↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/11

3.これからよろしく①


 壁から男の子の身体が生えていた。


「……」

「……」


 黒に近い緑の帽子に外套を羽織り、かっちりした服を着込んだ男の子だった。まるで兵隊さんのような格好だ。

 男の子は、きょとんとした顔でわたしを見つめている。


「……わあああ!?」


 我に返って、思わず一歩後ずさる。

 男の子の身体は、腰から下が壁の向こうに完全に埋まっている。いや、埋まっているというより、壁をすり抜けてこちら側に出ている、といったほうが正しかった。


「え? ああ」


 わたしの視線の先を追って、何に驚いたのか気づいたらしい。合点がいったように男の子は自分の身体を見下ろした。


「悪い悪い。そりゃ初めて見りゃあ驚くよなぁ」


 そう言って、するりと壁から出てきた男の子の足は、そこになかった。正確には、膝から下の足のある部分が透けて見えなかった。


「お、おばけなの……?」

「あはは! そうそう、おばけって言やぁそうだな。ほら、触ってみ」


 恐る恐る聞くと、男の子はカラカラと笑いながら手を差し出してきた。

 その手に触れてみようとして……すり抜けた。

 すり抜けた手の先が少しひんやりとする。


「わあ……」

「な? どうだい、幽霊に初めて触った感想は?」

「えっと……。新感覚! ……って感じかな?」


 それを聞いて、男の子がワハハと笑う。

 兵隊さんみたいな格好だけど、なんだか明るい人? みたい。おばけだけど。


「主様、この子――、目覚めたんですね。よかったよかった」

「うん」


 うんうんと頷き、男の子がわたしのほうを向く。


「そういや、まだ自己紹介してなかったな」


 男の子は、にっと笑った。


「おいらはレイ。よろしくな」

「えっと、うん。わたしはベルだよ。よろしくね」


 言って、レイさんは手を差し出してきた。

 反射的に握手しようとしてすり抜けた。そうだった。触れないんだ。

 レイさんはまた面白そうに笑っている。イタズラ好きな人なのかも。


「ベル、そいつ子どもに見えるけど、死んでから大分経ってるおっさんだからね。気をつけてね」

「そうなの!?」


 全然そんな風に見えなかった。

 いや、考えてみれば、そう見えないのは当たり前か。幽霊だったら年は取らないもんね。


「主様ほどじゃねぇですよ。主様なんか仙人でしょ」

「おいジジイ呼ばわりすんな」

「してませーん」

「そうですよ。主はジジイではなくおじいちゃんです」

「同じだろうが!」


 レイさんとヘレナさんが交互に男の人をからかう。男の人のほうが偉い立場なんだろうけど、三人のやりとりを見ていると、あまりそう感じない。家族とじゃれあっているみたいな、そんな感じがする。

 少し安心して、つい笑みがこぼれる。


「待って。きみもぼくのことおじいちゃんだと思わないで。そりゃ生きてる年月数えたらそうだけど、そうじゃないから。ね?」


 男の人を笑ったと思われたみたいで、焦ったように言われた。


 そういえば、レイさんみたいな幽霊さんもここに住んでいるってことは……。

 先ほどの「死なない人が他にもいる」というやりとりを思い出す。

 ひょっとすると、もしかして……。


「ここって、おばけの人がたくさん住んでるの?」

「そうだよ。ここはね、人じゃないやつらがたくさん住んでる屋敷なんだ」

「人じゃない……」

「うん」


 頷いて、男の人は楽しそうにレイさんを見る。


「改めて、そいつは幽霊のレイ。それから、ヘレナも――」

「私も、少々変わった身体をしております」

「少し?」


 男の人の疑問の声を無視して、ヘレナさんは自分の首元に手を添えて回す。

 すると、くるりと、ヘレナさんの首が反対側に回った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。