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ツンデレ王子と貧乏人の俺とワガママ姫の建国物語  作者: 逆張りオタクの天照大御神


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3/9

王女である私と彼が出会った日

本編より1年程前の話



 (わたくし)はセルフィ・ウォーガマ、ウォーガマ王国王女にして数百年に一度の天才と呼ばれていますわ。


 成績は優秀、魔法も初級から上級魔法まで全て扱えて、その上の最上級魔法も習得し、これ以上ない程の裕福さを持ち合わせている自覚があります。


 しかし、そんな私ですが1つだけ悩みがありますの。


 それは私の婚約者となる殿方が、未だに見つかっていないと言うこと。


 まだ15歳、特別焦るような年齢では無いのは確かです。


 ですが王女である以上は、なるべく早く子を持ち後の世の安寧を考えたいもの。


 世間一般では焦るような年齢で無くとも、王女である私にとっては焦らなくてはいけないことなのです。


 どこかに私と同じくらい優秀で、同じくらいの歳の殿方が居れば良いのですが、現実はそう甘くはありません。


 とは言え、寄ってくる殿方は大勢いらっしゃいます。


 その中から選べば良いと、お母様は仰いますが、どうにもピンと来ません。


 勿論、相手の殿方に不満はありません。


 むしろ、ここまで人として優れた方々に好意を抱かれることは喜ばしく思います。


 嬉しいはずなのですが、私の心はどうにも動きません。


「…はぁ、この国には居ないのでしょうか」


 ならばいっそ、他国にでも探しに行くべきかもしれません。


「偶には気分転換も必要ですわね、旅行に行きましょうか」


 どこに行くか迷う所ではあるが、他国への外出などはしたことがありません。


 どこに行こうと、自国とは違う空気が味わえます。


 そういう意味では、この旅行自体に意味があると言えますが。


 私には、ずっと行きたいと思っていた国があります。


「そうと決まれば、いざ出発ですわね」


 最初に、お父様とお母様にお伝えし許可を取ります。


「ひ、1人で行くのか…?」


「ええ、1人で」


「せ、せめて誰か連れて―――」


「1人で行きますので」


「な、なら一時間ごとにパパに連絡を…」


「しません」


「あなた、セルフィが1人で行きたいと言うのですから行かせてあげましょう」


「そ、それはそうだが…!」


(はぁ、こうなるとお父様は少し面倒ですわね…)


 ある程度の予想はしていましたが、やはり駄々をこねられてしました。


 一国の王ともあろう者が、自分の娘とは言え、こうも取り乱しては情けないですわ。


「セルフィ、私達のことは気にせずに旅行を楽しんで来て大丈夫ですよ」


「お母様…」


 しかし、お母様はしっかりした方。


 お父様のような駄々を言わずに、娘の私のやりたいことを尊重して下さっています。


「親として、子供が1人で旅行に行くのは心配ですが、いずれは離れるものです」


「では、準備をして参りますわ」


「ええ、行ってらっしゃい。私の最愛の娘」


 穏やかで慈愛に満ちた笑顔で、私の1人旅を見送って下さいました。


 流石は、お母様ですわね。


「何と、1人で他国に向かうのですか」


「大丈夫なのですか…?」


「大丈夫ですわ、何かあっても撃退しますので」


「それは何とも頼もしいですが…」


「旦那様と奥様は何と?」


「行って来なさい、と」


「……そうですか、それなら私共から言うことは無いですな」


「ありがとうございますわ、それでは」


「ええ、お気を付けて」


 執事とメイド達に家を数日空けることを伝え、今は冬休みなので学園への連絡は不要でしょう。


「さぁ、行きますわよ!」


 そして着替えやら何やらの旅支度を済ませ、私は隣国エイリーンに旅立ちました。


 運命の殿方探し兼、気分転換を目的に。


(と、行きたい所ですが…)


 背後からの視線を嫌と言う程に感じます。


 誰からの視線からは分かっていますわ。


(仕方が無いと言えば、仕方がありませんが…)


 王女であり15歳と言う年端も行かぬ少女が、他国に1人で行くと言うのだ。


 心配しない方が可笑しい、と言えばそうですが。


 それにしても、少し過保護が過ぎます。


「……はぁ」


(お、おい!こっちに来るぞ!?)


