子供
俺、坂上陽一は背後に視線を感じながらスーツの上着を羽織った
「行くの?」
「ええ、まだ仕事中ですから」
言いながら振り替えると彼女が無造作におかれた下着をひろいあげていた
「私もそろそろ夕食の買い物にいかないと」
彼女の名前は酒井詩乃、歳は33歳だったと思う
酒井部長の再婚相手だ
「そうですね、娘さんが帰ってくるまでに行かないとですもんね」
「ええ、そうね」
酒井部長は俺の上司だ
男の俺から見ても年齢不詳の魅力的な男性だ
酒井部長の娘は前妻との子供で俺も面識がある
「ただいま〜」
突然、玄関が開く音と声がした
まだ半裸の彼女が焦る
「うそっ」
「とりあえず服を持って奥に」
俺は小声で告げると「リビングではさすがにまずかったか」と舌打ちした
彼女と入れ替わるようにドアが開く
「あれっお母さん?」
「お帰りなさい、愛ちゃん」
俺はニッコリと笑って彼女を迎えた
「あれっ…陽クン?」
「そうだよ、覚えててくれて良かったよ」
これは本音だ
「勿論だよ♪お母さんは?」
「ちょっと出てるみたいだけどすぐに戻ると思うよ」
そう言いながら俺は必死に考えた
次にくるであろう質問にどう切り返すか
酒井部長に俺が家にいた事がばれるとまずい
最悪でも部長の耳に入っても疑われない理由を必死に探していると
「そっか〜」
と予想外すぎる言葉が彼女から放たれた
しかも落胆しているようにも見える
俺は思案する時間がある事に安堵しながら会話を続けた
「久し振りだね、大きくなったけど来年は中学生だっけ?」
「うん。陽クンはあんまり変わらないね」
一見すると中学生にも見える彼女が歳相応に笑って言った
「そうかもね」
「ねえ、連れてって欲しいところがあるをだけど?」
遠慮がちに彼女は言ってきた
「いいけど、どこかな?」
「ん〜内緒」
「いいよ、そんなに遠くなければね」
俺としては時間が欲しかったし、彼女の母親も俺達が出掛けている間に帰宅しているはずだ
「やった♪」
彼女は嬉しそうに俺の手をとった
「あっ次の信号を右ね」
彼女の案内どおりに俺は車を走らせた
部長の家がある住宅地を抜けて山道へとむかう
「この辺りって何かあったっけ?」
俺が尋ねてみても彼女は笑っているだけだった
俺は彼女を見直していた
何気ない道案内や会話に全く不自由がない
偏見かもしれないが、その辺りにいる小学生ではそうはいかないだろう
「あっここをまっすぐ行ったら左にあるから」
俺は戸惑った
心の中で「まさか」と思いながら車を走らせていると
「あっ…そこ…」
見えてきたのはお城のような壁に宿泊やら休憩やらがかかれた建物だった
俺はハザードをたいて車をよせると急にしおらしくなった彼女に聞いた
「愛ちゃん?ここが何だか分かってるの?」
「うん」
彼女は小声ながらもはっきりと答えた
「もう1度確認するけど、ここが何をするところか分かってるの?」
「うん」
改めて彼女を見ると両手を握って膝の上において俯いていた
どうやら本当にわかかっているらしい…
「ダメだよ、愛ちゃん」
俺は当然の事を口にした
「…なんで?」
彼女に聞かれて俺はハッとした
なんでダメなんだろうか俺も分からないのだ
犯罪だから?
―いや、だったら不貞行為も犯罪だ―
好きじゃないから?
―今まで好きでもない女と何人もしてきた―
身体が子供だから?
―いや、彼女は出るとこは出始めている―
「じゃあ逆に聞くけどなんで俺とラブホテルに行きたいの?」
逃げた
また問題を先送りした
「そんなの、陽クンが好きだからだよ」
彼女は俺の目を見て断言した
「ありがとう」
俺はそう答えると
「ねぇ何をうってるの?」
そう言いながら彼女は俺の横から携帯を覗き込んだ
「ああ、携帯小説だよ」
「へ〜ちょっと読ませてよ」
言うが早いか彼女は俺から携帯電話をとりあげた
「これ私?」
文字をスクロールしながら彼女は聞いてきた
「ああ、フィクションにみせかけたけど実話」
そして彼女はは悪戯っぽく笑った
「私でよかったの?」
「何聞いてんだよ」
そう言って俺は彼女を抱き締めた
気配で彼女が笑っているのが分かる
―何聞いてんだよ、俺に分かるわけないだろ―




