動き出した聖人
「っと。······久しぶりだな」
『異界門』を抜けたその先に見えたもの、それは足元に広がる草原と目の前の四角い建造物。特殊な素材で出来ているとかなんとか言っていた気がする。繋ぎ目の部分に至っては水色に発光している。得体の知れなさで言うとこの場所は外界ナンバーワンだ。
【エト・リエル様。ようこそお越し下さいました。〝 システムルーム〟にてアイオーン・エクメーネ様がお待ちになられております】
「やっぱり、お前らだったんだな。俺の事見てたのって」
【はい。それが我々ウルスマキナの使命ですから】
そう言いながら深々と頭を下げた使徒は、クルリと体を反転させて建物内へと誘導を始めた。
彼女達、使徒やアイオーン達は当然人間では無い。というより、生命体ですらない。区別で言うと、ルカが一番近いかもしれない。
なんて語りつつ、俺の歩みは着々とアイオーンの待つシステムルームに向かっている。
道中、多くの使徒に不思議そうな表情をされた。まぁ、基本的に不干渉を貫く彼らにとって、今の俺は完全に異物······というか、不審者に近い存在なのだろう。
とはいえ、俺も一応英雄候補としてここの下の世界、『二の界』には来たことがあるわけで。だから、全く知らない-という事はないと思うのだが······。
「おっ! 久しぶりだね? アイオーン」
【【アイオーン様っ!??】】
システムルームに入ると、そこには土下座状態のアイオーンが俺を待ち構えていた。そのせいか、周りにいる使徒達は盛大に驚愕している。
【エト様、お越し頂き誠にありがとうございます。ワタクシ、大変うれしく存じます!】
「うん。俺も久しぶりに顔が見れて嬉しいよ」
【あぅっ······。にへへぇ〜】
(か、可愛いッ!!!)
使徒達の反応が一々大袈裟なのはさて置き、俺はアイオーンに頭をあげるように言って、何かあったのかを問いかけることにした。まぁ何も無ければそれでいい。
なんて思っていたのだが、俺の勘は当たってしまったらしい。
【エト様、まずはこちらをご覧下さいませ】
「·········やっべ」
そう。アイオーンに見せられた映像を見た瞬間、俺は完全に忘れていた重要な案件を思い出したのだ。それは俺が力を失って以来、放置しっぱなしだったリーアの事だ。
目の前では今まさに魔界を縦横無尽に暴れ回っているリーアが映し出されていた。
·········ホントにごめんねリーア。
【魔界の姫はこれをひと月程続けています。エト様もご存知の通り、魔界には姫よりも強い者は存在しません。つまり-】
「収拾がつかない······と」
【はい】
「了解。それは俺が対処するよ。元々俺が放って置いたのがいけないんだし。で? 要件はそれだけ······じゃなさそうだね」
どうやら話はそれだけではないらしい。アイオーンの表情を見れば誰でも分かるだろう。一体何事か-と問いかけると、アイオーンが映し出した映像に俺は大きく溜め息を吐いた。
そこには数え切れないほどの軍勢が精霊界の最北端に集まっていた。まだ完全には集まっていないようで、幸い被害は今の所全くないらしい。
加えると、ここ以外にも魔界とエルモアにも同数の軍勢が集結し始めている-との事らしい。
【数にして一万。ほとんどがランクA以上の魔獣や傭兵達です。見る限り、洗脳のようなものを受けているようなので、統率力も高いかと······】
「同時に始められると厄介だね。猶予は?」
【決行予測時刻は今から約丸一日。それまでに対処しなければ······。申し訳ございません。ワタクシが管理していながら彼らの動向に気がつけないなんて】
申し訳なさそうにアイオーンは頭を下げる。余程悔いているのだろう。しかし、丸一日もあればどうとでも出来る。というか、どうとでもしてやる。
世界の命運なんて俺には興味がないが、コイツらの行いは間接的に俺の邪魔をしているのだ。つまり、コイツらまとめて俺の〝敵〟という事になる。殺す理由なんてそれで充分だ。
俺はゆっくりとアイオーンに歩み寄って正座をする彼女の膝に手を触れた。頭を摩ってやりたかったが、アイオーンは中々に大きいのでこれで我慢して欲しい。
