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第十八話 女子会

〈目次〉

・第一節 女子会

・第二節 焼肉と家族の話

・第三節 家畜


〜登場人物〜

・山崎結衣(19歳)

 山崎弘・美佐子夫妻の長女。意義人の姉。白鳥大学文学部。美白な肌と綺麗な茶色のロングヘア、美脚、丸い小顔が特徴。普段は青いワンピースを着ている。少しだけ女優として活動している。弟とよく喧嘩をしてしまうが、大切に思っている。


・山崎意義人(17歳)

 山崎弘・美佐子夫妻の長男で、結衣の弟。高校2年生。結衣と比較すると地味な顔立ちだが、似ている部分もある。姉とは仲良しだが、よく喧嘩もする。


・山崎弘(45歳)

 山崎義郎・文枝夫妻の長男で、結衣と意義人の父。容姿は、眼鏡をかけた地味な丸顔で、髪は少し薄く、小太りである。愛娘の結衣を溺愛している。


・山崎美佐子(42歳)

 田辺寛夫・優美子夫妻の長女で、結衣と意義人の母。顔は結衣と似ているが、結衣よりもほんの少し面長。髪型は、若干ウェーブがかかった茶髪。優しい性格。


・山田茜

 白鳥大学文学部。結衣の高校時代からの親友。髪型は黒髪ショート。生意気な顔をしている。悪戯好きな性格。


・中島明日香

 白鳥大学文学部。結衣の高校時代からの親友。髪型は金髪ポニーテール。純粋で優しい性格。


・小川史緒里

 白鳥大学文学部。結衣の高校時代からの親友。髪型はくるくるした紫髪。眼鏡をかけたインテリ風な顔。計算高い人物。

第一節 女子会


 土曜日。今日は史緒里に焼肉を奢ってもらう日だ。玄関で、弘が心配そうに結衣を見送っている。


弘「結衣、あんまり遅くなるなよ。ちゃんと気をつけて帰るんだぞ。」


 結衣は、そんな弘に苦笑いしながら頷いた。


結衣「分かってるって、パパ。女子会なんだから、心配いらないってば。」


 「女子会」という言葉に、弘は少し安心したようだ。もし拓海とのデートだったら、今頃もっと大騒ぎしていることだろう。

 焼肉店に到着すると、茜・明日香・史緒里の三人がすでに席に着いていた。茜は、結衣の姿を見るなり、元気いっぱいの声で結衣をからかい始めた。


茜「ミニスカの結衣、なんか可愛い。てかいつ見ても美脚じゃん!」


 結衣は、今日の服装に合わせて、黒いパーカーに茶色のミニスカートを身につけていた。茜は、すっかりいつものいたずら好きな雰囲気に戻っている。


結衣「もう、茜ったら。褒めても何も出ないわよ。」


 結衣はそう言いながらも、少しだけ嬉しそうに微笑んだ。茜の言葉は、ストレートで心地よい。

 明日香は、長袖長ズボンの服装で、純粋そうな顔で結衣に微笑みかけた。


明日香「結衣ちゃん、こんばんは。楽しみだね、焼肉。」


 史緒里の服装も長袖長ズボンで、知的な感じで結衣に会釈をした。


史緒里「結衣さん、お待ちしておりましたわ。ささ、お座りになってくださいな。」


 茜は長袖に半ズボンというラフな格好で、生意気な顔で結衣を見上げている。四人それぞれの個性が、このテーブルに集まっている。

 席に着いた結衣は、メニューを広げながら、改めて史緒里に礼を言った。


結衣「史緒里、今日は本当にありがとうね。焼肉、楽しみだわ。」


史緒里「いえいえ、これも課題を教えていただいたお礼ですわ。存分に召し上がってくださいな。」


 そう言って、史緒里は得意げに笑った。結衣は、そんな史緒里の顔を見ながら、心の中で「やっぱり、したたかだわ」と呟いた。しかし、目の前には美味しそうな焼肉のメニューが並んでいる。結衣は、今日ばかりは史緒里の思惑に乗り、存分に楽しもうと心に決めた。


挿絵(By みてみん)


