クラスメイトと貧乏人の俺 前編
「レイジ、本当に会いたかったですわ…!」
「ああ、うん…」
「もう2度と貴方の隣から、離れません…!」
「うん、分かったから、セルフィさん…」
「もう、呼び捨てで構いませんのに」
「いや、だからさ…」
「それとも、ハニーと呼びたいのでしたら私もダーリンと呼び―――」
「ずっと抱きつかれるのは困るんだけど!?」
学園に来てホームルームから一限目の終わりの今まで、ずっと抱きつかれている。
「嫌、ですの…?」
俺が女性への耐性が低いのもあり、うるうると瞳を揺らしてくるセルフィを拒否する事が出来ない。
「嫌って言うか、恥ずかしいって言うか…」
こんな美人に抱きつかれて、嫌な訳は無く俺が困っているのは他にある。
正直、セルフィに抱きつかれるのもそうだが周りの視線が痛い。
ここは、エイリーン国にある唯一の魔導士育成専門の学園。
隣国の王女であるセルフィを知らない者は少ない。
と言うのもライトと渡り合える学生は世界に存在せず、隣国の姫であるセルフィか魔法局の人間で何とか勝負になる程。
エイリーン国の学生魔導士からすれば「うちの王子と勝負出来る学生…?バケモノじゃん…」と言う評価になる。
畏怖する者もいれば尊敬する者もいるが、王子と戦える天才と言うのが共通認識だ。
それだけ有名で、それだけ凄い人なのだ。セルフィ・ウォーガマは。
ちなみに俺は今日知った。
「恥ずかしがらなくて良いですわ、貴方と私が結ばれるのは最早運命!堂々と愛を囁き合いましょう!」
そんな人に1時間も抱きつかれる、何と幸せな時間だろうか。
いや、大した魔法も扱えない自分とライトに次ぐ魔導士であるセルフィとでは釣り合わないにも程がある。
例えるなら人畜無害の雑草と美しく咲き誇る薔薇だ、俺なんかが近くに居て良いような存在じゃない。
(どうしたら良いんだよ、俺は…)
お陰で心臓の鼓動が速過ぎて、今にでも死んでしまいそうだ。
「おい、セルフィ」
「……何ですの、ライト王子」
「少し、レイジにくっつき過ぎでは無いか?」
「あら嫌ですわ、王子とあろう者が嫉妬ですの?」
「なっ!?ち、違う!僕は一クラスメイトとして、友人としてレイジが困っているから言っているのだ!」
(ら、ライト…!)
何故頬を少し赤らめているのか不思議ではあるが、まともに意見を言える人が居て良かった。
まぁ、王女に意見を言えるなど王子しか有り得ないのだが。
クラスメイト達がざわつくだけで何も言って来ないのは、そういう事なのだろう。
「困っている?貴方の目は節穴ですか?」
「ちょっ!?せ、セルフィさん!?」
ただでさえ腕にある柔らかい感触を、押し付けられてしまう。
正しく天に昇るような気持ちと言うのは、こういう事を言うに違いない。
と言うか、このままだと嬉しさと恥ずかしさで本当に死ぬから離れてくれ。
「どう見ても困っているだろ」
そんな俺を見兼ねて、ライトが助っ人に入ってくれる。
「折角、運命の殿方と出会たのですから邪魔しないで下さいまし」
「その運命の相手とやらが困っているから、僕がこう言っているんだ」
「ですから、レイジは喜んでいるではありませんか」
「…はぁ、恋は盲目と言うのは本当らしいな」
頼むから諦めないで欲しいのだが、どうやら王女様は人の言う事を聞きたくないらしい。
「あら?王女ともあろう者が公共の場で殿方に胸を押し付けるなど、如何わしい事をするのですね」
「貴方は?」
「……誰?」
クラスメイトなのは確かだが、流石に一時間で全員の名前は覚えられていない。
「私は―――」
「ジェラシー・アドーアだな?何の用だ」
彼女が名乗ろうとした時、明確にイラついているであろう声音でライトが名前を呼び用件を聞き出す。
「ライト王子に名前を覚えられているとは、至極光栄で―――」
「僕は国民の名前を大体は覚えている、それより他者を馬鹿にした発言をした意図は何だ?」
「…いえ隣国の王女が、はしたない上に貧相な魔力の方とくっついているので気持ちが悪いなと」
