境界世界『ウルスマキナ』
エルモアと並行空間世界の秩序維持機関、境界世界『ウルスマキナ』。とはいえ、ウルスマキナの連中は直接的にはエルモアと並行空間世界に干渉することが出来ない。
そこで生み出された存在が〝英雄候補〟である。
英雄候補と呼ばれる存在は、元を辿れば異世界転生者なる者達らしい。多分だが、ラグもその一人なのだろう。
生まれながらに英雄候補者である先天性英雄候補は、『星の瞳』という特殊な力を秘めている。それはこの世界には存在しない力で、ラグの使っていた『コスモ・ブラスト』もその一つ-という訳だ。
そして、俺も英雄候補の一人ではあるのだが、俺の場合は先天性では無く、後天性の英雄候補者という事になる。生まれながらに-では無く、後から選ばれた存在。
先天性との違いは、『星の瞳』という特殊な力は持ってはいないが、ウルスマキナとの干渉力が先天性の英雄候補よりも優れている。
「まぁ分かりやすく言うと、ウルスマキナの〝希望〟が先天性英雄候補。ウルスマキナの〝願望〟が後天性英雄候補って感じだよね。にしても驚いたなぁ。おにいさんも英雄候補だったなんて」
「まぁ······そうなるのかな」
ラグの言葉に俺は首を縦に振った。彼の言う通り、ウルスマキナが直接的に願いや期待を込めて選んだのが後天性英雄候補-という事になる。
少し脱線してしまったが、そんなウルスマキナという世界で生み出された干渉技能が『異界魔法』=『星の瞳』なのだ。
「······なるほど。つまり、その英雄候補の中にスキルを封じる『星の瞳』を持つ者がいるわけね?」
「うん。僕の『星の瞳』は〝崩壊〟。触れたものを消したり壊したりする能力なだけに、よく監視されてたんだ。その時に僕の力を封じる術はちゃんと用意されてたらしいからね。そういう存在もいたはずだよ」
しかし。だとしても、ウルスマキナという存在が俺の力を消すような事をするとは思えない。ウルスマキナを管理、統率しているアイオーン・エクメーネという奴は、俺に全てを託す-と言っていた。
それ故にこれがウルスマキナの意思だとは考えにくい。
「············」
「エト? どうするの? そいつを見つけて殺す? ······ってどうしたの? ステータスプレートなんて見て」
不意にステータスプレートを見た俺は思考が停止してしまった。ニールの問いも全く頭に入って来ない。
「大主様〜? どうしたのですぅ〜? ······ッ!?」
心配そうに歩み寄ったヤオが手に持つステータスプレートを覗き込んだ瞬間、俺と同じようにその場で固まってしまった。
「ちょ、ちょっとヤオまで。一体どうしたって言うのよもぉ············なっ···何コレ!!!?」
名前:エト・リエル
年齢:十八歳
種族:◆◆
加護:◆◆の加護 (制限状態)【天雷・属性魔法無効化・特異召喚】
称号:◆◆◆◆◆◆
魔法:異空間魔法
魔力値:【1,000,000】
技能:至高の力【神羅万象】・『US竜王降臨』『US超即再生』・『US即死回避』・『ES覇王圧』・『魔力操作』・『魔力感知』・『痛覚消失』・『状態異常無効化』・『支配操作無効化』
そう。俺が固まってしまった理由というのが、この訳の分からないステータスだ。多分、気を失うきっかけだった謎の声の影響でこんな事になってしまったのだろう。
「も、最早何者か分からなくなっちゃってるわね······」
ニールの言う通り、文字化けしている箇所が余計に訳の分からなさを引き立たせている。
ただ、何故かは分からないが不思議と加護の恩恵は理解出来る。前に会得していた『纏雷』にあった付属魔法、あれは本来ならこの『天雷』という力によるものだったらしい。
何度も言うが、不思議と理解出来るのだ。だから何故理解出来るかは全く分からない。
「あの〜?」
完全に空気と化していたラグとステラが、不思議そうにこちらを見つめている。うん、完全に忘れていた。
「あ、あぁ。悪かったね。もう大丈夫だから」