(私に言わないで!)


(お、お二人共お静かに!)


(お嬢様にバレて―――)


「「「「あっ」」」」


「皆さんで何をしていますの…?」


 そこに居たのは、お父様とお母様と執事長とメイド長だった。


「せ、セルフィ、これはね?えっと、その…」


「……はぁ」


 道理で簡単に行かせて貰えたと思えば、こういうことだったとは。


 心配をしてくれるのは嬉しいですが、これでは私の目的が果たせません。


「せ、セルフィ…?」


「申し訳ありませんが、付いて来られては意味がありません」


「そ、そうよね…」


「お土産も買って帰りますし、何かあれば報告しますから」


「で、でも…!」


「第一、国王と女王が無断で外出など許されません」


「うぅっ…」


「……なるべく早めに戻りますから」


「ほ、本当…?」


「王女たる者、嘘は吐きませんわ」


「セルフィ…!」


 そう言うと、お母様もお父様も安心して下さったようで執事長とメイド長を連れて帰路に着いてくれ

た。


(全く、過保護にも程がありますわ)


 何とか帰らせることに成功し、これで思う存分に1人の時間を楽しめる。


「さぁ、ここからがセルフィ・ウォーガマの1人旅ですわ!」


 あまり乗ることの無い有人列車に揺られながら、駅で売っていた弁当を食べるのも、1人では味わえな

い。


 貸し切りが当たり前、列車内には専属のシェフの料理のみ。


 このように国民が体験出来ないことが当たり前の私にとって、国民が体験出来る当たり前には非日常感

が詰まりに詰まっている。


 これには流石の私も、浮き足が立ってしまいますわね。


 顔は隠していませんが、ここに自国の王女がいるとは思っていないのか。


 誰も、こちらに気が付く様子は無い。


(気付かれても面倒ですし、そろそろマスクを着けておきますか)


 とは言え、王女がここに居ることがバレるのはよろしくありません。


 すぐに持っているマスクを着け、帽子を被る。


 お父様とお母様は口には出していませんが、心配していた理由は過保護なだけでは無い。


 最近、各国で悪の道に堕ちた魔導士の話が多くなってきました。


 10年前にも一度、こういうことがあったそうですが、以降は落ち着きを取り戻したと聞きましたが。


(何かあっても、私なら大丈夫だとは思いますが)


 そんな中で1人旅をするなど、どうなのかと思われるかもしれません。


 ですが中等部では仮にも一番の成績を維持し続け、先生方との戦闘訓練でも圧勝を誇っていました。


 自分でも言うのも烏滸がましいですが、これだけ強い私が負けるとは思いません。


 何かがあっても大丈夫、この時の私はそう思っていました。


『次はエイリーン、隣国エイリーンでございます』


 暫くすると列車のアナウンスで、目的地に着いたことを理解する。


(もう着いたのですね、では降りますか)

 

 荷物を持って列車から降り、駅を出て外に出る。


「ん~~~!」


 動かずに固まっていた体を伸ばし、自国とは違う空気を吸い込む。


 一緒のようで、少しだけ違うような気分に心が高揚する。


「さて、まずは何をしましょうか」


 食べ歩くのも良いし、観光地を巡るのも良いし、ぶらりと散歩をするのも良い。


 何をするか迷うのも良いが、とりあえずは予約をしておいたホテルに荷物を置いて楽になりたいですわ。


(少し、多過ぎましたかね…?)


 多い気のしてきた荷物に目を向けながらホテルに向かい、チェックインを済まし、手荷物を最低限にしてから行くと決めていた場所に向かうことにしました。


「迷い所ですが他国に来たのなら、ここ一択ですわね」


 エイリーン国国立歴史博物館、他国を知るのなら歴史館に訪れるのが一番ですわ。


 国が出来た当初から、今のことまで。


 歴史の全てがここにある場所、同盟国でもあるエイリーンのことは勿論知っていますが、あくまでもウ

ォーガマ国内で知れるものだけ。

 

