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NEW MYTHOLOGY  作者: 宗緋色
魔法学園編
21/71

クラスメイト


 -翌日。学園へ登校するやいなや、女子生徒達に捕まってしまった。

 

 「ねえエト君! あ、おはよう」

 「あ、うん。おはよう」

 「リエル君、一体何をしたの!?」

 「な、何が?」

 「アリアさんが、別人みたいになってるの!」

 

 俺が捕まってしまった理由は、アリアの事でだったらしい。彼女達曰く、髪型を巻き髪ヘアーから巻き髪部分を三つ編みにして、それを頭の後ろにリボンで纏めるという奇抜な髪型に変え、俺と友達になった宣言をしたと思ったら、クラスの生徒達に謝罪をして来たらしい。

 そして、今まで見せる事のなかった笑顔で「これからもどうぞよろしくお願いしますわ!」-と言い放ったとの事。

 

 「そっか。そっかそっか······」

 

 アリアは自ら変わろうとし始めたようだ。クラスのみんなも、俺が昨日釘を刺した事もあってか、アリアの事を許し、今では大分と打ち解けているみたいだ。

 

 「前からアリアさんは綺麗だと思ってたけど、今日は別格だったよ!?」

 「そーだよね! なんて言うか、可愛かったもん」

 「いや、でも俺は何もしてないよ?」

 「うそだー? だってアリアさん、〝エト様はわたくしの全てを受け入れてくれましたのっ!〟って言ってたよー?」

 

 は? いや、何言っちゃってんのアイツ!?

 

 「そうそう、めちゃくちゃ可愛い顔してさー? ねね、エト君とアリアさんって付き合ったの?」

 「そんなわけないでしょ? あんまりからかうと、怒るよー?」

 「きゃあっ、エト様が怒ったぁーっ!」

 「怒ったぁー!」

 

 ······コイツら。絶対からかってるな? 可愛いから許すけど!

 

 なんて、女子生徒達と話しながら教室に向かうと、教室で男子生徒達がアリアを囲んでいる光景が目に入った。中には自らアリアと友達になろうと言っている者もいる。どうやら本当に打ち解ける事が出来たみたいだ。

 

 「あなた達、調子に乗らないで頂けます? わたくしはエト様の友であって、あなた方の友ではありませんわよ!?」

 

 出来······てるよな!?

 

 「あ、おはようエトッ!」

 

 そんな中、男子生徒の一人が俺に気付いて挨拶をして来た。俺が彼に応えようと手を挙げると、シュババババッ!-とアリアがもの凄い速さで俺の前に現れた。

 

 「エ、エト様ッ! ほ···本日はお日柄も良く、このような日にエト様とご一緒に学園生活を送れる事を心より嬉しく-」

 「アリア? 落ち着いて。まずは挨拶でしょ? おはよう」

 「あっ、わたくしとした事が···。そうですわね!」

 

 キラキラと目を輝かせているアリアは、そう言うとスカートの裾をクイッと軽く持ち上げ、淑やかに振る舞い始めた。そんなアリアの姿に男子生徒達が「おぉぉぉ······」-と感心の声を上げる。

 

 「おはようございますですわ。エト様」

 

 そして破壊力のあるウインクを撃ち込んでくる。俺はそれをスッと回避して笑顔を見せた。危ない危ない。

 

 「うん。ほらほら、みんなも席に着こうよ。レイラ先生が来るよ?」

 「「「はーい!」」」

 

 俺の言葉で、クラスのみんなは自分達の席に着席した。

 

 「おはよう。エト君」

 「うん。おはようクロ」

 「あ、来たわねエト! 全く、どうしたらあのアリアがあーなっちゃうわけ?」

 

 席に座ると、隣に座るクロと前に座っていたシルビアが声を掛けてきた。二人もアリアの変わりように驚いている様子だ。

 

 「よっと。どうもこうも、アイツは誰かに認められたかっただけなんだよ。だから俺が認めて友達になったってだけ」

 「だけって。でも······そっか。アリアよりも強そうなあんただから効果的だったのね」

 「エト君、実はシルビア、アリアと友達になりたがってた」

 「あっ、こらクロナ! 余計な事を言うな!」

 

 なるほど。だからシルビアは人一倍アリアの事を見つめていたのか。

 

 「なんの事ですの?」

 「うぎゃアッ!?」

 

 三人で話していると、突然どこからともなく現れたアリア。というか、アリアの席はもう少し離れていたような気がするのだが、今はシルビアの右隣にちゃっかりと移動してきている。それもちゃんと自分の荷物を持って-だ。ちなみにクラス内での席替えは自由にしていいらしい。という事は、アリアは今後この席に座る······ということのようだ。

 

 「ん。アリア、おはよう」

 「えぇ。ですわ」

 

 いや、そんな挨拶あるかっ!

