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NEW MYTHOLOGY  作者: 宗緋色
魔法学園編
22/71

噂と真実


 放課後、俺は学園長室に来ていた。というのも、アヤとアリアに稽古を付けるために魔法学園を自由に出入りさせて欲しかったからだ。

 

 「そうですか。もちろん構いませんよ?」

 「あれ? え、いいんですか?」

 

 窓から外を眺めながら、アリスタシアはあっさりと許可してくれた。あっさりし過ぎていて逆に怖かったが、アリスタシア曰く、そういう生徒は少なからず居るらしい。

 

 「例えば、インターンシップのように、自らが目指す職業場所に弟子入りしたい-という生徒も居ますし、実際に魔獣と戦いたい-という子もいます。ただ、魔法学園外においての行動責任は、全て各自で持ってもらわなければなりませんが、別段不許可ということはありませんよ?」

 「なるほど。でもそれって、魔法学園内の情報が漏れたりする危険性があるじゃないですか?」

 

 -と、遠回しにこの魔法学園には秘密があるんじゃないか-と探りを入れてみたが、アリスタシアはなんの迷いも無くそれを否定してみせた。

 

 「ここは、ただの魔法学園です。漏らされて困るような事はありませんよ? 強いて言うなら、生徒達の個人情報くらいでしょうか」

 「そりゃあそうですよね!」

 

 ふふふっ-と笑みを浮かべるアリスタシア。その笑顔に俺も笑顔で応える。しかし、強固な結界を魔法学園全体に張っておいて白々しい。つまり、中から出る分には問題ないが、外から入って調べられるのは避けたい-という事なのだろう。

 これは逆に情報管理に絶対の自信があるという事なのかもしれない。

 

 「もちろん、条件はあります。魔法学園外に出ていいのは、授業に差し支えない程度。放課後や休日であること。それと、生徒だけで行動する場合には引率の教員をつけること」

 

 引率って。言ったしりから管理する気満々じゃないの。

 

 「引率の先生は、アヤ先生がいいです!」

 

 まぁ、それはこちらとしても好都合だ。実際、教員であるアヤをどうしようか迷っていた所だし。俺はアリスタシアにアヤを推薦すると、アリスタシアはクスッと笑い出した。

 

 「ふふふっ。リエル君もアヤ先生が〝好き〟なんですか? あ、失礼しました。というのも、引率の教員をアヤ先生がいいと希望する生徒は沢山居ましてね。みんな他の生徒より、少しでもアヤ先生と一緒に居たいみたいです。中には放課後に二人っきりで特訓したい-なんて言う子も居るんですよ?」

 「そ、そうなんですか? あはは······」

 

 俺の予想を上回る人気ぶりのようだ。というか、放課後に二人っきりだと!? ······一体なんの特訓なんだ。

 

 「とはいえ、アヤ先生はそれを全て断ってらっしゃいますので、リエル君も断られるかもしれませんが。アヤ先生本人が了承するのであれば、手続きの関係もあるので、今後はアヤ先生をリエル君の引率係になって頂くと思いますけど?」

 「あ、はい。それは大丈夫です」

 

 というか、願ったり叶ったりです。

 

 「それでは、アヤ先生に伺っておきましょう。申請者はリエル君だけで良かったですか?」

 「あ、あとアリア・スペルシアさんもお願いします」

 「スペルシアさん? ふふふっ。そうですか。どうやらレイラ先生の言う通りみたいですね。学園長として感謝致します」

 

 なんて言いながら、アリスタシアは俺に頭を下げた。しかし、学園長が一生徒に頭を下げるのはどうかと思うし、感謝をすると言うことは、アリアという生徒に対して何も出来なかった-と認めている事になるのだが···。

 

 「やめて下さい。俺はただ、クラスメイトと友達になっただけなので」

 「······そうですか。そうですね」

 

 俺は微笑むアリスタシアに頭を下げると、学園長室を後にした。これでアリアとアヤの修行は問題ないだろう。あとは、修行場所だけなのだが······。

 

 「修行場所···ね。どこがいいかな······」

 

