確かな手掛かり
セイルとの決闘、そして悪魔召喚騒動から一週間程が経った。まぁ、騒動と言っても公にはなっていないが。そんなこんなで、今日も今日とて俺は学園生活真っ只中である。
「はい次! エト・リエル君!」
「······はぁ」
俺は魔法知識学担当のオスコットに名前を呼ばれ、憂鬱になりながら教卓へと向かう。何故憂鬱になるかと言うと-
「貴方は酷いですね。優秀なのは実技だけですか?」
「うっ······」
「16点です!」
その瞬間、クラスメイト達が盛大に笑い出す。この点数は魔法知識学のテストの点数だ。返却された答案用紙を見ながら更にブルーな気持ちになる。にしてもデカい声で点数を言うなんてそれこそ酷い。横暴だ。
第一、この魔法知識学のテスト、問題の意味がさっぱり分からない。魔法を使うのに関係のない事ばかりだ。一体何を学ばせたいんだ。というかこの先生、絶対俺の事嫌いだと思う······。
問① 魔法を編み出した祖を答えよ。
「知りません」
「セレマ・アングマール」
知らねえよッ! 誰だよそれ!
問⑫ 雷属性魔法を三つ答えよ。
「『雷閃』『雷迎』『放雷』」
「ふふふ。素敵なネーミングセンスですね。そういうのがあればいいなぁ-なんて思っているのですか?面白いですね。不正解です」
絶対馬鹿にしてるだろ!? 実際あるんだよ! 俺それ使ってるんだけど!?
問㉚ 魔法発動時に一番気にかけている事を答えよ。
「魔力制御?」
「······ふっ。お疲れ様でした」
文面越しに鼻で笑われた!? つか、あと10問残ってるのに既に見限られてる!?
-と、まぁこんな感じでボッコボコにされた訳だ。溜め息混じりに俺は机の上に解答用紙を置いて、丁寧に折り畳んでいく。
「シルビア、火属性魔法使えたよな?」
「え? うん。でもどうして?」
俺は手のひらサイズに解答用紙を折り畳むと、シルビアにこれを燃やして欲しいと懇願した。シルビアはクスッと微笑むと「大丈夫よ。誰だって得意不得意はあるんだから······ぷふっ」-と言って、俺の願いを断った。
ちょっと待て! 最後笑ったな!? 答案用紙と俺の顔を交互に見て吹き出したよな!?
「······こんの野郎ぉ〜」
「やんっ。ごめんってばー!」
「む。シルビア、羨ましい」
「エト様、気にする事なんてありませんわ!」
俺はシルビアの頬に両手を当て、ぐにゃぐにゃとこねくり回した。大体、なんでシルビアはしれっと満点を取っているんだ。ズルいじゃあないか。雰囲気的にシルビアは絶対こっち側だと思っていたのに······。
「はいはい! 今日の授業はここまでです! ちゃんと答案用紙を見て復習してくださいね!」
「「「はーい!」」」
オスコットがパンパンッ-と手を叩くと同時に授業終了のベルが鳴り響いた。先生達が授業から解放され、自由に過ごす中、俺はオスコットに呼ばれて廊下に連れ出された。
「どうしたんですか? 先生」
「リエル君のテストの解答ですが、非常に実戦向けの答えでした。魔法発動までの手順も省略され、魔力制御を使った魔法行使。学園長やレイラ先生が一目置くのも納得です」
「ど、どうも」
「ただ、出来れば他の生徒達に〝合わせる〟ようにして頂けると嬉しいのです」
「合わせる···ですか?」
「はい。魔法学園の生徒達のほとんどが実戦経験のない子達ばかりです。そんな子達が、リエル君のような思考や判断力を持ってしまうと······おわかりいただけませんか?」
まぁ、確かにそれはそうだ。アリアはともかく、他の生徒達は普通に生活して魔法師を目指している奴らだ。俺があまり突出してしまうと、生徒達に驕りが生まれてしまうかもしれない。結果、危険な目に会うのは彼らだ。
それをオスコットは懸念しているようで、こんな事を言ってきたのだろう。
「そうですね、分かりました。気をつけます」
「はい。よろしくお願いしますね」
「でも、だからって俺の点数だけ大声で言わなくてもいいと思うんですけど? めちゃくちゃ笑われたし」
オスコットはおそらく、優秀なエト・リエルでもこんな点数なんですよー! -的な意味合いであんな真似をしたのだ。おかげで俺はいい笑い物になってしまったが。
「そうですか? 私はああいった雰囲気も素敵だと思いますよ?」
いや、まぁ分かるけどね。
「それでは、リエル君。また次の授業で!」
「は、はい」
オスコットは俺に手を振って立ち去って行った。先生というのも大変なようだ。でも、ああやって生徒達の事を考えている事は素晴らしいと思う。
「オスコット先生、おっぱい大きいっスよね〜」
「あー···確かに。······ってコロナ!?」
いつの間にか隣に現れたコロナ・ヒルデン。気配の欠片も無かったので、驚きの余り大声を出してしまった。
神出鬼没かコイツは!?