 

 「ア、アリア、どうして私の隣に?」

 「いえ、わたくしはエト様のお近くに移動したまでで、あなたの隣に来たかったわけでは-」

 

 コラコラコラ。なんでそう相手を突き放そうとするの······。

 

 「こーらアリア。挨拶はちゃんとしないと。それに、シルビアにもその言い方は失礼じゃない?」

 

 俺がそう言うと、アリアはムスッと膨れっ面を見せて上目遣いで俺を見つめてきた。いや、可愛いがアリアの為に言わなきゃならない事は言うべきなのだ。

 

 「よーし、分かった。なら俺も明日からアリアに対する態度を変えよっかな」

 「えっ!?」

 「挨拶は適当にして···」

 「うっ······」

 「アリアなんて興味が無いように振舞って···」

 「はうっ······」

 

 俺の口から言葉が出る度に、おかしな声を出しながら胸を押さえるアリア。どうやら効果はあったようだ。

 

 「エ、エト様ぁ。以後気をつけますので、どうかそれだけはご勘弁を······」

 「うん。分かってくれてありがと」

 

 涙目のアリアを宥めるように頭を撫でてやる。そんな光景をシルビアとクロが唖然と見つめ、クラスの生徒達も目を点にしてした。今のアリアにはもうDクラスの女王様だった面影はない。

 

 「おらー。お前ら席に着けー···ってもう着いてたか。それじゃあ出席を·········を!?」

 

 レイラが教室に入るなり、教室内の雰囲気が変わった事を感じ、更には俺達四人が会話する姿を見て言葉を失った。そして、気を取り直すと俺に視線を向けて微笑んで来た。お前に任せてよかったよ-なんて言っている目だ。······ったく。人の気も知らないで。

 

 俺とレイラが目を合わし、小さく微笑みあっていたことをクラスの誰も知る事はなかった。

 

 

 

 

 昼休みになると、生徒達がそれぞれ昼食を始める。寮から持参する者もいれば、学園内にある食堂を使う者もいる。ちなみに俺は後者だ。そして、食堂は全ての生徒達が共有するので、めちゃくちゃ広い。その為、他の科の生徒との交流を図る奴もいるようで、談話室的なスペースも設けられている。

 

 「今日は何にすっかなー」

 「あっ、エト君だー!」

 

 食堂に着くと、カナが元気良く駆け寄ってきてくれた。手を振りながらひょこひょこっ-と走る様はまさに小動物。正直めちゃくちゃ可愛い。

 

 「カナも昼飯?」

 「そうだよーっ! あ、そっちの人達はDクラスのお友達?」

 「クロナ」

 「シルビアよ」

 「アリア・スペルシアですわ。エト様、この方は?」

 

 そう。彼女達も俺と共に食堂へ来ている。カナはアリアの挨拶に少し意外そうな表情を浮かべたが、それ以上触れる事は無かった。カナは空気もちゃんと読めるらしい。いやー、本当にいい子だ。

 

 「ボクはエト君のルームメイトで、カナリア・テスターです。よろしくね!」

 「よろしく」

 「カナリア君ね。覚えておくわ!」

 「エト様と······ご一緒の···部屋···!?」

 

 なんだか、一人だけズレているが、まぁ気にしないでおこう。せっかくなので、俺達はこのまま五人で昼食をとる事にした。

 

 「へぇー。カナリア君は一般科のSクラスなのね! それでそれで?」

 「一応希望は召喚師なんだぁ」

 「凄いじゃない!」

 

 席順は、六人席にアリア、俺、クロ。そして対面にカナとシルビアだ。先程からカナとシルビアはお互いの話で盛り上がっている。なんだかいい雰囲気だ。カナは相変わらず、人懐っこい感じだが、シルビアが結構自分から話を進めている。

 

 おやおや? もしかしてシルビアはカナみたいな感じが好みなのか?

