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杏々のおさんぽグルメ  作者: わかめ


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7/17

6食目 純喫茶ホットケーキ♪

4コマ

https://x.com/anano3po/status/2094306620511756541


 午後。


 杏々は今日も、いつものように街を歩いていた。


 てくてく。


 てくてく。


 特に目的地があるわけではない。


 美味しそうなものを見つけたら立ち止まって、気になったら食べる。


 それだけのおさんぽ。


「…………」


 右を見る。


 パン屋。


「…………」


 左を見る。


 昔ながらの洋食屋。


 どちらも気になる。


 でも今日は、もう少し歩いてみることにした。


 そんな杏々の足が、少し先で止まった。


「……喫茶店」


 そこにあったのは、周囲の店より少しだけ時間の流れが遅そうな建物だった。


 深い色の木製扉。


 少し色褪せた看板。


 入口の横には、小さな立て札。


『純喫茶 珈琲館』


 ガラス越しに店内を覗けば、赤いソファと木製のテーブルが並んでいる。


 壁には振り子時計。


 カウンターの奥にはサイフォン。


 何より、扉の向こうから漂ってくるコーヒーの香りが心地いい。


「こういうお店も好き」


 杏々は迷わず扉を開けた。


 ◇


 カラン。


 小さなベルが鳴る。


「いらっしゃい」


 低く落ち着いた声が返ってきた。


 カウンターの奥にいたのは、白髪混じりの髪を綺麗に整えた老人だった。


 口元には短く整えられた髭。


 白いシャツの上に黒いベスト。


 店の雰囲気そのものみたいな、渋いマスターだった。


「一人です」


「好きなところへ座りな」


「うん」


 杏々は窓際の席へ向かう。


 赤いソファへ腰を下ろし、渡されたメニューを開いた。


「…………」


 最初に目へ入ったのはナポリタン。


「おぉ」


 昔ながらの太めの麺。


 その次はミックスサンド。


「…………」


 クリームソーダ。


「…………♡」


 プリンアラモード。


「…………!」


 危険だ。


 全部気になる。


 しかしページをめくったところで、杏々の指が止まった。


 ホットケーキ。


 二枚重ねの厚い生地。


 中央には四角いバター。


 横には銀色の小さなシロップポット。


「ホットケーキ……♡」


 ほぼ決まり。


 杏々が顔を上げ、注文しようとして――。


「…………?」


 メニューの一番端。


 通常のページとは明らかに違う、少し厚い紙が挟まっていることに気づいた。


 めくる。


『FIGHTER’S SPECIAL』


「…………」


 杏々の目が止まる。


 その下には。


『一日一食限定


 特製スペシャルホットケーキ


 正規ファイター限定


 注文条件――店主とのファイトに勝利すること』


「…………」


 一度読む。


 もう一度読む。


 そして。


「すみませーん」


「はい」


 マスターがゆっくり歩いてくる。


 杏々はメニューを指差した。


「これください」


「…………」


 マスターの視線が、スペシャルメニューへ落ちる。


 次に杏々を見る。


「嬢ちゃん」


「?」


「そいつを注文する意味は分かっとるか」


「勝ったら食べれる」


「……そうじゃ」


「じゃあやる」


 即答だった。


 マスターが少しだけ眉を上げる。


「普通はもう少し考えるもんじゃがな」


「一日一個なんでしょ?」


「そうじゃ」


「じゃあ早い方がいい」


「そういう問題かのう……」


「?」


 杏々は本気で分かっていない。


 マスターは小さく笑った。


「まあよい」


 そして少しだけ真面目な目になる。


「まず資格証じゃ」


「うん」


 杏々がスマートフォンを取り出した。


 ◇


 公式アプリ。


 ファイター資格証。


 プロフィール。


 登録情報。


 そして中央には、杏々の印章。


 強い光沢を持つ、明るい色の印。


 マスターは黙ってそれを見る。


「…………」


 ほんの一瞬だけ。


 目が細くなった。


「なるほどの」


「?」


「いや」


 マスターも自分のスマートフォンを取り出す。


「わしのも確認せい」


「うん」


 杏々が画面を見る。


「…………!」


 そこに表示された印章。


 自分のものと、同じように見える。


「…………」


 杏々は少しだけ息を呑んだ。


 ごくり。


(同格……)


