6.庭へ②
外に出て実際に見てみると、庭は思っていたよりもずっと広く感じた。大きな木が何本も並んでいて、その下には色とりどりの花が咲いている。
庭の奥まで続いているだろう道の両側には低い植え込みがきれいに並んでいて、少し離れたところには小さな池まであった。
どこを見ても、ちゃんと手入れされている。伸びすぎた枝はきれいに整えられているし、花も枯れたものが残っていない。
「きれいだね、アレクさん」
「でしょ?」
「うん。こんなにいっぱいお花や木があるのに、みんなきれいにそろってる」
「うちの庭師は優秀だからね」
アレクさんが辺りを見回す。
「毎日きちんと世話してくれてるんだよ」
「そうなんだ」
わたしはしゃがんで、近くに咲いている花を眺めた。
小さくてかわいらしいお花や、大きくてきれいなお花。色も形もみんな違って、見ているだけで楽しくなる。
「こっちは何ていうお花なのかな」
「さあ……。ぼくも植物には詳しくないんだよね」
「アレクさん、お屋敷の主なのに?」
「屋敷の主だからって植物に詳しいとは限らないよ」
「なるほど」
言われてみればそれもそうか。なんだか勝手にいろんなものに詳しいような気がしてた。
「呪いとか魔術に使われる植物だったら知ってるんだけど」
「……なんでそこだけ知ってるの?」
「昔だいぶかじったからね」
「そうなんだ?」
少し気になったけれど、アレクさんはいつも通りの顔をしている。そういう不思議なものに興味があるんだろうか。
わたしは立ち上がって、また少し先を見る。
すると――。
「あ」
アレクさんが植え込みのそばで何か見つけたようで、それを拾い上げた。見るとそれは、植物の枝を切るためのハサミだった。
アレクさんはハサミを手に持って、刃を閉じたり開けたりしている。
「……」
嫌な予感がする。
なんだろうこの感じ。見たことがある。いや、見たことがあるどころじゃない。ここ数日で何度もわたしは見た。
アレクさんが、妙に楽しそうな顔をしている。
「……アレクさん、それ、何するの?」
「これ?」
恐る恐る聞いてみる。
アレクさんはハサミを見てから、わたしを見る。
「そうだなあ」
にっこりと笑う。
「せっかくだし、試してみようかな」
その瞬間、わたしは気づいた。
「だめだよ! また死のうとしてるでしょ!」
「あはは」
やっぱりだ!
この数日で、わたしは嫌と言うほど思い知った。初日に照明が落ちてきてアレクさんが死んだとき、ヘレナさんがいつものことだと言って平然としていた理由を。
あのときは事故だったけれど――。
アレクさんは、その後もことあるごとに自分から危ないことをしたりして死に続けた。
朝、あいさつしようとしたら階段から転げ落ちてきて、身体が変な方向に曲がったままあいさつされたり。
明らかに変な色の薬を飲んで血を吐いて倒れたり。
昨日なんか、何故か突然頭が爆発したりもした。
そのたびにわたしはびっくりするんだけど、本人は「怖かった?」と、嬉しそうに聞いてくる。
ヘレナさん曰く、このお屋敷に新しい人が来る度に死んで驚かせているらしい。来なくても何故かいつも死んでるらしいけど。
最初はなんでそんなことをするのかわからなかったけど、何度も繰り返されるうちに、段々とわかってきた。
要するに、アレクさんはわたしに怖がってほしいんだ。
だからきっと、今日もこのハサミで何かするつもりなんだと思う。
とにかく、アレクさんからハサミを取らないと!
「……主様」
すると、植え込みの奥から低い声がして、背の高い誰かが出てきた。




