七の②
「生命とは芸術作品なのですよ。一度いのちを与えられれば、それはいつか死ぬことになる。その漠然とした恐怖を前提にしながら、生を全うする。その姿は健気で、美しいと。我々はそう思って、それを鑑賞するのです。あなたもそうでしょう? 西山ガイ」
それは東堂の本音だったやもしれない。でも今はもう、いささか違うのではないか、と期待してみたくもなるのだ。
「あなたは特別です。いのちある身でありながら、そのせいで『死』に抗わねばならぬというのに、命をこよなく愛している。主はそれを踏まえられて、あなたを選ばれたのかもしれませんね」
つまらない話だ。
「私たちはみんな、『感情』というものを生命から学んで、それを憧れて真似しているだけなのですよ。……『感情』って、ホントはどんなものなのですか?」
「どうしようもなく苦しくて死にたくなったり、気づけば一つのことに夢中になって、それでたまに後悔してまたどうしようもなく苦しくなって、その代わりに自分で何だか分からないくらい心が温かくなったり、もっと熱くなったり、それも全部『感情』があるからなんだ」
「へえ……それは面白そうですね。私もあの時生命になっておくべきでした」
東堂が後悔するところの詳細は僕には分からないが、彼は本気で残念そうな顔をするのだった。
「迷惑かもしれませんけれど……また時々、会いに来てもいいですか?」
僕は何も言わないまま、枯れた花弁を撫でていた。
「花……枯れてしまったのですか」
「別にいいよ」
僕はすっくと立ち上がって、できるだけ上手な笑顔をつくろうと意識した。
「確かに、生きていたんだから」




