時に帰って来るの。で、金曜日の夜は2人で飲み会で、いつも終電で帰るの。終電って、なかなか雰囲気があるわ」
それを聞いて、偽の貴仁は思った。この時間がいいかもしれない。これは紀夫に伝えないと。
「ふーん・・・」
と、名津子は偽の貴仁の表情が気になった。何を気にしているんだろうか? いつか、一緒に飲んでみたいと思っているんだろうか?
「どうしたの?」
「いや、何でもないよ」
だが、貴仁は焦っている。何も言おうとしない。2人は不思議に思っていた。
「そう・・・」
夕食を食べ終えた貴仁は、すぐに立ち上がった。2人は驚いた。どうしたんだろうか?
「さてと、今日も勉強をしないと」
そして、偽の貴仁は2階に向かおうとした。その様子を2人は見ている。何かあったんだろうか? 夜も勉強するなんて。こんなに頑張らなくてもいいのに。もう家から追い出されたくないという決意の現れだろうか?
「頑張ってるね」
「反省してるから」
2人は、偽の貴仁を頼もしく見ていた。本当は別人なのに。
「頑張ってね!」
「うん!」
優太郎は時計を見た。そろそろ仕事に向かう時間だ。早く支度をしないと。
その夜、優太郎はいつものように帰ってきた。いろいろあったけれど、こうしてまた貴仁が帰ってきてくれた。それだけでとても嬉しい。これからも3人で楽しい日々を送ろう。もう家から追い出さないようにしよう。今回の件でとても反省した。
「ただいまー」
その声を聞いて、名津子がやって来た。だが、偽の貴仁の姿はいない。まだ勉強をしているようだ。
「おかえりー」
優太郎は気になった。まだ貴仁は勉強をしているのかな? とても真剣だな。きっと偉い大人になるだろうな。
「今日も頑張ってるのか」
「うん。だいぶ反省してるみたいよ」
優太郎は笑みを浮かべた。もう追い出さないけれど、いい子になりそうだな。
「そうか。よかったな」
「これから成績が上がるだろうね」
名津子は期待していた。きっとこれからもっと成績が上がって、通信簿の評価も上がるだろう。
「そうだったらいいね」
2人は天井を見上げた。その先には貴仁がいる。貴仁は今日も頑張っているだろうな。
「これからの貴仁に期待しよう」
「ああ」
と、優太郎はある紙を出した。今週金曜日の飲み会はどこに行こうか、決めたようだ。
「どうした?」
「今度の金曜日はここに行こうかなと思って」
優太郎は紙を広げた。そこには、おいしそうな焼き鳥の店を見つけた。ここはなかなか魅力的だな。行ってみようかな?
「いいわよ。楽しみましょ?」
「うん」
2人は嬉しそうだ。金曜日の飲み会を楽しみにしているようだ。その帰りに連れ去られる事を知らずに。
その頃、偽の貴仁は勉強をしていなかった。紀夫と接触していた。紀夫は龍の姿をしている。周りには見えていない。
「どうだ?」
「夜7時に帰って来るんだって。で、毎週金曜日は飲み会で、終電で帰るんだって」
紀夫は少し考えた。そこが狙い時だな。
「そっか・・・。それじゃあ、そこを狙うか?」
「それがいいと思う。で、偽の父さん母さんと入れ替わって、本物の貴仁くんを戻すって事で」
偽の貴仁は笑みを浮かべていた。これで貴仁の両親を地獄に送れる。悪意はない。貴仁の幸せのためだ。
「よし! それでいこう! で、あんたはお役御免で」
「うん! それで完璧!」
2人は決めた。この時間を狙って、2人を連れ去ろう。そして、偽の両親とすり替え、翌朝、本物の貴仁が帰ってくる。それで完璧だ。
「じゃあな、うまく貴仁くんのふりをしろよ」
「ああ」
偽の貴仁は、空を見上げた。今頃、貴仁は同じ空を見ているんだろうか? 両親の事を考えているんだろうか?
「貴仁くん、待ってろよ」
偽の貴仁は決意した。絶対に、幸せにしてやるからな。




