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NEW MYTHOLOGY  作者: 宗緋色
勇者と古代竜編
66/71

本物と義理


 エト達がリーブル王国の教会に集まっていた頃-。

 

 「······ふう。中々手強かったな」

 「いやいやいや。手強かったって······。エイルよぉ〜、一応そいつ神獣だぞ? しかも、神獣の中でも〝四大神獣〟って言われてる内の『蒼霊亀』っつー、特異種なんだけど? それをそんな細っこい剣だけで単独撃破って······。お前どんだけだよ」

 「ん? そう驚く事でもないだろ? とはいえ、これでこの辺りの地脈は安定を取り戻す筈だ」

 「そ、そうか? 逆にこれで地脈の霊力が乱れたりするんじゃ······」

 

 それそのものが巨大な山だと見間違える程の巨大な神獣。『蒼霊亀』という名の大亀を背に、黒髪の少女は透き通るような細身の長剣をスッ-と振り払い、鞘へとしまい込む。

 そんな彼女を呆れた様子で眺めながら、溜め息混じりに後を追う和装姿の男性。

 

 ここは、とある大陸の最果てだ-。

 

 

 「ところでエイルさんよ? 巷で噂の勇者アレヴって知ってるか?」

 「さーな。興味も無いが······。有名なのか?」

 「そりゃあもう有名も有名だな。【世界の救済者】なんて語り継がれてる勇者一族の末裔。つっても、勇者の末裔ってだけなら何人か居るらしいんだが、勇者の称号を持ってんのはそのアレヴって奴だけらしい。あらゆる悪を討ち祓い、奇跡をその手で強引に呼び寄せる。そんなトンデモ野郎らしいぞ?」

 「野郎? その者は男なのか?」

 「え? いや、知らんけど。男じゃねーの? ていうか着眼点そこ!?」

 「そうとも限らないだろ? 勇者だからきっと男だろう-などと、勇者故の固定概念は捨てるべきだ。そもそもランスロット、貴様は形や噂に流されやすい節があるぞ? この前だって-」

 「だぁぁ! 分かった、分かったって! というか、俺歳上だからね!? もうちょっと敬って!?」

 「む······。些細な事を気にするのだな。細かい男は好かれないぞ?」

 「大きなお世話だっつーの!!」

 

 ···ったく-と、そう呟きながらランスロットは袴の袖口に両腕をしまい込む。

 何者にも染まらない-そう言わんばかりの黒髪をなびかせ、不意に視線を合わせれば吸い寄せられそうになるほどの鮮やかな赤色の瞳。魅力的な容姿を包み込む漆黒のコート。

 

 彼女の名はエイル・レギンレイブ。

 

 戦場において、彼女に危うさなんて欠片も無い。戦えば必ず勝利する。そう定められているかのように、不思議と勝利の方が彼女の元へと寄ってくる。

 先の『蒼霊亀』だってそう。放たれる砲撃も繰り出される豪打も彼女に当たることは無かった。あとは一方的な彼女のターン。数十回の攻撃で巨大な『蒼霊亀』は討たれた。

 世界広しといえど、このエイル・レギンレイブに勝る者は居ないのでは? -そう思ってしまう程に彼女は完成されている。

 

 「はぁ······。俺はエイル、お前さんが伝説の勇者だっつっても納得だぞ······」

 「ん? 何か言ったか?」

 「いや。何も言ってない。それより次は何処に行くんだ?」

 「そうだな。少し気になる話を聞いてな」

 「あー、例のアレか。大規模な侵攻戦だろ?」

 

 そう言いながら、彼女は珍しくクスッと微笑みを見せた。少し気になる話-それは、ほんの二日前に起きた大規模な侵略戦に関連するものだった。

 

 「突如として現れた『仮面の竜使い』ノーフェイス。今や全世界にその名を轟かせているその者が、その侵略者達から世界を救ったらしいではないか?」

 「まぁ······らしいな。ちなみに俺達は『蒼霊亀』との戦いの為に準備してたから、完全に蚊帳の外だったけど」

 「最上位種族である竜種を手懐ける存在······。面白そうだとは思わないか? 一体、どれ程の器を持っているのだろうな」

 「面白いってお前······。そんな好奇心旺盛だったか? つか悪い奴だったらどうすんだよ? 面倒だぞ? いや、良い奴でもどうすんだって話だけどな?」

 「なに、難しい事じゃない。悪であるならば即座に滅する。善であるのならば······そうだな。それ程の器を持っているのであれば〝惹かれてしまう〟かもしれないな」

 「おー、冗談を言うとは珍しい。お前、恋愛感情とかそういうの、よく分かってないだろ?」

 「む······。う、うるさいな」

 「おー、動揺とは···これまた珍しい」

 