 

 なんて思ったりしてみる。実際、シルビアは凄く楽しそうに話している。そんな二人を微笑ましく眺めながら、俺は昼食を食べ終えた。

 

 「おっ! コイツじゃね? 例の編入生って」

 「あぁー、ベルエラ先生を倒したっていうホラ吹きよね?」

 「おぉ、マジで女みてーな顔してんだな」

 

 アリアとクロが食べ終わるのを待っていると、誰だか知らないが、三人の生徒が俺達の席にやって来た。

 

 「ねぇ、名前なんて言うのー? お姉さんと放課後遊ばない?」

 「おいおい、お前男と見たらすぐに手を出そうとするの止めとけって」

 「だってこの子可愛いんだもん」

 「それより、Dクラスの分際であんまり調子に乗らなねー方がいいぞ? この学園は生徒間の魔法行使が許可されてるからな」

 

 なんだかゴチャゴチャと好き放題話しているが、全く······失礼な奴らだ。食事中だっていうのに。脅しのつもりなのだろうが、俺は一切気にすること無く無視を続けた。

 

 -すると······。

 

 「ちょっとあなた方、失礼じゃありませんの? 先程からペラペラと···。エト様に迷惑ですわ!」

 

 バッ-と勢いよく立ち上がったアリアが生徒達を威圧しながら大声を上げた。

 

 「お前、アリア・スペルシアだろ? Dクラスに逃げた貴族様ってSクラスでは有名だぜ?」

 「Dクラスでお姫様になりたかったのよねー?」

 「ちょっと、あんた達! いい加減に-」

 

 シルビアまでもが、ことを構えようとしたので俺はシルビアに待ったをかけ、立ち上がったアリアの腰をポンポン-と手で軽く叩いた。

 

 「エト様······」

 「で、でも······」

 「まぁまぁ。気にしない気にしない」

 

 そう言って二人に笑顔を見せると、アリアもシルビアも渋々だが席に座ってくれた。はぁ-と溜め息をついた矢先、俺の顔がびしょ濡れになっていた。

 

 どうやら俺は、絡んで来た三人の内の一人に飲み水を顔からぶちまけられたらしい。氷入りだったので思った以上に冷たい。

 

 流石にこれには我慢出来なかったようで、俺以外の四人全員がもの凄い剣幕で立ち上がりながら三人を睨みつけている。

 

 「調子に乗り過ぎ」

 「えぇ。その通りですわ。怒りでどうにかなってしまいそうですの」

 「エト君、止めても無駄だよ。流石に今のはやり過ぎだとボクも思う」

 「あんた達、人として恥ずかしくないわけ!?」


 と、まぁ盛大に興奮状態にある四人。しかし、四人には悪いが、俺は全く気にしていない。というか、この三人の顔を今やっと見たくらいだ。そもそもコイツらに興味が無い。······が、そうも言っていられないようだ。流石に四人の内の誰かが手を出しかねない。 

 

 「こわぁーい。あはははっ」

 「暑苦しいなぁ。友情ごっこか?」

 

 お互いにバチバチと火花を散らせる。心底どうでもいいが、ちょっと鬱陶しく思えてきたので、少しばかりビビらせる事にした。

 俺はゆっくり席を立ち、一瞬で『纏雷』を発動させて三人の背後に回った。当然、三人もアリア達も気付いちゃいない。そして、予め持っていたコップを俺に水をかけてきた奴の頭の上に乗せた。

 

 「ッ!?」

 「い、いつの間に!?」

 「ちょ、なんなのこの子!」

 

 突然頭に何かを乗せられた男が動いた影響で、コップがひっくり返り、男の頭はびしょ濡れになった。そんな光景を見ていたアリアとシルビア、そしてクロが何故かドヤ顔でバカにしたように笑っている。

 

 「喧嘩なら買うよ? えっと、放課後でいいかな?」

 

 なんて挑発的に耳元で囁くと、男子生徒は血相を変えて不機嫌そうにその場から立ち去っていった。

 

 「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 「テメェら覚えてろ!」

 

 そんな言葉を残し、残った二人も立ち去る男を追いかけるように食堂から出て行った。

 

