小テスト
-ドォンッ!!
訓練場内に響き渡る爆発音と衝撃波。生徒達は、唖然と目の前の光景を見つめていた。それは攻撃を放った〝アリア自身〟も同様だった。担当教員であるレイラも言葉を失い、目を見開いている。
「エト君、今······何かした?」
クロの隣に立ちながら、俺は周りと同じように見つめていた。その場の全員が唖然とする光景-それは、アリアの放った『聖なる陽光』の高密度な攻撃が、焦りのあまり姿を現した男子生徒の前でくの字に折れ曲がり、あさっての方向へ突き抜けていったからだ。
生徒達は、男子生徒が何かしらの魔法を使ったのだ-と驚きのあまりに言葉を失い、アリアは何が起こったのかわかっていない様子。レイラは開いた口が塞がっていない。
まぁ種明かしをすると、俺が『纏雷』を纏いながら全速力で『聖なる陽光』を弾き飛ばし、白々しく元の位置に戻って来た-というのが真相だ。全速力なので、生徒達はおろか、レイラすらも気付いちゃいない。ただ、すぐ隣に居たクロだけは、違和感のようなものを感じているようだ。
「いやぁ、盛大に逸れたね。コントロールミスかな?」
なんてクロに言ってみると、クロは疑いの目で俺を見つめて来た。
「一瞬······電気がバチッてした。エト君きっと何かした」
とうとう疑問形ではなく、確定形で言い寄られた。流石にこれは観念せざるを得ない。
「まぁ······ちょっとね。内緒だよ?」
そう言いながら、俺はクロに向けてウインクをした。すると、クロはポッ-と頬を赤くして視線を逸らしてしまった。
「卑怯。でも······凄いね」
視線を逸らしていたが、表情は見えた。初めてみたクロの笑顔。それはとても可愛らしく綺麗な笑顔だった。いつもこの笑顔なら、生徒達に大人気だと思うのだが······。
「リエル。ちょっと来い」
「えっ?」
クロの笑顔に癒されていると、レイラが俺の名を呼び、手招きをしてきた。せっかくクロの笑顔を堪能していたというのに一体なんなんだ。
「リエル。お前何をした?」
「何も」
「嘘を言うな! 視線で私の言葉は伝えた筈だ。なら、お前が何かしたに違いない。アリアは魔法のミスなど決してしない生徒だ。正直に話せ!」
もの凄い剣幕で詰め寄るレイラ。······面倒だ。この人が止めないから俺が止める羽目になったというのに。大声を出すもんだから、生徒達も気づき始めて俺に視線が集中している。当然、アリアもだ。だんだんイライラが募ってくる。
「先生、次は俺とクロナさんの試合だと思うんですけど、時間大丈夫なんですか?」
俺がそう言うと、レイラはようやく状況を理解出来たようで、落ち着きを少し取り戻した。
「······あ、あぁ。そうだな。今は授業中だ。次、リエルとクロナ!」
「はい」
レイラの声にクロは小さく返事を返す。そして俺も、軽く体を動かしながら訓練場の中央に移動した。
「エト君。お手柔らかに」
「こっちこそ」
ゆっくりと呼吸を整えながら構えるクロ。表情は真剣そのものだ。クロは俺が相当できる奴だと思っている筈だ。しかし、流石に本気を出すわけにもいかないので、今回は『纏雷』や付属魔法は使わず、純粋に魔力のみで戦う事にする。
クロが開始の合図に耳を傾ける中、俺は両手に魔力を集める。とはいえ、今の俺は『封魔の指輪』の効果で魔力が【5,000】だ。『魔装』も持っていないので、自分の魔力を纏わないといけない。それに魔力量を考慮すると、常に纏わせるわけにもいかない。
「はじめっ!」
レイラの合図と共に、俺はクロの出方を窺った。対峙するクロもこちらの出方を見ているようで、真っ直ぐ視線を合わせている。
「んー。とりあえず······」
俺は一瞬で、クロの背後を取った。開始時のクロとの距離はほんの数メートルだ。容易に背後を取れる。小細工無しの単純な歩行技術で攻めた訳だが、クロは不意を付かれたようで、驚いた表情を浮かべながらすぐに俺から距離を取った。
「えっ······今の速くね?」
「何か魔法使ったのかな······」
生徒達が俺の動きを見てからというもの、何やら話をし始めた。その表情は、驚いているようにも見える。
