9.Anomaly/泣き虫翔くんへ
今日は十二月十七日。
気温もすっかり下がり雪こそまだ降っていなかったものの、暖かいものが恋しい季節になった。
家でもこたつをひき、すっかり冬場の支度は整っていた。
「なんか申し訳ないな…。
こたつは新しく買おうとは思ってたとはいえ「企業」さんから調達してもらえるなんて」
「大丈夫ですよ。
これも「経費」としてみてもらってる訳ですから」
近々こたつを買うことを涼に喋ったことで涼から「企業」に話が届いてしまったらしく、涼の言う通り家に無償でこたつが来てしまった。
「申し訳ないとは言いつつも……この暖かさはやっぱり人をダメにするなぁ……」
こたつで溶けていると、涼は対面側で寒がる様子もなく楽しげに僕を見つめていた。
「ダメですよ翔くん。
こたつに入ってばかりいると、こたつから出られなくなっちゃいますよ」
「だってぇ………この時期限定の幸せな時間なのがダメなんだよ………」
「もぅ……翔くんってば…」
少し呆れつつも涼の手元では丁寧にみかんの皮が剥かれていた。
その隣にはケトルでお湯が現在進行形で温められ、インスタントの生姜湯の粉がマグカップに入れられていた。
「…はい。
これでもっと温まりますよ」
ケトルで沸かされたお湯で溶かされた生姜湯を受け取ると、じんわりとした温かさと懐かしい生姜の香りが僕の食欲をそそらす。
「ありがとう。
………はぁ………温かい…」
生姜湯で一気に身体も温まり、僕は自然と上半身だけこたつから抜けていた。
「…そうだ。
図書館から借りてきてた本返さなきゃ。
新しいのも借りたいし」
「じゃあ、ついでにお料理の本も一冊でいいんで借りてきてもらっていいですか?
レパートリー増やしたいんで」
「わかった。
行ってくるね」
部屋着から外着に着替えて僕は図書館に向かった。
予定通り借りていた本を返し、新たな文庫本と涼に頼まれた料理本を適当に借りて帰路を歩いていた時のこと。
『涼も最近、料理に凝ってきてすごいよな…。
以前からなんでも美味しかったのに、ここ最近はもっとこだわりが出てきて人間らしくなったというか…』
涼はここ数日、一般的な料理だけでなく中華や果てはイタリア・フランス料理にまで目を向けている。
海外に憧れのある僕には、ちょっとした小旅行気分になれて嬉しいとこではある。
『ほんと、僕には勿体ないよな…。
毎日美味しい料理を作ってもらえて、家事・洗濯もしてもらって……涼子には頼めないよな…』
そう呆けていた時だった。
『ドンッ』
考え事をして前をちゃんと見てなかった僕は向かい側から歩いてきた人とぶつかってしまった。
「ごごっ、ごめんなさい!
怪我はありませんかっ!?」
以前のヤンキー三人組の件を思い出し、僕はすぐさま謝った。
「…いえいえ。
私も少しよそ見をしてたものでお互い様ですよ」
「…良かった……」
ぶつかった相手は黒い帽子に黒いコートという全身黒ずくめのちょっと怖そうな人だったが、気軽そうな少し高めの男声に僕は安心した。
「あの、もし何かあったら連絡ください。
病院代は出しますので…」
「あーいえいえ!
そこまでしなくてもちょっとぶつかっただけですからご心配なくですよ!」
顔こそ見えなけれど、男の人は遠慮気味にそう言った。
「それよりも………」
「ッ!?」
突然男の人は僕に近づいた。
僕の顔を覗き込むも、不思議と素顔は見えなかった。
正確には、あまりに不吉にも思える青白い肌と気味悪く嗤う口元だけが見えていた。
「アナタ………「未練の影」がありますねェ………」
「えっ……」
一瞬で全身の血の気が引いた。
僕の身体が全力で「この男は危険だ」と警鐘を鳴らしていた。
「……あの………それってどういう…………」
恐る恐る聞き返すも、男はゆっくりと僕から離れ、さっきと同じトーンで再び喋った。
「いけませんねぇ。
誰かを想う気持ちは素敵で芸術的なことですが、いきすぎた想いは時に「鎖」となってその人を縛り付けてしまいますからねェ……」
声色こそ変わらずも、男の口元は気味悪く嗤っていた。
『この人……もしかして涼子のことを……。
だとしたら、僕と涼子のことを知ってる人…?
