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第五話 年下のおば

〈目次〉

・第一節 可愛い来客

・第二節 憧れの青春

・第三節 友情


〜登場人物〜

・山崎結衣(19歳)

 山崎弘・美佐子夫妻の長女。意義人の姉。文学部の女子大生。美白な肌と綺麗な茶色のロングヘア、美脚、丸い小顔が特徴。普段は青いワンピースを着ている。少しだけ女優として活動している。弟とよく喧嘩をしてしまうが、大切に思っている。


・山崎意義人(17歳)

 山崎弘・美佐子夫妻の長男で、結衣の弟。男子高校生。結衣と比較すると地味な顔立ちだが、似ている部分もある。姉とは仲良しだが、よく喧嘩もする。


・山崎弘(45歳)

 山崎義郎・文枝夫妻の長男で、結衣と意義人の父。容姿は、眼鏡をかけた地味な丸顔で、髪は少し薄く、小太りである。愛娘の結衣を溺愛している。


・山崎美佐子(42歳)

 田辺寛夫・優美子夫妻の長女で、結衣と意義人の母。顔は結衣と似ているが、結衣よりもほんの少し面長。髪型は、若干ウェーブがかかった茶髪。優しい性格。


・山崎義郎(79歳)

 弘の父で、結衣や果歩の祖父。美佐子と百合奈の舅。元衆議院議員。新潟に別荘を所有しており、美佐子と結衣を招待しようとしている。


・山崎百合奈(18歳)

 山崎龍(弘の弟)の後妻。16歳の時、龍と結婚して果歩を産んだ。果歩の出産と育児で疲労しており、大学で青春を謳歌する結衣に羨望の眼差しを向けている。


・山崎果歩(2歳)

 山崎龍と百合奈の娘で、結衣の従妹にあたる。幼稚園児。可愛がってくれる魅力的な従姉の結衣にいつも懐いている。

第一節 可愛い来客


 義郎(美佐子の舅)が所有する新潟の別荘へ行くのは来月の予定となった。東京から新潟は新幹線で移動すればさほど時間はかからないが、義郎は高齢で、普段、別荘に住んでいるわけではないので、気軽に行くことができないのだ。美佐子は別荘に行くのを楽しみにしているようで、最近は少しずつ顔色が良くなってきたように見える。


 今日は平日だが、美佐子は有給休暇、結衣は大学が休みなので、家の中は美佐子と結衣の二人だ。母と娘はリビングで、来月の別荘行きについてあれこれと話しながら、楽しくお茶を飲んでいる。


結衣「ねえ、お母さん。別荘に行ったら、何する?私、久々にゆっくり読書したいな〜。テラスで海を見ながらとか、最高だよね!」


美佐子「そうねぇ。私は美味しいもの巡りでもしたいかしら。新鮮な魚介とか、有名なお菓子屋さんとか、調べておこうっと。結衣も一緒に付き合ってくれる?」


結衣「もちろん!でも、お母さん、あんまり無理しないでね。せっかくの休暇なんだから、のんびりするのも大事だよ。」


美佐子「あら、結衣に言われると、まるで私が子供みたいね。ふふ、ありがとう。結衣も、たまには羽を伸ばさないとね。意義人とのことも、そこでゆっくり考えたらどうかしら?」


 美佐子が意義人の話を出したところで、突然、明るいチャイムの音がリビングに響いた。


「ピンポーン!」


結衣「あ、来た来た!」


 結衣は嬉しそうな声を上げて玄関へと向かう。ドアを開けると、そこには百合奈(結衣の義叔母)と、その娘である果歩(結衣の従妹)が立っていた。今日、結衣は百合奈と果歩と遊ぶ約束をしているのだ。


百合奈「結衣ちゃん、こんにちは。お邪魔します。お約束通り、果歩と遊びに来ちゃいました。」


 百合奈は結衣にいつもの謙遜した感じで話す。しかし二人の会話の中には親友のような親しみが感じ取れる。


結衣「百合奈ちゃん、果歩ちゃん、いらっしゃーい!待ってたよ!さ、上がって上がって!」


 結衣は、百合奈と果歩をリビングへと招き入れた。果歩は、結衣の姿を見るなり、ニコニコと駆け寄ってきて、その足にぎゅっとしがみついた。


果歩「ゆいちゃーん!」


結衣「あらあら、果歩ちゃん。もうそんなに大きくなったの?可愛いねぇ。」


 結衣は、屈んで果歩の頭を優しく撫でた。果歩は、従姉の結衣に相変わらずベッタリだ。今、リビングにいるのは女性四人だ。リビングは、一気に華やかで賑やかな雰囲気に包まれた。


