5.庭へ①
――あれから数日が経った。
お屋敷で暮らし始めてから、少しずつだけど、この場所にも慣れてきた。
朝になればヘレナさんが起こしに来てくれて、アレクさんと一緒に朝ごはんを食べる。
レイさんは突然壁から現れるし、廊下を歩いているだけでいろんな人――人じゃないけど――に会う。
最初はびっくりしていたけれど、今ではもう壁から誰かが出てきても、「あ、レイさんだ」って思えるくらいになった。慣れってすごい。
このお屋敷はとにかく広い。
廊下もたくさんあるし、階段もたくさん。部屋も数え切れないくらいある。
誰かが使っていたり、勝手に入ってはいけない部屋もあるから、全部を見て回ったわけじゃないけど。
それでも、少し歩くだけで知らない場所が見つかる。探検しても、し尽くせない。
そんな毎日が、思っていたよりずっと楽しかった。
まだ記憶は何も思い出せないままだけど――。
――大丈夫だよ。
あのとき言ってくれたアレクさんの言葉を思い出す。そうすると、不思議と胸の奥が少しだけ軽くなる。どうしてなのか、わからないけど。
「……なんとかなるかな」
そう呟いたときだった。
「何が?」
「わっ!」
突然、横から声がした。振り向くと、アレクさんが立っていた。
「アレクさん……びっくりした」
「ごめんごめん。そんなに驚くとは思わなくて」
笑っている。レイさんといい、このお屋敷の人は驚かすのが好きな人が多いんだろうか。
「何してたの?」
「えっとね、庭を見てみたいなって思ってたの」
そう言って窓の外から見える庭を指す。この数日でお屋敷の中はある程度見て回ったけれど、外の庭はまだ行ったことがなかったのだ。
「庭を?」
「うん。窓から見えるところは見たけど、ちゃんと行ったことないから」
「ああ、それなら今日は庭を見て回ろうか」
「いいの?」
「もちろん。ぼくも久しぶりに見て回りたいし」
そう言って、アレクさんが歩き出す。
「それじゃ行こうか」
「うん!」
わたしはその後ろについていった。