 なんて考えていると、ふとある場所が脳裏に浮かび上がった。しかし、俺はそれを全力で消え去ろうとした。

 

 「いやいや、あそこは不味いでしょ。······でも、絶対にバレない···か」

 

 そう。俺が思いたった場所は『奈落の峡谷-アビス』だ。あそこは樹海とは違い、魔素が極端に少ない。ある意味いい修行場所かもしれない。俺がさっき言ったように誰かにバレる心配も無い。誰も踏み入ろうとはしないからだ。

 

 「まぁ候補として考えとくか······」

 

 そんな事を一人で呟きながら、俺は寮へと向かう事にした。

 

 

 

 

 寮に着くと、家の前で何やら不審な動きをしている奴がいた。······シルビアだ。なんだか、キョロキョロと周りを窺いながら家の中を覗いている。不審な-というか、完全に不審者だ。

 

 「おーい、シルビア?」

 「ん? あぁ、エト。悪いけど今ちょっと家の中を覗くので忙しいから後にして」

 

 そう言いながら、シルビアは俺の事を邪険に扱った。シッシッ-と俺を除け者のように手で払い除ける始末。

 

 いや、何この子。不審者って言葉を知らないの?

 

 何故こうも彼女は堂々と覗き発言をしているのかが全く分からない。何を真剣な表情で俺を黙らせようとしているのかも分からない。

 

 「いや、ここ俺の家だし。つか、覗きって一応犯罪だと思うんだけど?」

 「そうね。そういう見方もあるわね」

 「···············」

 

 いや、そういう見方しかねえからっ!

 

 「あっ! 出てきた! ちょっとエト、隠れて!」

 「フゴォッ!?」

 

 家の中で何やら動きがあったらしく、覗いていたシルビアは慌てて俺の頭を掴み、勢いよく地面に叩きつけた。不意をつかれたとはいえ、俺の頭を掴むなんて見事だ。······じゃなくて!

 

 「な、なんだっていうんだよ!」

 「シッ! 静かに」

 

 口元に人差し指を当てて、黙れ!-と指示するシルビア。そんな無茶苦茶な彼女に呆れながらも、シルビアが見つめる先を見てみる事にした。

 すると、そこにはバスタオルをいつもの様に胸元まで巻いたカナがコーヒーを入れている姿があった。

 

 「お前······マジで覗きを-」

 

 なんて言おうとすると、シルビアは家を覗きながら落ち着いた様子で話を始めた。

 

 「実はね、カナリア君。本当は〝女の子〟なんじゃないかって噂があるのよ」

 「···············へ?」

 

 突然の爆弾発言に俺は情けない声を出してしまった。

 

 「彼、一般科でしょ? それで、一般科の友達が今日言ってたんだけど、カナリア君って今まで誰の目にも素肌を晒したことないんだって。着替える時も、トイレに行く時も一人で隠れるようにするみたいなの」

 「べ、別にいいんじゃないの? 恥ずかしいって奴もいるだろうし」

 「そうね。友達もそう思ってたみたいよ。でも、今日の帰り際に学園の花壇に水をやってた子が、誤ってカナリア君に水をかけちゃったんだって」

 「そ、それで?」

 「その時、見えたらしいのよ。透けたシャツから······カナリア君の胸元に巻かれた〝さらし〟を!」

 

 さらし···と言えば、包帯のような物か。

 

 「いやいや、怪我してたのかもしれないじゃん?」

 「だからこうやって確かめてるんでしょ!?」

 

 もの凄い剣幕で俺を威圧してくるシルビア。いや、だからと言って覗きはどうかと思うぞ。威圧する前に自分の今の状況を見つめ直して欲しいものだ。

 

 「はぁ。······あのな。カナが女の子なんだったら、流石に同室の俺が気付くと思うぞ?」

 「ぬぐっ······それもそうね」

 「だろ? 確かにカナは女の子っぽいけど、そうやって思われんのって結構辛いんだよ。あ、これ俺の経験談ね」

 「むっ······。あ、もしかしてエトも!?」

 

 おいコラ······。

 

 「ほら、もういいだろ? 俺も家に入りたいし、シルビアも自分の寮に帰れよ」

 