「そうか、なら君には関係無いな。消えろ」
「ライト…?」
「王女ともあろう者が、こんな方に惚れるとは魔力はあっても人を見る目は無いようですわね」
「随分と好き勝手言うが、僕からすれば君も大した事が無いぞ」
「っ!?た、確かにライト王子からすれば私は大した事が無いのかもしれませんが」
弱い俺が言っても説得力は無いが、ジェラシー・アドーアから感じる魔力も充分高い。
他のクラスメイトと比べても、割と高い方だと思う。
「そんな事を言いたいだけなら、せめて僕とセルフィに肩を並べるだけの実力を持ってから言いたまえ」
「ご冗談を。それなら、この者は不釣り合いでは?」
「この場に不釣り合いなのは君の方だ、レイジは君が思うよりもずっと強い」
「魔力が全てでは無いのは知っていますが、この者はそれを加味しても弱いでしょ」
「いいや?レイジは僕と息を合わせられる数少ない魔導士だ、君よりは遥かに強い」
「なっ!?あ、有り得ませんわ!」
「有り得ないと思うのなら、決闘をするか?」
「っ!そこまで言うのなら、貴方の力を見せてみなさい!」
(とてもじゃないけど、俺が戦ったら瞬殺だな…)
「今すぐ決闘ですわ!レイジ・ノルマル!」
「………は?」
聞き間違いだと思いたい、言い間違いだと思いたい。
だが彼女の目は、間違いなく俺を敵視していた。
「良いだろう、君の力を存分に見せてやれ!レイジ!」
「何でだよ!?」
「何でとは何だ」
「いやいや!?どう考えても勝ち目無いだろ!」
「狼狽えるな、君なら勝てる」
「初級魔法と中級魔法一つしか使えないのに!?」
魔法学園の入学条件は特に無く、小学校中学校を卒業済み且つ魔力がある事のみ。
とは言え、魔力を持つ者の最低値は高く15歳の時点で中級魔法を4つ以上を扱える。
最高値は言うまでも無くライト、平均値の魔導士でも中級魔法を全て習得済みだ。
一つだけの俺なんて、論外も良い所。勝てる道理が無い。
「あら、それでは上級魔法を2つも扱える私の勝ちですわね」
このジェラシー・アドーアも当然、その事を知っているので既に勝ち誇った顔をしている。
「それが何だと言うのだ、君は僕と完璧なコンビネーションをして魅せただろ」
「出来たのかもしれないけど、あれはお前が強かっただけで…」
「安心しろ、勝てない相手なら僕は言わない」
「ライトからしたら、そうかもしれないけどさ…」
「大体、君が戦ったのはイサム殿ですら手を焼く相手だ。そんな傑物から逃げ延びた事に比べれば、この程度の相手など容易い」
今更、遅れを取るような相手では無い。と、ライトは言うが無茶にも程がある。
確かに彼女ですらエドワードの足元に及ばないのかもしれない、だが彼女が足元に及ばないとなれば俺はどうなる。
立場が下過ぎて、地面どころか地中にでも居るのでは無かろうか。
彼女に勝てれば俺がこの先、舐められる事は無いかもしれない。
だからと言って、負けると分かっている勝負を受け入れる事とは別だ。
自分の力は自分が一番よく理解している。
「では決闘を申し込みますわ、レイジ・ノルマル!」
それと言い忘れていたが、魔法学園では決闘と言うシステムが存在している。
意味はそのままで、存在する意味としては無難だが生徒が強くなる為だ。
負ければ退学などと言う意味の分からないデメリットは無く、学園公認の喧嘩と言えば分かりやすいだろう。
勝敗は、どちらかが降参をするか気絶するか。引き分けの場合は後日、再戦をするかクジ引きで決める事になるらしい。
そして俺は勝ち誇った顔をした3人に連れられるまま、決闘をする為の場所である決闘場に来てしまった。
「な、なぁ…」
「大丈夫ですわ、私が見守っててあげます!」
「うん、それは凄い頼もしいんだけど…」
「さぁ行ってこいレイジ、これが君のデビュー戦だ」
こうして俺は、流されるままに格上との決闘をする事になってしまった。
(つーか、これ負けたらライトとセルフィの顔に泥を塗る事になるよな…?)