「丸一日だね? わかった。大丈夫、どうにかするから。アイオーンはそこの椅子に座ってくつろいでいればいいよ」
【エト様······】
「取り急ぎ、他の場所の状況を知りたいから、連絡役を一人貸して欲しいんだけど」
【はい! それならこの者をお連れ下さいまし】
アイオーンの背後から姿を現したのは水色の髪が綺麗な女性だった。
【お初にお目にかかります。わたくし、アイオーン様のお側役、ディープ・フィールドと申します。気軽にフィーとお呼び下さい】
「よろしくね、フィー」
俺の言葉に「はいっ!」と素敵笑顔を振りまくフィーを連れて、俺は早速『異界門』にてエルモアに戻る事にした。
「よっと。はい、フィー?」
【あっ、すみません。恐れ入ります】
フィーの手を取り、彼女が歪みから出たことを確認して『異界門』を閉じる。
【凄いですね。このようなお力をお持ちとは】
「そう? ありがと。それじゃあ、早速だけど魔界に向かおっか」
【はい。お供致します】
現状、契約紋は発現していない。つまり、未だにリンクが繋がっていない-という事だ。その為、リーアをこの場で呼ぶことは出来ない。
よって、魔界に行かないといけないわけだが、今の俺なら魔界でも『異界門』で行けるはずだ。もしかすると、以前も『異界門』で行けたのかもしれないが、それを今言ったって仕方がない。
と、言うことで。
「『異界門』! よし、行くよ?」
【はい!】
再び魔界をイメージしながら『異界門』を開く。そして俺達は『異界門』へと潜っていく。
『異界門』を抜けると、そこはララとリリとルルの家の前だった。どうやら無事に到着したようで、少しホッとしている。
と、同時に強烈な魔力反応が遥か彼方で動き回っていることを感じ取った俺は大きく項垂れながら頭を抱え込む。
【エト様? どうかなさいましたか?】
「いや、ちょっとね。あれは正気を失ってそうだなって」
とはいえ、今の俺はよくも悪くも以前とは違い、リーアさえも抑え込める力を得ている。ニールとの真核契約で得た竜王の力と魔力量で以前よりも大幅に戦闘力が上がっている。
〘······エ、エト様?〙
〘ホントだ! エト様ぁ!!〙
〘お久しぶりですっ!〙
「おぉ!?」
唐突に、俺の元にララ達が走り寄り力強く抱き着いてきた。どうやら俺から溢れ出した魔力で俺の存在に気がついたらしい。
〘エト様? どこか雰囲気が······。それに以前よりも強くなられてるような······〙
まぁ確かに前よりも身長も伸びて髪色も変わっている。体つきだって以前とは比べ物にならない。それもこれも魔獣を喰らったおかげだろう。
〘それよりもリヴァイア様が!〙
「うん、わかってる。だから来たんだ。今からちょっと行ってくるから、外に出ずに大人しくしていて?」
その言葉に三人は感極まったように涙を浮かべながら大きく頷いて見せた。それほどに切羽詰まった状況だったらしい。本当に申し訳ないものである。
「ちょっと急ぐか。フィー、ついてこれる? 一応、加減はするけど」
【ご心配ありがとうございます。しかし、問題ございません。ウルスマキナではわたくし以上に速い者はおりませんので!】
「それは頼もしいね。それじゃあ行くよ-ッ!」
その瞬間、まるで転移の如くエトはその場から姿を消した。その光景にフィーは言葉を失った。
【······え? ちょっ···う、嘘······。これで加減をしているの!? い、急がないと-ッ!!!】
「っとっと」
【はぁ。はぁ······はぁ】
「大丈夫? まだ速かった?」
【い、いえ。大丈夫でございます】
相当疲労していそうなフィーを心配しつつ、俺はゆっくりと暴れ回っているリーアに視線を移す。案の定、リーアは俺の事なんて気づいちゃいない。
「さてと。早く止めないとね。フィー、少し離れといて」
【は、はい!】
フィーが安全な場所まで移動した事を確認すると、俺は再びリーアを見つめながら大きく深呼吸をする。
心配かけてごめん、一人にしてごめん-そう心で呟きながら一瞬にしてリーアの背後を取った-。
「リーアッ!!!」
〘うぁぁああああっ!!!!!〙
-ドォンッ!!!