「というか、一週間ぶりだね。てっきり悪魔召喚の件で接触してくると思ったんだけど」
「いやぁ〜。ウチも少々忙しい身でして。あ、遅れましたが、その節はありがとうございましたっス!」
「それは全然いいんだけどね」
「そういえば、ウチの〝目〟を貸して欲しいって言ってたっスね? 話を伺ってもいいっスか?」
「ああ、それね?」
俺はここではなんなので、コロナを連れていつもの校舎裏に向かった。コロナに頼みたい事、それは妹の捜索だ。彼女の〝目〟-それは『千里眼』というユニークスキルだ。世界の現状を全て見通す目で、めちゃくちゃ便利で反則的なスキルなのだ。
俺も噂程度しか知らなかったが、俺の事を知っていたり、行動を把握していた事を踏まえて、彼女がそれを持っている事に気付いた。
そんな彼女に俺は妹の件を説明する事にした。
「ほほぉ〜。なるほどなるほど。もちろん協力させて貰うっスよ! ただ、お察しの通り、透視無効化の結界や妨害魔法の類があれば、ウチの目でも見えないっス。結果的にお力に添えないかもしれないっスけど······」
「ううん。充分だよ。ありがと」
俺の言葉に笑顔を見せたコロナは早速スキルを発動してくれた。
「リエル君、ユーリさんに目立った特徴ってあるっスか?」
「んー、髪が青くて右目の下にホクロがある···かな」
「ほぉほぉ〜」
とはいえ、俺の中のユーリは七歳で止まっている。それ以外の特徴なんて無いし、髪色を変えたりしていれば見つけるのは困難だ。
「ん〜···やっぱり居ないっスね〜」
「そっかぁ。まぁ、そう簡単に見つからないよね」
「申し訳ないっス」
「いや、いいんだ」
やはり、そう簡単に見つかりはしない。この魔法学園に来て一ヶ月も経っていないが、俺の名前は良くも悪くも相当知れ渡っている筈だ。もしユーリがここに居るのなら、俺の名前も耳に入っていると思う。だが、ユーリが何かしらの魔法やスキルで俺の事を忘れていたり、隔離されているのなら、自分から接触してくる事は難しいだろう。
「ただ、妹さんの事は分からないっスけど、〝聖騎士育成プログラム〟の方は、魔法祭の裏闘技大会が関係してるっぽいっスよ?」
「······マジで!?」
「前にも言ったじゃないっスか。だからウチ的にはリエル君の為に出た方がいいんじゃないかな〜と思ったんスよ」
そういえば、前に意味深な言葉を残して消えたっけ。
「まぁ、それ以上の事は本当に分かんないんスけどね。あ、これも前に言ったっスよね?」
「······となると」
そうなると、出てみるのも悪くない。特に裏闘技大会だ。もしかすると、妹の情報が手に入るかもしれない。出てみる価値は十分にある。
「おっと。そろそろウチは失礼しますっス!」
「あ、うん。ありがとうコロナ」
「いえいえ。それでは······ドロン!」
そう言うと、コロナはいつものように俺の前から姿を消した。というか、ドロンってなんだ。
教室に戻ろうと廊下を歩いていると、まさかのセイルと出くわした。向こうも意外だったようで、驚いたような表情を浮かべている。とはいえ、やはり最初に会った頃よりいい顔をするようになっている。隣にはソフィさんも居るし。
「よう、エトの〝兄貴〟!」
「あ、あに···なんだって!?」
セイルは歩み寄りながら俺の事を珍妙な呼び方をして来た。隣ではソフィがクスクスと微笑んでいる。
「俺は色々と兄貴に教わったからな。これからも教わりてーし。それに、ほら? 俺は一応兄貴の一つ下だしな!」
そう言いながら自分のステータスプレートを見せてくる。セイルって俺よりも年下だったんだ。というか、コイツってこんなにイケメンだったっけ?
