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NEW MYTHOLOGY  作者: 宗緋色
復讐者の迷走編
62/71

現れた天災


 「お嬢······?」

 「ん···大丈夫よ。ありがとう。······にしても、なんて子なのかしら。存在圧が半端じゃないわ。あれじゃあまるで-」

 

 回復薬により、回復を終えたアディーロはゆっくりとソールに支えられながら立ち上がる。

 そして目の前のシュウを見つめながら大きく溜息を吐く。何が起こったのか、未だに謎-と言わんばかりに表情を崩している。まさかここまでの存在が邪魔立てするとは思ってもみなかったようだ。

 

 「ゥウウウ······」

 

 まるで威嚇しているようにうねり声を上げながら一歩、また一歩とアディーロ達に歩み寄る。

 

 「仕切り直しね。ちょっと真面目にやろうかしら。······至高の力(マスタースキル)星天願望(アストラル・マギカ)】」

 

 アディーロの右手に突如として現れた不思議な球体。それは神々しくも異様な輝きを放つ。

 

 「ゥアアアアッ!!!」

 

 そんな中、ソールにも負けず劣らないスピードで懐に潜り込んだシュウに表情を崩すこと無く、アディーロはそっと右手を突き出し、ゆっくりと口を開いた。

 

 「『皆既食(エクリプス)』」

 「ッ-!!?」

 

 刹那、シュウの強烈な右拳はアディーロの懐手前でピタリ-と、動きを止めた。

 しかし、それでも尚、強引にねじ込もうとするシュウにアディーロは愛おしそうに見つめながら微笑む-。

 

 そしてゆっくりとシュウの頭部に手を添えた······。

 

 「哀れな子。『崩壊星(ブラックホール)』」

 

 -ドバァッ!!!

 

 一瞬にしてシュウの頭部は弾け飛んだ。

 

 「······ふぅ。·········ふふふっ。そういえば、貴方はそう簡単には〝死なない〟のだったわね?」

 

 頭部を失った亡骸が塵のように消えた瞬間、どこからともなく無傷のシュウが現れる。しかし、その姿は先程までの異形と化した姿ではなかった。

 

 「······マジかよ。なんだアレ···。あの球体、ちょっとってか、だいぶチート過ぎねえ?」

 【主様!! ご無事ですか!?】

 《あぁ。肉体的には全然問題ないけどさ? 精神的に相当来てるぞ。スズさんや、アレは流石に反則じゃないかね?》

 【は、はい。まるで天体現象を操っているような······】

 《待て待て待て! それってヤバくね!? 天体現象って何だよ! 神にでもなったつもりか!?》

 【それはどうでしょうか···。あれ程の所業、相当の魔力を消耗する筈です。相応の代償、もしくは連発が出来ないのでは···】

 《あー、それもそっか。つーか、何だあの表情。腹が立つくらい清々しい顔しやがって···。余裕ですってかこの野郎!》

 

 焦りと愚痴が止まらないシュウ。そんなシュウにアディーロは呑気にも微笑みながら胸元で手を振っている。

 「大丈夫〜? 元気〜?」-なんて言っているようだ。

 

 「おい、アディー! そのとんでも球体は何なんだよ! 無茶苦茶過ぎんだろ!?」

 「こらこら。貴方はさっき秘密だって話さなかったでしょ? 自分のことを棚に上げないの」

 「ぬっ······」

 「まぁでも? 寛大な私は教えてあげるのだけれど。いい? これは【星天願望(アストラル・マギカ)】。まだ観ぬ天の願望器よ」

 「なっ!? おいおい、ちいせえ宇宙ってか? どんな設定だよ! つか、やっぱりチートじゃねえかよ!!」

 「設定? ちーと? 貴方が何を言っているのかさっぱりだけれど、これにはちゃんと対処法もあるのよ? まぁ、魔力の〝無い〟貴方には一生かかっても無理だろうけれどね? ふふふっ。それにしても小さな宇宙だなんてロマンチックね。気に入ったわ」