 そう諭しながら俺は伏せた状態から立ち上がった。そして、玄関の扉を開けようとした。······のだが。

 

 「······何してんの?」

 「ちょっとお邪魔するわ!」

 

 シルビアは全く懲りていなかった。俺の後をちゃっかりついてきている。

 

 「ったく。すぐに帰るんだぞ。······じゃないと〝襲っちゃう〟からな-ぶッ!?」

 

 

 

 

 

 

 「あっ、エト君おかえりー!」

 「う、うん。ただいま」

 「あれ? どうしたの? ほっぺたが赤いよ?」

 「あぁ、気にしないで」

 

 少し調子に乗り過ぎた。シルビアがまさかビンタしてくるとは。もちろん痛みは無いし、腫れも一瞬で治ったが、赤みだけは少し残っていたようで、それをカナに心配されてしまった。

 

 「お、お邪魔しまーす」

 「あれれ? シルビアさん! どうしたのー?」

 「べ、べべべべべ別に!? ちょっと近くを通りかかってね? エトと表で会ったから! あはははっ」

 「そうなんだ! でも、女子寮は〝逆方向〟だよね?」

 

 シルビアはビックリするくらいに嘘が下手だった。下手と言うより酷い。仕方がないので助け舟を出してやることにする。

 

 「それよりもう風呂は入ったの?」

 「うん! ごめんねー? いっつも先に入っちゃって」

 「いいよ。そういう約束だし!」

 

 そう言いながら、俺は風呂に入る準備をした。流石に今はカナも部屋着に着替えている。シルビアはカナに連れられるまま、リビングに腰掛けた。

 

 「シルビアさん、飲み物は何がいい? コーヒーと紅茶があるんだけど」

 「なんでもいいわよ? ごめんね、急に押し掛けちゃって」

 「ううん。いつでも大歓迎だよー!」

 

 キッチンで満面の笑みを見せるカナ。その手元では慣れたように紅茶が用意されていく。

 

 「それじゃあシルビア、俺は風呂に入るから後は-」

 

 後は適当に-と言おうとした途端、シルビアは目にも留まらぬ速さで俺の袖のグイッと掴んだ。

 

 「無理無理無理無理無理無理無理ッ!」

 「ちょ、怖い怖い怖い怖い!」

 

 真っ赤になりながら、瞳をぐりんぐりん回転させたシルビアはめちゃくちゃおっかない。それに焦り過ぎて気付いていないようだが、凄く近い。あと数センチで唇が触れてしまいそうな距離だ。

 

 「わたひが、ひおりでだえらえるわけないどしょ!」

 「うん、ちょっと落ち着こ? 全然何言ってるか分かんないから」

 「う、うん。······ふう。もう一度言うわね、私が一人で耐えられる訳ないでしょ!?」

 

 よくもまぁ。覗き魔のセリフとは思えない。とはいえ、シルビアに根負けした俺は、シルビアが帰るまで風呂に入るのを我慢する事にした。

 

 「エト君はコーヒーでよかったよね?」

 「うん。ありがと」

 

 俺はシルビアの隣に腰掛けた。というか、シルビアはどうしてここまで緊張しているのだろうか。

 

 あー、そう言えばシルビアってカナにちょっと気があるっぽかったっけ。

 

 食堂でのシルビアの表情を思い出しながら、なるほどなるほど-と勝手に解釈した。まぁ、間違っていたら申し訳ないが、少なからずシルビアはカナを好意的に思っているのは確かだ。他の生徒(俺を含め)との接し方と少し違うように思える。

 

 「それで? いつ帰るの?」

 「カナリア君の正体を見破ってからよ?」

 

 だから、それっていつまでだよ!?