「······リーア?」
リヴァイアの名を呼ぶエトの声も虚しく、リヴァイアはエトの顔面に向けて強烈な蹴りを放った。その衝撃波でエトの背後にあった建物が吹き飛ぶ。
······が、エトは余裕の表情でその攻撃を受け止め、もう一度リヴァイアの名を今度は優しく呼んでみせる。
〘うぅぅぅ!〙
エトに足を掴まれながらも尚も反抗しようとするリヴァイアだが、その足が〝全く〟動かせない。自分の一撃が片手で受け止められていることに気付くと、リヴァイアの瞳は光をゆっくりと取り戻し始める。
〘·········エッ···エト? エドぉ!?〙
ようやく目の前で自分の一撃を防いだ者が誰なのか、それを理解した瞬間、リヴァイアはエトの名を濁す程に泣きじゃくりながら尚もエトの名を呼び続ける。
〘エトぉ······エトだぁ〜! ホンモノなのだぁぁぁ!!!〙
「うん。ただいま。リーア」
〘うあああああああああああああッ!!!〙
魔界中に響き渡るリヴァイアの嘆き。ようやく暴走姫は暴走を止め、元の愛らしい姿へと戻った-。
小一時間程だろうか。リーアが落ち着きを取り戻し、リーアとのリンクも回復した俺達は近くの草原で腰を下ろし、一息ついていた。
「ごめんねリーア」
〘ううん、もういいのだ。また会えたから充分なのだゾ!〙
「そっか」
〘それよりもエト! 前よりも強くなっているのだ! ビックリなのだ!〙
なんて、心底嬉しそうにはしゃいでいる姿を見ると、俺も心底嬉しく思う。後ろのフィーも俺達を優しく見守っている。
「リーア、早速なんだけど。今、魔界に悪い奴らが集まって来てるんだ。魔界だけじゃない。精霊界にも人間界にもだ。正直、俺一人じゃ全部を殺す事は出来ないと思う。だからリーア? リーアは魔界で悪い奴らを片っ端から消して欲しいんだ」
〘むっ。エトは一緒じゃないのだ?〙
「おやおや? 俺にとってリーアは〝特別な存在〟なのに、俺がいないと不安で仕方がないのかな?」
〘むむむむッ!!!〙
可愛いなぁもお。
本当に愛らしい-そう思ってしまう。俺の言葉にリーアは案の定、反抗して「私はエトの特別なのだ! だから全然余裕なのだ!!」-とやる気満々に一人で可愛らしく右拳を突き上げている。
「リーアとベルゼ、魔王ルキフェルにアスモデリウス。これだけの戦力なら対処出来るよな」
リーア一人でも一万程度の魔獣と傭兵なら余裕で消し去るだろう。しかし-
「フィー、アイオーンに聞いて欲しいんだけど、敵の戦力は魔獣や傭兵以外にもいるんじゃない?」
【少々お待ち下さい。············はい。どうやら別格の存在が各界に分断しているようです。それと統率者であるアディーロ・フロディアーデという女性は特に要注意-との事です】
「やっぱりそっか。アイオーンに伝えてくれる? 極力、その別格を俺が殺して回るから、そいつらを優先的に監視しておいてって」
【はい。お伝えしておきます!】
これでいい。別格の奴さえ殺せば、魔界も精霊界もそれぞれ余裕で対処が出来る。
·········ちょっと待てよ。
作戦は決まった-なんて思っていたが、よくよく考えると不可解な点があるのだ。魔界や精霊界に戦力を集められる存在であり、アイオーンですらも要注意と危険視する存在であるアディーロ・フロディアーデという女性が、各界の戦力を知らない訳が無い。
つまり、知った上でこの状況を作り出している。
「······他にも何か」
そう。他にも何かがある筈なのだ。魔界の上位者や精霊界の上位者に匹敵する存在がそうポンポンといる訳が無い。というか、いたとすれば俺ですら知らない存在-という事になる。
可能性は二つ。一つは時間稼ぎ。この戦いで上位者達の動きを止めて何かをなそうとしている。
そしてもう一つ。俺の知らない〝外界の上位者の存在〟。魔界や精霊界、人間界以外の世界に存在している強者の協力を得ている可能性だ。
前者ならまだしも、後者なら相当厄介な事になる。
「フィー、アディーロ・フロディアーデってどういう奴か調べはついてる?」