「そう? なら聞きたいんだけど、おにいさんの〝天命〟って何?」
「エトでいいよ、ラグ。それにステラも」
「っ-。うん!」
「はーいっ!」
先程から思っていたが、おにいさんと呼ばれるのはなんだか気持ちが悪かったので、名前に呼ぶように伝えるとラグとステラは嬉しそうに微笑んでいる。
っと。天命だっけ。
天命とは、ウルスマキナが英雄候補に与える使命のようなものだ。これを破ったり、ウルスマキナの天命に反する行いをすると、先天性英雄候補なら『星の瞳』の力を失い、後天性英雄候補ならウルスマキナの使いによって罰が下される。
「俺の天命は-·········『救済』」
「救済? え、それだけ?」
「あぁ」
そう。俺の天命は『救済』。それは俺自身の救済でもあり、世界を救済することでもあり、妹を救済することでもある。
だが、これはウルスマキナからの天命では無い。俺が並行空間世界を渡り歩く為に必要な情報や方法、協力をウルスマキナから知り得るために交換条件としてウルスマキナに立てた誓いようなものである。
「ラグの天命はなんなんだ?」
「僕の天命は『世界の均衡維持』だよ。その為にこの力を使えって」
「そうか。そりゃあ苦労しそうだな」
「そうなんだよね。もう何回も警告されてるし」
なんて、苦笑うラグ。リーアと一緒で強者を求めていそうな彼にとって、自分の欲求を満たす為の力の行使は天命に反しかねないのだろう。
「ゴホン。それで? エト。これからどうするの? 予定通りイシュタル法国に向かうって事でいいのかしら?」
仕切り直すように、ニールが咳払いをしながら問いかけた言葉に俺は首を縦に振った。まぁ確かにスキルを封じる術を持つ奴は気になるが、今の俺にとっては存在の確認程度でしかない。
というか、魔法学園の奴じゃなくて他にもいた-なんて事もありそうだとわかった今、あの時殺しとかなくて良かったと少しホッとしたり······。
「そうだね。ヤオ、そろそろ帰っておいで」
「ふぁっ!! ただいまですぅ〜!」
「おかえり」
未だに硬直状態だったヤオを正気に戻しつつ、俺達は歩みを進めようとした。しかし、そんな俺達にラグ達は待ったをかけた。
「エトくん、僕達もついて行っていい?」
「······は?」
「ステラもラグも、退屈が嫌いなの。でも、エトくんと一緒だと退屈しなさそう! それにニーズヘッグ様もいるし〜」
「もぉ。はいはいヨシヨシ」
······いつの間にニールとステラはこんなにも仲良くなったのだろう。まぁいいけども。
まぁ、この二人なら足手まとい-なんて事にはならないだろうから別段断る理由もないが、そうなれば最低限の言う事は聞いてもらわないといけない。
果たしてこの二人が、素直に俺の言う事を聞いてくれるのだろうか-。
「ついてくるのはいいけど、俺の言う事は絶対だよ。それでもいいの?」
「······絶対かぁ〜。強制とか絶対とか厳守とか、そういう堅いの嫌いなんだけどなぁ······」
······やっぱりそうなるのね。
「でも、僕達よりも〝強い〟って示してくれたら、尊敬って意味で言う事は絶対聞くよ?」
なんて言いながら、ラグは不敵な笑みを浮かべている。結局の所、どこまで行ってもこの二人は、強者が好き-ということなのだろう。別にそれならついてこなくったっていいんだが·········。
いや、ヤオとニールがステラと離れたくない! -と瞳を潤ませながら無言でこちらを見つめている所を見ると、示さざるを得ない······か。
「それじゃあ、一回だけだからね」
「おぉ〜!!」
心底楽しそうなラグに愛想を尽かしながらも、俺は久しぶりに至高の力【神羅万象】を使う事にした。
ふーっ-とゆっくり息を吐き、復活した右手を高く突き上げる。今回は手加減無しだ-。
「【神羅万象】-『隕石召来』ッ!!!」
刹那。暗がりに輝く夜空の星が一瞬にして消え去った。それはつまり、星達とこのエルモアとの間に超巨大な〝ナニカ〟が現れた-という事だ。
