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NEW MYTHOLOGY  作者: 宗緋色
魔法学園編
20/71

友達


 教室へと戻った俺は、丁度休憩時間ということもあってか、生徒達に囲まれていた。そして、何故だか右隣の席にはクロが満足気に陣取っている。

 

 「ねえ、リエル君! さっきの移動魔法教えてよ?」

 「あっ、セリカずるーい! 私も私も!」

 「おいおい、エトが困ってんじゃねーか! ったく。よっ、俺はデイル。再生スキル持ってんだって? 習得条件聞いてもいいか?」

 「再生スキルとか無敵だよな! 俺も教えてくれよ!」

 

 と、まぁこんな感じで、もうかれこれ数分は言葉責め······じゃなくて質問攻めにあっている。というか、スキルの習得条件なんて人それぞれだ。共通の条件なんてあるわけが無い。まぁ強いて言うなら〝死ねば〟発現するかもしれないが、そんな事を言える訳もない。

 

 -なんて俺が苦笑いを浮かべていると、まさかの人物が俺を助けてくれた。

 

 「ちょっとあなた方、〝エト様〟に失礼でなくって?」

 

 ············はい? 何様って?

 

 「あっ······アリアさん」

 「いや、これは······その······」

 

 俺に助け舟を出してくれたのは、アリアだった。というか、今俺の事を〝様付け〟で呼んだような······。

 

 「スキルは厳しい鍛錬の結果に身に付くものですわ。おいそれと習得できる訳じゃありませんのよ。そんな事も分からないのですの?」

 「えっと······ねえ?」

 「う、うん。私達は別に······」

 

 アリアの登場で、教室内の空気が一気に重くなった。まぁなんというか、助けてくれたのはありがたいが、そこまで無下にすることも無い。

 

 「アリアさん、俺は別に気にしないよ。確かにスキルの習得条件なんて人それぞれだし、簡単に教えられるもんじゃないけど、みんな自分の力を伸ばそうとしてるだけなんだし······ね? でも、助けてくれてありがと」

 「エ、エト様がそうおっしゃるなら······」

 

 うん。やっぱり聞き間違いじゃなかった。アリアは俺の事を〝様付け〟している。俺が自分よりも強者と知った瞬間に変わり身したようだが、流石に早すぎではなかろうか。何もここまで態度を変える必要はないと思う。というより、そんなにあっさり俺の方が強者だと認めるとは思わなかった。

 

 「あと、エト様ってのは止めて? 俺はそんなに大した奴じゃ無いから。できれば〝対等な関係〟になりたいんだけど······」

 

 俺がそう言うと、アリアは俯いてしまった。もしかすると機嫌を損ねさせてしまったのかもしれない。

 

 「·········〝対等〟ですか」

 

 ·········何だって?

 

 小声でよく聞き取れなかった。俺がアリアの顔を覗き込もうとすると、アリアは顔を上げて少しだが、表情を険しいものにした。

 

 「わたくしは、あなた様よりも弱者ですわよ?」

 「それが?」

 「弱者は強者の言うことを聞か-」

 「なくてもいいんだよ?」

 

 なんだかくだらない事を言おうとしたので、俺はそれを遮った。しかし、アリアは頑なに強者と弱者にこだわろうとする。俺が素敵笑顔で諭そうとしているのに、素直に聞ことしない。······頑固者め。なら、彼女の言い分に沿った言い回しをさせてもらうことにする。

 

 「分かった。弱者は強者の言うことを聞かないといけないんだね?」

 「そうですわ。地位や名誉すら、強者の前では不要な産物。それこそが自然の摂理。地位ある者は強者であれ、名誉を得たくば強者になれ······それが在るべき姿なのですわ」

 

 ······なんだそりゃ。こじつけが酷いな。余程面倒な家系で育って来たようだ。

 