 からかいが過ぎたようで、エイルはぷいっとそっぽを向いてしまった。まぁこの異常な強さを除けば、ただの普通の女の子なのだ。

 それを知っているが故に、隣のランスロットも彼女の傍に腰を据えている。

 

 「そんじゃあ、とりあえずそのノーフェイスを探すって事でいいんだな?」

 「あぁ。私の〝悲願〟の為にも竜使いである彼には会ってみたいからな」

 「悲願ね······。まぁ近道には違いねえかもな」

 

 髪を耳にかきあげ、何かを見据える赤い瞳。そこに何が映っているのか-それは長年付き添うランスロットですら分からない。それでも、彼女の悲願を知る彼は彼女の為に傍で見守ろう-そう決意し、そっと彼女の後をついて行く······。

 

 

 

 

 同刻-。

 

 「っくしょい!!」

 「リンさん、大丈夫ですか〜?」

 「大丈夫大丈夫! にしても北方大陸ってホンットに寒いよな! -ふ···ぶわっくしょん!!」

 「うふふっ。この街道が特別寒いんですよ?」

 「にしてもリン? 後ろの子、いつまで面倒見るつもりなん? ウチは全然かまへんのやけど······」

 「うーん。かれこれ一ヶ月半になるもんねー。リンさん、何かお考えなんですか?」

 「······。さっぶいなぁぁ!」

 

 (あ。絶対ノープランだ······)

 

 北方大陸の西部。凍結街道と呼ばれる一本の街道。ここは北方大陸の中でも突出して寒いと有名な街道である。その為、北方大陸に住む者達はまず利用しない。

 

 そんな極寒街道を進むリンとマヤとフィーネ、そして深々とローブを羽織った少女。

 

 「おい嬢ちゃん、俺達に同行するのは全然構わねえんだけどよ? その探し人ってのをいい加減教えてくんねえかな。別段何かを目的に動いちゃいねえし、急ぐ旅でもねえからあんま急かしたくはねえんだけど」

 「そやなぁ、流石に一ヶ月半も一緒におるんやし、そろそろ心開いてくれてもええんちゃう?」

 「······ごめんなさい。そういうつもりじゃ···ないんです。同行を許可して頂いた事も、とても良くして頂いてる事も、本当に感謝···してます。でも······」

 「やっぱり言えませんか?」

 「······分からないんです」

 「分からない? ですか?」

 

 少女の言葉に歩みを止めるリン達。極寒の地での停滞は死を招く-よく聞く言い伝えだが、真面目モードになった彼らにとって、少女の言葉に耳を傾ける今は極寒だろうが氷点下だろうが、全く意味を成さない。

 

 そんな中、少女は恐る恐る語った-。

 

 「探し人······は〝兄〟です。でも、ボクにとって兄と呼べる人は本当の兄と〝義理の兄〟の二人。突然いなくなっちゃった本当の兄を探す為に家を出たのに······、その兄よりも今は、離れ離れになった義理の兄を探したい······そう思っちゃってるんです······。本当の家族じゃないのに······ボク···」

 「ふーん。そりゃ大変だな。でも、悩む必要も戸惑う理由もねえんじゃねえか?」

 「······え?」

 

 少女の不安を他所に、リンは地面に積もる雪にそっと手を押し込む。リンの考えがすぐに理解出来たマヤもシルフィーも優しく微笑んでいる。

 

 「本当の兄ちゃんか、義理の兄ちゃんか、その定義ってなんなんだよ? 本物か偽物か、それを決めんのは結局〝自分の心〟なんだぜ! 血の繋がりとか、過ごした時間とか、まぁ全く関係ねえとは言わねえけどさ、それよりも大事なのは今嬢ちゃんがどうしたいか-だろ? 小せえ事で悩むんじゃねえ。いいか?〝男〟だったら両方同時に見つけるくれえ言ってみろ! この俺達が力を貸してやるからよ!!!」

 

 そして、リンは勢いよく右腕に魔力を込める。

 その瞬間、凍結街道の雪が一瞬にして消し飛んだ-。それはリンが至高の力【巨王遊戯】の一端を使用したからだった。

 

