↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
犯罪奴隷になったので生きていくために闇組織の首領になる事にした  作者: 城之内


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/15

第5話 最初のテイム

 

 僕は愛想笑いを浮かべて皿を受け取った。


「……食べていいですよ?」


「ええ、有難く食べます」


 僕は虫を牢の外に捨て、汁を木のスプーンで掬った。


「おや、サービス品は気に入らなかったですか。まあ元騎士爵の子らしいので、虫入りは食べた事ありませんよね。全く惨めなものです。八等級以上の異能(ギフト)を宿していたそうですが、調子に乗らない方が良い。お前は一生、奴隷として他者に奉仕して生きていくんですから」


 優男はネチネチと口撃してくる。彼の言動に僕は得心がいった。


「……お兄さん、もしかして僕の異能(ギフト)、そんなに羨ましいですか?」


「……は?」


「僕とあなたは初対面なのに、目の敵にされる理由は妬みくらいなものですから。八等級以上はすごく珍しいですよね。お兄さんもどうせ僕より下でしょう? あ、そもそも異能(ギフト)持ってないか」


「クソガキが!」


 鉄格子の隙間から、優男の足が伸びてくる。頬を蹴られ、僕は後ろに吹き飛ばされた。手錠と首輪に衝撃が伝わり、電流が追撃してくる。


 セオドアが視界の端で、慌てて駆け寄ってくる。

 怒りで顔を紅潮させた優男の姿を最後に、僕の意識は暗転した。




 どれくらい眠っていたかは分からない。


 だが、気付くと僕はベッドに寝かせられていた。


 壁にかけられたランプの灯り全てが消えている。

 もしかしたら夜になっているのかもしれない。


 相変わらず石畳に寝ている耳長垂れ目銀髪幼女と、寝姿が綺麗な王女気取りの傲慢美少女。


「だ、大丈夫、だった?」


 僕のベッドのすぐ近くに座っていたセオドアと、


「……何だ、てめえ。俺と戦う気か?」

 

 自身のベッドで片膝を立てて上半身を起こしている金髪の少年。


 彼も意識を取り戻したらしい。


「いや、遠慮するよ。それよりも、君も一緒にここを出ないかい?」


「……俺は誰も信用しねえ事にしたんだ。話かけるな」


「そう」

  

 僕は痛む頬を摩っていると、ちらちらと視線を感じた。


 セオドアはどうやら聞きたい事があるらしい。前髪の隙間に隠れた彼の瞳と視線が交わるが、すぐに逸らされた。


「……セオドア、恐らく君は僕が親殺しだと言われた事について、弁明を求めているのかな?」


「……ご、ごめんっ、ウィルベルくんがまさかって……信じ、られなくて」


「僕の方こそごめん。親殺しは本当なんだ。だけど、僕は後悔していない。間違ってもいない」


 丁度良い機会だ。これから行動を共にするのだから、僕の身の上話を語って聞かせるとしよう。


 ただし前世の記憶は抜きにして、今生で得た僕達家族の話だけだ。


 居場所がなくなり心を失くした父を止めるため、そして母の命を救うために父を殺した。

 しかし、騎士団には全て話したのに、事情を考慮されずに問答無用で犯罪奴隷に落とされた。


 確かに人は殺した。父は死んだ。

 でも僕は自分が間違っていなかったと胸を張って言える。


 何故なら僕は母を守るために父を殺したのだ。結果的には母は死んだが、あの時の行動は何も恥じてはいない。


「分かるぜ」


 いの一番に肯定したのは意外な事に金髪の少年だった。


「俺は王都にある闘技場で生まれた。父はチャンピオンでな。強すぎて勝ち続けていた」


 僕は頷きながら続きを促す。


「……あんまりつえーからか、ある日八百長試合を持ちかけられた。わざと負けろと。親父は断った。そんな事できるかってな。だが、持ちかけた奴はこの国でも有数の貴族の坊ちゃんらしく……」


 食事に毒を入れられて殺された。


「チャンピオンは……舞台の上じゃなくて、闘技場にある食堂で死んだんだッ。親父はどれだけ無念だったか……剣闘士達は見て見ぬふり。仕舞いには勝ち続けるのがいけないと、死んで当たり前だと言いやがった! 俺は父を馬鹿にした奴を試合中に殴り殺してやった……俺も今だに自分が正しかったと思ってる」


「……そうだね。君は正しいよ。父の名誉を守ったんだ。立場が一緒なら、僕も同じ行動を取るだろう」


 僕はベッドから出て、彼の元に近付く。側に行って手を伸ばした。


「僕はウィルべル。家名は剥奪されたから、ただのウィルベルだ。異能(ギフト)はテイム。等級は八以上だとか」


「……俺はジーラン。異能(ギフト)は怪力。等級は五だ」


 がっしりと握手する。


 ジーランの手は硬く、僕より大きい。


「……作戦を考えたんだ。ジーラン、それにセオドア。君達の力を借りたい。ここを出て、僕達は自由になる」


 この国の法には従わない。何故なら僕達は間違っていないのだから。 





 計画の概要を二人に伝えた後、僕は一人だけ起きていた。


 良い子はとっくに寝る時間だろう。部屋の隅にはゴキブリ入りのシチューを食べずにぶち撒けてある。小さいが肉も入っているので、僕はじっとその時を待った。


 カサカサと音がして、僕は静かに起き上がり息を凝らして眺める。


 黒いラットが小さな肉を噛んでいた。


 セオドアの言う通りである。

 僕は明確なイメージの元、手を伸ばした。


「テイム」


 赤い光がラットの全身を包んだ。

 動きを止めたラットの目が僕と合う。そのまま近づいてきたラットの頭を、僕は親指で撫でた。


 テイム成功だ。これが僕の力。


 これが最初の一歩である。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。