 表情が、ほんの少し真剣になる。


「どうした」


「同じ」


 マスターは杏々の言葉に自然に頷いた。


「そうじゃな」


「…………」


「なら、お互い油断はできんの」


「うん」


 杏々も頷く。


 二人の認識は一致していた。


 同格。


 ただし。


 その「同じ」が何を意味しているのか。


 そこだけは、ほんの少し違っていた。


 ◇


 マスターはカウンターへ戻ると、若い店員へ声をかけた。


「少し店を頼む」


「はい、マスター」


 エプロンを外す。


 袖を軽くまくる。


 杏々がその様子を見る。


「マスターが戦うの?」


「わしのメニューじゃからな」


「…………」


 杏々は改めてマスターを見る。


 年齢だけなら、自分よりずっと上。


 けれど姿勢に無理がない。


 歩幅も一定。


 足音まで静かだった。


「強そう」


「ほっほ」


 マスターが笑う。


「最近の若いのは正直じゃな」


「ほんとだよ」


「それはどうも」


 二人は店の奥へ向かった。


 ◇


 純喫茶の奥には、小さな中庭があった。


 地面は石畳。


 壁際には古い木製の椅子。


 植木鉢。


 よく手入れされた緑。


 不思議なくらい、ファイトをするにはちょうどいい広さが確保されている。


 まるで。


 昔からここで何度も勝負が行われてきたような場所だった。


「ここ使っていいの?」


「ああ」


「壊れない?」


「壊したら修理代も追加じゃ」


「…………」


 杏々の顔が少し強張る。


「冗談じゃ」


「びっくりした」


「半分は本気じゃがな」


「…………」


 杏々がさらに慎重になった。


 マスターは面白そうに笑う。


「ルールは単純じゃ」


「うん」


「わしが参ったと言うか」


「うん」


「嬢ちゃんが参ったと言うか」


「うん」


「それだけ」


「わかった」


「武器なし」


「うん」


「店を壊すのもなし」


「うん」


 マスターが少し間を置く。


「ホットケーキを粗末にするのは、もっとなし」


「それは絶対しない」


 杏々の返事だけが妙に力強い。


「よろしい」


 マスターが満足そうに頷いた。


 そして。


 立つ。


「…………?」


 杏々が少し首を傾げる。


 構え。


 らしい構えがない。


 ただ自然に立っているだけ。


「始めんのか?」


「始める」


 杏々も戦う姿へ切り替わる。


 小さかった身体から余分なものが抜け落ちるように、姿が変わる。


 長い手足。


 引き締まった身体。


 低く、安定した重心。


 マスターはその姿を見ても驚かなかった。


「ほう」


 むしろ。


 少しだけ嬉しそうだった。


「面白い」


「?」


「久しぶりに」


 マスターの足が、ほんの少し動く。


「腹の減りそうな勝負になりそうじゃ」


「私もうお腹空いてる」


「ならちょうどいい」


「うん」


 開始。


 ◇


 杏々が一歩踏み込んだ。


 迷いのない掌。


 速い。


 これまでの相手なら、そのまま懐へ入れていたはずだった。


 けれど。


「…………」


 マスターは動かない。


 杏々の掌が胸元へ迫る。


 その瞬間。


「……!」


 半歩。


 ただそれだけ。


 マスターの身体がほんの少し位置を変えた。


 杏々の掌は何もない空間を切る。


「…………」


 杏々が振り返る。


 マスターはすぐ横にいた。


「惜しいの」


「…………」


 杏々の目が少しだけ細くなる。


 もう一度。


 拳。


 マスターは肩をわずかに引く。


 外れる。


 蹴り。


 足を数センチ引くだけ。


 当たらない。


 杏々はさらに続ける。


 掌。


 拳。


 蹴り。


 肘。


 どれも。


 届きそうで。


 届かない。


「…………」


 杏々が一度止まった。


「どうした」