 肉を注文し終え、網に肉が乗せられ、ジュウジュウと美味しそうな音を立て始めた頃、茜が突然、とんでもないことを言い出した。


茜「結衣のムネ肉食べたい!」


 茜は、結衣の胸元を指差しながら、悪気なくそう言った。結衣は、一瞬何を言われたのか分からず、ポカンとした顔をしている。隣に座っていた明日香は、「もう、茜ちゃんったら!」と慌てて茜の口を塞ごうとする。


史緒里「あらあら、茜さん。ももの方もなかなかですわよ。」


 史緒里は、茜の言葉に乗じるかのように、ニヤリと笑った。そして、結衣のミニスカートから覗く、すらりとした太ももに視線を向けた。その言葉に、結衣は完全に顔を赤くした。


結衣「なっ…あんたたち、何言ってるのよ!変態!」


 結衣は、恥ずかしさのあまり、思わず叫んでしまった。焼肉の煙が充満する中で、結衣の顔は熱くてたまらない。


明日香「茜ちゃんも史緒里ちゃんも、もう!結衣ちゃんが可哀想でしょ!」


 明日香は、心底困ったように二人を窘めた。しかし、茜と史緒里は、結衣の反応を見て、さらに面白がっているようだった。


茜「だってー!結衣、本当にスタイルいいんだもん!むにむにしてて気持ち良さそうだし、ミニスカ履いてるから、太もももつるつるで…」


 茜は、なおも無邪気に結衣の身体的な特徴を褒め称える。結衣は、もうどうしていいか分からず、焼肉の煙の中に顔を埋めたくなった。


結衣「もう、食べなさい!お肉!冷めちゃうでしょ!」


 結衣は、半ば強引に茜の口に焼いたばかりの肉を押し込んだ。茜は、もぐもぐと肉を噛みながら、それでも楽しそうに笑っている。史緒里も、クスクスと笑いながら、結衣の顔を面白そうに眺めていた。

 この三人に囲まれていると、いつもこうだ。恥ずかしい思いをさせられるけれど、どこか憎めない。結衣は、ため息をつきながらも、目の前で美味しそうに焼けていく肉に、そっと箸を伸ばした。今は、肉を食べることに集中しよう。そう、結衣は心に決めた。



第二節 焼肉と家族の話


 美味しそうな肉が次々と網の上で焼かれ、香ばしい匂いが食欲をそそる。四人の会話も弾む中、結衣の食べるスピードは他を圧倒していた。まるで競争しているかのように、次から次へと肉を口に運び、あっという間に皿の肉を平らげていく。


明日香「結衣ちゃん、食べるの早いねー!見てて気持ちいい!」


 明日香は、素直な感想を口にした。史緒里は、そんな結衣の食べっぷりを、面白そうに眺めている。


史緒里「結衣さんは、ああ見えて結構な食いしん坊ですからねぇ。この前、学食で見た時は、その量に驚きましたわ。」


茜「だよね!うちも見た!結衣、マジで燃費悪いんだから!」


 茜は、ゲラゲラと笑いながら、結衣をからかった。結衣は、そんな三人の言葉に耳を傾けず、黙々と肉を食べ続けていた。

 食事が一段落した頃、話題はそれぞれの家族の話に移った。


明日香「ねぇ、結衣ちゃんのお母さんって、すごく美人で優しいって聞いたけど、お父さんと大喧嘩するの?」


 明日香は、可愛くて知的な美佐子が、弘と大喧嘩してダイヤモンドの指輪を投げたことがあるという話を聞いて、衝撃を受けていた。結衣は、少し遠い目をして頷いた。


結衣「まあね。お母さん、普段はすごく穏やかだけど、怒ると怖いから。あの時は、お父さんの実家とお母さんの間でいろいろあって…。」


 結衣は、少し苦笑いを浮かべながら、当時のことを話した。あの時は、家の中の空気がピリピリしていたのを覚えている。


茜「へー、結衣のお母さんってそんな一面もあるんだ!なんか意外。結衣とあんまり似てないね。結衣はお父さんに似てるのかな?あっ、でも、結衣って色気あるけど、意義人は地味だよねー。」