アヤの魔法学園潜入の際、リーアと出会った時、何度か使った事があったが、全力で放つのはこれが初めてだ。その規模に俺ですら震えが止まらない。
「······こっ···これ全部······!!? こんなの落としたら大陸が······」
空を仰ぐラグ。それにつられるようにニールやステラ達も空を見つめる。その瞬間、目の前の非現実的な光景にただただ呆然と立ち尽くす。
ラグは鳥肌を抑えながら、まるで「降参しました」と言わんばかりに両手を胸の前に立てた。
どうやら納得してくれたらしい。
「······今の俺なら、多分この世界を〝壊す〟事は容易だよ」
「······へへっ。ほんっとにすげえ!!」
-パチンッ。
笑顔を見せたラグに呆れながら、俺は指を弾いて空に浮かんでいた存在を消し去った。その瞬間、再び星空が姿を見せる。ニール達は驚きのあまり、その場で仲良く尻餅をついていた。
「もしかして、ずっと前に起こった光の柱もエトくんの仕業······?」
「光の柱? ······あぁ、あれね。そうだよ」
ラグの言う光の柱とは、多分奈落の峡谷で放った一撃の事だろう。まぁ、あれも今の俺が放てば訳の分からない事になりそうだが······。
なんて考えていると、俺の背後にピタッと寄り添うような衝撃が走った。ニールかヤオだろうと視線を向けると、そこにはまさかのステラが頬を染めながら上目遣いでこちらを見つめていた。
「エトくん、スゴすぎっ。尊敬!」
「あ、ちょ! ずるいよステラ!」
ステラに負けじと、ラグも正面から俺を抱き締めてきた。
·········何これ。
「ふふふっ。やっぱり、エトには人を惹きつける力があるのよ。それで? 二人とも、エトの言う事はちゃんと聞けそう?」
「「うん!!!」」
ニールの問いに二人はまるで子供のような笑顔で答えた。どうやら本当についてくるらしい。毎度の事ながら、知らぬ間にすぐ大所帯になるものだ-なんて呆れてしまう。
そんなこんなで、復活した俺とその他大勢は目的地であるイシュタル法国へと歩みを進めた。
ちなみに道中交換したラグのステータスプレートは-
名前:ラグ・エンド
年齢:十六歳
種族:人間
加護:-
称号:英雄候補
魔法:-
魔力値:【900,000】
技能:【 星の瞳『崩壊』】・『US神速』・『ES覇王圧』・『魔力操作』・『魔力感知』・『状態異常無効化』・『支配操作無効化』
名前:ステラ・メリュジーヌ
年齢:十六歳
種族:竜人
加護:勇者の血筋【全属性魔法耐性・物理耐性】
称号:『竜殺し』ドラゴン・スレイヤー
魔法:身体強化
魔力値:【380,000】
技能:【竜化】・『US複製』・『ES反魔法障壁』・『魔力操作』・『魔力感知』・『状態異常無効化』・『精神支配無効化』
という具合だ。正直二人ともバケモノじみている。まぁ、ステータスプレートを交換した際の皆の反応は言うまでもなく、いつも通りだった-。
その頃-。
【ふう。どうやら消えたようですね。本当に貴方という人は······】
エルモアと並行空間世界の狭間、境界世界『ウルスマキナ』。そこでは今まさにこの世の終わりを覚悟した様子の存在達が安堵の表情を浮かべていた。
【アイオーン様、彼が例の〝特異点〟ですか?】
【ええ。彼がワタクシの······ゴホン。彼が世界の歯車から逸脱した存在『特異点』】
【にしても、あれが本当に人間ですか?】
【······さぁ。どうかしら。彼の過去はどうやっても知り得ることの出来ない事象のようだから】
大きなモニターでエト達を監視している存在。一際大きな肉体と美しい容姿、それがこのウルスマキナを管理し、統率しているアイオーン・エクメーネ。
【アイオーン様ッ!!!】
【きゃあっ? も、もぉ! 大きな声で呼ばないでっていつも言っているでしょう!? バカ!】
(可愛い······)
その場の全員が、少女のように驚いた様子で瞳を潤ませながら小さくなっているアイオーンにときめいているのは彼らだけの秘密である。
