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2 赤毛の理由と二つ名「紅蓮の虹」

閉めた扉の向こうに、何人かの気配を感じる。

きっと耳を澄ませて、扉に張り付いてる。

そりゃあ、あいつらも気になるよな。


「お迎えが遅くなりまして、申し訳ございません。お父上のお言いつけで、長年お探し申し上げておりました。お母上が、ご一族での生活にお疲れになって、屋敷を出奔以来……」


かいつまんでいうなら、まるでドラマの筋書きだった。

おれのじいさんとばあさんと、母親の折り合いが悪く、母親はおれを連れて、家出したってことらしかった。

で、あちこち行方を捜して、施設に捨てられたおれを、やっと見つけたって?


「母親は?」


爺さんは一目でわかるような、悲しげな表情を浮かべていた。


「わからなかったんだ?」


「手を尽くし心当たりは全て、お探ししたのですが、発見には至らず……お母さまのお国の方へも、使いを送ったのでございますが、残念ながら……」


お国って?


「ポルトガルでございます」


「……ポ……?」


頭の中に世界地図が広がったが、残念ながら、その国に関しての情報はおれの中になかった。


おれは脱力した。

だけど、おれの赤毛の理由が、やっとわかった。

そして、まだ会ったことのない父親が、そこに来ていない事実に気が付いた。


「どうか、ご一緒にお越しください」

「あまりに急な話なので……」


……行かないって言おうとしたら、迎えの爺さんがいい年こいて泣きそうな顔する。

結局、自分は来ないでこの爺さんに、面倒ごとは全ておまかせの、父親と名乗る奴の面を拝みに行くことにした。


「坊ちゃまをお連れしなければ、旦那様に合わせる顔がございません」


とか、使いの爺さんは言うけど、お涙頂戴の親子感動場面なんて、ぜったい作ってやらないからな。

何もいわずに、一発睨みつけることにしたから行くんだからな。


おれの瞳は、外国人の母親の血のせいか、力を入れると茶色が濃くなって赤い色に見えるらしい。


赤い髪と赤い瞳。


施設長にも言ったことないけど、おれにはもう1つの名前があった。

夜遊びを不良と言うのならだけど、二つ名は「紅蓮の虹」(ぐれんのこう)


かっこいいのか、悪いのか微妙なんだけど、いかにも喧嘩上等って感じで、人前では絶対名乗りたくない。

ただ、施設長には内緒だけど、喧嘩だけは誰にも負けたことがなかった。見てくれが派手だと、どうしても絡んでくるやつはいるから、避けるために追い払った。


ボクサーが調子のいい時に良く言う、相手のパンチが止まって見えるって、実は動体視力がいいんだと思う。

部活の剣道でも、突きを避けるのは得意だし。


この話は自分でも笑ってしまうような話なんで、誰にも話したことはないけど、喧嘩に負けたやつってどうしてあることないこと吹聴して回るんだろうね。おかげで、下校時は絡まれまくりだったりする。


……それにしても、こんな風になるから別れは、苦手だ。


「虹にいちゃ~ん……えぐっ、えぐっ……」


「もう~、おまえらステレオで泣くなって」


ぐずぐず鼻をすする、双子の一年生。


こいつらは、一番おれに懐いてた。

他のやつらは、こいつらを影でこそこそ虐めていたのがどうしても気に入らなくて、軽く締めたら寄ってこなくなった。

おれがぶち切れたとき、目が赤く光ったといって、まじで怯えてた。


「まあ、短いつきあいだったけど、困ったときにはたずねて来いよ。連絡するから」


双子以外のやつらの、ほっとしたような表情に、実は内心傷ついたおれ。

なんだよっ!


少しくらい寂しがってくれてもいいじゃないか!


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