自国の王子と隣国の姫の顔に泥を塗るなど、ここで失望されて見放されても仕方が無い。
折角出来た友達を失うなど、最悪にも程がある。
こうなるのならば2人の意見を無視してでも、この決闘を断るべきだったのかもしれない。
「何を突っ立っていますの、早く位置に着きなさい」
「は、はい…」
ジェラシーに言われるがまま、大き過ぎる期待を背負い舞台に立つ。
「いくら格下とは言え、手加減はしません!燃ゆるは情熱、燃やすは愛」
(いきなり上級魔法!?)
「燃え盛るは嫉妬の炎!≪獄炎の羨望≫!」
まるで何かに絡みつくように炎は、俺を囲みながら襲い掛かる。
「あ、あぶねぇ…」
加減をしないとは言っていたが、だからと言って本当に本気で倒しに行く奴があるか。
舐められて遊ばれるのなら、まだ勝ち目があったのかもしれないが。
これでは、本当に勝ち目が無い。
「避けましたか、ですが!」
魔導士での戦いで、魔力と扱う魔法のレベルは絶対的なものだ。
より優れている方が強く、より強い方が勝つ。
とても単純であり、故に俺が勝つ事は有り得ない。
それが常識、この世界の置ける絶対的なルールだ。
ライトのように優れた体術でもあれば、ある程度は覆せるかもしれないが。
そんなもの、レイジ・ノルマルには無い。
(やっぱり、俺なんかが勝てる相手じゃない…)
圧倒的なまでの差による圧と、自分の何倍もの魔力。
ギリギリで避け、何とか態勢を立て直せはした。
だが、生きている心地はしない。
「抱く愛は深く、向ける愛は重く」
「ちょっ、待って!」
間髪入れずに、ジェラシーは詠唱を始める。
「憎むは恋敵!≪紅蓮の愛憎≫!」
俺の声を無視し、怨念のように闇が纏わりつこうとする。
「っ…!?」
食らえば拘束され、そのまま闇に吞まれていたかもしれない。
「また避けられましたわ…!」
(だ、ダメだ…こいつ本気で俺を倒そうとしてる…!)
何も分からずとも、一度でも攻撃を受けてしまえば倒れると言う謎の確信だけはある。
そんな自信の無い自信だけを当てにして、精一杯の回避を行う。
「燃ゆるは情熱、燃やすは愛」
相手にしていて思う、このジェラシー・アドーアはかなり鍛えている。
自分の隙を晒さずに、相手の隙を常に突き続けれるのは日頃の鍛錬の賜物だ。
流石は魔導士、流石は魔法学園の生徒。
俺なんかでは足元にも及ばないであろう実力。
だが、こうも好き勝手されて大人しくは出来ない。
「っ、ああもう!」
「燃え盛るは嫉妬の炎!≪獄炎の羨望≫!」
「こうなったら、やってやるよ!水よ、湧き出ろ!≪湧水≫!」
ささやかな抵抗をするも、水は蒸発し消えてしまう。
やはり、初級魔法では上級魔法に太刀打ち出来ない。
「初級魔法で何が出来ると?」
「くっ…!」
分かっていた事だ、自分では勝てないと。
イラつこうと、その気になろうと、この差は変わらない。
「抱く愛は深く、向ける愛は重く、憎むは恋敵!≪紅蓮の愛憎≫!」
「しまっ―――がっ…!?」
先まではギリギリで避けれていたが、今度は当たってしまう。
「中々に、やるではありませんか」
とは言え、カス当たり。
腕に軽い切り傷が出来た程度、ダメージと言う程のものでもない。
「お前、俺の事を殺す気か!?」
なのだが、問題は明らかな殺意を込められていた事にある。
「ご安心なさい、死ぬ直前で止めますので!」
「それ殺すのと同じじゃない!?」
「あくまでも決闘は決闘、ですので!」
冗談でも比喩でも無く、寸前で避けようとしなければ体を貫かれていた。
決闘は多少の傷は仕方が無い。
両者共、全力でやるのだ。
怪我を負わない訳が無いが、それにしてもやり過ぎな気がする。
(つーか、俺こんなに恨み買われるような事したか…?)