美佐子「あら、百合奈ちゃん、果歩ちゃん、ようこそ。さ、こっちへどうぞ。お茶でもいかが?」


 美佐子も笑顔で二人を迎えた。結衣は、果歩を抱き上げ、百合奈と美佐子の隣に座った。賑やかな女子会が、今、始まったばかりだ。



第二節 憧れの青春


 百合奈は、結衣が果歩と楽しそうに遊んでいる姿を微笑ましく見つめながら、温かいお茶を一口飲んだ。


百合奈「結衣ちゃん、大学生活はどう?楽しい?私、大学とかって行ったことないから、どんな感じなのか、結衣ちゃんの話を聞かせてもらえたら嬉しいな。」


 百合奈は16歳の頃、果歩の妊娠をきっかけに高校を中退しているため、青春時代の記憶はほとんどない。百合奈の瞳には、結衣の大学生活への純粋な好奇心と、少しばかりの羨望が混じっているように見えた。


結衣「えー、大学生活?まあ、楽しいことばかりじゃないけどね。でも、色々なことを学べるし、新しい出会いもあるし…」


 結衣は、百合奈の問いかけに、少しだけ考え込んだ。どこから話せば、百合奈に大学の雰囲気が伝わるだろうか。結衣は、先日の茜とのドタバタ劇を思い出し、クスッと笑った。


結衣「例えば…この前なんて、すごく面白いことがあったのよ。お昼前の授業中に、私のお腹がすっごい音で鳴っちゃって…!もう、教室中に響き渡るくらいの、猛獣の咆哮みたいな音で!」


 結衣は、身振り手振りを交えながら、先日あった出来事を話し始めた。お腹の音のこと、茜がからかってきたこと、そして、田辺教授との偶然の再会のこと。百合奈は、結衣の話に、目を輝かせながら耳を傾けている。果歩も、結衣の楽しそうな話しぶりに、ニコニコしながら結衣の膝の上で跳ねている。


百合奈「えー!結衣ちゃんのお腹が猛獣の咆哮!?想像できない!結衣ちゃんっていつもクールだから、そういうハプニングがあるなんて!」


 百合奈は、結衣の普段の様子を知っているだけに、その意外性に驚き、楽しそうに笑った。美佐子も、娘のそんな話を聞いて、再びクスッと笑う。


美佐子「私も、結衣がそんなに大きな音でお腹を鳴らしたなんて、今日初めて聞いたわ。茜ちゃんも、相変わらず面白い子ね。」


結衣「そうなのよ〜!もう、茜ったら、私の恥ずかしがる顔を見るのが趣味みたいで。でも、そのおかげで、ちょっと元気が出たんだけどね。それでね、その後に、田辺教授っていう親戚の人に会ったんだけど…」


 結衣は、そう言って、田辺教授が美佐子の昔話をしたことや、美佐子と弘の関係を心配している素振りを見せたことなどを、百合奈に伝えた。百合奈は、真剣な表情で結衣の話を聞いている。彼女にとって、結衣の話は、単なる大学の日常ではなく、自分には経験できなかった「青春」そのものなのだろう。


百合奈「へぇ〜、結衣ちゃんの親戚に大学の先生がいるなんてすごいね!それに、結衣ちゃんのお母さんのことも心配してくれるなんて、素敵な人だね。大学って、色々な人がいるんだね…。」


 百合奈は、結衣の話を聞きながら、どこか遠い目をして呟いた。結衣は、百合奈のそんな様子を見て、少しだけ胸が締め付けられるような気持ちになった。百合奈が経験できなかった青春の時間を、少しでも共有してあげたい。結衣は、そう思った。


結衣「そうだよ、百合奈ちゃん。大学って、本当に色々な人がいるし、色々なことがあるんだよ。でもね、百合奈ちゃんも、果歩ちゃんがいるじゃない?百合奈ちゃんにしかできない、素敵な経験をたくさんしてるんだから。」


 結衣は、そう言って、百合奈の手をそっと握った。百合奈は、結衣の言葉に、はっとしたように顔を上げ、優しい笑顔を浮かべた。


百合奈「うん…そうだね。結衣ちゃん、ありがとう。結衣ちゃんの話、もっと聞きたいな!」


 百合奈は、そう言って、再び結衣の大学での出来事に興味津々の表情を見せた。結衣は、そんな百合奈の期待に応えるように、さらに大学でのエピソードを話し続けた。リビングは、女性たちの賑やかな笑い声で満たされていた。



第三節 友情


 百合奈は現在、18歳。本来なら今頃高校で青春を謳歌しているはずだ。結衣に対して少し憧れをみせるが、妬みなどは全くない。育児は大変だが、百合奈は果歩の幼くて可愛い顔が大好きだ。結衣の話に耳を傾けながら、百合奈は時折、果歩の頬にキスをする。

