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行方知れずのノネット  作者: ツァツァ
第六話 観光客と世界
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 新しい所へ行けば、こうも世間話のごとく衝撃的な事を聞くものなのだろうか。しばらく止まってしまったが、ようやく期待通りの反応だと商人は笑っていた。

「えーっと、色々気になった部分はあるんだが、……まず、不吉な伝承から聞こうか?」

「あれ?あれってそんなに有名じゃなかったのかな。『殆どの大陸が一つとなる時、大地が割れて滅びが噴き出す』って奴なんだけど」

「それは……」

 もし事実なら大変な話だが、実のところ、この手の話は掃いて捨てるほどあちこちにある。とんでもない化け物が大地の奥深くに潜んでいるだとか、空から大破壊が降ってくるとか。殆どと言う微妙な中途半端さは気になるが、過去にも何年何月何日に世界が滅ぶとか言う予言が何度もあったが、いずれにしても何も起こらなかったと言うオチだった。

「予言も相当古い上に日時の指定はない、ありきたりっちゃあありきたりな話だったんだが、そんなところに年々酷くなる魔族の大集合。それでどうなったのかは言わなくても分かるだろ?」

「やっぱり魔王的な物がいたのかな!?」

 やはりこちらもそれなりによくある事で、小人の質問も当然な物。魔王と呼ばれる魔族を束ねるリーダーにして自身も強力な魔族である存在は、基本数百年に一度、世界のどこかに沢山の魔族を伴って現れる。ただ、時々何があったのか千年以上間が空いたり、数十年で次が現れたり、倒した直後により強力な存在が現れる二段構えがあったりと、なかなかに気まぐれなので、今のところ誰も出現法則を予測出来たことはない。

 とにかく、魔王軍は取り巻きも通常の魔族の群とは段違いで、勇者の助け無しにはどれほど大軍を用意しても敵わない、魔法使いの助けがあっても守りに徹して耐えるのが精一杯とされるほどの強力な物である。レベルのばらつきは大きいが、過去には世界規模で被害を受けた事も数知れない。

「どうだかなあ。でも、特にここのところは魔族の増え方が酷くてな。魔族同士の喰い合いによって到底一般人には手を出せねえレベルの奴らが大量発生するわ、競争から逃れた中級以下の連中が表に出てくるわでな。一時は町全滅も覚悟したんだ」

 見ている内に増えると言う事は無いものの、昔からどこからか魔族がやってくる様子は度々目撃されていた。その為に定期的に勇者たちが訪れ魔族を減らしていくのだが、一時は数週間から数日に一度程度の間隔で高レベルの魔族が複数、時に数十体単位で瞬間移動の魔法でも使ったのかその場から湧くように出現する事もあった。その為、とうとう魔王が生まれたのではないかと言う話まで広がっていた。

「魔王の予兆があっても、この段階では大規模な討伐は行われないし、周辺住民の避難はどこも受け入れてくれねえって話は知ってるか?」

「……“初めの贄”ですね」

 魔王が存在する時の魔族は、普段といくつか違う動きをする。一つは、未熟な魔王を討伐しようとすると、別の場所へ瞬間移動のようなもので逃げてしまう事。もう一つは近くに獲物が無いと、一糸乱れぬ驚異的な団結力を持つ事。

 前者は一応移動魔法で魔力を消費して弱体するというメリットはあるものの、折角支援しても今度は支援した側の故郷が滅んでしまう事があると言う致命的なデメリットがあり、過去には先走って討伐をしようとした人間が処罰されたと言う記録もある。

 後者は原因は諸説あり、生まれたばかりの魔王は人を倒す事で得られる何かを必要としている為に多くの魔族を強く従わせるとか、魔族全体が飢える事で危機感を持つとか言われている現象で、とにかく町を一つ捧げなければ、バラバラな行動故に力で負けていても倒せていた魔族が、同等の力を持つ一つの巨大な生物のようになり、結果として助けた町も含めたより大きな犠牲を払う事になる。古い記録によれば、当時安定した時期に入り始めていた人間の文明が壊滅的な被害を受け、多くの国や技術、記録等が失われたと言う。

「あれ? でも親玉は倒されたんだよね?」

「……そう言われてみればそうだな?」

 少数精鋭で忍び込んで暗殺でもしたのだろうか。しかし、気付かれれば確実に逃げられ、別の場所に被害が発生する。そもそも、話からしてあまり潜んでいるようには見えず、その線も薄いだろう。単に実際は魔王に似てるだけだったのか、絶対に逃がさない方法でも出来たのかってところか。

「まあ、その辺はともかく、俺らも身体能力はあるし、誰もいない土地ならいくらでもある。水はちょっと魔法に頼らなきゃならんが、中途半端に逃げても飢えて凶暴化した連中に襲われるだけ。そうでなくても大体の奴らは普通の所にゃ暮らせねえはぐれ者。だから、俺達はどこへも逃げられねえ。けど、幸いにもと言っていいのか、この町は見ての通り戦える奴に事欠かないからな。強い種族の血を引く奴とか、腕に自慢のある奴が魔族の拠点を目指したのさ」

「勝てたのか!?」

「いやいや! 流石にそれは無理だったけど、まあ、それなりには善戦した訳よ」

 人より強いと言うと、どうしても一纏めにしてしまいがちだが、その中にもはっきりとした壁はあるらしい。ただ、この地域の魔族には特に強力な物が多いと言えど、集団で相手にすれば倒せるような物もそこそこいる。そうやって慎重に戦っているうちに、何度か魔族同士の戦いを目にする機会もあったようだ。喰い合いによって強化されるのを見れば、少しでも倒していく価値も実感する事になった。

「未熟な魔王を狙うなんて、余所者がやれば故郷に裏切り者として非難されるだろうが、自分達でやる分には自衛のため仕方ないと見る目もある。で、この辺りに多い洞窟のどれかに原因が潜んでいると踏んで、イチかバチかの勝負に出た。けど、流石にそんな調子良くはいかなくてな。もう駄目かと思った時に颯爽と現れたのが流浪の神に仕える数人の勇者様よ」

「…それがもう一方の話に繋がる訳か」

「おう。その時も今のような暗い雲が立ち込めていたらしいな」

 討伐に参加した一人の話によると、洞窟の一つを覗きこんだ時、背後から彼らが手に負えないレベルの魔族達と出くわし、決死の覚悟で立ち向かおうとした時、嵐の前触れのような黒い雲から雨と共に一筋の雷光が魔族を貫いた。音と光が治まり、魔族がいたはずの場所を見やると、雷光を身に纏う銀色の勇者がいたそうだ。

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