 エイリーンでしか知り得ない、エイリーンのことがあるはずですから。


 気分転換とは言え、1人でじっくり見る機会はありません。


「ほう、これはウォーガマでは無い歴史ですわね」


 早速、知らないことを知れたので頭に焼き付けるように見ます。


 興味深いことや知らないことが多く、やはり歴史館は良い勉強になりますわね。


 2時間近く掛け、ゆっくり見回り知見が増えました。


 お次は観光地を幾つか回り、度々振り向かれている気はしていますが、いつものことなので気にしません。


 王女とは分からずとも、これだけの美人が出歩いているとなれば、誰しも自然に目が行くものです。


 なので見られていることには慣れているので、問題はありません。


「あら、もうこんな時間ですのね」


 見たいものは大体見れ満足したタイミングで、外が暗くなっていました。


 折角ですので、他国のホテルのビュッフェを頂きたい。


 そんな思いで少し足を早め、到着。


 急いだおかげで、タイミングが良かったようで丁度食事の時間でした。


「ん~~!美味しそうな匂いがしますわね」


 匂いに誘われるがまま、食べたいものだけを取り席に着く。


 一品一品、ゆっくり味わい食事の時間を楽しみます。


(自国の料理も良いですが、他国の料理も美味しいですわね)


 今すぐにでも調理法を聞きたいぐらいですわ。


 それはそれとして、今日は歩き疲れました。


 浴場に向かい1時間程、湯船に浸かった後は軽いストレッチ。


 その後は、室内でも行える軽い魔法の鍛錬を行います。


 寝る前の、ちょっとした日課ですね。


 小さなことですが、こういうことが日々の成長に繋がります。


「ふぅ…」


 それも終え、眠気に襲われるようにベッドに倒れます。


(明日は、どこに行きましょうか)


 1人での開放感と、知らない場所へのワクワク感を抑えながら私は就寝しましたわ。


「んんっ…」


 朝5時、いつもと同じ時間に起床。


 歯を磨いて顔を洗い、目を覚ました後は軽いランニングを行います。


 体を鍛えれば魔力、魔法の扱い以上の差が出ます。


 例え同程度の実力でも、先に体力を切らした方が負けます。


 なので私は、体力を付ける為に2時間程のランニングを毎朝行っています。


 と言うのも、昨年行われた学園交流会。


 エイリーン国だったのですが、その王子であるライト・エイリーンに見事に敗北を喫してしまい、以来鍛錬を重ねています。


 話しによると、毎朝4時に起きて4時間の間にトレーニングをしているのだとか。


 悔しいですが、本当に強かったです。


 私も天才と言われることが多いですが、ライト王子は並々ならぬ努力の天才ですわ。


 だからと言って、負けたままでは終われません。


 高等部での学園交流会の時までには、ライト王子に勝てるようにしませんと。


 その為には、いくら旅行中とは言え努力を怠れません。


「あら?」


 ランニングをしている最中、反対方向から走る人影が見えます。


(こんな朝に誰かと出くわすとは思っていませんでした…)


 今はマスクも帽子もしていません、咄嗟に隠れれば良いのですが。


 見渡しても隠れるような場所が、ありません。


(バレないことを祈るばかりですね…)


 不自然に思われても良いので、顔を隠しながら走り去ろうとしましたが。


「……?なぁ、あんた」


 バレたのか、それとも不思議に思われたのか声を掛けられてしまいました。


 王女が、言葉を無視する訳にも行きません。


「ど、どうなさいましたか…?」


 顔は振り向かずに、言葉だけを返します。


「何で、顔を隠してるんだ?」


「そ、それは…」


「…?まぁ良いや、ここでランニングしてるなんて珍しいな」


「え、ええ、健康の為にと思いまして」


(良かったですわ、相手の方から話を逸らしてくれましたわ…)


 気まずい時間は終わりのようで、一安心ですわ。


「へぇー、偉いな」


「!?」


「?」


「そ、そうでしょうか?」


(偉いと言う言葉に、思わず反応してしまいましたわー!?)


 阿呆と言われても仕方のない失敗をしてしまい、誤魔化しはしたが。


「なぁ、あんたもしかして」


(まさか、もうバレ―――)


「体調でも悪いのか…?」


「……へぇ?」


「いや、さっきから妙だし体調が悪いなら病院に行くか…?」


「だ、大丈夫ですわ!この通り、元気ですわ!」


「そ、そうか?なら良いけど…」


(あ、危なかったですわー!?)