 「やかましい!! くっそ。なんで魔力がねえのバレてんだよ。地味に気にしてるってのに!」

 【あ、主様! 相手のペースに乗せられてはなりませんよ?】

 

 余裕の表情で球体を左手で撫でるアディーロ。挑発とも取れるその行為にシュウの表情は徐々に険しくなっていく-。

 しかし、『魂焼憑依』の解かれた今のシュウに為す術は無い。仮にもう一度『魂焼憑依』をしたとしても先程と同様に彼女は無敵さを自慢げに披露するのであろう。だとすれば、どう足掻いたところでやはり今のシュウに出来ることなんて無い。

 

 「流石だよ、お嬢」

 「っだああ!! ちっくしょぉ! 強え!!」

 「うふふふふ〜。ありがとうっ」

 「褒めてねえよ!!!」

 

 

 

 -ゾワッ······。

 

 「「「-ッ!!!!」」」

 

 刹那-。アディーロとソール、そしてシュウは異様な殺気に凍り付く。意識とは別に流れ落ちる冷や汗が彼女達の頬を冷やしていく。

 

 コツ···コツ···-と、足音だけが三人の脳内に響く。その異様過ぎる殺気にその場の誰も足音の発する方向へ視線を向けることが出来ない。

 

 制止された空間を切り裂くように、その存在はゆっくりと三人の視界に割り込み、口を開いた-。

 

 「盛り上がってるみたいだね。ひとん家の前で」

 「······来たわね。特異者···〝エト・リエル〟」

 「え、エト······え? ちょっ·········は!? ノーフェイスってエトっちだったの!!?」

 

 

 

 

 

 時は少し遡り-。

 

 アディーロが人間界に現れた際、すぐ様動けるように支度を終えたエト達は今後の方針を固めていた。

 

 「ってことで。やむなく仕方なく百万歩譲ってラナンキュラスも連れて行くことにした」

 「えへへ〜! あ······ゴホン。カディエステル様と騎士団の連中には話を付けておいた。短期間ならば問題はない」

 「だそうだから、この六人で行動をとるよ」

 「はいです!! 久々にエト様とご一緒出来て私、とっても幸せです!!」

 「お、おう。それより相当強くなったみたいだね、ミーア」

 「まだまだですよ! 師匠をギッタンギッタンにするその日まで私は立ち止まりません!!」

 

 ·········なんか、性格まで変わってる気が。

 

 「フィーって言ったわね? 状況はどうなの?」

 

 って、ギッタンギッタンには触れないんだ!?

 

 イルミは何事も無かったように振る舞い始める。どうやらこれが今のミーア達の日常-ということらしい。なんだか知らない間に関係が築かれている。嬉しいようで少し寂しい気もする。

 まあ、大分と寄り道してしまった俺が悪いのだが。

 

 イルミの問いにフィーは首を横に振る。どうやらまだこれといって動きは無いらしい。ただ、魔界と精霊界の戦闘は無事に終結したようで、その旨を俺に伝えてくれた。

 精霊界の方に居たラグ達はこちらに向かっているとの事。そして魔界の方は、一方的な虐殺と化していたらしい。主にリーアだ。笑顔で一万の敵をフルボッコにしていたようで、ベルゼ達はそれをただただ眺めていたらしい。先導者も居ただろうに···。流石は魔界最強。

 

 「ところで主、アディーロなる者が現れた際、吾輩達も同席しても宜しいので?」

 「うん。問題ないよ。ただ、ラナンキュラスは気をつけた方がいいかもね。今の俺は一応、お尋ね者扱いだし」

 「む。それもそうだな。不本意だが、人気の多い場所での同席は避けよう」

 

 不本意なんだ···。

 

 【ッ!? エト様! 現れました! アディーロ・フロディアーデです!!】

 「「「「「ッ!!!」」」」」

 

 そんな中、フィーからの伝達でアディーロが現れたと報告を受けた。本当に唐突だ。こちらの都合なんてお構い無し。早々に準備をしておいて正解だった。そして俺達はすぐ様臨戦態勢に入る。