 「はぁ。ったく、このお馬鹿っ」

 

 俺はアリア達の頭を小突いた。余計な事をさせてくれたものだ。俺を置いて勝手に興奮して······。

 

 「うっ···」

 「い、痛いですの···」

 「わ、私も!?」

 「ボ、ボク悪くないもん!」

 

 困った奴らだ。まぁちょっと嬉しくもあったので、今回はこれくらいで勘弁してやる事にする。

 

 

 

 「でも、エト君凄いんだね! ボク、全く見えなかったよ!」

 「当然ですわっ!」

 「ん。エト君は凄い」

 

 食事を終えた俺達は、横並び状態でクラスに向かっていた。その道中、先程の俺の動きの話題で持ち切りだったが、シルビアだけは、不満そうに俺を隣で見つめている。

 

 「な、なに?」

 「······どうやったらあんな動きが出来るわけ?」

 「そりゃあ、気合と根性で?」

 「はぁ。まーたそうやってはぐらかすんだから」

 

 レイラとの戦い以降、シルビアは頻繁にこんな事を聞いてくるようになった。というのも、シルビアは根っからのスピード系だ。将来はそういう魔法師を目指しているらしい。だから、速さ-ということに関係する事には敏感に反応してしまうようで、故にこうやって疑問や質問を繰り返してくる。

 

 まぁまともに答えたことはないんだけど。

 

 「あ、それじゃあボクはこっちだから!」

 「うん、またね!」

 

 魔法科とは違う校舎に向かうカナと別れ、俺達は教室に戻った。教室に戻ると、教卓に腰掛けるアヤの姿が見えた。昼からの授業の担当はアヤらしい。とはいえ、アヤは既に魔法学園で有名人になっている。理由は容姿と人柄が完璧だから-というものらしく、噂ではファンクラブまで出来ているみたいだ。

 

 《昼からはアヤが担当?》

 

 俺は椅子に腰掛けながら本を読んでいるアヤに念話を送った。すると、アヤは俺に視線を移し、パーッと表情を明るくすると嬉しそうに笑顔を見せた。

 不意に素敵笑顔を見せるもんだから、男子生徒達が興奮してしまっている。

 

 《うん。そうだよっ! って、エト君? なんだか可愛い取り巻きが増えてない? 何? その三人》

 

 目が怖い目が怖い。そんなに睨まないで欲しい···。

 

 《ただの友達だって。あ、でも俺の右隣にいるアリアって子は覚えといて。協力者にしたから》

 《協力者? って事は全部話したの? 本当の力も?》

 《うん。大丈夫だよ、信頼できる》

 《エト君が選んだのなら心配はしないよ。どっちかと言うと、別の心配が-》

 

 アヤが何かを言おうとした時、昼休みの終了ベルが学園内に響き渡った。アヤは俺にアイコンタクトを取ると、小さく微笑み授業を始めた。

 

 「皆さん、初めまして。アヤ・ケイシスです。これからよろしくお願いしますね?」

 「「「はい!」」」

 

 何度も思うが、このクラスはここぞという時の一体感が素晴らしい。このクラスを選んで本当に良かったと思う。

 

 「それでは、教書を開いて下さい。皆さんもご存知の通り、魔法師とは大陸連盟に認められた、聖騎士と並ぶ重要な役職です。冒険者とは違い、所属する国家の為に魔法を行使する立場にあります。当然、そこには義務や責任が伴われますが、代わりに所得や権限が冒険者とは比べ物になりません」

 

 アヤは慣れたように授業を淡々と進めていく。なんとも見事なものだ。完全に教員として馴染んでいる。生徒達も真剣にアヤの言葉を静かに聞いている。

 

 そして数十分後。

 

 「-と、このように魔法師に必要なものは、魔法の実力だけではない-ということが分かって頂けたと思います」

 

 アヤが教卓に教書を置くと、タイミングよく授業終了のベルが鳴り響いた。多分、計算して話をしていたのだろう。流石だ。

 

 「時間ですね。それではこれで授業を終わります。次の授業は魔法師組合『ウィザード』について-ですので、授業内容の確認を忘れないように」

 「「「はい!」」」

 

 こうして教員アヤの見事な授業は幕を下ろした。

 