「エト君、凄く速い」
「そお? クロも、いい反応だったよ」
クロは俺の速さに対応出来るように『身体強化』を発動させる。と、同時に土属性魔法を発動させた。クロの背後に現れたゴーレムがそれだ。自身は強化して、背後をゴーレムに守らせる。······悪くない戦法だ。
「魔力だけには自信がある」
そう言うと、クロは自らゴーレムと共に俺に飛び込んで来た。そして次に水属性魔法で攻撃を繰り出した。放たれた水流が、まるで蛇のように俺を追い詰める。これは多分、水属性魔法の『水流大蛇』だ。三体の水蛇が縦横無尽に襲いかかる。
しかし、俺は懐に噛み付いてきた水蛇の一体を魔力を纏わせた拳で消し飛ばした。
ビシャッ-と弾け飛ぶ水蛇。クロはこんな方法で消させるとは思っていなかったようで、目を見開いている。
「手に魔力を纏わせただけ? エト君にはこの程度、魔法ですら······無い?」
「どうかな。でもいい攻撃だよ」
「お世辞は······要らないッ!」
クロは残りの二体で、俺を挟み込むように攻撃を放つ。俺はそれを両手で消し去ろうとしたが、クロは俺の両手が左右に開いた事を確認すると、俺の背後から石の槍を撃ち込んだ。
「おぉっ!?」
どうやらクロは、ゴーレムを作り出した時にもう一つ魔法を発動していたようだ。それが、今まさに俺を穿かんとしている。中々やるものだ。左右は水蛇、背後は石の槍、前方はクロとゴーレム。······俺はしっかり追い込まれたらしい。
「これで、終わり!」
「あぁ。終わりだな」
俺は左右の水蛇を消し飛ばした。と、同時に石の槍が俺の胴体を〝穿いた〟。それを確認したクロは俺の目の前で動きを止め、レイラに視線を向けた。
「······ここまでか。これにて-」
「あぅッ!?」
「なっ·········!?」
クロの視線を受け取ったレイラが、試合終了の合図を出そうとした時、クロは頭を抑えながら地面に膝を着いた。レイラは状況が分からない様子でいる。
「クロ、気を抜いたね。俺の勝ちだよ?」
何も不思議な事は無い。立ち止まったクロの頭部に手刀を撃ち込んだだけだ。そして俺が勝利宣言を言い放つと、クロは呆然と俺を見上げた。
「どういう······こと? 確かに穿いたのに」
「どういうって······」
俺は胴体を貫通した槍を抜き取り、修復された体を見せた。
「こういう事」
「回復魔法? 違う······再生スキル!?」
「ちゃんと相手が戦闘不能になった事を確認しないとね。······先生?」
ポカン-と呆気に取られていたレイラは、俺の言葉で我に返り、試合終了の合図を出した。その瞬間、生徒達の歓声が訓練場内を包み込んだ。
「ほら、クロ?」
「ん。やっぱりエト君、凄い」
「クロもね」
俺達は、お互いに微笑みあって握手を交わした。そんな光景をただただ見つめるアリアとシルビアの姿に、俺が気付くことは無かった。
「今回の小テストの結果だが、全体的には悪くない。それぞれ少しずつだが、魔法の使い方が向上している。特にアリアとクロ、お前達は中々よかったぞ」
「ありがとうございますですわ」
「どうも」
小テストも終わり、レイラから高評価を得たアリアとクロを讃えるように拍手が沸き起こる。俺も一応拍手をしておいた。とはいえ、クラス内の模擬戦だ。相手が相手だけに、それぞれ本気という訳では無いだろう。しかし、無理無く自分達のペースで魔法や戦い方を学ぶ。これが、Dクラスという訳だ。
「それじゃあ解散。次は魔法学だ。ちゃんと準備するように」
「「「はい!」」」
レイラの言葉で小テストは幕を閉じた。
······のだが-
「リエル君! さっきの魔法? 凄く速かったよね!」
「私、再生スキルなんて初めて見たっ!」
「よかったら今度は私と組んでくれない?」
「待てよ! 女子は女子で組めよな? おい、エト! 俺とペア組もうぜ!」
授業が終わるなり、生徒達がわらわらと俺に歩み寄ってきた。それなりに俺の事を認めてくれたらしい。が、ちょっと鬱陶しい。というか、近い。
あっ、誰だ!? 今、俺のしりを触った奴は!?
