028 修正中
近く、第六話のやや大きな修正を行う予定があります。
仕様上、現在削除、非公開などを行っていませんが、近々設定や今後の展開に関わる部分も修正されますのでご了承ください。
「おおー!新しい場所はやっぱりテンション上がるねえー!」
「……それは否定しない」
「それは本当に上がっているのか?」
三者三様、のように見えて、意外と同じように新しい場所は楽しみにしている。ドライアドと小人と、よく分からない混ざり物。普通の町を歩いていれば酷く目立つ組み合わせも、この町では旅行者らしい雰囲気を除けば普通に馴染んでいた。
ここは超大陸の中心に最も近い町セルン。すなわち、魔族が集まる場所に最も近いはずなのだが、思ったよりも荒れた部分は少なく、下手な町よりもずっと賑わっていた。
今回の目的は完全な観光だ。ただし、その目的地も具体的な目的も通称からして物騒極まりない。その事に関して女王からは
「今のうちに見聞を広げてくるのもいいでしょう。それに、心配しなくとも絶対に死なせませんので」
と、信頼していいのかどうかよく分からない絶対の保証を貰った。
前回行った場所と同様に暑い風が吹く熱帯の町。ただ、湿潤とまでは行かずとも前回よりは湿り気が多く、町の周囲には樹もよく茂っている。空は今にも雨が降りそうな暗い曇り空で、遠くからは雷の音が聞こえているが、ここも日差しがかなりきつい場所らしいから丁度良かったと思う。それは住人達にとっても同じなのか、空を見上げる表情はよく晴れた日のように明るい人が多い。
道を歩くのは、獣人や、獣人と人間のハーフらしき姿が一番多く、他にも何かしらの種族のハーフや、魔族としての姿しか見ない珍しい種族がすごく多い。今、横を駆けて行ったのは、毛皮の隙間から人の顔や肌が見える狐の獣人と人間のハーフの子供と、見かけはただの仔馬だが、流暢な人の言葉を話す霊獣の子供。向こうでは、様々な種類の獣人やハーフに混ざって、人並みの知性が感じられるハーピーの女性と、人間サイズの蜂の姿をした虫人が井戸端会議をしている。
どうにも見慣れないとぎょっとしてしまう姿の人が多いが、人と同じように笑う姿を見れば嫌悪するほど不気味だとは思わない。うっかり目を合わせてしまった蛇の目と下半身を持つラミアの青年に軽く会釈をすれば、あちらも興味深そうにこちらを見ていた。
「あらあら、ここいらじゃ見ない顔ね。ここいらでよく食べられているお菓子はいかが?」
ちょろちょろとあちこちの店を覗きまくっている小人が、兎の獣人の店主に声をかけられる。兎と一口に言っても、以前見た野兎よりも耳が大きく、色合いもややくすんでいる。あれは違う人種とでも言った方がいいのだろうか。
小人が飛び乗った机の上を見れば、積まれた荒い布の袋に何かが入っているようだ。少し離れた所まで漂ってくる甘い匂いで、美味しそうな焼き菓子だと分かった。
「へえ、いくら?」
「銅貨なら種類によって一袋一枚から十枚。魔貨なら二枚ぐらいかしら」
「ううん、ちょっと高いねえ。これ一枚に負けられない?」
「あら、綺麗な魔貨ね。……いいわ。これ一枚で売ってあげる」
近付く間もなく交渉を終え、自分の体よりも大きな袋を頭の上に持った小人はドライアドの枝に腰かけた。
「うん、美味しいね。二人もどう?」
「貰う」
こんな時ばかり即答でドライアドが手を伸ばし、小人がその手に一枚握らせる。
「じゃあ、一枚貰おうかな」
齧ってみれば、ちょっと硬めのクッキーと言った所だろうか。少々甘ったるい味で、疲れている時に丁度良さそうだ。
「小人はお金持ってたんだな」
「ん。来る前に作った」
「つくっ!?」
聞き捨てならない事を聞いた気がするが、お菓子を食べる事に夢中な小人の言葉は足りていない。しばらく口をモゴモゴさせていた小人は、ようやく視線に気付いて補足した。
「そりゃ、銀貨とか銅貨を作るのは駄目だけど、魔貨の場合は作る方が普通なんだよ」
つまるところ、魔貨と言うのは魔力の結晶のような物であり、材料がそのまま価値になる。そのため、自分で作る事は全く珍しくないのだとか。
「取り扱ってない店はあるけど、遠い国でも使えるし、元手も自然と溜まるから基本無し。ただ、勇者の場合は何かと魔力を使うから程々にね」
「へー」
とりあえず、今の手持ちはあと9枚らしい。パッと作れない事もないが、質が落ちる上に、そこそこの魔力を消費するため、作るつもりはないそうだ。
「あ、そうそう。もし、普通の金貨とかなのに魔力を感じたら迷わず捨てるように。大抵の所には魔感があって使えないはずだし、こっちまで疑われるゴミだからね」
魔感、魔力感知機とは、魔方陣を応用した魔法製の品物を見分ける道具だ。上等な物なら使われた魔力の量や質、魔法の種類まで分かるらしいが、ただ魔法が使われているかどうか判定するだけの簡易的な物だと銅貨一枚以下で買える事すらある安価な道具だ。当然、安物は質もそれなりだが、多少なりとも商売をする者なら常識であり、商売の経験がない自分でも一応名前に聞き覚えがあった。
「気をつけはするけど、感知には自信がないから確認頼むよ」
魔法が使えなければ、どこかで偽造を掴まされたのだろうで終わってしまうのだが、使えると自分で作ったのではと疑われてしまう。今後は何が李下で冠にあたるかいつも気をつけていた方が良さそうだ。