それとも「企業」の人とか…?』
一瞬、思慮してから男のことを聞こうとした時だった。
「あ、あのっ……あなたは一体……………あれっ………」
顔を上げると、そこに男の姿はなかった。
まるで最初から僕一人しか居なかったかのように。
『なんか……怖くなってきた……』
身に覚えのない恐怖を感じ、僕はすぐさま家に走って帰った。
「…っていうことがあってね、さすがに僕も怖くなったよ」
「そうだったんですね…」
家に急ぎ戻った僕は涼にさっきあったことを説明した。
「一応「企業」にも伝えておきますね。
翔くんの身に何かあっては困りますからね」
「何も無いとは思うけど……よろしく頼むよ」
涼の煎れてくれたコーヒーのお陰で僕は何とか落ち着きを取り戻した。
「もぅ……ぼーっとしてた僕にも責任があるとはいえ、以前のヤンキーの三人の件といい、学ばない自分が嫌になってくるよ…」
「翔くん……」
涼は優しく僕の背中をさすってくれた。
その手はすごく優しくて暖かいが、今の僕には少し物足りなかった。
「ほんと、あの人は一体なんだったんだろう……。
まるで涼子のことを見透かしたかのようなセリフだったし、コスプレみたいな格好だったけどあれで歩くのはさすがに怪しすぎるもんな……。
だとしたら…………「死神」か何かだったのかな……」
実際、僕は霊感とかお化けとかそういった超常現象とはあいにく縁がない。
だからさっきあった男が死神だなんてあまりに突拍子も無いセリフなのは分かってる。
「考えすぎですよ翔くん。
あまり根詰めすぎると、ほんとに悪い方に引っ張られちゃいますよ」
「そう……だね……」
涼が気遣ってくれるも、僕の不安は落ちきれない油汚れのようにべったりとこびりついたままだった。
「………」
翌日、大学のお昼の時間に僕は神原に昨日のことを伝えた。
「そんなの、気のせいに決まってんだろうに。
ぶつかった時に頭でもぶつけたんじゃねぇのか?」
「気のせいだとは思うけど、怪我とかはしてないよ。
向こうもけろっとしてたし、普通に話もしてたし……もう、訳わかんないよもう…」
「お前、最近疲れてるとかじゃねぇのか?
なんか不安があるとかさ」
「んー。
お金も………バイトで何とか賄えてるからそんなことないし、友達も神原しかいないし恋人だって………」
涼子はともかく、お金に関しては本当に困ってない。
唯一、光熱費だけは涼の通信・充電の為に部屋の電気を必要とするゆえ、そこは無証で保証させて欲しいと言われ僕は少しだけ甘える気持ちで承諾した。
生活費のほんの一部とはいえ、大学に通いつつバイト暮らしをしてる僕には大いに助かっている。
「まぁよく分かんねぇけどさ、とりあえずお前ももうちょい気を付けないとダメだってことだな。
じゃないと………お前の弁当のおかずも気が付けば無くなっちまってるかもしれねぇんだから」
「えっ…?
………ちょっ、神原!