全く勘弁して欲しい。擦り寄る生徒達を宥めながら困り顔を浮かべる。すると、レイラがゆっくりと歩み寄り、生徒達をかき分けて俺の前に現れた。
「ほらお前ら。早く教室に戻れ!」
「「「はーい」」」
「リエル君、また後でねー!」
生徒達が訓練場を立ち去ると、レイラは俺の体を舐め回すように見つめ、肩やら腰やらを隈無く触り始めた。
「な、なんですか先生」
「······見事な体だな。引き締まって無駄が無い。それに柔軟性も体幹も体のバネも素晴らしいと言える。まぁ、少し小さいがな」
やかましいっ!
「は、はあ」
「なぁ、リエル。私と本気で〝殺り合う〟気は無いか?」
·········はい?
「ちょ、先生!?」
「問題発言」
レイラの発言に、シルビアとクロが待ったをかける。今、この場に居るのはレイラ、アリア、シルビア、クロ、そして俺だ。シルビアとアリアが何故残っているのかは分からないが、この状況でレイラがこんな事を言うのは、何かしらの企みがあるのだろう。レイラは俺から視線を外し、彼女達に視線を向けた。
「お前ら、ベルエラに勝てるか?」
「え? ベルエラ先生にですか? 無理ですよ、ベルエラ先生は教員長だし」
「それに元〝Sランク冒険者〟」
·········え? あの人、元冒険者だったの?
編入初日に編入試験で模擬戦をしたひねくれ先生は、どうやら元冒険者で、それもSランクだったらしい。
「アリアはどうだ?」
「愚問ですわね。当然負ける気はありませんわ」
「私は勝てるか-と聞いているんだが?」
「·········」
レイラの言葉にアリアは無言で返した。負けるつもりは無いが、勝つかどうかも分からない-という事なのだろう。本当に気の強いお嬢様だ。
「昨日の編入試験で、このリエルはベルエラに勝ったらしいぞ?」
この言葉にシルビアとクロ、そしてアリアまでもが言葉を失っていた。そして三人は俺に視線を向けると、アリアが最初に口を開いた。
「ありえませんわ。第一、編入試験ならベルエラ先生は手加減していた筈。そのような状態で勝ち負けは判断出来ないと思いますけど」
「そ、そうですよ」
「エト君でもそれは無理」
確かにアリアの言う通りだ。編入試験で勝ち負けを判断するのはどうかと思う。というか、別に勝ってはいないし、ベルエラが本気だったのかも分からない。まぁ、ベルエラの表情を見るに、手を抜いていた感じは無かったと思うが······。
「実は私もそう思っている。だが、ベルエラはプライドの高い奴だ。ベルエラ自身がそう言うということは、少なくともあの堅物男が、リエルを認めたということになる。強いものには敬意を······だったよな? アリア」
「······ええ。当然ですわ」
意味深な言葉でアリアを煽るレイラ。······なんだか、レイラの意図が分かった気がする。というか、あの人本人が俺にやられたって言ってたのね。
「なら決まりだ。それで? どうする? 休み時間もそうは無い。まだ乗る気になれないというのなら······そうだな。お前が私に勝てたら、今後、お前の〝協力者〟になってやってもいいぞ? お前が何かをしたい時に出来る限り手を貸そう。どうだ?」
レイラの言葉に俺の眉がピクリと反応した。大きく出たものだ。しかし、協力者というのは正直魅力的ではある。妹を探す為にも、学園側の協力者は居てくれるとありがたい。流石にその提案を出されては、断る理由が無い。
-が、なんだかいいように利用されているみたいで気に食わないので、ちょっと意地悪をしてみる事にした。
「〝絶対服従〟を追加してもらえるなら」
「ちょっと!? 流石に調子に乗り過ぎよあんた!」
「エト君、強気」
「ふん。気に入らないですわ」
確かに無茶を言っているのは分かっている。が、裏切られる可能性も無くはない。まぁ絶対服従なんて言っても、実際従うかなんて分かったものでは無いのだが、これをコイツらの前で了承したとなれば、多少の意識はさせられる筈だ。アリアだっている。
先生が約束を守らなかった-なんて噂されると、面倒なのは彼女だ。
「ふははっ。······なるほど。絶対服従を約束させて何をさせたいんだか。······いいだろう」
「ちょ、先生!?」
「その代わり、お前が負けた時の条件を付け加えさせてもらうぞ?」
「もちろん」
「お前が私に負けた時は······そうだな。私の〝下僕〟になれ。お前の条件とそう変わらん。問題ないな?」