【少しだけですが、彼女はかの『聖人』で数百年を生きている-という事らしく】
「聖人······ね。つまりは〝後者の可能性もある〟わけだ」
【エト様?】
「アイオーンは聖人がどういう存在か知ってるよね?」
【はい。認識されておられる筈です】
『聖人』-それは別名〝堕ちた神〟と言われている存在で、遥か昔に神の称号と権能を剥奪された者を指し示す言葉だ。つまり、そのアディーロという女性は〝元神〟の可能性がある。
という事は、神族との繋がりがあるかもしれないのだ。
「······はぁ。まぁ、全員って訳じゃないだろうけど」
堕とされた神に従う神も同罪に扱われる。その為、協力している存在はそうは多くないはずなのだが、それでも何人かはそういう存在がいると見た方がいいのかもしれない。
というか、アイオーンは本当に聖人がどういう存在か知ってるのだろうか。神族が関わっているかもしれないとなると、相当不味い事になるのだが······。
「フィー、作戦変更だ。真っ先にアディーロ・フロディアーデを潰しに行くよ。それが一番手っ取り早い。戦いを長引かせて神族がうじゃうじゃ出てこられると、もう打つ手がないからね」
【し、神族っ!?? な、なんですかそれ!! どういう意味ですか!?】
「······やっぱり知らないのね。リーア、ちょっと離れるけどじっとしといてくれる?」
〘む? まだ殺しに行くのはダメなのだ?〙
「うん。まだダメ。ここで大人しくしていてね」
〘わかったのだ!!〙
素直なリーアの頭を撫でた後、俺は直接話をする為に再度アイオーンの元を訪れる事にした-。
「アイオーンッ!!!」
【ふぅひゃあっ!???】
『異界門』を使い、再びアイオーンのいるシステムルームに向かうと、アイオーンは俺の言った通り本当に大きな椅子に腰掛けてくつろいでいた。
いや、確かに「くつろいでいればいいよ」って言ったけども! 本当にくつろぐ奴があるか!!
アイオーンの名を叫ぶとアイオーンは、がたいに反して可愛らしく少女のような悲鳴をあげる。
【エ、エト様!?】
「アイオーン、アディーロって奴が元神の可能性は考慮してるの?」
【い、いえ。その可能性はありません。エト様は『聖人』という事から、その推測をお立てになられたのでしょうが、彼女に至っては成り上がりの『聖人』なのです】
「成り上がり······? つまり、堕とされた神じゃなくて〝神ならざる身にて神に近づきし者〟って事?」
【はい。その通りでございます】
······なるほど。って事は後者の可能性は低い···か。
「なら、神族の介入は無いと踏んで良さそうだね」
【はい。·········(神族という言葉が出てくるとは······。この方は一体どこまで知っておられるのでしょうか)】
ともあれ、そうなるとアディーロは時間稼ぎをして何かをなそうとしている-という事になる。
本来このウルスマキナの存在は英雄候補しか知らない。アディーロという女性であっても、ウルスマキナの存在は知り得ない。それならば-
「十分余地はありそうだ。アイオーン、各界の魔獣や傭兵共は各界の上位者に任せよう。別格者達はさっきも伝えた通り、俺が対処するよ」
【はい! あっ···しかし、人間界の方はどうなさいますか? 魔界や精霊界はエト様もご存知の通り、相当な実力者達がおられますが······】
「俺が人間界を拠点に動くから、そこは大丈夫。それよりも、アディーロの本当の目的が知りたいんだ。魔獣や傭兵達を使って時間稼ぎをして、その間にきっと何かを·········魔獣や傭兵達······あれ?」
【ど、どうなさいました?】
「······いや、アディーロってさ。なんで魔獣や傭兵達を使う必要があったのかなって」
【それはエト様が仰った通り、時間稼ぎを-】
そう。俺もそう思っていた。時間稼ぎの為の捨て駒なのだろうが、別格者なる者達がいるのに数だけの捨て駒なんて本当に必要なのだろうか······。俺なら絶対に要らない。集めるのに時間はかかるし、人数が多い分、相手にもバレやすい。