いつの間に僕の弁当のおかずを…!」
気がついた頃には、僕の弁当箱からおかずの唐揚げと卵焼きを一個ずつ取っていた。
「……んめぇ〜。
佐山、お前どんだけ自分の昼飯にまでこだわってんだよ。
別にお前が料理好きだとしても俺は何も言わねぇけどよ、あんまり毎日美味い昼飯持ってきてると俺の箸が止まんねぇんだよ」
「神原………」
前にも言ったが、神原には涼のことは内緒だ。
「企業」との約束事でもあるし、神原の口の緩さは瞬く間にリアル、SNSで拡散されかねない。
『それだけは絶対に破ってはいけない。
とりあえず神原は僕が料理趣味の男と勘違いしてるみたいだし』
友人を騙すのはいい気分では無いが、今は仕方あるまい。
「ふぅ〜。
ご馳走様だった〜」
「…?
………あっ…!」
神原の言葉にどこか違和感を感じて自分の弁当箱を見ると、唐揚げとミニトマト一個だけが残っていた。
「神原……お前なぁ……」
「悪ぃ悪ぃ!
あまりにお前のおかずが美味いからよ、つい手止まんなくなるんだよ!
詫びに購買でなんか奢るからさ!」
「はぁ……」
別におかずを取られたことに怒ってるわけじゃない。
個人的に大学に行く日は涼の弁当が一番の楽しみであるゆえ、一個二個ならともかく、多方を取られるのはせっかくの楽しみを奪われた気がして芳しくないのだ。
結局、神原は購買で菓子パン二個を奢ってくれたが、家に帰るまで僕の機嫌が直ることはなかった。
「ただいまー……」
沈んだ気分で家に帰ると、そこに涼の姿はなかった。
『買い物にでも行ったのかな…』
荷物を下ろしてソファーに腰を下ろしながらテレビをつける。
「………」
不思議と寂しい気持ちが膨らんできた。
昨日は変な人に声をかけられ、今日は神原に楽しみにしていた涼のおかずも根こそぎ食べられて………。
「やっぱり僕って子供なのかな……」
そう思うのには理由がある。
僕は小さい頃から自分のものを取られることに強い抵抗感があった。
好物のおかず、遊んでたおもちゃ、借りようと思ってた本………何故かは分からないがとにかく僕は昔から「取られる」という行為に強い拒絶感を感じていた。
『最近でこそ薄れてきたものの、今日の感覚は久しぶりだったな…』
神原に最初おかずを取られた時もピリッと神経を逆撫でられた気分になった。
挙げ句、多方を取られたから尚更。
「…ダメだな………どうして僕はこうなんだろうか…」
また悪い癖が出てくる。
そんな時だった。
『…あら、翔くん帰ったんですかー?』
玄関から涼の声が聞こえてきた。
ちょうど買い物から帰ったのだろう。
「おかえり涼。
どこか行ってたの?」
「はい。
翔くん、冷蔵庫見ました?」
「え…どうして冷蔵庫…?」
エコバッグを片手に涼が冷蔵庫の扉を開けると、何かを出した。
「…翔くん、また悪いこと考えて自分を追い詰めてるんじゃないかと思って……これ、作ってみたんですよ」
「…?
………これ……」
涼が冷蔵庫から出したのは……まさかのホールケーキだった。
「これ……涼が作ったの…?」
「うん。
前からケーキも作ってみたいと思ってたんですけど、翔くん元気ないから甘いものを食べれば元気出ると思って作ってみたんです」
それはそれはお店のと変わらないサイズの、しかも見た目もバースデーケーキそのものだった。
ケーキの真ん中に鎮座するチョコプレートには「翔くん元気だして!」とホワイトソースで書かれていた。
「っ………」
自然と涙が出た。
涼の気遣いもそうだが、実は過去に似た経験があった。
それは涼子と付き合って間もない頃のこと。
その日は五月二十六日……涼子の誕生日ということもあり、僕はデパートにプレゼント用のチョコを買いに来ていた。
『せっかくだし、先生にも買っていこうかな』
当時、担任の先生だった「雨宮大貴」とは少し仲が良かったのもあり、僕は普段の感謝の気持ちを込めての意味も兼ねて涼子にあげるチョコとは別に先生へのチョコも買った。
涼子のは色んな形をした八個入りのミルクチョコ。
先生にはシンプルなブランデー入りのチョコである。
「…よし」
それぞれを間違いなく買い、翌日僕は学校に持って行った。
「先生。
これ、普段お世話になってる気持ちです」
「ん?
