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行方知れずのノネット  作者: ツァツァ
第六話 観光客と世界
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「せやから、そんなにお気に入りやったら勇者に格上げすればええのにって思っとるんやけど、癒しの神は頑なに勇者を持とうとせんからなあ」

「私は今のままでいいんだけどねー」

「そんなんで俺のとこついて来よったら、いつか死ぬ言うとるに」

「だから、瞬間移動の魔法貰ったんじゃないー。今では詠唱すらいらないレベルなんだよー」

「瞬間移動はそんな万能やないし、そんなんで事足りとったら皆使っとるて。蘇生かてただやないんやから」

「お金払えば生き返ったりするの?」

「へ?」

 二人の掛け合いに口を挟めずにいると、小人が代弁するような質問をした。

「いいえーお金じゃないよー」

「払うのは魔力やな。でも、一般人や魔法使いやとコストがむっちゃかかるし、受けて貰えん事も多い。多くの魔力と高い技術が必要な事やから、実質ほぼ一人の神の専売特許と化しとるな」

 まさかと思ったのに、マリーは質問された事については一瞬少し驚いたようだが、彼らは何でもないようにあっさりと肯定するような事を言う。

「そんな魔法まであるのか……」

「あ、誤解が無いように言っとくけど、この魔法が一般に秘密なんは、ただ安直に悲しみから蘇生させても、望んだ結果にならん可能性が高いからやで。具体的に言うと、せっかく蘇生した人間の気が触れたり、抜け殻みたいになったりな」

「へ、へー……」

 なんだかもう何も言えない。もしかすると、女王が殆ど説明無しに死なないなどと言ったのは、こんな話をして逆に混乱させない為だったのかもしれない。

「……それでも、勇者ならリスクは無い?」

「正規の手順さえ踏んどればな」

「……逆に怖いんですけど、それ」

 本来行う神の他に、モグリの蘇生屋もあると言う事だろうか。そもそもあまりお世話になりたくない魔法だが、もう少し詳しく聞きたいような、聞きたくないような、あまり立ち入りたくない世界だ。

「そんなに心配せんでも、治療方法はあるで大丈夫やで。精神系の異常を治す事に長けた神がちゃんとおるでな」

「……それが癒しの神?」

「違うよー。うちは肉体的な傷や病が専門なんだー」

 ドライアドの問いに、マリーは慣れたように否定する。けれど、正解はすぐには言わなかった。

「えっと、あの神は殆ど一般の人目に触れようとしない事で有名でー、必要な時だけ必要な人の前に現れるんだよー」

「呼び名が沢山あって、神の名もよく変える。ひっそり使いを出しとるらしい話はあるけど、魔法使いにも神の名は名乗らせず、誰があの神の眷属なのかは分からん。直接加護を求めても応えてはくれんから、魔法が欲しい時は他の神に言伝を頼まなならん。ただ、あの神の呼び名の一つでもある魂送りの時だけはちゃんと呼びかけが通る。俺らの間ではこっそり引きこもりの神なんて呼ばれる事もあるなあ」

 随分と気難しい神なのだろうか。名を教える事すら憚られるのか、二人の説明は歯切れが悪い。

「あ、でも、もし会う事があったら引きこもりなんて言うたらあかんで! 基本ええ人やし、もしかしたら既に知っとって気にせんかもしれへんけど、絶対怒らせたらあかん人やさかいな」

「はあ……」

 ユーノスケは慌てたように付け足す。一体どんな神なのだろう。聞けば聞くほどに印象が迷走していくようだ。

「後は、あー、たまに他の神になんか頼み事しとるらしくて、前に地図が欲しい言うとったらしいなあ。俺らは旅はしとっても地図は描けんから、メモ書き程度のしか渡せんかったけどな」

「ティアマト様もラーマル様も言われてたそうだから、世界地図でも作るつもりなのかもしれないねー」

 世界地図とはどこかで聞いた話だ。その繋がりで会っているかもしれないし、女王達にも聞いてみるのもいいかもしれない。


 その時、不意にぴりぴりとした気配が漂い始め、会話は終わりとなる。

「お、また獲物がやって来よったな!」

「そうですね……」

 とうとうと言うべきか、近くに魔族がいるようだ。ユーノスケは嬉々として得物を構え、雷光を纏うが、こちらはレベルが違い過ぎて勝負にならないのは明白だ。

「せっかくやから、あんたらも参加してみい!」

「ええっ!?」

 たとえこの場に残っても足手纏いになるだけ。どんどん迫って来る複数の気配に、どう逃げようかと考えていたのに、無茶な事を告げられる。

「どうせどっかで戦う事になるんやし、何でも経験やで。絶対死なへんのはさっき説明した通り。最悪の展開には絶対ならんのやから、とにかく敵を倒す事、自分が生き残る事だけを考えるんや!」

「どんな怪我でも、生きてさえいれば私がすぐに回復させますよー。お代は後払いで結構ですー」

「あ、お代はしっかり取るんだね。『常世の風。この手に力を』」

 向こうにこちらを庇うつもりはないようだし、さっきの話もあってかこちらのメンツまで含めてすっかり戦う姿勢だ。

「……仕方ないな」

 うだうだ言っている時間もない。自分が剣を抜く横で、雷光が炸裂する。

「こんなんは慣れや! 死ぬのを怖れたらあかん!」

「……けっ。運が良ければ一山当てられるかと思ったけど、待ち構えていたのが勇者とは、こりゃ運が無いねえ」

 ユーノスケの攻撃に身を捻り、足に大きな怪我を負いながら軽口を叩くのは、色付きの火の亜竜サラマンダーだ。羽を閉じたまま残った足で地面を蹴り、ユーノスケの二撃目を紙一重で躱してやや距離を取る。

「おやおやだんまりかい。戦い慣れた奴はこれだから」

 ハイレベルな戦いが続くがこれ以上見ている余裕は無いらしい。違う方向からは、人程の大きさの大蜘蛛が五体に、水で出来た女性のウンディーネが一体、毒々しい色で大型犬から中型犬程度の大きさのスライムが三体。いずれも色付きで、正確な強さは未知数だ。

「うふふ、私達と遊びましょ!」

「相性が悪いな……」

 大蜘蛛以外は物理ダメージをあまり受け付けない。その大蜘蛛も硬い甲殻を持ち、更に糸を使った拘束技を持っており、近接武器がどこまで通用する事やら。

「こっちから行くわよ!」

 安易に味方に近づかせないよう飛び出したウンディーネが手を振ると、周囲の水たまりが膨れ上がって津波のように押し寄せた。

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