 結衣の膝の上に座っている果歩は、結衣の話を聞いているうちに、興味津々といった様子で、結衣のお腹に耳を当て始めた。無邪気な子供の行動に、結衣はくすぐったそうに笑う。


果歩「赤ちゃんいるの?」


 果歩は、澄んだ瞳で結衣を見上げ、そう尋ねた。その言葉に、リビングにいた女性陣は一瞬、沈黙した。美佐子と百合奈は、顔を見合わせ、戸惑ったような表情を浮かべている。結衣は、果歩の突拍子もない質問に、思わず吹き出した。


結衣「えーっ!?赤ちゃん!?いないいない!なんで果歩ちゃん、そんなこと聞くの?」


 結衣は、果歩の頭を優しく撫でながら、笑って答えた。しかし、果歩は納得がいかない様子で、再び結衣のお腹に耳をぴたりとつけた。


果歩「だって…おと、したの。お腹から、おっきいおと、したの。ママのお腹も、赤ちゃんいる時、おと、してたもん。」


 果歩の純粋な言葉に、結衣は先日のお腹の音のハプニングを思い出し、顔を赤くした。まさか、子供にまでお腹の音を指摘されるとは。しかも、それを赤ちゃんと結びつけられるなんて、全く予想していなかった。美佐子は、そんな結衣の様子を見て、再びクスクスと笑い始めた。百合奈も、果歩の言葉に、思わず笑みがこぼれる。


美佐子「あらあら、果歩ちゃん。結衣お姉ちゃんのお腹からは、赤ちゃんは出てこないわよ。それはね、結衣お姉ちゃんが、お腹を空かせすぎてた音なのよ。」


 美佐子は、果歩に優しく説明した。しかし、果歩はまだ少し納得がいかない様子で、結衣のお腹をじっと見つめている。


結衣「もう、果歩ちゃんまでからかうの?違うのよ〜、それはね、お姉ちゃんがお昼ご飯食べる前に、お腹が『ぐー』って鳴っちゃった音なの!赤ちゃんじゃないの!」


 結衣は、顔を赤くしながら果歩に訴えかけた。果歩は、結衣の真剣な表情を見て、ようやく納得したのか、「そっかー!」と笑顔になった。その無邪気な笑顔に、結衣はホッと胸を撫で下ろした。


百合奈「ふふ、ごめんなさいね…。私が大学の話を振ったから、恥ずかしい話思い出させちゃって…。」


 百合奈は、結衣の肩をそっと撫でながら、少し悪いと思っているような顔をした。


結衣「もう、百合奈ちゃん!そんなに気にしないでよ!果歩ちゃんは純粋だから、しょうがないじゃん!それに、もう私も開き直ってるっていうか…」


 結衣は、そう言いながらも、まだ少し顔が赤い。美佐子は、そんな二人を見て、優しい眼差しで微笑んだ。


美佐子「ふふ、でも、結衣のお腹の音を聞いて、果歩ちゃんがそんな風に思うなんて、可愛いわね。きっと、結衣のお腹の音が、それだけ大きかったってことよ。」


 美佐子は、からかうようにそう言った。結衣は、再び「もう、お母さんまで!」と頬を膨らませる。しかし、その表情は、どこか楽しそうだった。


結衣「まあ、確かに、あの音は、私でもびっくりしたけどね。でも、茜には、ずっとネタにされそうだから、それが一番困るんだよね〜。」


 結衣は、そう言ってため息をついた。百合奈は、結衣の話を聞きながら、ふと自分の青春時代に思いを馳せた。自分にも、こんな風にからかい合える友達がいたら、どんなに楽しかっただろうか。しかし、今は果歩がいる。そして、こうして結衣や美佐子と話せる時間がある。それだけで十分だ、と百合奈は思った。


百合奈「でも、そういう風に笑い合える友達がいるって、素敵なことだね、結衣ちゃん。私には、そんな友達、いなかったから…」


 百合奈は、少し寂しそうに呟いた。結衣は、百合奈のその言葉に、ハッと顔を上げた。


結衣「百合奈ちゃん…!」


 結衣は、百合奈の言葉に胸が締め付けられる思いがした。百合奈が経験できなかった青春の時間を、少しでも埋めてあげたい。結衣は、改めてそう強く思った。


結衣「百合奈ちゃん!私、百合奈ちゃんの友達だよ!それに、お母さんも!」


 結衣は、そう言って、百合奈の手をぎゅっと握った。美佐子も、優しく百合奈の肩を抱いた。百合奈は、二人の温かさに触れて、少しだけ目元を潤ませた。


百合奈「結衣ちゃん…お母さん…ありがとう…。」


 果歩は、そんな大人たちのやり取りを、不思議そうな顔で見上げていた。リビングには、温かい空気が満ちていた。女性たちの絆が、深まっていく瞬間だった。




『山崎結衣の憂鬱』第六話につづく

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