身に覚えがあるとしても、セルフィにくっつかれていた事ぐらいだ。
俺には良い所も無ければ、他人に憎まれるような事をする勇気も無い。
「燃ゆるは情熱、燃やすは愛、憎むは恋敵!≪紅蓮の愛憎≫!」
「水よ、湧き出ろ!≪湧水≫!」
懲りずにコップ一杯程度の水を、大人三人を包み込む炎に掛ける。
「何度やっても、同じですわよ」
「やっぱダメか…!」
当然、そんな少量でジェラシーの炎を消す事など出来る筈も無く。
いくら避ける事が得意でも、相手にダメージを与えられないのでは何の意味も無い。
相性の良い魔法で対抗しようにも、差があり過ぎる。
かと言って、他の属性で太刀打ちしようとすれば同じ様に返されるのがオチだ。
「王子も酷な事をしますわね、これ程の実力差があると言うのに」
本当だ、何でライトは俺が勝つと思ったのか。
嘘を言ったり、人を貶めるような奴じゃない。
短い付き合いだが、そう確信出来る程の優しさを俺は知っている。
(俺に、どうしろって言うんだ…)
分からなかった、俺には王子であるライトが何を考えているのかが。
「何をしているレイジ!君の力は、こんなものでは無いだろ!」
(そんな事を言われても、お前は俺を買い被り過ぎだ…)
あの時は上手く、連携が取れたのかもしれない。
ライトの目には、俺が達人のように見えていたのかもしれない。
しかし、それは間違っている。
俺は非凡で、取り柄の無い、ただの魔導士の成り損ないだ。
入院中に、ライトからダンベルを貰い多少は体を鍛えた。
多少だ、この状況をひっくり返せる程は鍛えられていない。
(大体、何でダンベルなんかを…)
何故プレゼントされたのか、思い出す。
あの時、ライトは確かに言っていた。
君は弱いから力で補え、と。
(…じゃあ何で、ライトは勝ち誇った顔を)
俺が弱い事を知りながら、勝てると断言していたのは何故か。
何を言われても、この時の俺は納得しないだろう。
今でも納得していないのだ、分かる訳が無い。
だが、一つだけ確かな事がある。
「これで終わりにしますわ!」
「友達が見てるのに、ただ負けるだけなんてのは嫌だ!」
「抱く愛は深く、向ける愛は重く、憎むは恋敵!≪紅蓮の愛憎≫!」
「風よ風、駆けろ!≪駆風≫!」
「また避けましたか、ですが!」
(速い!魔法で自身の速度を疑似的に上げるとは!)
追い風で速く動ける俺は、先よりもギリギリの所で避けた。
油断を誘い、隙を作り出す為に。
(今だ…!)
「愛に溺れ、愛衣に沈め!≪愛海≫!」
(ですが、この程度は想定内です!)