【そ、それで? 何かあったの?】
先程の驚きで乱れた髪を整えながら、何事も無かったように振る舞うアイオーンに見蕩れながらも、使いのような存在はモニターの映像を切り替えて見せた。
そこには暴れ回っているリヴァイアの姿が映し出されていた。つまりは魔界の映像······という事になる。
【······魔界の姫が大暴れ···ですか。理由は······聞くまでもなく彼でしょうね】
【はい】
彼-というのは当然、エトのことである。事の事情は勿論把握している。何者かによってエトの力が封じられ、それによってリヴァイアとのリンクが完全に切れてしまった。
【かれこれ一ヶ月になります】
【······悔やまれますね。あの時···何故、彼から目を離してしまったのでしょう】
【それは······】
そう。普段であれば、ウルスマキナの最優先監視対象はエト・リエルであった。しかし、図られたかのようにエトの力が封じられたあの瞬間、ウルスマキナは〝別の存在〟を監視対象としていた。
【〝アディーロ・フロディアーデ〟······。厄介な『聖人』が動き出しましたわね】
【アイオーン様。魔界の姫はどう対処されますか?】
【······はぁ。彼女を止められるのはあの方しか居ないでしょう。彼は今?】
【はい。西方大陸を西に進んでおられます。コロナを向かわせますか?】
使徒の言葉にアイオーンは考え込むように瞳を伏せる。というのも、エトと度々干渉するためにコロナを依代として使って来たが、本来彼女は誰か一人を対象として見ることが出来ない。それは彼女の天命が『世界の全てを監視する』というものだからだ。
彼女の持つ『千里眼』も『星の瞳』の力。つまり、彼女も先天性英雄候補である。
しかし、彼女は英雄候補の補佐役として育てられた為、自分が英雄候補だという自覚が極めて低い。よって、天命に対する意識も他の英雄候補に比べればそれほど高くはないのだ。
【······あの子にあまり無理はさせたくないのですが】
【あ、あの〜···アイオーン様? 気の所為だと思うのですが、エト・リエル様の視線が先程からこちらに向いているのは······?】
【······え?】
アイオーンが小さなモニターに視線を移すと、そこにはモニター越しにエトがアイオーン達を見つめている光景が映し出されていた。
【き、気の所為ですよね? というかたまたまですよね? こちらからの監視は世界干渉外ですし、まして一個人が感知出来るわけが······っ!??】
有り得ない-そう思っていた矢先、画面上にはエトが大きく溜め息を吐きながらこちらを指さしている光景がしっかりと映っていた。
【アイオーン様ッ! 本当に何者なんですかこの子!?】
【······ふふっ。流石ですわね。心配せずとも彼の方から〝来てくださる〟ようですね。皆の者、準備をお願いします。決して失礼のないように!】
【【【ハイッ!!】】】
一方。
時は少しだけ遡り、エト達は仲良く西方大陸の街道を歩んでいた。ステラとラグは完全にエトにピッタリと張り付いている。それを不機嫌そうに見つめるニーズヘッグとヤオにエトも困り顔を浮かべていた。
「主様〜。大主様と手を繋ぎたいですぅ〜」
「我慢なさい。私だって隣を歩きたいのに我慢してるんだから」
「うぅ〜···。あの二人、生意気なのですぅ!」
あとから来たくせに! -なんて思っていそうな顔つきだが、ステラが振り向いて笑顔を見せると、ヤオはパーッと表情を明るくさせて満面の笑みで微笑む。
とどのつまり、完成体でも精神年齢はまだまだ子供-ということなのだろう。
「にしても、イシュタル法国って思ったよりも遠いんだね。まるで見えてきやしない」
「まぁあね。って言っても僕も行ったことなんて無いんだけど。ステラは?」
「ん? ステラは行ったことあるよ? でも、あそこは嫌いなの。みんな、何かに〝操られてる〟みたいな感じが嫌っ」