 「なら、アリアさん······いや、アリアよりも強者である俺の言うことは?」

 「えぇ。絶対ですわ。少なくとも、わたくしがあなた様よりも弱者のうちは」

 

 なるほど。自分の中の掟には従うが、あくまでも自分は強者でありたい······と。中々面白いな······コイツ。

 

 俺はアリアの言葉を聞き届けると、アリアに歩み寄ってアリアの頭に手を乗せた。

 

 「ちょ······何をなさって···!」

 「じゃあアリア、俺からの命令だよ。自分が俺よりも弱者だと思ううちは、クラスの奴らと〝対等に〟接しろ。文句があるならいつでも受けてやる」

 「えっ······で、ですが···わたくしは······」

 「アリアが言ったんだよ? それとも、自分に都合の悪い事は当てはまらないの?」

 

 アリアの耳元で、そう囁く。アリアは少し頬を赤く染めているが、どこか気持ちが不安定なようで、拳をキュッと握り締めている。

 

 「あ、それと。もし、俺の言うことが聞きたくないって言うなら、そんなちっぽけなプライドなんか捨てて、俺と〝対等な友達〟になろうぜ。もちろん、友達なら言い合いだろうが、喧嘩だろうが、頼み事だろうが、なんでもありだよ。きっと、こんな関係よりもアリアと〝素敵な時間〟を過ごせるんじゃないかな?」

 「ッ·········。少し······考えさせて下さい」

 「うん! もちろんっ! 返事はいつでも待ってるよ?」

 

 なんだかクサい台詞を吐いてしまったが、これでアリアが変わろうとすれば良し。変わらないならもう少し時間をかけて変わっていけるようにしてやればいい。

 少し一人になりたいのだろう。アリアは俯きながら教室を出て行った。

 

 というか、何故に俺がここまでしなきゃならんのだ。

 

 そんな事を思いつつ、ふう-と一息つこうとした途端、教室内が溢れんばかりの大歓声に包まれた。

 

 「えぇ!? ちょ、何!?」

 

 流石に驚いてしまった俺は、呆然とその場に立ち尽くしてしまった。すると、女子生徒達が俺の両腕に絡みついて来るやいなや、顔を赤く染め上げ始めた。

 

 「何今の···。ちょっとカッコイイかも······」

 「私、エト君の事、気に入っちゃった!」

 

 ちょ、こらこら。近い近いっ!

 

 「お前、キザ過ぎんだろ! なんだよそれ! 畜生ォ······」

 「女子達の目が······リエルの奴、羨ましいぞこの野郎!」

 

 待て待て待て待てっ! 一体何がどうなってんの!?

 

 まさかあの程度の言葉で、こうも目を輝かせるとは······。いやいや、そんな馬鹿な。大した事は言って無いのだが。

 

 「エト君、ちょーかっこいい」

 「ちょ、クロまで······」

 

 とはいえ、クラスの雰囲気は明るくなってくれた。なら、まぁこれくらいの事は大目に見てやってもいい気がする。それに、両腕の感触も幸せだし······。

 

 「あ、そうだ。みんな? 今後アリアがどう決断したとしても、温かく見守ってやって欲しいんだ。根は多分良い奴だと思うから。それで、アイツが心を開いてくれる気になったら、怖がらないで仲良くしてくれる······かな」

 

 俺が生徒達にそう言うと、少しの沈黙が流れたあと、全員が表情を明るくして、素敵な返事を返してくれた。

 

 「「「もちろんっ!」」」

 

 一人として欠けることなく、声を揃えてくれた。なんだなんだ、コイツらみんな良い奴じゃないか。みんなの表情を見ながら、本心でそう思った。

 

 ちなみにこの後、手の早い女子達に交際を申し込まれたが、俺はそれを丁重にお断りした。

 

 

 

 

 -そして、時刻は夕刻。

 