 「アリア?」

 「なんですの? エト様」

 「ちょっと来て」

 「は、はいですの!」


 俺は教室を出ていくアヤを追うようにアリアを連れて教室を出た。

 

 「アヤ先生!」

 「はい? あ、リエル君。どうしました?」

 

 周りに生徒が居る手前、アヤは教員モードで俺の呼び掛けに応えた。アリアはようやく、アヤが俺と一緒に魔法学園に来た仲間だと理解してようで、丁寧に頭を下げた。

 

 「お初にお目にかかりますわ。わたくし、エト様の友人をさせて頂いているアリア・スペルシアと申しますの」

 「えーっと······」

 

 アヤは周りの生徒達に警戒しつつ、どう反応したものか-と考えているようだったが、アリアがそれを感じ取ったようで、一方的に話を進めた。

 

 「アヤ様、場所が悪いようなので一方的ではありますが、これで挨拶を終えさせて頂きますわ。エト様より、大体のご事情は伺っておりますので、ご心配なく」

 

 そう言いながらアリアは再びアヤに深々と頭を下げた。流石はアリア。めちゃくちゃ出来る子だ。

 

 「分かりました。これからもよろしくお願いしますね?」

 

 そう言うと、アヤはクルッと反転して俺達から離れていった。そして、同時に念話を飛ばして俺にコンタクトを取ってきた。

 

 《アリアちゃん、いい子だね?》

 《うん、まぁそういうわけだから、アヤの特訓にアリアも参加させるつもりだから》

 《了解。それじゃあまたね?》

 《うん。またね》

 

 念話をしている間、ずっと黙り込んでいた為、隣でアリアが不思議そうに俺を見つめていた。そんなアリアに笑顔を見せて俺達は教室に戻った。

 

 休み時間を終えると、教室にはレイラがいた。なんでも次の授業は、またも小テストとの事。今回も俺は懲りずに「えぇー······」-と嫌そうな反応を見せると、クラスのみんなが微笑み合いながら俺と同じように「えぇーっ!」-と揃って声を上げた。

 

 おっ。ノリがいい!

 

 なんて思っていると、レイラは呆れながらも少し嬉しそうな表情を浮かべている。

 

 「今回の小テストは〝魔法武器使用の実践〟だ。さっき男子共に運ばせたこの魔法武器の中から、使いやすそうな物を選べ」

 

 レイラの言葉を聞いた生徒達は、ぞろぞろと教卓前に置かれた箱から好きな武器を手に取っていく。魔法武器とは、魔力を流す事で一般的な武器よりも高い性能を発揮する魔法具だ。魔法と同様に武器に性質変化を持たせると、火を纏ったりなんかも出来る。

 

 「んー······」

 「ん? お前は使った事が無いのか?」

 

 魔法武器の選出にもたついていると、レイラが俺に声をかけてきた。恥ずかしながら俺はこういった魔法武器を使った事が無い。必要性を感じなかったからだ。イルミは元々魔法剣士だったので、使った事があったらしいが。そう言えば、イルミと修行をしていた頃に手合わせをしてボッコボコにされた記憶がある。

 剣術は覚えておいて損は無い-という一方的な理由で切られまくった。

 

 「意外だな。お前程の者なら使った事があると思ったが。まぁとりあえず、なんでもいいから手に取れ。お前の言うことでも、サボりは許さんぞ?」

 「分かってますって!」

 

 からかってくるレイラに呆れながらも俺は片手剣を手に取った。といっても、俺は加護の付属魔法しか使えないので、性質変化なんて事は出来ない。普通の属性魔法と違って付属魔法の雷属性魔法はそれ自体が固有スキルのようなものなのだ。

 自分に纏ったり放ったりは出来るものの、逆にそれを自在に操ったりは出来ない。

 

 「魔力を流す事しか出来ないんだよなぁ」

 

 とはいえ、理屈で言えばそれでも十分に魔法武器として扱うことは出来る。魔力剣というやつだ。

 しかし、自分以外の物に魔力を流す事は簡単ではない。魔力が流れる魔力回路が存在する人体でなら魔力を流す事は容易だが、魔力回路の存在しない物体に魔力を流すとなると、中々にコツがいる-とイルミが言っていた。そのコツというのは······

 

 「えっと···確か、剣と自分を一つの物として一体化する······だっけ」

 

 なんて、イルミの教えを思い出しながら剣を片手に目を閉じる。体の中に流れる魔力を感じ取り、それを腕から右手へと集中させる。そして右手で集まった魔力を今度は剣に流し込む。

 感覚的には、剣を持っていないように感じるまで意識を集中させる。そして数秒後、右手から伝わる剣の持ち手部分の感触が無くなった。その瞬間-

 

 「エト君、流石」

 「えっ?」

 

 クロの声で目を開けると、俺の持つ剣は魔力を帯びて光り輝いていた。まるで光剣だ。凄くカッコイイ!

