人妻
友達の彼女との一晩が忘れられない俺、坂上陽一は2人の結婚式に出席する事にした
俺、坂上陽一は忘れる事が出来なかった
あれから誰と付き合ってもあの夜に勝る夜は来なかった
大学を卒業して1年後に弘樹とかよちゃんの結婚式の招待状が届いた
俺は理由をつけて欠席をしようかとも考えたが行くことにした
確かめたかった
俺は「かよちゃん」が今も好きなんじゃないかと
披露宴で今まで見た事がないくらいに綺麗に着飾った彼女を見て感じた
―あれ?―
本当に無感動だった
俺が今まで見た中で一番綺麗な彼女は僕に何の感情も与えてくれなかった
まるで子供が遊び飽きた、壊れたオモチャを見るような顔だったのかもしれない
疑問と確信が同時にわいた
―あの夜の事は忘れられない自分―
―俺は彼女を愛しても、好きでもない―
披露宴には似つかわしくない笑みと溜め息が同時にこぼれる
気が付いた
いや、認めなくなかっただけか
俺は「かよちゃん」ではなく「弘樹の彼女」が欲しかったのだと
そして手に入ったモノに興味がなくなるのだと
「ガキだな」
心の中で自嘲していると友人代表スピーチに俺を呼ぶ声が聞こえた
披露宴の2次会で俺は1人の女性に声をかけた
初めて会ったその女性の左手の薬指に細いリングが馴染んでいた事に気が付いたからだ
「初めまして」
「あっ友人代表で挨拶されてた方ですよね」
「ええ、坂上陽一と言います」
「私は野沢咲です。かよちゃんとは高校の時の部活仲間です」
「そうだったんですか。僕は2人とは大学からの友達です」
当たり障りのない会話をしながら改めて彼女を見直した
少し茶色のかかった髪を上げて薄く淡い青色のドレスを着ている
小柄な体型と幼い顔立ちに笑顔が絶えないあたり、大抵の人は可愛らしいという印象を持つだろう
そして俺は核心に迫る
「指輪をされてますが結婚されているんですか?」
「はい、去年しました」
躊躇なく笑顔で答えた
俺は嬉しかった
確かに心臓の高鳴りを感じた
どす黒い下心、この幸せそうな人妻をどう攻略しようかと一瞬で思案する
綺麗すぎる言葉だが恋をしたようにときめいた
「おい陽一、何くどいてるんだよ」
突然、いい感じに酔っ払った友人がグラスを片手に近付いてきた
「酔っ払いが、くどくか!結婚されてるんだぞ」
一瞬で注目を集めて笑いがおこる
引き際だった
「じゃあ」と彼女に一言告げると俺は友人の輪に戻った
もう2度と彼女には会えないかもしれない
多少は残念だったが収穫はあった
俺は俺の在り方がわかったのだから




