3 百合との別れ
別れの儀式が終わって、ほんの少しの荷物を持って外にでた。
爺さんがこのままお待ちしています、とかしつこく言うので、仕方なく同道する。
正直、親父が居たなんて突然言われても、ずっと一人で生きてきたから何の思いいれもありゃしない。少しでも記憶があれば、話は違うのだろうけど。
期待もしないし、受け入れるだけだ。どうせ18になったら、いずれ施設を出なきゃいけない。
それが少し早まっただけだ、と思うことにする。
色々、手続きとかあるんじゃないのかと思ったが、どうやらそれは大人のすることらしい。
飛びかかるような勢いで、タメの百合がわめいてた。
「ちゃんとサヨナラしろよっ!ばか~っ、虹!」
「いずれ、きちんと挨拶はするつもりだったよ」
百合は、母親がアルコール依存症で養育できないという理由で、ここにやってきた。
来た当初は、大きな物音にすごく敏感で、いつも怯えた目をしていた。
ひどくやせっぽちで、目だけぎらぎら大きかった。
ここに来る奴はみんな、何らかの「家庭の事情」ってヤツをかかえている。
下手に血がつながっていない分、痛みがわかるから、おれ達はすぐに家族になった。
恋愛じゃなくて、寄り添うのは家族だと思う。
百合はそこが不満らしいが、まだおれは誰かと恋愛しようという気がない。
「ちょっと、親の面を拝んでくるだけだ。まだ、ここを出てゆくわけじゃない。ほら、犬猫だって譲渡されるときはお試し期間があるだろ?」
そういうと、百合はすねたように口を尖らせたが、このままここに帰ることはないと身体の中で、何かが囁いた。
「ほんとうに帰ってくる?このままお別れじゃないんだね」
「ああ」
嘘つきは、きらいなんだけど、諦めさせるために、わざとぶっきらぼうにそういった。
……ごめん、百合。
そうじゃないと、おれも少しばかり悲しいんだ。
いい女になれよ。