「動いてない」


「動いとる」


「ちょっとしか」


「それで足りるからの」


「…………」


 杏々は少し考える。


 そして。


 もう一度。


 今度は速さを上げた。


「っ!」


 右。


 左。


 掌。


 マスターは受けない。


 避ける。


 杏々が追う。


 マスターは一歩。


 また一歩。


 けれど、ほとんど同じ場所にいるようにすら見える。


「…………!」


 杏々がさらに間合いを詰める。


「そこ」


 掌底。


 マスターの腕に触れる。


「!」


 初めて。


 捉えた。


 はずだった。


「甘い」


 マスターの手が杏々の腕へ、そっと触れる。


「え」


 強く押していない。


 引いてもいない。


 なのに。


 杏々の身体が勝手に前へ流れた。


「……!」


 重心が崩れる。


 杏々は咄嗟に一歩踏み出し、倒れる寸前で立て直した。


「…………」


 振り返る。


「今の」


「何じゃ」


「何したの」


「ちょっと触っただけじゃ」


「…………」


 杏々の表情が完全に真剣になる。


「もう一回」


「嫌じゃ」


「なんで」


「同じのを二度食らう気か」


「今度は崩れない」


「ほっほ」


 マスターが楽しそうに笑った。


「面白い娘じゃ」


 ◇


 杏々は再び前へ出る。


 今度は大きく攻めない。


 一歩。


 小さく。


 距離を測る。


 マスターの目がわずかに細くなった。


「ほう」


 杏々の拳。


 先ほどより遅い。


 囮。


 マスターが半歩避ける。


 杏々はその動きを見る。


「…………」


 次。


 掌。


 また半歩。


 杏々は止まった。


 足。


 腰。


 肩。


 呼吸。


 視線。


「何を見とる」


「全部」


「欲張りじゃな」


「食べる時もいっぱい見るよ」


「何の話じゃ」


「?」


 杏々は再び踏み込む。


 今度は。


 マスターが避けようとする先へ。


 先回り。


「!」


 マスターが初めて少し大きく動いた。


 一歩。


「…………」


 杏々の目が光る。


「動いた」


「当たり前じゃ」


「一歩」


「数えとるのか」


「うん」


「嫌な子じゃのう」


 そう言いながら。


 マスターは笑っていた。


 ◇


「今度は、わしから行くぞ」


「うん」


 杏々が構える。


 マスターが一歩。


 ゆっくり。


「…………」


 もう一歩。


 速くない。


 むしろ遅い。


 なのに。


「…………!」


 気づいた時には近い。


 杏々が掌を出す。


 マスターの手が触れる。


「っ」


 また。


 重心。


 杏々の身体が前へ流れかける。


 今度は。


 耐える。


「…………!」


 足を強く踏む。


 重心を残す。


「ほう」


 マスターが少し感心した声を出す。


「耐えたか」


「うん」


「なら」


 もう一度。


 触れる。


「!」


 今度は逆。


 杏々の身体が横へ流れる。


 一歩。


 二歩。


 杏々はそこで止まった。


「…………」


「難しい」


「何がじゃ」


「マスター」


「人を問題集みたいに言うな」


「…………」


 杏々が少しだけ笑う。


「でも」


「?」


「楽しい」


「…………」


 マスターも。


 小さく笑った。


「そうか」


「うん」


「なら」


 袖を少しまくり直す。


「もう少し付き合うかの」


 ◇


 そこから。


 少しだけ空気が変わった。


 杏々が踏み込む。


 マスターがかわす。


 杏々が追う。


 マスターが流す。


 杏々が手首を取ろうとする。


 するり。


 抜けられる。


「…………!」


 杏々が回る。


 蹴り。


 マスターが腕で受けた。


 バシッ!