 

 「なんだ、意外と〝簡単〟だな」

 

 俺がそんな事をボソッと呟いた瞬間、教室内がブーイングの嵐に襲われた。

 

 「簡単じゃねーよっ!」

 「そうだよーっ! 私たち、一ヶ月前からこのテストしてるんだよ!?」

 「そんな簡単に出来るわけねーだろ!?」

 

 まさかのブーイングに俺は焦りまくっていた。そこまで責めなくてもいいだろうに。というか、彼らはこの魔法武器に魔力を流す-という事を一ヶ月前からやっていたようだ。つまり、普通はそれくらい難しい事らしい。

 

 「畜生! またエトにいいとこ持ってかれたー!」

 「なんだよ、才能の塊かアホー!」

 

 えぇー······。みんな酷くない!?

 

 「エト様、お見事ですわ!」

 

 なんて声をかけてくれたアリアも、しれっと手に持つ細剣に魔力を纏わせている。

 

 「アリアも流石だね?」

 「お褒めに預かり光栄ですわっ」

 

 俺に褒められたのが嬉しかったのか、アリアは満面の笑みを浮かべている。と、そんな中、アリアに対抗心を抱くようにクロが手に持っていた短剣に魔力を纏わせた。

 

 「エト君。私も。褒めて?」

 

 そう言いながら、クロは俺にペコッと頭を差し出した。これは頭を撫でて欲しい······という事なのだろうか。

 

 「う、うん。凄い凄い」

 「えへへ」

 

 クロの頭を撫でてやると、クロは情けない表情でニヤつき始めた。相当嬉しかったようだ。しかし、そんなクロに待ったをかけたのは、クラスの女子達だった。

 

 「あぁ! クロナちゃんずるい!」

 「んー! 私も早く出来るようになってエト君に頭を撫でて欲しい!」

 

 おいコラ。私欲がダダ漏れだぞ······。

 

 クラスの生徒達がいろんな意味で躍起になっていたそんな中、前の席のシルビアだけは、落ち着いて自分の持つ片手剣に意識を集中させていた。こういう真面目な所はとても好感が持てる。

 そんな頑張り屋さんのシルビアに俺は耳元で助言をしてあげる事にした。

 

 「シルビア、剣と自分を一つの物として感じてみて?」

 「ひゃっ!? も、もぉ! いきなりやめてよ! 私、耳弱いんだから······」

 「あ、ごめんね?」

 「······っもぉ。···でもありがと。やってみるわね!」

 

 シルビアは再び意識を集中させ始めた。すると、なんとも呆気なくシルビアは剣に魔力を纏わせる事に成功した。多分、元々惜しい所までいっていたのだろう。あともう少し-という所で成果を出せなかったようだ。

 

 「やった! 先生、出来ましたっ!」

 「あぁ。見事だ」

 

 嬉しそうに魔力を纏った剣をブンブンと振り回すシルビア。危ないから、とりあえず落ち着いて欲しいのだが、それほどまでに嬉しかったのだろう。シルビアは振り向くと、俺に笑顔を見せた。

 

 「エト、ありがとっ!」

 「うん。よかったね」

 「あっ、私はいいからね?」

 「え? 何が?」

 「頭を撫でるやつよ」

 「あ、うん」

 

 ビシッと俺に手のひらを突き出すシルビア。と言われても、元々撫でる気なんて無かったんだが、なんだか告白前に振られるような、喪失感に襲われた感じが······。

 

 

 その後、半数の生徒達が魔法武器に魔力を流す事に成功し、小テストは終わりを告げた。ちなみに、シルビアに助言をした事がバレて生徒達にコツを教える羽目になったのは言わずもがな-。

 

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