 身も焼ける程の寒さが一転、温かな空気が少女を包み込む。深々と被っていたローブがはだけると、そこには瞳を潤ませたカナ・リアテスター・インフェリアがいた。

 先程の言葉、そしてこの天候すらも吹き飛ばす所業······。カナはリンにエトの面影を感じた-。

 

 「いい感じの所すみません。リンさん? 彼女、男じゃありませんよ?」

 「ぬっ············今日のフィーネは嫌いだ」

 「なっ!? そ、そんなぁぁ〜······」

 「ぷっ···あはははっ」

 「おっ。なんや、吹っ切れた顔しとるな? そっちのがよっぽど可愛ええよ! やっぱ女の子は明るくないとな!」

 「······えへへ。ありがとう···ございます! なんだかリンさん、義理の方のお兄ちゃんに似てる···かも」

 「ほーう。そうかいそうかい! その兄ちゃんも俺ほどイケメンだってか?」

 「はい! リンさん〝よりも〟カッコイイです!」

 「ぐぬっ······」

 「なっははは!! リンだっさぁ〜! めっちゃおもろいやん!! 中々いう子やなぁ!」

 

 ほんの数分前より一変、和気あいあいと歩みを進めるリン達。そんな彼らの周りに、寂しさすら感じるあの雪が降り積もることは無かった-。

 

 

 「それで? 兄ちゃん達の特徴とか教えて欲しいんだけど?」

 「はい! えっと、本当のお兄ちゃんの方がアル・リアテスター・インフェリア。身長はリンさんくらいで、茶髪で、えっと···鍛冶師で······」

 「うん。聞いといてなんだけど、やっぱり口頭じゃ曖昧だな。全然ピンと来ねえや。フィーネ、〝あれ〟を頼む!」

 「了解しました!」

 

 歩みを進める中、カナの兄の情報を共有しようと考えたリンだったが、案の定その容姿も特徴も口頭ではイマイチである。

 その為、リンはフィーネの〝スキル〟を使用する事にした。

 

 「ささっ。カナちゃん、こっちに来てくれる?」

 「あ、はい!」

 「ちょっと失礼〜。スキル『記憶共有』!」

 

 フィーネがスキル名を唱えた途端、カナの額に添えられたフィーネの手が輝きを放つ。

 

 「カナちゃん、お兄ちゃん達の顔を思い浮かべてくれる?」

 「もしかして、記憶が見えるんですか!? スゴいです!」

 「えへへー! ありがとーっ。といっても、イメージしてくれた事だけだけどね? ······ふむふむ。これがアルさんね? 意外と逞しい系だねー。目元がカナちゃんにそっくり。それから? もう一人のお兄ちゃんが············ッ!!!?」

 

 記憶を覗いていたフィーネだったが、突如としてカナの額から焦るように手を離し、唖然とカナを見つめた。

 

 「え? な、なんですか······?」

 

 案の定、カナは何が何やら分からない様子でフィーネを不安そうに見つめている。

 

 「フィーネ? どうしたんだ?」

 「リ、リンさん! この子の義理のお兄さん······エーちゃんです!!!」

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 

 「「はぁああああ!!!?」」

 

 数秒の沈黙の後、その場にリンとマヤの驚愕の叫声が響き渡る。カナの義理の兄が、彼らのよく知るエトだということは、ここ最近で一番の驚きだったようだ。

 

 「ま、マジかよ嬢ちゃん!!」

 「え? え!?」

 「びっくりしたぁー···。いや、過去形やのうて現在進行形でやけど! ホンマか? ホンマにカナの義理の兄ちゃん、エトやんなんか!?」

 「や、やん?? あ、あの···もしかしてお兄ちゃんの事、知ってるんですか!?」

 「知ってるもなにも、アイツは俺のライバル兼弟みたいなもんだからな!」

 「ライバルって! だいぶ先、行かれてしもとるけどな!」

 「や、やかましい!!」

 「そ、そんな······じゃ、じゃあお兄ちゃんの居場所も知ってますか!?」

 

 魔法学園を出て一ヶ月半。たまたま出会った彼らの不思議な雰囲気に当てられ、今まで同行していたが、まさかこんな身近に義兄であるエト・リエルをよく知る存在がいたとは-。