「…………」


 マスターの腕が、少しだけ下がる。


「重いの」


「当たった」


「受けただけじゃ」


「でも当たった」


「……細かいのう」


 杏々は少し嬉しそうだ。


「次」


「まだ来るか」


「ホットケーキ食べたいから」


「動機が強い」


 杏々が前へ。


 マスターが腕を取る。


「!」


 崩す。


 けれど。


 杏々は今度こそ崩れない。


 足を少しずらす。


 力の方向へ逆らわず。


 そのまま外へ逃がす。


「ほう」


 そして。


 杏々の手が、逆にマスターの腕へ触れた。


「!」


 押さない。


 引かない。


 マスターが動こうとする方向へ、ほんの少しだけ合わせる。


「…………」


 マスターの身体がわずかに傾く。


「今」


 杏々が入る。


「……!」


 掌。


 胸元。


 マスターが避ける。


 だが。


 わずかに遅い。


 杏々の掌が服へ触れる。


 ドッ。


「……っ」


 マスターが一歩下がる。


 杏々も止まる。


「…………」


「…………」


 静か。


「入った?」


 杏々が聞く。


 マスターは自分の胸元を見る。


「……入ったの」


「勝ち?」


「まだじゃ」


「そっか」


「すぐ勝った顔をするでない」


「してないよ」


「しとる」


「?」


 マスターは笑う。


「では」


 再び構える。


「最後じゃ」


 ◇


 二人が向かい合う。


 杏々。


 真剣。


 マスター。


 静か。


 中庭に吹いた風が、植木の葉を少し揺らした。


「来い」


「うん」


 杏々が一歩。


 マスターは待つ。


 二歩。


「…………」


 杏々の拳。


 マスターが半歩。


 杏々はその動きを見る。


 次。


 掌。


 また半歩。


 けれど。


 杏々は追わない。


「…………?」


 マスターが少しだけ目を細める。


「来んのか」


「行くよ」


「…………」


 杏々が小さく一歩。


 マスターが反応する。


 右。


 杏々も同じ方向。


「!」


 マスターが左へ切り替える。


 杏々も合わせる。


「…………」


 距離が詰まる。


 マスターが初めて後ろへ一歩下がった。


「…………!」


 杏々が踏み込む。


 マスターの腕。


 崩し。


 杏々へ触れる。


 けれど。


 今回は逆らわない。


 自分から半歩。


 その方向へ。


「ほう……!」


 崩れない。


 そのまま。


 マスターの懐。


 杏々の手。


 袖。


 肘。


 重心。


 わずかに。


 奪う。


「……!」


 マスターの足が一瞬浮いた。


 杏々は投げない。


 ただ。


 止める。


「…………」


 二人が静止する。


 杏々の手。


 マスターの腕。


 足の位置。


 重心。


 次に動けば。


 杏々が先を取れる。


「…………」


 数秒。


 マスターが目を閉じた。


 そして。


 小さく笑う。


「……参った」


「…………!」


 杏々の顔が一気に明るくなる。


「勝った?」


「勝ちじゃ」


「じゃあホットケーキ!」


「切り替えが早いわ!」


 マスターの声が、中庭に響いた。


 ◇


 店内。


 杏々はいつもの小さな姿へ戻り、席で待っていた。


「…………」


 視線。


 厨房。


 マスターがホットケーキを焼いている。


 鉄板へ生地を流す。


 じゅう。


 杏々は遠くから。


 じっと見る。


「…………♡」


 一枚。


 厚い。


 二枚。


 三枚。


「三枚……」


 声が漏れる。


 表面がゆっくり色づき。


 ふっくら焼き上がる。


 皿へ。


 三段。


 その上には大きなバター。


 横にはたっぷりの生クリーム。


 季節のフルーツ。


 バニラアイス。


 さらに。


 小さなプリン。


「…………!」


 杏々が固まる。


「お待ちどう」


 マスターが皿を置く。


「うちの」


『特製スペシャルホットケーキ』


「…………♡」