近距離での長い詠唱はせず、短い中級魔法で仕留めに来た。
威力こそ上級魔法に劣りはするものの、発動自体は早められる。
短縮詠唱が出来れば良いが、あれはあくまでも一部の人間のみ。
一般の魔導士ならば、上級魔法よりも中級魔法の方が強い場面もある。
咄嗟に出された水が圧となり、俺を彼女から引き離そうとする。
(そう来ると思ったよ!)
「避けられた!?」
「光は巡り廻る!≪廻巡光≫!」
「う、腕が!?」
隙の無い攻撃をして来るのなら、それに合わせるだけ。
理解した上で、来ると分かっているのなら合わせる事は出来る。
勿論、タイミングを少しでもズラされれば作った隙は本物になってしまう。
しかし、俺にそんな事を考えている余裕は無い。
エドワードと戦った時のように、ジェラシーの動きを封じた。
「女子を殴るのは気が引けるけど、挑んだのはあんただからな!」
俺には魔法で相手を気絶させる魔力は無いが、出せる拳がある。
「まっ―――」
無用であろう心配をしながら、俺は顔では無くお腹の方を殴った。
ライトのように、大の大人を殴り飛ばす程のパワーは無いが。
同学年の女子を吹っ飛ばすぐらいのパワーは、あったらしい。
「一発、入れてやったぞ…!」
「まさか初級魔法に、あのような使い方があったなんて…」
(倒れてはくれない、か…)
渾身の一撃ではあったが、同じ手が通用するとも限らず俺はどうすれば良いか考える。
光の初級魔法で拘束し隙を突いて攻撃する、成功すれば強いが弱点が大きい。
まず一個、これはライトに言われて知ったのだが光の輪は壊れやすく、女子でも壊そうと思って引っ張れば簡単に壊れると言う点。
二個目は隙を突けなかった時、要は二度目以降やエドワードのような相手には通用しない事。
三個目に一瞬、怯むだけで魔法の詠唱を止めれる訳じゃないので詠唱そのものを封じる事は出来ない。
まぁ要は何度も通用する攻撃手段では無い、と言うことだ。
「ですが、初級魔法は初級魔法!私には及びませんわ!」
「いいや、君の負けだ。ジェラシー・アドーア」
「っ…!そんな事ありません!私は、まだ動けます!」
そうだ、まだ勝った訳じゃない。むしろ良くて五分五分だろう。
俺が劣勢である事に、変わりは無い。
「残念ですが、ジェラシーさんの負けですわね」
「お前ら、俺の事を信用し過ぎじゃね?」
「何だ、レイジも気が付いていないのか」
「は?何に?」
「彼女には、上級魔法の詠唱を出来るだけの魔力が残っていませんの」
「……え?」
「で、でも中級魔法なら唱えられますわ!」
「そう思うのなら好きにすると良い、レイジが何をするまでも無く君の負けだ」
「っ…!愛を運び、愛を届けよ!≪愛風≫!」
「なっ…!?」
突風が一直線に吹きながら鋭い刃となり、俺を切り裂く。
「ど、どうして…」
本来ならば、そうなっていたのだろうが。
「だからと言っただろ、君の負けだと」
軌道はズレた上に途中で消えてしまい、何かが壊れる事も誰かが怪我を負う事も無かった。
上級魔法を隙間なく何度も連発した彼女の魔力は、既に底を尽きていたのだ。
故に俺は、避けるまでも無く何かをするまでも無く、勝利を飾る事が出来てしまった。
「全く、だから君ではレイジに勝てないと言ったのだが」
「お前ら、もしかして」
「当然、ここまで見越していましたわ」
「君は僕ら以上の魔導士と戦い、ギリギリではあるが避ける事が出来ていた」
「あれだけの猛者を相手に生きている時点で、並の学生相手には負けませんわね」
2人が余裕そうにしていたのは、そういう理由があったらしい。
決して俺の実力が、ジェラシーよりも上だからと思っていた訳では無く。
ジェラシーが俺に攻撃を当てるよりも先に、魔力が尽きると考えていたから。