 全ての授業が終わり、俺を含めた生徒達全員が教室で帰り支度をし始める。既に何人かは帰ったみたいだ。しかし、結局アリアがあの後、授業に出てくる事はなかった。一応レイラには昼休みに報告しておいたので、問題はない筈だ。

 事情を話すと、女子達と同じような反応を示したレイラが豊満な実りを押し当てながら、結構本気で攻め寄ってきたが、その気は無い-と俺はそれをスルーした。

 

 「さーてと。カナはもう帰ってるかな」

 

 なんて思いながら、シルビアとクロに別れを告げて俺も教室を出ていく。すると、アヤから念話が飛び込んできた。歩きながら-というのもなんなので、俺は廊下の窓枠に肘をつきながら、のんびりと念話することにした。

 

 《エト君? ちょっといい?》

 《ん? 何かあった?》

 《今日、教員室でさり気なく聞き込みをしてみたんだけど、ユーリちゃんって子は魔法学園には居ないみたい》

 

 どうやら話の内容は、妹の事のようだ。というか、ちゃんと調べてくれていたんだ。正直めちゃくちゃ嬉しい。そしてありがたい。俺はバタバタで調査に手が回らなかったので、非常に助かる。

 

 《で、私なりに考えてみたんだけど、クリムゾンにいた時に奴隷の名前を変える手は結構頻繁に使われていたの。出生を秘匿する為にね。だから、もしかしたら名前が変わってるかもしれないんじゃないかって思って》

 《······なるほどね。もしくは、この魔法学園に裏の顔が存在する···とか?》

 《うん。その可能性もあるかもね。学園のシステムにも奴隷売買や聖騎士育成プログラムだっけ? その情報も一切無かったし》

 

 そんな事まで調べてくれてたんだ······。

 

 《でも、どれもこれも確証は無いの······。ごめんね?》

 

 頭の中で囁くアヤ。なんだか無性にアヤに会いたくなってくる。俺の為に必死でこれ程まで調べあげてくれた。謝るなんてとんでもない。俺は嬉しくてたまらなかった。まるで胸の奥がキュッと掴まれるような感覚だ。

 

 《アヤ、ありがと。念話でよかったよ。面と向かって話されてたら、多分〝惚れてた〟》

 

 その瞬間、脳内に大音量注意-と表示された······気がした。

 

 《ちょ、ちょっとエト君ッ! 今どこ!?》

 

 脳内の注意通り、アヤはめちゃくちゃ声を荒らげて話しかけて来た。というか、必死過ぎて怖いくらいだ。

 

 《どこだろうね。秘密。でも、本当にありがとな》

 《むぅ······。今回は諦めるか······。あ、ううん。全然大丈夫だよ。また何か分かったら念話するね?》

 《うん!》

 《それより、面倒事に巻き込まれてない? 大丈夫?》

 

 話は妹の件から学園生活の話に変わった。面倒って言えば面倒だが、そこまで大した事もないので、特別語る事も無いだろうと思い、多くは語らなかった。

 

 《大丈夫だよ。ちょっと担当の先生と殺りあったくらいかな?》

 《〝ヤリ〟合ったの!?》

 

 ············ん? 気のせいかな。なんか、違う意味に取られたような······。

 

 《うん。まぁ、一瞬で勝負はついちゃったけどね》

 《······あっ。そ、そっか。まぁエト君相手だしね》

 

 おい、なんだ今の間は······。

 

 《あっ、ごめん! 私、もう少し仕事残ってるから、またね?》

 《ううん、大丈夫。ごめんね? 俺の為に······》

 《いいよいいよ! 気にしないで》

 

 気にしないでいいと言ってくれてるが、そう言うわけにもいかない。本来ならしなくてもいい事を俺の為にしてくれているのだ。何かお礼をしてあげたいが······。

 

 アヤが喜びそうな事と言ったら······まぁこれしかないよな。

 