おぉ、ありがとう佐山!
男からチョコをもらうってのはどうかだけど、ありがたくもらうよ」
「あはは。
どういたしまして」
朝のうちにまず先生にチョコを渡し放課後、涼子にあげる算段を立てていた…時だった。
『涼子のチョコは僕がこだわって選んだやつだからな…。
絶対にあげないと………って……あれ……?』
カバンに入れていたチョコを確認すると、僕はある事に気が付いた。
『…これ……先生にあげるブランデー入りのチョコだ…!』
何故その事に今更気付いたのかというと、二人にあげるチョコは同じラッピングの袋で包まれていた。
その事をすっかり忘れていた僕は、見事に二分の一の確率の悪い方を引いてしまったという訳だ。
『どうしよう…。
先生は職員室に持って行っちゃっただろうし、こっそりすり替えるにも職員室じゃ誰かしら先生もいるだろうから上手く出来るわけないし……』
結局、僕はその日の放課後まで悩みに悩んで何も出来ずに涼子にブランデーチョコをあげることとなった。
「ごめん涼子!
本当はこれ、先生にあげるチョコだったんだけど、ラッピングが同じなのを忘れてて中身を確認しないで涼子用のチョコをあげちゃったんだ…。
しかもブランデーチョコだから涼子は食べれないやつだし……」
放課後、僕は半べそをかきながら涼子にブランデーチョコをあげる始末となった。
「大丈夫だよ翔ちゃん!
ブランデーチョコならお父さんとお母さんも好きだから気にしないで!」
「でも……僕は……涼子の為に頑張って選んだやつだったんだ……」
「翔ちゃん……」
涼子は優しく僕の背中をさすってくれる。
その優しさに思わず僕は子供のように泣きじゃくった。
『どうして僕は昔からどんくさいんだろう…。
自分が嫌になってくる……』
努力すればするほど僕はつまづく癖がある。
だからいつからか誰かの為に何かをしようだなんて辞めていた…はずだった。
「翔ちゃん」
涼子は不意に僕を抱きしめてくれた。
「私…嬉しいよ。
翔ちゃんがそこまで一生懸命選んでくれたなんて、私はすごく幸せだよ。
そんなに健気に想ってくれてたなんて……私にはもったいないよ」
「っ…!
そんなことないよ!!
涼子の方が何倍も健気で一途で努力家で……こんなドベな僕に……僕の想いを受け止めてくれて………」
途中から泣き出しながら必死に訴えかけるも、涼子は黙って僕の背中をさすってくれた。
そのあまりに母性感の強い包容感に途中で僕は母に泣き縋る子どものように泣いた。
「本当に嬉しいよ翔ちゃん。
私、翔ちゃんが恋人で本当に良かったと思うよ」
数週間後の放課後、僕は涼子と一緒に下校していた。
「翔ちゃん。
今日何の日か知ってる?」
「今日?
えっと………」
僕が何の日か考えていると、涼子から僕の手に何かを握らされた。
かと思いきや、涼子は同時に僕から距離を取り「ばいばい!」とだけ叫んで帰ってしまった。
『どうしたんだろう。
それに、今日って何の……………』
今日何の日か考えながら涼子が僕の手に握らせた何かを見ると、そこには小さな小包みが入っていた。
『これ………もしかして……』
小包みを開けると、中にはカラフルな色をした小さなドーナツが五個入っていた。
「ッ………」
思わず僕は泣きそうになった。
そう、今日はバレンタインデーだった。
『涼子……もしかして、手作りで作ってくれたのかな…』
入っていたドーナツは無地の白箱にキッチンペーパーが敷かれ、キッチンペーパーにはうっすら揚げた痕跡の油が染みていた。
しかもドーナツの入った箱の隣に一枚のメッセージカードが入っていた。
『泣き虫翔ちゃんへ
私も一生懸命こだわってみたよ!』
手紙には手書きでそう書かれていた。
「涼子ッ………」
結局僕は泣いた。
とにかく彼女の優しさが嬉しくて、辛くて、胸いっぱいすぎてどうしようもなくて………好きだった。
『ありがとう……涼子…。
僕も、君が恋人になってくれて本当に嬉しいよ…』
涼子のドーナツを一秒でも早く食べたくなった僕は、急ぎ足で家に帰った。
「しょ、翔くん……大丈夫ですか…?」
「……んぇ?
