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行方知れずのノネット  作者: ツァツァ
第四話 隣人のような人
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 もしかして、素で戦えると言う事に問題があるのだろうか。逆に考えてみると、ふとそんな発想に至った。全て神自身の力だけで戦っていてくれれば、神や倒されると困る物にまで手を出される心配がない。

 リスクを回避できるから安心して任せられるからなのか。それとも、誰を選んでも確実に道具に出来るからなのか。前者ならある程度仕方ないと言えるだろうが、もし後者であるか、前者なのに勇者がそういう発想に至ってしまったなら。

「まあ、自分達はどうも色々と変わり種らしいので、あまり気にしなくてもいいんじゃないですかね」

「あー、そうだな。多分あの人にもなんか考えがあるんだろ。ちっさい時からの付き合いだけど、悪い人って感じじゃねえし」

「へえ、貴方は若い時からやってるんですか」

「おう。つっても、勇者になったのは6年前の12歳の時の話だけどな。ここの神は人より人魚の近くにいる変わり者で、生まれた時から当たり前のように近くにいたんだ。あ、神っていうのは基本人間族だけと関わってる事が多いらしいぞ」

「へえ、そうなんですね。……ううん、普通って何だろうって気が」

「……全くだな」

 変わり者の知り合いは変わり者と言うべきだろうか。王道のごく普通の神と勇者に出会う事になるのはいつの日か。少なくとも自分達よりは普通に近い気がするが、端から少しずつ中心を目指すが如く。しばらくはどれぐらい異端なのかを知る事すらないだろう。

「よし、じゃあ、次は俺も戦いに加わってやろう。けど、魔力は三分の二はよこせよ」

 どうにも言葉の端々が言い訳じみているが、根はいい人らしい。厳しくても押さえるべきところを言っているのではなく、あえて厳しい事を言って体裁として距離をとろうとしている。

「沢山狩れれば同じ事ですよ」

「あ、そうそう。一緒に戦うのに敬語だと面倒臭えから、楽な話し方でいいぞ。どうせ礼儀なんか気にする性質じゃねえしな」

「分かった」

 快く受け入れれば、少年のようにうずうずと楽しそうな顔をする。見かけの割に子供っぽい人と言う印象を受けた。


「確かに、これだけ多彩な能力を持っていれば、競おうとは露ほども思わないのだろうな」

 人魚の戦い方を見ながら一人呟く。

「そうか? この程度の事なら魔法使いでも普通に出来るぞ?」

 狩りは思ったよりもハイペース、かつ気楽に進んでいく事となった。人数が増えた事によって誰かが隙のある戦いをしても、誰かが簡単に埋められる。更に、人魚は補助系の魔法も有していて、多少攻撃が当たっても大した痛手にはならず、何の力か気付けば綺麗に回復していたのだ。

「ところで、何となくお前らに合わせて種族名で呼んでるけど、それって微妙に他人行儀じゃね?」

 数度の戦いを終えた時、どうにも気になると言った調子で人魚が言う。

「ちなみに、俺の名前はミシェ。ほら、俺が名乗ったんだから、お前らもどうだ?」

 期待を込めた言い方をされても、以前の名を名乗り辛い事は変わりない。それに、今となっては種族名の方が名前としてしっくりきている気もするのだ。

「んー、だったら仕方ねーか……。でも、俺の事は名前で呼べよ。他の人魚達は若長若長言って名前使ってくんねーし、フォグ様はあくまで神様だしなあ。……人魚の中で唯一名前で呼んでくれてた姉様はどっか行っちまったし」

 こちらが渋ればすっぱり諦めて妥協する事に決めたらしい。最後人の耳には聞こえないくらい小さな声でぶつぶつという言葉には未練が滲み出ているようだったが。

「思ったより偉かったんだな」

「おう。人魚は基本力が全てなんだ。一番強い男が群れの長になって、それ以外の男は群れの外に出る。長になっても乗っ取ろうとする奴は来るし、勇者じゃなかったらもっと大変だったんだろうな」

「へ、へえ」

 人魚の綺麗で優雅なイメージに反して、男人魚達は日常的に争い合っているらしい。銛を掲げて言う姿には好戦的な雰囲気があり、ミシェも望んでやっている節があるようだ。異種族の暮らしは実際に触れてみないと何も分からない物なんだなと、当たり前の事を初めて実感した気がした。

「ところで、お前達ってこれからあちこち行ったりするんだよな?」

「? ああ、多分そうだと思う」

「じゃあ、もし、ここ出身の女人魚にあったら教えてくれねーか?」

 戦いを続ける中、ミシェは努めてさりげなく言った。

「もう何年も前の話になるんだが、ある人魚が男でもないのに群れを出て行った事があるんだ。思い詰めてたみてーだったし、他の人魚達に聞いても仕方ないとかなんとか言って諦めさせようとするばかりで詳しい事は聞けなかったんだ」

「……」

 藁にでも縋る気持ちなのだろう。しかし、それはもう死んでいたりはしないだろうか。口には出さずとも、こちらがそんな不安を抱いたのを感じたのか、一度は考えた事だったのか、ミシェはそれはないと言う。

「リリア姉様……その女人魚は、俺が来る前は男の代わりに群れを守っていた位強い奴で、間違ってもその辺の奴に後れを取るほど弱くはない。同族の女達に囲まれた所で全く敵いはしない。いなくなった時も血の臭いは全然しなかったから、それだけはないはずなんだ……」

 ミシェは納得できない様子で俯く。何と声をかければいいのか悩んでいると、ミシェはぱっと顔を上げて笑みを形作った。

「っと、あんま初対面の人に暗い話するもんじゃねえよな。今はとりあえず目の前の事をどうにかしようぜ。どうせ、お前らも出来る限りの魔族狩りを命じられてるんだろ?」

「ああ。明日の夜明けまではこのまま狩り続けるつもりだ」

「へえ。この辺りだと日が暮れれば色んな奴が活発に動き出す。それからが本番だな」

 話を切り替え夜を楽しみにするその表情に、陰りはもう無かった。

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