確実に少数精鋭の方が効率がいい。
·········あ。そっか。だから傭兵達を洗脳したのか。
「アイオーン、アディーロの目的は多分···〝人間界〟にある」
【人間界······ですか?】
「あぁ。アイオーンならどう思う? 人間達が魔獣を従えて自分達の世界に攻めてきたら」
【それは、人間達を不審に思いますね。なんの目的で攻めて来たのか】
「だよね。それで? その後はどうする?」
【その後···ですか? まぁ、対処して人間界が何故そのような事をしたのかを確かめ·········あっ】
アイオーンも気づいたようだ。つまり、アディーロは人間界が魔界や精霊界に魔獣や傭兵達を送り、何かをなそうとしている-そう思わせようとしているのだ。
結果、高確率で魔界と精霊界は人間界に仕返しのような事を行うだろう。そうなれば、人間界はぐちゃぐちゃになってしまう。
「その混乱に乗じて、アディーロは何かをしようとしている。まぁ、もしかしたら人間界そのものを崩壊させようとしてるのかもね」
【······なるほど。では-】
「うん。アディーロは間違いなく〝人間界に〟姿を現す筈だね」
まぁ、この推測が間違っているかもしれないが、これが一番しっくりくる。それにワイズマンの言っていた〝帝国〟······。このタイミングでそれが俺の頭をよぎるという事はそれも関係しているのかもしれない。
【エト様、ではワタクシ共はどのようにすればよろしいのでしょう?】
「とにかくアイオーン達は各界の監視。当然、最優先はアディーロだよ。それを逐一俺に報告して欲しい」
【はい! 心得ました!】
「ちなみになんだけど、英雄候補って俺とラグ以外にもいるの?」
【はい。ですが、本件で戦力として数えられる英雄候補はラグ・エンドだけでございます。その他の者達は戦力にはならないかと】
いやいや、ラグ並の奴がゴロゴロと居られても困る。
とはいえ、ようやく作戦は決まった。実際、どこまでどう対処できるかは正直分からないが、どうにかなるだろう。妹のことだってあるのだ。こんな事で時間を割いているわけにはいかない。
「わかった。それじゃあ、俺は行くから後は頼むよ」
【はい! お気をつけて下さいませ】
アイオーンに見送られつつ、俺は魔界に戻る事にした-。
〘あぁ! おかえりなのだ!!〙
「うぉっと。ただいまリーア」
魔界に戻るなり、リーアが勢いよく懐に飛び込んで来た。隣ではフィーが「おかえりなさいませ」と深々と頭を下げている。そんなフィーに相槌を打ち、俺はリーアと今一度今回の件について話をする事にした。
「リーア? さっきも言ったように、リーアとベルゼ、それとルキフェルにアスモデリウス。みんなで悪い奴らを殺せ。奴らは敵だ。容赦する必要も情けをかける必要も無い。魔獣と人間、約一万程度だ。リーア達なら余裕だろ?」
〘うむ! 物足りないくらいなのだ! でもアスモデリウスとは協力しないゾ! 私はアイツが苦手なのだ!〙
え? あ、そうなんだ。確かにアイツはやる気の無さでは天下一だからな。とはいえ、実力はベルゼに匹敵する。戦力としては問題ない筈だ。
「それでもいいよ。もしヤバそうなら念話で俺を呼んでね。必ず来るから」
〘にっしし! わかったのだ!!〙
【エト様、ラグ達がコルネル村に着いたようです】
「わかった。それじゃあリーア。後は頼んだよ? ちゃんとルキフェルにも事情を話す事。それと、相手の中には人間も混じってるけど変な気を起こさないこと。間違っても人間界に復讐-なんて許さないから。いいね?」
〘む。エトに怒られるのは嫌だゾ。うん、了解なのだ!〙
元気よく応えてくれたリーアを抱き締め、俺はフィーと共に人間界に戻る事にした。ラグ達にも事情を話さなければならない。それに、精霊界にもこの事を伝えておきたい。
「それじゃあ行こっか、フィー」
【はい。仰せのままに】