 

 「フィー、場所は?」

 【魔法学園です!!】

 「ま、魔法学園?」

 

 まさかの場所に俺の眉はピクリ-と反応を示す。

 魔法学園に一体何があるというのか、アディーロの目的がさっぱり分からない。ラナンキュラスの言っていた【天上門の鍵】-というのがやはり重要な要素なのかもしれない。レイラが魔法学園は相当に古いと言っていたことを思い出す。やはりあそこには何かがあるのだろうか······。

 

 「魔法学園か。分かった。とりあえず、魔法学園に向かうよ! 予定を少し変えるね。イルミ達は魔法学園の外で待機。敵が潜んでるかもしれないから」

 「了解よ。魔法学園内にはエト一人で行くって事でいいのね?」

 「うん。ひとまずね」

 

 俺の言葉にその場の全員が頷く。そして俺達は急いで魔法学園に向かった-。

 

 

 

 

 

 そして今-。

 

 シュウとアディーロと俺はバチバチバチ-···と、火花を散らす。この三つ巴をなんとも言えない緊張感が包み込む。まぁ、俺は全く緊張なんてしていないのだが。

 

 「シュウ···だっけ? 状況を説明してくれない?」

 「·········エトっちがノーフェイス」

 【あ、主様······。この者······存在感が異様でございます···。決して戦ってはなりません!!】

 《そ、そんなにか······。スズ、コイツ···どのくらいのレベルだと思う?》

 【申し訳ございません。分かりかねます······。寿々めでも、あの者の底が全く把握出来ません】

 《·········はぁ。しょうがねえか。コイツと殺り合う気は今はまだ無いし》

 「······コホン。おーっすエトっち! あ、今はノーフェイスの方がいい?」

 

 数秒の沈黙の後、シュウはガラリと表情を変えてみせる。それはいつかの鬱陶しくも暑苦しさが半端ない俺の苦手なシュウだった。

 

 「どっちでもいいよ。それより状況」

 「おっけーおっけー! まぁ、なんつーの? 突然現れた真っ白白助とビリビリ青年は、この魔法学園に攻めて来たってんで、この俺様が登場してコテンパンにのしてた所? ってな感じだな! うん!」

 「·········」

 

 ······相変わらず鬱陶しい奴。

 

 「おいおい、待てよ。ついさっきまでコテンパンにされてたのはお前の方だろ? 適当言ってんじゃねーよ」

 「まぁまぁソール? 落ち着きなさい。エト・リエル? その子の言っていることは半分本当よ。さっきまでの状況は概ねそんな感じね。で、今は私がその子をのしてた所」

 「ふーん。まぁどっちが殺られてようが知ったこっちゃないし、それはどうでもいいよ」

 「ふふふ。強者の言葉ね······」

 

 尚も動こうとしない俺達。段々と空気が張り詰めていく。誰か一人でも動けば、この三つ巴の戦いが幕を開ける-そう理解しているのだ。

 

 「それより、この寮の前で戦ってた理由を聞かせてくれないかな?」

 「いや、それは俺様も知らねえぞ? 俺様はコイツらがここに居たからここに居るだけだし?」

 

 どうやらシュウは嘘を言ってはいない。ならば問いかける相手はアディーロの方だ。魔法学園の中でも、一番戦いに縁遠い男子寮のしかも俺の寮に何故アディーロが居るのか。

 

 「なら、アディーロ。あんたが答えてくれる? どうしてこの男子寮に来たのか。まさか戦っている内に辿り着いただけ-なんて言わないよね?」

 「ええ。そんな事言わないわ? ちゃんと理由があってここを目指して来たのだから」

 

 なるほど。魔法学園に来た理由はこの男子寮だと···。であれば、その理由は······。

 

 「カナ······か?」

 「·········へぇ。ふふふ。御明答。凄いわね? 割と本気で驚いちゃった。でもどうして? どうしてそう思ったのかしら?」

 「大したことじゃない。可能性を考慮しただけだよ」

 「そう。······その可能性、伺ってもいい?」

 