不機嫌そうに顔をしかめるステラを見る限り、やはりイルミが言っていたように全てを信仰で塗り固められているようだ。
「にしても二人とも、ちょっと近過ぎじゃ-ッ?」
ラグとステラの俺に対する距離が近い-と忠告しようとした瞬間、俺は何かに〝覗かれている〟ような感覚を覚えた。今まで感じたことの無い感じ。これも謎の声の影響なのだろうか。
「エトくん? どうかした?」
「敵なら僕に殺らせてよ!?」
「いや、そういうんじゃないから。ちょっと待ってて」
ラグとステラにそう言いながら俺はゆっくりと振り返り、視線を空に向けた。
······やっぱり。
やはり、誰かに見られている。気配なんてものは無いが、確かにこの方向から見られている。こんな事が出来るのは-。
「アイオーン······かな」
そう小さく呟きながら、俺は溜め息混じりに右手の人差し指をその方向に差し向ける。そのうち、アイオーンには接触しようと思っていた。
いい機会かもしれない。そう考えたのだ。
「ラグ、ステラ。それにニールとヤオ? 俺の言う事はちゃんと聞けるよね?」
「当然でしょ? ヤオと私はどんなことでも聞き入れるわ?」
「当然なのですぅ!」
「ありがとな」
そう言いながらヤオの頭を優しく撫でてやると、待ってました! -と言わんばかりに顔を蕩けさせてた。そんなヤオを愛らしく思いつつ、ラグとステラに視線を移す。
「どんなことでもっていうのは無理だけど、出来るだけ聞くよ!」
「ステラも!」
「うん。二人もありがと。じゃあ-」
-と、俺は四人に少しの間だけ俺抜きで行動して欲しい-そうお願いをする事にした。案の定、ラグとステラはその理由を問い掛けてきたので、正直に話すことにした。
「ちょっと〝あっちに〟顔を出してくるよ」
「······え? いやいや、無理でしょ!? 魔界とか精霊界じゃなくて、あそこは完全な〝異界〟なんだよ?」
流石はラグ。魔界にも精霊界にも行ったことがあるような口振りだ。それに「あっち」という言葉で俺がウルスマキナに向かおうとしているのが伝わった事にも感心してしまう。
まぁ、ラグの言う通りなのだが、今の俺には『異空間魔法』がある。推測の域を出ないが、多分『異界門』であちらに行けるはずなのだ。
「『異界門』」
そう唱えると、目の前に紫がかった空間の歪みがその姿を現す。なんだか久しぶりに見る光景に、改めて力が戻ったのだと再認識する。
と、同時にその場の全員が言葉を失っていた。これも久しぶりだ。
「え? な、何よそれ?」
「ニールも見た事ないよね? これは『異空間魔法』の一つで空間と空間を繋げるものなんだ。まぁこれは、空間魔法と違って〝異界〟にも繋げることができるんだけどね」
「ちょ、待って! それって何処でもいけるの!?」
妙に食いつくラグを不思議に思いつつ、俺はその言葉に首を縦に振ってみせた。とはいえ、俺の行ったことのある場所にしか繋げられないのだが······。
「エトくん、〝日本〟って知ってる!? もしくは行ったことってある!?」
「·········ごめんね。それは知らないや。どこの大陸にあるの? ウルスマキナにはそんな場所、無かったよね?」
俺の言葉にラグは少しだけ落ち込んだ様子を見せた。
·········やっぱり転生者なんだな。
「いや、僕の方こそごめん。気にしないで!」
「そう? まぁ、とにかくそういうわけで、ちょっとここからは別行動をお願いしたいんだ。合流はこの先にあるコルネル村で!」
「コルネル村ね。了解よ! 他に気をつける事とか、やっておく事ってある?」
「そうだね、敵対する奴は問答無用で始末して。あとは、あんまり目立った行動をしない事。イシュタル法国についたら、変な噂が流れてた-なんて勘弁だから」
俺の言葉に四人は素敵返事で応えてくれた。そうして俺は、四人に手を振って『異界門』の歪みに足を踏み入れた-。
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