 《アヤ。この調査が終わったら、お礼に一日だけだけど、アヤの言うことを〝なんでも〟聞いてあげるね》

 《えぇっ!? ほ、ホントに!?》

 《うん。本当に》

 《な、なんでもだよ!?》

 《そうだね。なんでもだね》

 

 そしてしばらく沈黙が流れると、再び脳内に大音量注意の警告が鳴り響いた。ので、今回は音量を下げる事にした。まぁ実際そんなものは無く、気持ちの問題なのだが······。

 

 《俄然やる気出てきたぁーっ! 約束だよ!?》

 《うん。約束》

 

 ここで念話はプツリ-と切れた。多分、アヤの雑念が頭の中を一杯にしてしまったのだろう。まぁでもそのくらいしてあげないと罰が当たるってものだ。

 

 「さてと。帰りま······あれ?」

 「えっと······お時間よろしくて?」

 

 念話を終えた俺が帰ろうとした時、目の前に現れたのはアリアだった。

 

 

 

 

 

 「で? どうかしたの?」

 

 アリアが話があると言うので、俺達は校舎裏のベルチに並んで腰掛けた。周りに人は居ないが、校舎からは生徒達の声が聞こえてくる。まだ結構な人数が校舎に残っているみたいだ。確か、活動部とかいう放課後学習もあるとか何とか言っていた気がするので、もしかしたらその生徒達かもしれない。

 

 「わたくしには姉がいて······歳の離れた姉は、クオリオーネ王国の聖騎士をしていますの」

 「うん」

 「姉はわたくしなどよりも優秀で、事あるごとに父と母に比べられて来ましたわ。お姉様を見習え、なんでお前は出来ないんだ、スペルシア家の名に恥じないようにしろ······そんな事を日常的に言われてましたの」

 

 アリアは俯いたまま、淡々と話を進めた。というか、アリアのラストネームってスペルシアだったんだ。

 

 「そして、ある日······わたくしは、とうとう父と母に見限られてしまいましたわ。ただの平民の男子生徒に負けてしまった事で、父と母はそれ以来口を聞いてはくれなくなりましたの」

 「·········」

 

 なるほど。やっぱりアリアが置かれた家庭環境のせいで、今のアリアは出来上がってしまったようだ。まぁ貴族ともなれば、立場や威厳を守る為に強引な教育をする所もあるらしい。これは昔、イルミが言っていた事だ。地位が高い奴ほど周囲を極端に意識する。

 自分達はこうでなければならない-なんて鎖を自分達で括りつける。それは酷く醜くて······脆い。

 

 「家に居ても居場所が無い。仲が良かった姉ですら、わたくしを余所者のように扱う。······それがわたくしには耐えられなかった。······でもある時、たまたま参加した武闘大会で勝利した瞬間から、父と母、そして姉がわたくしを〝褒めて〟くれましたの。やれば出来る子だと信じていた、あなたは私達の誇り、さすがは私の妹······。わたくしは嬉しかったですわ。勝てば褒めて貰える、勝ち続ければ愛して貰える······。それ以来、わたくしは己を鍛え、勝利を掴み取って来ましたわ」

 

 ······なんて〝安い愛情〟だ-そう思った。······でもきっと、子供にはそんな愛情でも嬉しかったんだ。安心出来たんだ。ひねくれてしまうのも分かる気がする······。

 

 「わたくしは······わたくしは負ける事が怖いのです! 見限られるのが、愛想をつかされるのが、見捨てられるのが怖いのです···。勝者であるうちは、強者であるうちは、みんながわたくしを認めてくれる。······だからわたくしは強者であり続けなければならなかった。·········でも、わたくしはエト様に勝てないと思ってしまいましたわ。自分が弱者だと認めてしまったのです。それでも······それでもエト様はわたくしと〝対等〟でいてくださると言うのですか!? 弱者であるわたくしを······強者では無いわたくしを!」

 

 アリアは涙を流しながら大声を上げた。俺は俯いているが、アリアはきっと隣で俺を見つめているだろう。

 