「大人気ない」
レイラの条件にクロがボソッと呟く。
「中々面白そうですわね。まぁ結果は見えていますけど。······本当に戦うつもりですの?」
アリアは俺を見つめながら、そう問いかけた。結果は見えている-これはレイラが勝つ事が······という意味だろう。横でシルビアが「やめときなさいよ!」-と小声で訴えかけて来ている。とはいえ、やめるつもりは全く無い。ということで、俺はその条件をのむことにした。
「それでいいですよ。それじゃあ始めましょうか」
「エト君、本気?」
「あぁ。本気だよ?」
「ふんっ。身の程を知ればいいですわ」
「もう勝手にすれば!?」
俺とレイラから距離を置く三人。アリアは好き放題言ってくれてるが、シルビアは俺を心配してくれているのだろうか。必死に戦わせまいとしているように見える。ともあれ、早速始めよう-とレイラは声をかけてきた。
そうして、俺とレイラはゆっくりと距離を取る。
「魔法やスキルに制限は無し。勝敗は、どちらかが意識を失うか、致命傷を与えるか、負けを認めるかだ。知っているだろうが、この訓練場での傷は外に出れば元に戻る。本気で来てくれて構わないぞ。アリア、判定はお前に任せる。公平に判断しろ」
「わかりましたわ。それでは両者、準備を」
レイラは真っ直ぐ俺を見つめている。いつでも行ける-と言わんばかりだ。一方の俺はレイラの背後にある時計を見つめる。休み時間もあとわずか。正直目立ちたくはなかったが、どうにもそうも言っていられないようだ。なので癪ではあるが、レイラの意図に乗ってやる事にした。
この際だ、レイラには悪いが〝一瞬で〟終わらせてもらうことにする。
「クロナさん、レイラ先生が勝つよね?」
「ん。〝 だと思う〟」
「えっ?」
シルビアは、この戦いがどうなるのか-それをクロナに訊ねたが、クロナは曖昧な答えを返した。クロナは、アリアと男子生徒の模擬戦時に起こった現象にエトが関わっていると確信していた。どのようにしたのかは分からないが、クロナはエトから底が見えない不思議な雰囲気を感じていたのだ。
「それでは始めますわ。よろしいですわね?」
「私はいつでも構わんよ。リエルはどうだ?」
「いつでもどうぞ。······あ、先生。〝腹部に『防御障壁』を張ることをオススメします〟」
「なに?」
俺の言葉にレイラが少しばかりの戸惑いを見せる中、その瞬間は訪れた-
「はじめ!」
アリアの合図と共にレイラは素早く魔法を発動しようとする。
「あまり私をナメる-ッ!? なっ······がハッ······」
それはあまりにも一瞬で、あまりにも突然の出来事だった。アリアの合図と共に魔法を発動しようとしたレイラの腹部を俺の右手が穿いていたのだ。
「お······お前······は-」
「だから言ったでしょ。お腹に『防御障壁』を張れって」
バチバチバチッ-と無惨に光り輝く雷撃。そして、言葉を失うアリア達。静まり返った訓練場には、ただただ雷撃が空気を破裂させる音だけが響き渡っていた。
俺がレイラの腹部から右手を引き抜くと、レイラはそのまま意識を失い前のめりに力なく倒れた。そして、俺の視線に気付いたアリアが、戸惑いながら試合終了の合図をコールした。
「この勝負、エト・リエルの·········しょ、勝利······ですわ」
-それから数十分後、レイラは学園の治療室で目覚めた。
「ッ-。こ、ここは······」
「あ、先生。目が覚めました?」
「あっ···あぁ。リエルか。······そうか、私は負けたのだな」
朧気な記憶を辿り、戦いを思い出すレイラ。
「あれは魔法か?」
「はい。雷属性魔法の『纏雷』と『怒槌』です」
俺はレイラに使用した魔法······ではなくスキルを『纏雷』を発動させながら話した。雷撃を纏う姿に苦笑いを浮かべるレイラ。
「全く。大した奴だよお前は。そんな魔法は聞いた事も見たことも無い。アリアの攻撃を逸らしたのもそれか······」
レイラの言葉にいつかのルカとの会話を思い起こす。魔法学園の教員でも『怒槌』は知らないようだ。やはり付属魔法は、普通の魔法と異なるものなのだろうか-なんて思っていると、レイラはゆっくりと上体を起こして俺を見つめた。
「だが、まぁこれで晴れて私は、リエル······いや、エトの絶対服従の下僕となったわけだな」
