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「……何だったの?」
妖精が自分で言った通りに少し見学をして帰った後、珍しく静かだった小人が口を開いた。
「……力を貰った?」
何をされたか説明できない訳ではないが、事情は説明し難い。何と答えた物かと迷っていると、ドライアドが何とも反応に困る事を呟いた。ただ、先程から殆ど無言の小人は、いきなり姿を現した妖精にか、それとも気安く話す自分達にか驚いていて、まだ混乱しているらしい。これ幸いと鍛練を再開すれば、小人は首をひねりながらもいつの間にかいなくなっていた。
「たまに動く的と言うのはいいな」
額にかいた汗を拭いながら、誰にとでもなく言う。
「……悪戯心」
微妙な沈黙の長さは善意の行動ではないと言う主張か。感謝の気持ちを混ぜた言葉に、悔しがるように枝が揺れていた。
「これまではこんな物など無くて想像もしなかったが、上手くやれば空を飛ぶ相手にしがみつく練習も出来るかもしれないな」
「……絶対振り落とす」
「おう、期待してるよ」
手を振って帰路に付く。今の自分達には共通の目的があった。目標と言うほど長く広い意味で指針となるような物ではないが、互いの考えが一致した結果だった。
“女王が最終的に何を目指しているのだとしても、その意図を汲んでいち早い実現に協力する”
深い理由がある訳でもない。強いて言うなら今でも十分女王に感謝している所があるからと言えるのだろうが、この選択が自分達以外の物に対してどのような影響を齎すかは正直未知数だ。今日はその事に気付いたらしい女王側からもコンタクトがあったから、それなりに正しく意図が汲めているのではないかと思う。合理主義者の女王なら、きっと存分に自分達を役立てる為に大切にしてくれるんじゃないかと思う。二人とも滅茶苦茶な事を言っている自覚はある。けれど、あの女王の自分本位な所も含めて多少なりとも恩義を感じている者同士、こんな命の使い方もありなんじゃないかと思ったのだ。
一区切り毎にまとめて投稿しているので、次話は多少遅くなります