あ、あぁ…!
大丈夫だよ…」
突然泣き出したことに驚かせてしまったらしく、涼は怪訝な表情で心配していた。
「…ちょっと………昔を思い出してね…」
「…涼子さん……ですか?」
コクっと頷くと、涼は少し寂しげな顔をしながらもケーキをテーブルに置いた。
「じゃあ、涼子さんみたいに私があーんしてあげましょうか?」
「ちょ…!
流石にあーんはしなかったよ……あはは…」
「そうなんですか?
じゃあ、私が初あーんしてあげますよ?」
「そ、それは嬉しいような困るような……」
「うふふ」と涼ははにかむ。
その笑顔に僕の心臓がギュッと締め付けられる気がした。
『涼は本当に知らないのだろう。
あの涼子を思い出してと言った時の顔は、まるで嫉妬を感じさせるような…』
最近、涼の表情や言動で気持ちが読めるようになってきた気がする。
だとすれば、それは涼のおかげだ。
「涼」
「…?」
だから僕は自信を持って言える。
「………ありがとう…」
涼は一瞬、目を見開くも、すぐいつも通りの笑顔に戻った。
「…そう思うなら、早くケーキ食べちゃってください」
ほんの少しだけ棘のある言い方をするも、涼は楽しそうに頬杖をついて待っていた。
「……でも、流石に僕一人でケーキワンホールは多すぎるかな…」
「私が翔くんの為に作ったんです。
早く食べきらないと翔くんのこと嫌いになっちゃいますからね」
「それは勘弁だね」
「ふふん」と鼻を鳴らしながら涼はいつも通り頬杖をつきながら僕が食べる姿を見つめていた。
「…そうだ。
もうすぐクリスマスだね。
どうしよっか」
「そうですねぇ…」
とは言ったものの、何気に涼とは初めてのクリスマス。
彼女が喜ぶことならしてあげたいが、涼が喜ぶことなんて…。
「私は翔くんと一緒にいられるならどこに出ずとも平気ですよ」
ほら。
彼女ならそう言うと……
「でも…せっかくですから、どこか行きたいですね。
……そうです!
遊園地いきたいです!」
「えっ!?
遊園地!?」
まさかの発言だった。
しかし、遊園地ではどこの時期じゃどこもやってないはず…。
「テレビで見て気になったんです!
建物の中でスケートボードとかトランポリンとか出来るとこが行きたいです!」
「あ………あぁ……屋内テーマパーク的なとこか…」
「そうです!
みんな楽しそうでいいなぁって思ったんです!
…翔くんはどうですか……?」
「まぁ……予定とかもないから僕は大丈夫だし……いいんじゃないかな」
「…!
じゃあ決まりです!」
そう言うと涼は自分の左耳に手を当てた。
『メッセージ。
実験対象者「佐山翔太」と屋内テーマパークに行く為、チケットの手配をお願いします』
「…!?
涼、今なんてっ……」
僕が声をかける頃には涼は数秒前の涼に戻っていた。
「はい。
「企業」にテーマパークのチケット手配をお願いしました。
もちろん、経費として落としてもらいます。
これも立派な「実験検証」ですからね!」
ふふんと鼻を鳴らすも、僕は冷や汗をかくことしか出来なかった。
『まぁ、涼が行きたがってるなら…ね』
どことない罪悪感に駆られつつも、僕は来る遊園地デートに期待をせずにはいられなかった。