 このまま顔色を伺われば、私の正体がバレる可能性がありました。


 他国の王女とは言え、ニュースや新聞を頻繁に見る方であれば私の顔を知っている可能性があります。


 ここで驚かれれば、人だかりが出来かねません。


 折角の気分転換の旅行が、台無しになってしまいます。


(それにしても、さっきから私……)


 普段はミスなどしないのですが、この人と出会ってからミスばかりです。


 何か、そういう魔法でも掛けられているのではと疑いたいぐらいです。


 ですが、魔法を使った形跡も何かをされた感覚もありません。


(どうして、こんなにも慌てて…)


 昨日は特に、取り繕うことも無かったと言うのに。


 今この場に居るのが、この方だけだからでしょうか。


 1人しか居ないからこそ、逆に危機感を覚えているのかもしれません。


「じゃあ俺、もう行くわ」


 と、考えていると男性は場を離れようとしてくれました。


(良かったですわ、これでバレることはありませんね…)


 安心した次の瞬間、私は何を思ったのか。


 何と、たった今出会ったばかりの、他国の誰とも知らない方の手を掴んでいたのです。


「え、えーと…」


(わ、私、何をして…?)


 何故こんなことをしているのか、私は分かりませんでした。


 聞きたいことがあったのか、誰かと話していたいのか。


 それとも、別の理由なのか。


「こんな美人に、手を掴まれるのは嬉しいけど…」


 彼は視線を変えながら、恥ずかしそうにしている。


 そして、隠していた顔がバレてしまったことも同時に理解する。


「ご、ごめんなさい!私ったら、はしたない…」


「い、いや、こっちこそ…」


 異性との交流には慣れていないのか、彼の顔が赤くなっていました。


 私は異性との交流は多いですし、殿方と手を繋いでも顔を赤らめることなどありませんでした。


 ですが何故でしょうか、顔が熱いです。


 まるで火傷でもしたように、顔も心も熱いのです。


「……」


「……」


「「あの…!」」


「「どうぞ…!」」


「「……」」


「ふっ、ふふっ!」


「何で、笑って」


「いえ、つい可笑しくて」


(ああ、この気持ちは…この気持ちこそが私の求めていた”心”…!)


 この時、私は確信しました。


 この人こそが、私の運命の相手なのだと。


「可笑しい…?俺、何か変なことを」


「そうではありません、大変失礼いたしました」


「は、はい…」


「この手は、お離ししますわね」


(辛いですが、今は旅行中…)


 早く戻ると言った上、帰るまで彼と一緒に居たい気持ちはあります。


 しかし、それは相手方のご迷惑になってしまいます。


 私は未来の伴侶を見つけたかっただけで、相手を拘束する気はありません。


「ど、どうも…?」


「ところで貴方、お名前は」


 とは言え、名前を聞くぐらいなら許される筈ですわ。


「……俺はレイジ、レイジ・ノルマルだ」


 彼は少し困りながらも、素直に答えてくれました。


「レイジ、貴方の名前を覚えましたわ」


 最大限の笑顔で去ろうとした時でした、幸か不幸か私とレイジはもう少し一緒の時間を過ごさねばならないようです。


「随分と高い魔力反応、貴方何者ですか?」


「……!」


「そちらの子は、大したこと無いようですね」


「……あんた、誰だ」


 どこからともなく現れたのは、腰まで長い紫髪の男性。


 細い目で端正な顔立ち、美青年と言った感じでしょうか。


(この方、この国の魔導士?)


 魔力が分かると言うことは、それは魔法を使える者。


 そして大人であることも踏まえれば、この方が魔導士だとはすぐに分かりました。


 ですが妙なのは、この方の魔力。


(どこか、私や他の方とは違う感じがしますわね…)


 具体的に何が違うとは分かりません。


 ですが、明らかに異質な魔力の反応と殺意。


 只者では無いことは、レイジも理解している様子。


「ここは私が時間を稼ぎます、貴方は魔法局に連絡を」


 私の生物としての本能が、この方を野放しには出来ないと叫ぶ。


「稼ぐって、女の子を置いて―――」


「大丈夫です、私強いので!」


(ここで捕らえ、魔法局に受け渡します!)


「ちょっ!?」


「向かって来ますか、ならば相応の対応をしましょうか!」



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