垢抜けた様子のセイルは、以前とはまるで別人のように見える。表情が柔らかくなったのが大きな要因だろう。人型状態のルカに匹敵する勢いだ。
「リエル君、色々とありがとうございました。リエル君と戦ってから彼、人が変わったみたいに周りに気が配れるようになったんですよ?」
「ちょ、止めてくれよソフィ! 兄貴の前で!」
·········何だこれ。
なんだか二人の背景がお花畑に見えるのは気のせいだろうか。
「それはそうと兄貴、偶然とはいえこうして会えたんだ。ちょっといいか?」
「何? 何か話でもあったの?」
そろそろ授業が始まるのだが、まぁ短時間で済むのなら構わない。俺はセイルに肩を組まれながら廊下の窓際に誘導された。
「兄貴には必要ねーかもしんねえけど、他の五峰が兄貴に目をつけてるらしい。中でも〝シュウとステラ〟には気をつけた方がいいと思う。ウィルは真面目野郎だし、アインは人間に興味ねえ奴だから心配ないんだけど、シュウとステラは別だ」
「えーっと。鬼神と竜使いだっけ?」
「そーそー。シュウには、なんか〝異質性〟を感じるし、ステラは強者が大好物なんだ。多分···というか確実に接触してくると思う」
なるほど。どちらも面倒そうだ。
「二人の詳しい情報って分かる?」
「んー···つっても、シュウとは反りが合わないっていうか、だから戦った事は無いんだ。ただ、ウィルとの小競り合いで奴の戦闘を見た限り、アイツは〝不思議な力〟を持ってる。多分だけど、純粋な戦闘力なら俺を含めた他の五峰よりも突出してる」
「······へぇ」
純粋な戦闘力、つまり魔力値が高いという事だろう。もしくは、生身での戦闘能力が高い。だが、それなら俺の『魔力感知』にヒットしそうなものだが······。『魔力操作』で魔力を制御してる-なんて言わないだろうな。だとしたら、制御する必要のある魔力値という事になる。
いや、それなら学園側が怪しんでいる筈だ。じゃないとイルミの気遣いが無駄になる。まぁとにかく、そいつはちょっと厄介だ。
「あと、ステラ・メリュジーヌ。彼女、見た目は子供だけど-」
「あー、それそれ。その子って本当にドラゴンを使役してるの?」
俺は前にカナから聞いて気になっていたステラという存在について、セイルの言葉を遮り問いかけた。セイルは少し意外そうにしたが、すぐに答えてくれた。
「それが、〝誰も見た事が無い〟らしいんだよ。彼女が竜を使役してる所」
·········ん?
「え? じゃあなんで、竜使い-なんて呼ばれてるの?」
「それが、先生達が〝反魔法障壁〟? -がどうとか言って『竜使い』って呼び始めたらしいんだ。『魔法障壁』は分かるけど、〝反〟ってなんだよって生徒達の中では笑い話になってたけどな?」
俺はセイルの言葉に口篭った。『反魔法障壁』といえば、ドラゴンの固有エクストラスキルだ。もし仮に教員達が本当にそれを言っているのなら、ステラという少女は少なからずドラゴンと繋がりがある事になる。
生徒達は流石に『反魔法障壁』がどういうものなのか-を知らないようだが、元Sランク出の教員が居る魔法学園の教員達なら、その存在も知っている筈だ。
「なるほど。忠告ありがと」
「全然全然! 兄貴には無用だと思うけどな! ちなみに二人の特徴だけど、シュウは黒髪で左の頬に傷があって、ステラは白髪のツインテール、身長は兄貴の肩くらいかな」
「なるほど。了解」
そう言うと、セイルはソフィと共にその場を立ち去って行った。ともあれ、やはり俺は面倒事に巻き込まれる体質のようだ。というか、それもこれもコロナの貼り紙のせいだと思うんだが······。
「あっ! エト様、先生居らしてますわよ?」
「うん。今行くよ!」
教室から顔を出したアリアに呼ばれ、教室へと向かう。ともかく、出来るだけ大事にならないように願うばかりだ。
それから放課後-。
クラスメイト達を集めてレイラが魔法祭についての話を始めた。やはり、相当重要な催しのようで、生徒達も躍起になっている。当然だ。コロナ曰く、そこで実力を示す事が出来れば引き抜き-なんて事もありえるし、場合によっては自分を育ててくれる師匠···なんて存在にも巡り会えるかもしれないのだ。
