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2.能天気な巫女と自信家な戦士

「いやー、間に合って良かったぁ!」

「危ないところでしたね」


 ギリギリで集合時間に間に合ったマルシャルとシャルリエは、大会出場チームの控え室に案内された。


「アンタらは……あん時の!」


 聞き覚えのある声に振り返ると、そこにはイェソドの戦士カルディと、巫女のウルが居た。


「あ、イェソドの二人も来てたんだね」

「私達だけじゃないわ……ほら……」

「マールシャール!」


 名前を叫びながら、マルシャルに飛び付いてきたのは……


「うわっ!」

「また会えたねー! シャルリエ様も元気そうで良かったよー」


 ネツァクの選手リルガーだった。


「二人は本当に仲良しですね」

「敵国と馴れ合うなリルガー!」


 厳しい口調でそう言ったのは、巫女のテーラだ。


「国とか関係なく、仲良く出来る人とは仲良くしたいって思うもんじゃん! テーラもさぁ、自分と気が合いそうな人を探してみたら良いと思うんだよねー」

「とりあえず不意打ちで飛び付くのはやめてねー。びっくりするからさぁ」

「ごめーん!」


 反省する気の無いおどけた言い方に、マルシャルは苦笑いした。

 テーラは何か言いたそうに口を開いたが、ほんの一瞬悲しげな表情を浮かべたのを、マルシャルは見逃さなかった。


「お久し振りね……今日もとても可愛らしいわ……」

「そ、そんなことありませんよ……!」


 (ああ、やっぱり私の目に狂いわなかったわ! 可愛い……本当に可愛いわシャルリエちゃん……! そうやってちょっぴり恥ずかしそうに、ちょっと上目遣いでこちらを見上げるその仕草! 私の心を掴んで離さないその愛らしさは世界を救うわ……!)


 灰色の前髪で表情を隠しているお陰で、この溢れ出る感情が周囲に知られることは無かった。


「そういえば……そろそろ参加チームが発表される頃合いじゃないかしら……」

「そうなのですか」

「今、トーナメント表が貼り出されているわ……」


 大会関係者らしき人物が、大きな紙を二人掛かりで壁に張り出している。

 早速その周りに参加者が集まり始めた。マルシャル達もその輪に加わる。

 トーナメント表を貼り終えた関係者の男性が、参加者達の前で説明を始めた。


「参加者の皆様、こんにちは! 今大会は【セフィロト聖戦】の開催と重なったこともありまして、来場者は勿論、大会史上最多となる巫女様と戦士様を含む、数多くのチームにご参加いただきました」


 ヌンの闘技大会は、前回の聖戦の後から始まった大会だ。

 その歴史は五百年以上のもので、今回は聖戦と重なる神聖な年の開催ということで、ティフェレト国民をはじめとする様々な国の人々がやって来たのだという。

 大陸最大規模の大会ということもあり、世界一の称号を得ようと屈強な猛者達が集まった。そして、巫女と戦士達もだ。


「大会の賞金は過去最高額の一億ゴルドン! そして賞品は……」


 男性の声を合図に、控え室に厳重に保管されていたであろう、鍵のかかった箱が運び込まれた。

 それを見た参加者達はざわついた。何が入っているのか気になって仕方がないといった様子の者が、ちらほら見受けられる。

 男性が大きな箱から取り出してみせたのは、禍々しいという表現がぴったりな、黒い装飾がなされた大鎌だった。


「古代遺跡から発掘されたという、この鎌です!」


 (あれが……パスなのか?)


 マルシャルは隣のシャルリエと顔を見合わせる。すると、シャルリエは真剣な顔で小さく頷いた。

 あの大鎌がヌンのパスで間違いなさそうだ。


 (……勝たなきゃね。絶対に)


「第一試合は間も無く行われます。出場チーム二組は準備をお願い致します!」


 表を確認してみると、どうやらその第一試合はネツァク神殿が戦うらしい。


「オレ達がしょっぱなだね、テーラ!」

「ああ。……相手はティフェレト神殿か」


 すると、マルシャル達の前にまばゆい金髪の女性と、人当たりの良さそうな茶髪の女性が現れた。


「どうもはじめまして! わたしが初戦の対戦相手、ティフェレト神殿の巫女ノレア・エロハです!」


 元気に挨拶と共に握手の手を差し出すノレア。


「……フン、能天気な女め」

「あらショック!」


 テーラは握手に応えず、そのまま試合会場へと向かってしまった。


「あー、ごめんねノレア様! うちのテーラっていつもあんな感じなんだよねぇー」

「あらら、そうなんですか? ではあなたが……?」

「ネツァクの戦士、リルガー・ルヴィス・パフィオペディラム! 今日はテーラ共々よろしくー!」

「あらあら、こちらこそ~」


 にこにこと笑顔で握手を交わすノレアとリルガー。

 そこに何故かキメ顔で割り込んできたのは、彼女と一緒に居た金髪の女性だった。


「そちらの巫女は腕の立つ剣士のようだけれど、チームワークは私達には敵わないでしょうね! そうに決まってるわ!」

「あらあらロジア、そんな失礼なこと言っちゃいけませんよ?」

「事実しか言ってないわよ。私とノレアの前に敵は無し!」


 この時、既にカルディとウルは控え室の奥の方へ避難していた。


 (この人達もそうだけど、よその国の巫女と戦士って、もしかしたらかなりキャラ濃いのかも……?)


 逃げるタイミングを失ったマルシャルは、なるべく会話に絡まないように傍観する。


「そういうわけで、初戦はティフェレト神殿の巫女ノレアと戦士ロジアが勝たせてもらうわ!」

「オレとテーラだって負けないからねー! って、テーラ追いかけないと!」

「わたし達も行きましょうか、ロジア!」

「ええ! 私達の圧倒的な強さの前に平伏すが良いわ! オーッホッホッホ!」


 またしても関わりたくない神殿が増えてしまった、と頭を抱えるマルシャル。

 その側で、シャルリエはトーナメント表を眺めていた。


「わたしたちの初戦のお相手は……っ!? ま、マルシャル! 見て下さい!」

「どうしたのシャルリエ?」

「あ、あの……っ、わたしたちの対戦相手なのですが……。もしかして、マルシャルのお知り合いだったりしないでしょうか……?」


 慌てた様子でそう言ったシャルリエに促され、表に目を向けたマルシャル。

 そこに書かれていた名は、目を疑うものだった。


「マルクト騎士団本部、ヴァンセンだって……!?」



 

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