 

 当たり前のようにそう言い放つシルビア。なんだか、コソコソしているようでいい気がしないのだが。

 

 「はい、どーぞー」

 

 俺達が小声で会話していると、カナがコーヒーと紅茶を運んで来てくれた。カップを机に置いた事を確認すると、俺は大きく溜め息をつきながら〝ある事〟を行動に移した。

 

 「カナ。先に謝っておくね」

 「えっ?」

 

 俺はカナにそう言いながら歩み寄ると、カナの胸元に手を当てた。

 

 「ちょ、エトッ!?」

 「-ッ!? エ、エト君。ど、どうしたの?」

 

 予想外の俺の行動にシルビアは顔を真っ赤になりながらあたふたとしている。そう、俺はシルビアがさっさと帰れるようにカナの体を調べ始めたのだ。

 

 「············」

 

 俺は胸元を入念に触りながら、次に下半身に手を伸ばした。

 

 「············。シルビア、やっぱりカナは〝男〟だよ。ちゃんと〝ついてる〟。なんなら脱がせようか?」

 「も、もういいから! 充分分かったから!」

 

 シルビアは、そう言いながら俺をカナから引き離す。一方のカナは中身が抜けた抜け殻のように放心状態で膝から崩れ落ちている。

 

 「ご、こめんね!? 実はカナリア君が女の子じゃないかって噂があって、それを確かめる為にお邪魔したの······。本当にごめんなさい!」

 

 頭を床に叩きつける勢いで土下座をするシルビア。カナはようやく魂が戻ってきたようで、身だしなみを整えながらシルビアに「大丈夫」-と手を振っている。

 

 「昔からよく間違われやすいからね。それでいてボク恥ずかしがり屋だから、そう思われるのも仕方がないと思うし。だから気にしないで? あ、でも次はそういうのは無しで遊びに来てね!」

 「うん! もちろんよ! エトも悪かったわね」

 「俺はいいよ。だからそれ飲んだら早く帰れよ」

 「うん!」

 

 シルビアは満足そうに紅茶を飲み終わると、そそくさと家から出て行った。何ともまぁ、嵐(荒らし)のような奴だった。

 

 シルビアが帰ったことを確認して俺は風呂にようやく入る事が出来た。そして、風呂から上がるとカナがリビングに正座をしながら真面目な表情を浮かべていた。まぁ、そうなるだろうな-と思いつつ、俺はカナの正面に座って残っていた冷めたコーヒーを飲み干した。

 

 「それで? 何か〝話したい事〟でもあるの?」

 「·········うん」

 

 煮え切らない様子で躊躇う素振りを見せるカナ。俺はカナに急かすような事はせずに席を立ち、キッチンでコーヒーを入れ直す。もちろんカナの分もコーヒーを作ってやる。

 

 「あっ、ありがとう。エト君が入れてくれたのって初めてだよね」

 「そうだね。あんまり入れ慣れてないから、味は保証出来ないけど······って薄っ!?」

 「あははっ。ホントだね、ちょっと薄いかも」

 

 それでも「美味しい」-という言葉を期待していたのだが、これは正直美味しくはない。やはり慣れないことはするものでは無い。

 

 「······問い詰めないんだ?」

 

 小さな反省会中、不意にカナは不安そうにそう口にした。

 

 「何を?」

 「······ボクの事」

 

 問い詰める-というのはカナの事についてのようだ。これは俺が言った〝話したい事〟に関係している事なのだろう。

 種を明かすとだ。彼······いや、〝彼女は男では無かった〟。体を触った時、カナには男にある筈のモノが無かったのだ。しかし、多分何かしらの訳があるのだと思い、シルビアには嘘をついた。もしかしたら、登校初日の〝暗い表情〟と関係があるのかもしれない。

 

 「誰だって人に知られたくない事の一つや二つはあるんじゃない?」

 

 俺もそうだしね。

 

 「······エト君は優しいね」

 

 そう言いながらも未だに話すか悩んでいる様子だ。俺は無理に話す必要は無いと思うが、カナの中ではどうしよう-と葛藤しているのだろう。

 

 「無理に話さなくてもいいよ。もちろん俺はこれからもカナを男だと思って接するし、誰かに話す気も無いから」

 「エト君······」

 

 これは本心だ。俺は口が堅い-というより、他人にそれほど興味が無い。だから、無闇に人を陥れるような事もしないし、詮索もしない。

 

 「ううん。でも、やっぱり話して······おくね」

 「そっか」

 