 「ねえアリア。アリアはきっと愛して欲しかったんだよな。ただ認めて欲しかったんだよな。家族や周りの人達に」

 「·········分かりませんわ」

 「俺はさ? アリアの家がどうとか、お父さんやお母さんがどういう教育方針を取ってきたかとか、それをどうこう言うつもりは無いんだ。家族ってそれぞれ違う形があると思うし······。そりゃあ、一回勝てなかったくらいで見限るってのはどうかと思うけどさ、それでもきっとアリアはスペルシア家のアリアだったんだと思うよ?」

 「·········うっ······」

 「それに、この学園にはアリアを縛るものなんて無いんだ。したいようにすればいいし、負けたってだれも文句は言わない。もし何か言ってくる奴がいれば、友達の俺が黙らせたっていい。この先アリアが、家族に愛して貰う為に強くなりたいって言うなら、協力するから······俺と〝一緒に〟強くなろうよ。それが友達だろ?」

 「ッ-ぅぁああああああ!」

 

 心の中で何かが崩れたように、アリアは大声で声を上げた。きっと俺の言った言葉は根本的な解決策とは程遠いのだと思う。それでも、何かのきっかけになってくれればいいと思った。そのきっかけの為なら、綺麗事だろうがなんだろうが並べてみせる。

 俺の胸で子供のように泣き喚くアリアをただただ受け止めながら、俺は遠くの空を眺めていた-。

 

 

 

 

 

 -数分後、ようやく落ち着いたアリアは俺に頭を下げて来た。それは感謝の意を示したのではなく、謝罪の意を示したものだった。何を謝りたいのか、何に謝っているのか······それは分からないが、ただただ「ごめんなさい」-と何度も何度も呟いていた。

 

 「さてと。それで? 結論は出た?」

 

 涙を拭い、少し気持ちが楽になったような表情でモジモジとスカートの裾を弄っているアリア。チラチラと見える太ももが艶々としていて何とも······ゴホン。

 

 「それでもわたくしは強者でありたい······ですわ」

 「そっか。ならどうする?」

 「そ、その······よ、よろしければ······」

 「うん。よろしいよ!」

 

 なんだか長くなりそうだったので、先に答えてやった。案の定、アリアはキョトンとしてしまっている。

 

 「ま、まだ何も言ってませんわ!?」

 「そう? 俺には〝友達になって〟って聞こえたけど?」

 「うぅぅぅ······エト様は意地が悪いですわ!」

 「うん、よく言われる。というか、それ。友達は様なんて付けないの!」

 「あっ···うぅ。エ、エト······さま······」

 「······ダメかぁ」

 「も、申し訳ありませんですの······」

 

 まぁ呼び方ならこれから変えていけばいいか。とりあえず、表情は垢抜けた感じだし、これで良しとしよう。

 

 「まぁ今はそれでいいや。······で、アリア?」

 「な、なんですの?」

 「友達になったから、俺の話もしようと思うんだけど······どう?」

 「エト様のお話······ですの?」

 「うん。もちろん聞かなくてもいいし、どっちでもいいよ? ただし、聞くなら友達として協力して欲しいんだ」

 

 俺は生徒の中にも協力者が欲しいと思っていた。アリアは俺に自分の過去や想いを本音で打ち明けてくれた。彼女は、充分信用に値する。もし、聞きたいというのなら妹の事や〝本当の俺〟を話してもいいと思っている。

 

 すると、アリアは真剣な表情で俺と向き合ってくれた。······うん。いい顔だ。

 

 「良ければお聞きしたいですわ。エト様の·········とっ、友達として······」

 

 自分で言って恥ずかしかったようで、アリアは顔を真っ赤にしてしまった。意外と可愛い所もあるみたいだ。

 

 「ただ、今から話す事は絶対に他言無用でお願いね。これが誰かに漏れた瞬間、俺はこの学園には〝居られなくなる〟から。最悪の場合、この魔法学園を〝消さなきゃならない〟」

