4 コウモリの似合う洋館と、鏡の中の「奴」
爺さんはお抱え運転手に、隣から色々と細かく指示を出していた。
時折、車の後ろや周囲を気にしていたが、どこかの国の要人じゃあるまいし尾行なんてされるわけない。
それとも、おれが誘拐されてるのか……?
おれは、物覚えは悪い方じゃないけど、走った道はややこしかった。
まるで何かをまくように、薄闇の中何時間も走り、やがてコウモリとか、カラスが似合いそうな不気味なシルエットの建物の前に車は横づけした。
まあ、暗くてよく見えなかったのが本当だけど、古びた別荘っての?
やたらでかい洋館だった。
車が停まったと同時に、家に明かりがついた。
誰かが合図したと思えるようなタイミングで、一気に全ての部屋に灯が入り、おれはおどろいて爺さんをまじまじと見つめた。
「驚かせてしまいましたか?申し訳ございません。旦那様は、普段灯をお使いにならないもので」
どういうことだ……?
おいおい、どこかのドラマみたいに、実はあなたは吸血鬼の息子ですなんてオチは要らないぞ。
「こちらの部屋で、旦那さまがお待ちです。少々、お待ちください」
ここは、悪態吐くべきなのか、おれ。
別に寂しいとか思わなかったけど、両親がいないってのは、多少の不便はあったしね。
たまに月を見上げて、涙ぐんだ夜もあった。
それとも泣いてすがった方がいいのか?……て言うか、親子ってどんな顔すればいいんだ?
初めてできた肉親という存在に、おれは戸惑っていた。
脳内でシミュレーションをしてみたが、それは無用なものとすぐわかった。
ドアを開けると、鏡の中で振り向いたそいつが駆け寄り、おれの父親だと名乗った。
髪と目の色が違うだけの、おれと似たような顔がそこにあった。
多少、おれより老けてはいるんだろうけど、誰が見てもぜったい親子には見えないと思う。
まるで双生児じゃね~か……?せいぜい、兄弟といったところだ。
印象が違うのは、髪の色のせいかな。
そいつの髪は黒かった……染めてるのか……?
まじで、こいつが親父なのか。おれは軽くパニックになり、思わず後ずさった。
「これまで、見つけられなくてすまなかったね。会いたかった……わたしの虹……」
「げっ!」
頼む、爺さん!
おれにしがみついたこいつをはがしてくれ!
初めての抱擁が、なんで親父となんだ。
これならまだ、百合と抱き合ってる方がましだ。