 杏々は。


 戦っていた時より真剣な顔で見つめていた。


「すごい」


「一日一食じゃ」


「全部食べていい?」


「そのために出しとる」


「…………!」


 杏々がシロップポットを持つ。


 ゆっくり。


 とろり。


 メープルシロップがホットケーキの上から流れ、側面を伝って皿へ落ちる。


 バターの端が溶け始めた。


「…………」


 ナイフを入れる。


 厚い生地が、ほとんど抵抗なく沈んでいく。


 切り口から。


 ふわり。


 湯気。


「…………♡」


「いただきます」


 一口。


 ぱく。


「…………」


 一秒。


「…………♡」


 二秒。


「ん~~~~♡」


 頬がゆるむ。


「ふわふわ」


 焼きたての温かい生地に、溶けたバターの塩気。


 メープルシロップの甘さ。


 次。


 フルーツ。


「甘酸っぱい」


 アイス。


「冷たい」


 またホットケーキ。


「温かい」


 そして。


 プリン。


「…………」


 ぱく。


「これも好き」


 マスターはカウンター越しに、その様子を見ていた。


「どうじゃ」


「美味しい」


「そうか」


「すごく美味しい」


「ならよかった」


 杏々はまた食べる。


 もぐ。


 もぐ。


 完全に幸せそうだった。


 ◇


 しばらくして。


 皿。


 きれい。


「ごちそうさまでした♪」


 杏々が満足そうに息を吐く。


「美味しかった」


「それは何度も聞いた」


「でも美味しかった」


「はいはい」


 マスターは苦笑しながらコーヒーを淹れる。


 杏々が少し考える。


「ねえ」


「なんじゃ」


「なんで」


 スペシャルメニューを見る。


「ファイトに勝たないと食べれないの?」


「…………」


 マスターの手が少し止まる。


「そうじゃのう」


 ゆっくりコーヒーを注ぐ。


「その方が」


「?」


「美味いからじゃ」


「…………?」


 杏々が首を傾げる。


「腹を空かせ」


「うん」


「身体を動かし」


「うん」


「欲しいと思ったものを」


 マスターが杏々を見る。


「自分の手で勝ち取って食う」


「…………」


「そういう一皿があっても」


「悪くないじゃろ」


 杏々はしばらく考えた。


「……うん」


「分かったか」


「ホットケーキ美味しかった」


「そこしか残っとらん!」


「?」


 マスターがため息をつく。


 でも。


 少し笑っていた。


 ◇


 会計。


「また来ていい?」


「もちろんじゃ」


「またスペシャル食べたい」


「なら」


 マスターが口元を少し上げる。


「またわしに勝つことじゃな」


「うん」


「次は負けんぞ」


「私も」


「…………」


 マスターが杏々を見る。


「嬢ちゃん」


「?」


「食べること」


「うん」


「好きか」


「大好き」


 即答だった。


「そうか」


 マスターは満足そうに頷いた。


「ならよい」


「?」


「なんでもない」


 杏々は首を傾げる。


「じゃあまたね」


「ああ」


「ごちそうさまでした」


「また来な」


 カラン。


 扉が閉まる。


 ◇


 店の外。


 杏々は再び歩き始めた。


「…………」


 お腹。


 満足。


 身体。


 ちょっと疲れた。


 でも。


「楽しかった」


 さっきのホットケーキを思い出す。


「…………♡」


 また食べたい。


 少し歩く。


「…………」


 杏々の足が止まった。


 少し先。


『自家製プリン』


「…………」


 見る。


「プリン……」


 さっき。


 いっぱい食べた。


「…………」


 もう一度見る。


「…………」


 数秒。


「一個くらいなら」


 そのまま。


 店へ向かう。


 今日も。


 おさんぽは。


 まだ終わらない。


 ――そして。


 いつもの『杏々ちゃんねる』へと続いていく。

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