「いやいや、下僕って。そんなつもりないですから」
苦笑いの俺に微笑み返すレイラ。こう見ると、レイラも結構美人さんだ。ボーイッシュというか男っぽいが、アヤよりも逞しいものをお持ちのようだ。
「じゃあ何が目的なんだ?」
「まぁ目的というか、助けが必要な時に助けてくれればそれで充分ですよ。絶対服従っていうのも、ちょっと意地悪したくなっただけなんで」
「······生意気な奴め。まぁその時が来れば頼りにすればいい。約束は約束だ。可能な限り手を貸す」
「はい。お願いします」
レイラの瞳で、彼女が信用出来る人物だと確信した俺は、絶対服従の件を無かったことにした。
「それよりエト。お前、授業はどうした?」
「えっ? いや、レイラ先生はここに居るじゃないですか。先生が居ないんじゃ授業にならないと思って、傍にいようと思ったんですけど?」
というか、一応俺が放った攻撃で意識を失ったのだ。流石に放置は出来ない。クロにも先生は任せるように言っておいた。なんの問題も無いはずだ。
「······なるほどな。一応言っておくが、授業毎に教員は〝変わる〟からな? 今回は私の面倒を見ていてくれたという事で対処するが」
「えぇ!? そうなんですか?」
「当たり前だ。じゃなきゃお前に勝負を挑んだりするかバカモン」
言われてみれば確かにそうだ。······って、どっちにしても俺は授業に遅れたんだ!?
「まぁともあれ、私のわがままに付き合わせて悪かったな。どうだ? 服従の印に〝一揉み〟くらいなら許可してやるぞ?」
「いいですよ、気にしないで下さい。あと、胸なら先生が寝ている間に楽しませて頂きましたので」
「なっ、なにぃ!?」
そう言いながら、レイラは立派な胸を両腕で覆い隠した。なんだ、ちゃんと恥じらいはあるようだ。必死に顔を赤くしているあたり、非常に好感が持てる。
「ま、まさか······〝挟んだり擦ったり〟してないだろうな!?」
こらこら。なんて事を言っちゃってんだ。
「······冗談ですよ?」
俺がそう言うと、レイラは更に顔を赤く染め上げた。恥ずかしがった自分が余計に羞恥心を煽ったようだ。
「ゴホン! ······そう言えば、アリアはどうだった?」
羞恥心から脱したレイラは、唐突にアリアの話題を出してきた。このどうだった? -というのは、戦いの後の反応を示しているようだ。と言っても、あの後すぐにアリアは不機嫌そうに訓練場を出て行った。なので、どうと言われても困ってしまう。
「どうっていっても······そうですね、不機嫌そうにしてました」
「······そうか」
少し落ち込んだ様子のレイラに俺は、カナから聞いた話を聞いてみることにした。すると、レイラは俺の疑問に首を縦に振った。どうやらアリアは、実力でDクラスを我が物顔で仕切っているらしい。
「彼女は魔法師一家の貴族の生まれで、人一倍強さに執着しているんだ。それ故にDクラスの生徒達に自分の力を見せつけて従わさせている」
「ふーん。でも、よく生徒達が素直に従いましたね。見た感じ取り巻きには男子生徒も居たみたいですけど」
「過去に彼女へ反抗した生徒が、彼女にコテンパンにされて辞めたことがあったんだ。それが彼らに恐怖として植え付けられてるようでな」
「なるほど。それで先生は俺に勝負を挑んだんですね? 彼女よりも強い存在を作って彼女を変えようと」
「······やはりお前には気付かれていたか」
俺の問いにその通りだ-と答えるレイラ。まぁ彼女の言い分なら、彼女は俺に従う形になるのだろうが、それで彼女に対する恐怖を持つ生徒達も変われるかは別の話だ。彼女自身が変わらないと意味が無い。
「多分、アリアは単純に誰かに認めて欲しかったんじゃないですか? 魔法師一家って言うくらいだし、小さい頃から比べられたりしたんでしょう」
「あぁ。私もそう考えている。とはいえ、クラスとしては今の状況は好ましくない」
「それで俺に白羽の矢がたったと」
「まぁそういう事だ」
なんて話をしている間に授業終了のベルが学園内に響き渡った。
「っと。さぁ、そろそろ戻るぞ」
「ですね」
流石に次の授業もサボるわけにはいかないので、俺は起き上がったレイラと共にDクラスの教室へと戻ることにした。
次回から、毎週日曜日の午前9時に三話ずつ更新するようにしますので、お暇な方は時間潰しにでも読んで頂けると嬉しいです。