魔法師を目指している彼らなら、必死になるのも頷ける。
「今年の魔法祭だが、例年通り学科別クラス対抗マッチが予定されている。つまり、お前らは自分達よりも上級者達を相手取るわけだ! 目指すは魔法科トップ、分かっているな?」
「「「はい!」」」
学科別クラス対抗マッチとは、魔法科・騎士科・一般科に分かれ、その中でクラス同士が戦う-という事らしい。そのため、俺達は上級クラスのC~Sまでのクラスと戦う事になる。
「クラスポイントも大事だが、お前達個人の実力を示す場でもある。気を引き締めるように」
レイラのその言葉に生徒達のやる気も膨れ上がる。魔法祭は10日間行われる予定で、場所は学園内にある訓練場。一日に大体70人程が戦うらしい。中々にハードだ。出場しない者は、出場者のサポート及び学園側の補助。祭りということだけあって、屋台などの出店も出るらしい。
「開催は二週間後。その間、授業は一時中断する。各自、魔法祭の準備に徹するように」
「先生、今年も魔法祭訓練を受けられるんですよね?」
「ああ、もちろんだ。準備期間中、学園の閉鎖はしない。自由に学園内施設を利用して構わん。教員達の訓練指導も訓練場で毎日行なう予定だ」
「へぇ······。そんな事してるんだ」
「エト君、知らなかった?」
俺はクロの言葉に頷く。どうやらクラス内の出場希望生徒のほとんどが、その訓練指導に参加するようだ。
「遠征組は遠征先で特訓するらしいわよ」
俺とクロの会話が聞こえたのか、シルビアが振り向いてそう呟いた。
「シルビアも遠征組?」
「まぁね? 私の場合、実家だけど」
「シルビアの実家は道場。結構有名」
「へぇ! じゃあクロは?」
「私は出ない。まだまだ実力不足」
そりゃあ謙虚な事で。実力不足だとは思わないけど。
「エト君は?」
「そうよ、あんたはどうするの?」
「俺? 俺は一応出るよ。それに〝とっておきの修行場所〟もあるし」
俺がそう言うと、クロとシルビアは目を輝かせた。
「気になる」
「あんたのとっておきって······。私もついて行こうかしら」
「残念だけど、秘密だよ」
「うう。ホントに残念」
「ほんっと。あんたって何から何まで謎よねー」
二人の言葉に俺は微笑む。そして、二人に気付かれないようにアリアに視線を送ると、アリアは「私は行きますわよ!」-と言わんばかりに力強く頷いてみせた。いや、そのつもりだったけど······視線でよく分かったものだ。
「それじゃあ、魔法祭当日まで解散!」
「「「はい!」」」
レイラの一言で、生徒達は教室を出て行く。
「それじゃあ、また当日ね!」
「エト君、頑張って」
「うん。それじゃあね」
シルビアとクロを見送り、教室には俺とアリア、そしてレイラが残った。レイラは俺達に視線を向けると、そのまま俺達の元に歩み寄って来た。
「エトも出る気なのか?」
「まぁ、一応」
「そうか。という事は、魔法科のトップはお前になりそうだな」
そう言いながら、クスッと微笑むレイラ。とはいえ、俺の目的は魔法科トップの座では無い。俺はレイラに協力者として問いかける事にした。
「ねえ先生。裏闘技大会って知ってます?」
「·········アリア、少し席を外してくれるか?」
レイラの言葉を聞いたアリアは、俺に視線を移した。俺からも頼む-と伝えると、アリアは素直に聞き入れ、廊下へと出て行った。
「本当に従順になったもんだ。······っと。さっきの話だが、それは協力者として-という事なのだな?」
「そうですね。ちょっと気になる事があるんで」
俺の目を真っ直ぐ見つめると、レイラは優しく微笑み話を始めた。
「お前の頼みなら仕方がないな。もちろん知っているよ。これを知っているのは、私とベルエラと学園長だけでな。信用はしているが、他言無用で頼む」
「もちろん」
そして、レイラはゆっくりと話を始めた。裏闘技大会、それは魔法祭の期間中に一日だけ極秘裏に開かれる催しで、開催は深夜に訓練場の〝地下〟で行われる。
「ただ、私が知っているのはここまでなんだ。出場資格や出場者、期間中のいつ行われるかは知らされていない。何せ、この裏闘技大会の主催は〝学園側では無い〟からだ。学園は場所を提供しているに過ぎない」