 カナはもっと早くに言えば良かったと、後悔しながらも期待に胸を膨らませる·········が。

 

 「ごめんね、カナちゃん。確かにエーちゃんの事は知ってるし、私達にとって特別な存在だけど、どこにいるかって聞かれると······分からないの」

 「だな。連絡手段もねえし。エルモアは広いからな。コツコツ情報を仕入れるしかねえんじゃねえかな? まぁ、アイツが『異空間魔法』を使ってくれりゃあ、すぐに割り込んで飛べんだけど」

 

 リンとエトの唯一の繋がり-それは二人が持つ『異空間魔法』。リンが魔界門番からエトを助けた時のアレだ。それとは別にリンはエトに加護を与えているが、そもそも加護というものは人によって恩恵が異なる為、エトとリンの間には念話のような副産物も無い。

 つまるところ、即効性の連絡手段は無いのだ。

 

 「そう······ですか。そうですよね······」

 「つかアイツ、今は魔法学園にいねえんだな。ったく、俺よりも放浪癖があるんじゃねえの?」

 「リンさん、今はそれより-」

 「あぁ、だな。ちょっと〝みんなに〟聞いてみっかな」

 「え? みんな···ですか? マヤさんやフィーネさんの他に仲間がいるんですか?」

 「おう! ちっとばっか〝大きな友達が十人〟くらいな!」

 

 頭の上にハテナを浮かべて首を傾げているカナを他所にリンは全身に膨大な魔力をまとい始める-。

 それは『魔力視』なんてスキルが無くても視認出来るほどのとてつもないものだった。

 

 「す、すごい······」

 

 リンから噴き出す膨大な魔力。それに当てられてか、カナはまたもリンの背にエトの面影を感じ始める。破天荒ではあるが、このお人好しというか優しく温かい感じはエトと似ている-そう思いながら真っ直ぐリンを見つめる。

 

 「んじゃ、お前ら人間サイズで頼むわ! 【巨王遊戯】ッ!」

 

 パンッ!! -と勢いよく左右の手のひらを叩き合わせたと同時に、その場には十人の老若男女が姿を現した-。

 

 〘主、此度は如何なされましたか?〙

 〘キュオネウスは堅いのぉ。王が前に言っておったろう? もっと砕けた感じで良いと〙

 〘俺ら全員が呼び出されんのって、あの魔界ナントカって小僧以来だな! 何があったよ、リン?〙

 〘ポルピュリオ殿、エフィアルテス殿の言う砕けた感じで-というのは何もそこまででは無いかと······〙

 〘アグリアス、彼にそれを言っても無駄よ。馬鹿なんだから〙

 〘おいおい、クリュティオール。お前、俺に喧嘩売ってんのか? ただまぁ、馬鹿だってのは認めるがな!〙

 〘戦であるか、殿よ! 我は如何なる時も準備万端でありますれば!〙

 〘エ、エンケラード。す、すぐに、い、戦、し、したがる。よ、良くない···よ〙

 〘ガッハハハハ!! やかましいぞお前ら!! それにパーラス! お前はもっと元気を出さんか!!〙

 〘一番うるさいのアンタだから、グラディオス。マジ黙って。ウチの耳もげる〙

 〘エウリュトは眠いの。でもリンリンの呼び出しだから頑張るの。えいえいおーなの〙

 

 なんとも個性豊かな面々である。

 『魔力譲渡』の力を持つキュオネウス。

 『大地』の力を持つ盲目のエフィアルテス。

 『身体覚醒』の力を持つポルピュリオ。

 『結界術』の力を持つアグリアス。

 『付与』の力を持つクリュティオール。

 『炎』の力を持つエンケラード。

 『治癒再生』の力を持つパーラス。

 『重力』の力を持つグラティオス。

 『予知』の力を持つミマス。

 『念動力』の力を持つエウリュト。

 

 これがリンの従える巨人の王達である-。

 

 「お前ら、巨人状態の時は全員同じ風貌なのに、人間サイズになるとすげぇ個性的なのな。エウリュトとか最早幼女じゃん······。デカいときムキムキだったじゃん······。ウオオォォォ! -とか言ってたじゃん······」

 〘女の子には色々あるの。それを詮索するなんてリンリンはスケベさんなの〙

 「いや、どこがだよ!!」

 

 何はともあれ、ようやく話題は本題へと移っていった-。

 

久々の投稿・・・。

みんなまた読んでくれるかな・・・。

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