それを戦う前から分かっていたと言うのだ、何と凄い奴らなのだろうか。
「そ、そこまで見透かされていただなんて…」
「とは言え、どの道レイジの勝ちだっただろうがな」
「そんな事は無いと思うけど」
あそこまで行けば体術での勝負になっていた、だが俺とジェラシーでは俺に分があると言う。
「何を言いますの、レイジは日頃から鍛えているではありませんか」
「あー、一応はしてるけどさ」
「彼女との差は、そこだ」
「そうなのか…?」
「体術に関しては素人だ」
「流石はライト王子、そこまで見抜いているとは…」
確かに先の場面なら、詠唱を挟む魔法より体術の方が有効的だった。
足で蹴られ距離を取られれば、光の輪を壊して詠唱をする事も出来たのかもしれない。
結果論ではあるものの、そのような選択肢もあったと言う。
俺は今朝のランニングで体力をつけ、自宅でのトレーニングに直近で言うならダンベルで筋力をつけたりしている。
差と言うのが、そこなのは理解したが何で2人揃って俺がトレーニングしてるのを知ってるんだ。
いや、ランニングはセルフィと出会った時にしていた。
トレーニングはライトと同室だった時にもやっていたので、俺の知らない間に話したのだろう。
(……いや、2人共さっき会ったばっかじゃ)
セルフィはずっと俺にくっついていたし、ライトは授業を聞きながら時々、こちらを見ていたので話はしていない。
と言うか2人が居る場に、俺も居るので俺が知らないと言う事は話していないと言う事になる。
(じゃあ、何で知ってるんだ…?)
何故か悪寒がして聞くのを躊躇してしまう、何もおかしな事など無い筈なのに。
「まぁ何はともあれ、君の負けだ。ジェラシー・アドーア」
「悔しいですが、魔力切れで動けないのは事実ですし、負けを認めざるを得ませんね…」
「ところで何故、私とレイジに喧嘩を売ったのですか」
「そ、それは…」
「何故、恥ずかしがる」
どちらかと言うと、ここは悔しそうな表情を浮かべる場面の筈。
しかし彼女、ジェラシーは好きな人を言うように恥ずかしそうにしている。
「……もしかして、セルフィが俺にくっついているのが気に食わなかったのか?」
何となく、そんな気がした。
好きな人を言うように恥ずかしそうにしている事、割って入った時の俺とセルフィの台詞を照らし合わせると、ジェラシーがセルフィに好意を持っているように見えたからだ。
いや、尊敬の念を向けていると見方もある。
ともかく、よくある男子小学生のような照れ隠しのような気がしたのだ。
「な、ななな何故それを!?」
どうやら答えはビンゴのようだ。
「……ジェラシー、それでは嫌われるだけだぞ」
「そ、そうは言われましても…!」
「仕方がありませんわね」
「せ、セルフィ様…?」
「私の婚約者を侮辱した事を謝罪するのなら、今日の事は不問としましょう」
「い、良いのですか…!?」
「ええ、それに私のダーリンは別に傷付いていませんので」
「まぁ、不釣り合いってのは本当だしな…」
「……!い、いえ決して、そんな事は!」
「いや俺が弱いのは事実だし、謝るような事じゃないよ」
「ですが実際、私に勝ったではありませんか…!」
「でも運が良かっただけだし、次やったら負けると思うよ」
「……!な、何と謙虚な方……」
「謙虚って訳じゃ無いけどさ、まぁ今後とも仲良くしてくれるなら」
「ええ、勿論です!困った事があれば頼って下さい!」
こうして二限目を踏み倒して行った決闘は終わり、俺達は二限目の途中から授業に参加した。
平和に終わり、打ち解ける事が出来た。この時は、そう思っていたのに。
普通の日常を5000字ぐらいで書こうと思ったんだ、何か長くなった…何で…?
あっ、次は短めです。