 「け、消す······!? そ、そんな事出来るわけが······ここには魔法師や聖騎士、その他の職を目指す候補生が約二千人。先生方は皆実力者ばかり。学園長に至っては〝元王国騎士団団長〟だったアリスタシア・ウォーランド様ですのよ!? それを全て相手に出来るわけがありませんわ!」

 

 おっと。サラッと凄い情報を聞けたものだ。学園長のアリスタシア・ウォーランドは元王国騎士団団長だったらしい。これは聖騎士育成プログラムという存在を匂わせる有力情報だ。やっぱりアリアは貴族の出身だけあって、中々面白い情報を持っている。

 

 「アリア、信じられないかもしれないけど、俺にはその力があるんだ」

 「そ、そんなわけが······確かにエト様は素晴らしい力をお持ちだと思います。でも、それはあくまで生徒としてですわ! あのような動きをされたとしても、決して-」

 「あれが〝本気じゃない〟と言ったら?」

 「えっ·········」

 

 アリアはレイラとの戦いを思い浮かべながらそう言ったのだろう。しかし、あれは本気じゃない。それをわかってもらう為に俺は偽のステータスプレートと〝本当のステータスプレート〟を取り出した。

 

 「それは······ステータスプレートですの?」

 「うん。こっちが、今使ってるやつ」

 「······す、凄いですわね。魔力値はギリギリわたくしの方が上ですけど、この雷属性魔法···。わたくし、初めて見ましたわ。それにあの再生スキルがエクストラスキルだったなんて······。流石ですわ!」

 

 魔法学園用に作った偽物プレートに感心しているアリア。そして、次に本当のステータスプレートを手渡すことにした。

 

 「アリア、それは仮のステータスプレートなんだ」

 「えっ······仮? ど、どいうこと······ですの?」

 

 なんだかビクビクと震え出しているアリア。そんなアリアに俺は手に持つ本来のプレートを手渡した。

 

 「こちらがエト様の本当のプレートと言うわけですの? えーっと···············なっ······何ですのコレッ!?」

 

 案の定、アリアはステータスプレートを見るなり、固まってしまった。額から汗が流れている。その瞳からは恐怖しているようにも見える。まぁ確かに誰でもこの反応になるだろうが。

 

 「エ、エト······様? こ、これは······なっ何かの間違い······」

 「間違いじゃないよ。これが本当の俺なんだ」

 「ま、魔力値の桁が······。み、見た事の無いスキルも······。それにこの加護は一体······まるで加護自体がスキルではありませんの!?」

 

 ステータスプレートを長々と見つめていたアリアは驚きを通り越してしまったようで、今では逆に落ち着いている。

 

 「まぁね。今度、どこかで俺の実力を見せる機会を作るよ」

 「こんな方が······世界には居るの···ですのね」

 「まぁ少なくとも俺は俺以上に強い人を一人知ってるね。俺と〝同じくらいの奴〟も何人か知ってるし」

 「······ふっ···ふふふっ、あはははっ。も、もう何だか可笑しく思えて来ましたわ!」

 

 涙を拭いながら笑みを浮かべるアリア。どうやら壊れてしまったらしい。

 

 「つまるところ、エト様は······すーっごくお強いお方という事でございますのね?」

 「まぁそういう事でございますね」

 「うふふっ。こんな方とお友達になれるなんて···。わたくし、自分の為にも〝一生〟エト様について行きますわ!」

 「あっ、えっ!? それはちょっと困る···というか」

 「何でですの? わたくし達、心を通わせた〝お友達〟ではありませんか。それともお友達というのは嘘だったのですの?」

 

 うっ······。痛い所を付かれてしまったですの······。

 

 「はぁ。まぁ考えておくよ」

 「はいですわっ! あ、もちろんわたくしの名にかけて秘密は絶対にお守りしますわ!」

 

