第五話 昨夜の話
次の日の朝。
サーシャは今日も日課の、店の前の掃除をしていた。
街中には石畳が敷き詰められている。
道端の方にはその隙間からコーンフラワーやカモミール、デイジーなどワイルドフラワーが生えていた。
サーシャ達の店の前にも、そういう野生の花が咲いていた。
しかし、それらは衛生と美観の為に、定期的に刈り取り、清掃しなければならない。
今日はその作業の日だった。
サーシャが鎌を使って草刈りを始めた。
するとそこに、店の中からシャードが出てきて、サーシャの傍で同じ様に草刈りを始めた。
サーシャ「シャード、中の掃除終わったの?」
シャード「こっちの方が大変だから、一緒に終わらせちゃおうと思って来たのよ」
サーシャ「ありがとう」
シャード「結構生えてるわね」
サーシャ「直ぐに伸びるからね」
二人は黙々と草刈りを続けていた。
サーシャ「昨夜の何だったんだろうね、あの三つ編みと笑い声」
シャード「さあね、でも確かに私達しか居なかったのにね」
サーシャ「本当に幽霊とか…」
シャード「や、やめてよ。そういうの好きじゃ無いんだから…」
その時、二人の背後から声がした。
エルニャ「だろうと思ったわ」
シャード「え!?」
サーシャ「あ、エルニャ。おはよう」
エルニャ「ハーイ、驚かせてごめんなさい。昨日の話がしたくて来たんだけど」
サーシャ「東の森の話?」
エルニャ「昨日家に戻ってキルフスにその話したら、『危険な所にわざわざ行く事は無い』って言われちゃって、『じゃあ皆と行ってくる』って言って来ちゃったの」
サーシャ「つまり私達に一緒に行かないかって言いに来たの?」
エルニャ「そうなの、きっと楽しいと思うのよ。一緒にどうかしら?」
シャード「残念だけど、私達は昨夜一足先に現地に赴いて来たわ。だから他当たって」
エルニャ「見て来たの?」
サーシャ「うん、メニと三人で」
エルニャ「で、どうだったの?」
サーシャ「私達が木の下で話をしながら休んでたら、急に『フフフフフッ』って声がしたの!あと、森から出たら私達の髪の毛が三つ編みになってて…」
エルニャ「じゃあ、本当だったのね!」
サーシャ達の話とは裏腹の様に、辺りは至って穏やかな日常だった。
風も吹かない、蒸し暑い陽気だった。
近くの石畳を、小鳥がくちばしで何かを探っていた。