 どうやらカナは話す気になったようだ。先程の迷いは消えている。さてさて、それを聞いた所で俺がどうする事も無いのだが、聞くことでカナがスッキリするのなら同居人として真面目に聞いてやる事にする。

 

 「これ。ボクの〝本当の〟ステータスプレートなんだ」

 

 早速驚いてしまった。カナは俺と同様に偽のステータスプレートを使っていたらしい。ステータスプレートを確認すると、カナの本名はカナ・リアテスター・インフェリア。それ以外は変わらないが、ミドルネームが着いたということは、本当のラストネームはインフェリアということらしい。

 

 「何か理由があるんでしょ?」

 「······落ち着いてるね。もっと驚くと思ったんだけど」

 

 いや、だって俺も似たようなもんだし······。

 

 「驚いて欲しかった?」

 「ううん。落ち着いててくれた方が話しやすいし」

 

 そう言うと、カナはゆっくりとだが話を始めた。

 カナは西方大陸にあるインフェリアという小さな街で産まれたらしい。名前から察した通り、カナの父は街の領主でそれなりに幸せな生活をしていた。

 そんな中、一年程前から兄であるアル・リアテスター・インフェリアが消息不明、行方不明になったようなのだ。その兄を探す為に兄が通っていた魔法学園に入学したらしい。

 

 「······なるほどね」

 

 というか、地味に俺と似た境遇なんだけど。

 

 「兄様は一流の鍛冶師を目指してたんだ。だから、急に居なくなるなんておかしいと思ってさ」

 

 まぁ、言いたいことは分かった。しかし、それなら素性を偽らなくても堂々と兄を探せばいいと思う。むしろ、名前を公表した方が探しやすい。

 

 「でも、名前を偽って男のフリまでする必要ってあったの?」

 

 そう問いかけると、カナは表情を曇らせた。

 

 「兄様が消息不明になる前、父様に手紙が届いたんだ。〝俺の事は心配要らない。ただ、この件には関わらないで欲しい〟って」

 

 なるほど。だから名前も性別も偽った訳か。ということは、家族にも秘密にしているのかもしれない。ただ、〝この件には〟-というのが気にはなる。一体なんの話なのだろうか。

 

 「この件って?」

 「分かんない。でも父様は何か察している感じだったよ。教えてはくれなかったけど。その手紙を見てから兄様を探さなくなったし。······でも、ボクはそれでも兄様を探したい。どんな理由があったとしても···」

 「そっか。まぁそれじゃあ納得出来ないよね」

 

 心配するな-と言われて、はいそうですか-とはいかない。俺もカナと同じ行動をするだろう。せめて父親は、気付いた事があるのならカナにもある程度の話をするべきだ。カナには聞く権利が十分にある。

 

 カナを巻き込まないように-なんて思いもあるかもしれないけど······。

 

 「騙しててごめんね···」

 

 一通り話を終えると、カナは申し訳なさそうに深々と頭を下げた。今まで多少なりとも気を使っていたのだろう。罪悪感だってあった筈だ。じゃなきゃ、こんなに辛そうな表情はしない。

 

 「いいよ。それより、俺の方こそごめんね? 〝あちこち〟触っちゃって」

 

 俺がそう言うと、カナはボフッ-と勢いよく頭からまるで噴火したように湯気が噴き出した。顔も真っ赤に染まっている。

 

 「だだだだ大丈夫···だよ? 優しく触って···くれた······から」

 「いや、本当に申し訳ありません」

 

 まさか女の子だなんて思わなかった-というのは言い訳に聞こえるかもしれない。というか、全てはあの覗き魔のせいだ。いつか絶対反省させてやる。

 

 ともあれ、これからは少しは女の子ということを理解した上で接しなければならない。カナには変わらず接すると言ったが、流石にそうもいかない。

 

 「まぁこれからもよろしくね」

 「うんっ! ボクの方こそよろしくね! えへっ。やっぱり、エト君の笑った顔······兄様にそっくりだ!」

 

 それはそうと、何度も言うがすぐに抱き着かないで欲しい。······が、まぁ今回はもう少しだけこのままでいてやろう思った。

 

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