 ったく。さっきまでとは別人みたいな顔しやがって。

 

 まぁともあれ、これで本当に友となったわけだ。なので、俺はここに来た理由と過去に何があったかをアリアに話す事にした-。

 

 

 

 

 

 「······そのような事が。酷い話ですわね」

 

 話を終えると、アリアは自分の事のように表情を曇らせていた。終始真剣に聞いてくれたアリアは、やっぱりいい子だと思った。

 

 「だから、この学園に妹の手掛かりがあるんじゃないかって思って潜り込んだんだ」

 「そうでしたの。······分かりましたわ。わたくしも全力で協力させていただきますわ!」

 「ありがと。その代わり、アリアは俺が鍛えてあげるからね」

 「まぁ! 本当ですの!? エト様のような方に鍛えて頂けるなんて······わたくし感激ですわっ!」

 

 嬉しそうに上半身をユラユラと左右に揺らすアリア。まぁそれでアリアがアリアの両親を認めさせられるのなら悪くないと思う。

 

 「あと、俺の仲間が教員としてこの学園に一緒に来てるんだ。名前はアヤ・ケイシス。また挨拶の場を設けるからその時はよろしくね」

 「もちろんですわ!」

 

 こうして、何とかアリアの件も、アリアを協力者にする件も丸く収まった。その後、俺達は二人で寮に帰ることにした。

 

 

 

 

 寮に着くと、浴室から鼻歌が響いて来た。どうやらカナは先に帰って来ていたらしい。俺はカナがあがってくる間に簡単な晩御飯の支度を始めた。

 まぁ男臭い簡単な物しか作れないのだが、カナは好き嫌いがないと言っていたので、選り好みせずに食べてくれるだろうと思う。

 

 今日作ったのは、野菜炒めとシム肉のステーキ。シムとは一般的な食肉で、主に草原や森の中に生息している肥えた草食獣だ。色は斑模様で気色悪いが、味は中々に美味である。

 調理を終えると、浴室からカナが現れた。

 

 「あっ、エト君! おかえりー」

 「ただいま。カナもお疲れ様」

 「先にお風呂頂いたよ?」

 「うん。大丈夫だよ。んじゃご飯にしよっか?」

 「わぁ! 美味しそうだね! あ、エト君はお風呂いいの?」

 「うん、俺は食べてから入るよ」

 「分かった! それじゃあ食べよっか」

 

 なんてたわいもない話をしている。······しているのだが、これはツッコんでいいのだろうか。カナはバスタオルを胸まで隠している。下半身だけ隠せば十分だと思うのだが············まぁいいか。人それぞれだ。

 

 

 食事を終えると、カナが学園生活初日はどうだったか-と問いかけてきた。ちなみに俺の作った料理は綺麗に完食してくれたようで、少し嬉しかった。

 

 「まぁいろいろ大変だったけど、上手くやっていけそうかな?」

 「へぇー! そっかぁ。それは良かったよっ」

 「カナは?」

 「ボクは相変わらずさ〜。今日は召喚授業が無かったから大丈夫だったけど、召喚授業があるとやっぱりちょっと居ずらいかなぁ」

 

 カナは召喚師を目指しているが、上手く契約が出来ないことを気にしていた。召喚師を目指す他の生徒にいろいろと話を聞いてみるのも一つの手だろうが、カナはきっと聞こうとはしないだろう。

 

 「まぁ昨日も言ったけど、焦ったって出来る事じゃないからね」

 「うん。ボクなりに頑張ってみるつもりだよ」

 「応援してる」

 「ありがとーっ!」

 

 なんて言いながらギューッと俺を抱き締める。だから、男同士でそういうのはやめて欲しい。というか、なんかいい匂いがするし、肌だってぷにぷにしてる。カナはまず、体を鍛えることから始めるべきだ。······人の事は言えないが-。

 

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