 アディーロの問いに俺は答えた。

 正直な所、【天上門の鍵】なんてモノは知らないし見当もつかない。ただ、カナの兄貴の事がふと頭を過ぎったのだ。天上門というフレーズで連想出来るのは〝天界〟だ。天界、つまり神族。

 カナの実家は西方大陸のインフェリアという小さな国らしい。西方大陸と言うからには少なからず神の信仰があったはず。なら、その神に通ずる〝何か〟がインフェリアという国にあったとしても不思議じゃない。

 カナの父は兄の失踪に心当たりがあるような事をカナは言っていた。それはもしかしたらコイツらの目的である【天上門の鍵】というモノに関係しているのでは? -俺はそう考えた訳だ。

 

 「······困った子。何が可能性の話よ。まるで〝全てを知っている〟ような口振りじゃない」

 「お嬢、コイツ······相当危険だ。ここで消した方がいい」

 「ええ。そうね。流石に〝あちら〟と通じてるとは思えないけど、それでもその推測がほとんど〝合っている〟というのは大問題ね」

 

 何やらアディーロは傍に居る青年と内密な会話をしている。その光景を見るに、俺の推測はあながち間違ってはいないのかもしれない。

 

 「シュウ、ひとまず俺と代わってくれない? ここは俺に預けて欲しいんだけど」

 「なっ······」

 【主様! これは願ってもない好機かと! ここは彼の提案を飲んでおいた方が宜しいのでは!?】

 《うっ···。確かに、今エトっちと戦うのは避けるべき······か。だああ! もーっ!!》

 「分かった分かった! 今日の所は俺様が引くよ。でも覚えとけよ! エトっち! いつか絶対お前の事も倒しに行くからな!!」

 「うん。いつでもおいで。待っててあげるから」

 「っ!!?」

 【·········主様、申し訳ございません。寿々め、ほんの少しだけ彼の笑顔にときめいてしまいました···】

 《何ぃ!? ······って、俺も人の事言えねえか。で、でもダメだそ!? ダメだからな!!》

 【はい! 寿々めは主様のものですっ!】

 「ぬっ······。じゃ、じゃあなエトっち! 顔を洗って待ってろよ!!」

 

 そうしてシュウは足早にその場から姿を消した。

 

 というか、顔じゃなくて首だと思うんだけど······。

 

 「って事で。選手交代ね。悪いけどカナを渡す訳にはいかないんだ。色々あったけど、一応カナの義兄ちゃんだからね」

 

 そう。カナは俺の義妹だ。一度は突き放してしまったが、許されるのであれば今でもカナのことは義妹だと思いたい。その証······という訳では無いが、アディーロ達の思い通りにカナを連れて行かせる訳にはいかない。

 

 「兄? ······訳ありかしら? そのあたりの事情は知らないのだけれど。まぁ、兄だろうがなんだろうが、私達には何の関係もないから構わないわね。いいわよ、少年。立ちはだかると言うのなら、力ずくで奪わせてもらうわ」

 「·········力ずく? ···へぇ。誰から力ずくで奪うって?」

 

 -ゴォォォォッ!!!!

 

 その瞬間、エト・リエルから異様な魔力が溢れ出した。それは今まで見たことの無い程の濃密で異質なものであった-。

 

 「なっ-なんて魔力圧なの!!!? 何なのこの子!!? (魔力に魔族と竜族の気配!? それに読み取れないけれど〝もう一つ〟!? ······そ、そんな···)」 

 「お、お嬢!? この魔力······ま、まさかコイツ!!?」

 「······え、ええ。こ、混異種······。複数の種族の魔力をその身に宿す〝天上に至る可能性がある存在〟······ね」

 「〝あの方〟と···同じ······!?」

 

 呆然と立ち尽くすアディーロとソールを他所に、エトはその一歩を踏み出した-。

 

更新ペースが遅くなっていましたが

少しずつ戻っていくと思いますm(_ _)m

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