 茜は、フッと笑いながらそう言った。茜と意義人は顔見知りだ。結衣は、茜の言葉にムッとする。


結衣「ちょっと、茜!意義人、地味なんかじゃないわよ!それに、私はお父さんには似てないのよ!お母さん似なの!」


 結衣は、そう反論したが、茜はケラケラと笑うばかりだ。


史緒里「そういえば、結衣さんのお祖父じい様は、東大出身だとお聞きしましたが、本当ですの?」


 史緒里は、さらっと話を切り出した。結衣は、史緒里の計算高さに、内心で舌を巻いた。こんなところで、祖父の話を出してくるとは。


結衣「ええ、そうよ。それが何か?」


 結衣は、少し警戒しながら答えた。史緒里は、眼鏡をクイッと上げながら、結衣の目を見つめた。


史緒里「いえ、わたくしも少し、学業で悩んでおりまして。もし差し支えなければ、今度、そのお祖父じいさまに…」


 史緒里は、あくまで上品な口調で、しかし、しっかりと自分の要求を伝えてきた。結衣は、内心で「やっぱりな」と思った。しかし、祖父の寛夫が、果たして史緒里の頼みを聞いてくれるかどうかは疑問だ。寛夫は、孫には優しいが、学業に関しては厳しい。特に、自分で努力しようとしない者には、容赦がない。


結衣「…それは、ちょっと難しいんじゃないかしら。おじいちゃん、普段から忙しいし…」


 結衣は、史緒里の誘いを、やんわりと断ろうとした。しかし、史緒里は諦める様子はない。


史緒里「まあ、そうおっしゃらずに。わたくし、結衣さんのためなら、どんなことでもいたしますわよ?」


 史緒里は、意味深な笑みを浮かべた。その言葉に、結衣は少しだけ身構えた。史緒里が何を考えているのか、結衣には分からない。しかし、ただごとではないことだけは、確かだ。



第三節 家畜


 焼肉は依然として活況を呈していた。網の上では肉が焼ける音、そして四人の会話が絶え間なく続く。結衣は相変わらずのハイスピードで肉を胃袋はらへと収めていく。しかし、他の三人は徐々にペースダウンしていた。特に茜は、すでにお腹いっぱいのようで、箸を置いていた。


茜「結衣、そんなに食べたら太っちゃうよ?」


 学食でなら、いつもの冗談として笑い飛ばせるこのセリフも、カロリーの高い焼肉を前にすると、どこか茜の心配が滲んでいるように聞こえた。結衣は肉を頬張りながら、フッと鼻で笑った。


結衣「大丈夫だって。私、食べても太らない体質だから。」


 そう言って、また一枚、肉を網に乗せる。その自信満々な態度に、茜は呆れたように首を振った。


史緒里「太った結衣さんも良いじゃない。家畜の牛や豚だって、太らせてからいただくわけですし。」


 史緒里は、ジュースの入ったグラスを傾けながら、結衣の丸みを帯びた頬を見つめて不敵な笑みを浮かべた。その言葉には、どこか悪意が込められているようにも聞こえる。結衣は、一瞬箸を止めて史緒里を睨みつけた。


結衣「ちょっと、史緒里。あんた、今何て言った?」


 結衣の目が少し吊り上がった。史緒里は、そんな結衣の反応を面白がるように、さらに笑みを深める。


史緒里「あら、冗談ですわよ、冗談。でも、結衣さんって、美味しいもの食べると本当に幸せそうな顔をされますものね。見ているこちらも、ついつい嬉しくなってしまいますわ。」


 史緒里は、巧みに言葉を操り、結衣の怒りを鎮めようとする。結衣は、まだ少し不満そうな顔をしていたが、目の前の焼肉の誘惑には勝てなかったようだ。再び箸を手に取り、肉を口に運んだ。


明日香「でも、結衣ちゃん、本当にすごいね。私、もうお腹いっぱいだよ。」


 明日香は、お腹をさすりながら、感心したように言った。結衣は、そんな明日香にニヤリと笑いかけた。


結衣「まだまだいけるわよ。せっかく史緒里が奢ってくれるんだから、元取らないとね。」


 結衣はそう言って、また一枚、肉を網に乗せた。史緒里は、その言葉に苦笑いを浮かべながらも、グラスに残ったジュースをゆっくりと飲み干した。今日の焼肉代は、結衣一人で半分くらい使い果たしてしまいそうだ。




『山崎結衣の憂鬱』第十九話につづく

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