「······なるほどね。ちなみに聖騎士育成プログラムって聞き覚えあります?」
「ん? いや、知らないな。それも気になることに関係しているのか?」
どうやらレイラはこの事に関しては知らないらしい。というか、もしかしたら聖騎士育成プログラム自体も、学園側は直接的な関与をしていないのかもしれない。
「まぁ、そうですね」
この学園に隔離された場所や、隠された場所があるのかも聞きたかったが、流石にこれ以上の深入りはレイラでも不審がるかもしれない。とりあえず今聞けるのはここまでだろう。
「ん? エト、お前······私を警戒しているのか?」
「え?」
「いや、何となくそんな気がしてな。違ったのなら気にするな。ただ、私はお前の事を認めているし、慕っているつもりだ。お前の信用に値するかは分からないが、私はお前を裏切ったりしないぞ?」
そう言いながら俺の頭に手を置くレイラ。そんなに分かりやすく表情に出ていたのだろうか。それとも単にレイラの勘が鋭いだけか···。嘘は言っていないようなので、一応聞いてみることにした。
「じゃあレイラ?」
「む? 呼び捨てか? なんだか照れくさいな。生意気だぞ?」
あっ。やっちゃった······。色々考えていたから、つい素が出てしまった。
「-ゴホンッ! ···レイラ〝先生〟。この学園に隠し部屋とか隔離された施設とかってあります?」
「なんだ。先生に戻したのか? まぁいいが。んー······そういった話は聞いた事がないな。ただ、この魔法学園は相当古いらしいからな、私の知らない場所があっても不思議では無いと思うぞ?」
「そうですか」
「聞きたいことは以上か?」
レイラの言葉に頷くと、レイラは「そうか」-と微笑んで見せた。
「まぁ、役に立てたかは分からないが満足したのならそれでいい。しかし、不思議な事を聞くもんだな? 理由は聞かないが、あまり面倒事は起こすなよ?」
「はい、ありがとうございました」
むしろ、面倒事の方から俺に懐いて来てるんですがね······。
なんて思いながら、教室を出て行くレイラを見送った。すると、入れ替わりのようにアリアが教室に入って来た。
「お話はお済みになられましたの?」
「うん、ごめんね」
「いえいえ。それより、とっておきの修行場所······というのは?」
やはりアリアはそれが気になっていたのようだ。アリアはこの一週間で基礎体力は相当身についた。奈落の峡谷の岩壁を『身体強化』を使って難なく往復するくらいだ。魔力コントロールも申し分無い。魔素の薄いあの場所でそれが出来るようになると言うことは、魔力の質が上がっている証拠だ。
魔力の質が上がるという事は、体内にある魔力回路が鍛えられた証拠でもある。つまり、魔力上昇の傾向にあるわけだ。一般的な魔力上昇の修行でもこの方法は用いられる。俺は魔素の濃い樹海で無理矢理底上げをしたが、本来そんな方法は邪道である。何故なら超高確率で死に至るからだ。誰も試そうなどとは思わない。
「修行場所は〝魔界〟だよ」
「ま、魔界······ですの!?」
アリアは俺の言葉に驚いているものの、どこか落ち着きがある。ベルゼに会ったことが耐性になっているのかもしれない。
「丁度ベルゼに呼ばれててね。アヤとアリアを連れて行こうと思ってるんだ」
「魔界······。本当に存在するのですのね。御伽話の中だけだと思ってましたわ」
「まぁ、普通に行ける場所では無いからね。早速今日から行くけど、大丈夫?」
「はいですわ! エト様とであれば、いつでもどこにでも参りますの!」
ふんすっ-とやる気満々のアリア。しかし、流石に今すぐとはいかないので、一旦寮に戻って身支度を整えてから···という事にした。
「分かりましたわ! ではエト様。また後ほど」
「うん」
そうしてアリアと別れた俺は、自分の準備の為に寮に帰った。
ちなみにアヤには既に念話で伝えてある。流石にアヤは俺のビックリ発言に免疫が着いたようで、驚く事は無かったが、自分が行っても大丈夫なのか-と心配していた。確かにそれなりの覚悟はいるが、アヤもアリアも状態異常に対する耐性を持っている。あとは彼女達の気力次第だ。
次回更新は日曜日の9時頃です。
変更する場合は、活動報告にてお知らせ致します。




