もう一つの修行と自己紹介
時は少し遡り-。
エトとアヤと別れ、私達は『異界門』によって魔邪の樹海へと戻って来た。そして今、私達はエトと暮らしていた古い小屋でティータイムを満喫している。
「ここがエト様の暮らしていた······ぐへへ」
「······ちょっと、ルカ。この子大丈夫?」
「え、えぇ。主曰く、少々変わっているらしいですが、問題はないかと······」
「そう。ならいいけど」
まぁ、その気持ちも分からなくもないし。
「それじゃあ、ミーア。これからあなたには、エトの足を引っ張らない程度に強くなってもらうわ。覚悟はいい?」
そう言うと、ミーアは表情を一変させ、しっかりと私の目を見ながら力強く頷いてみせた。
「はいです! よろしくお願いしますっ」
「あなたは吸血鬼。潜在能力的には、ただの人間であるアヤって子よりも強くて当たり前」
「はい」
「でも、彼女はうちの弟子が面倒を見るわ。エトはいろいろと〝異質〟だから、アヤは相当強くなる。いい? エトに任された以上、私は本気であなたを強くするつもり。地獄をみることになるわよ」
「······はい。覚悟は出来てます!」
ミーアの覚悟は本物のようだ。···となると、残る問題は修行期間だ。いろいろと踏まえても、エトなら最低でも半年くらいは魔法学園に通う筈だ。
「期間は今から半年。その後は、いつでもエトと合流出来るように待機してもらうわ。いいわね?」
「はいですっ!」
こうして、吸血鬼のお嬢さんの決意新たに私達の生活が始まった。
そして、ティータイムを終えた私達は、エトを育てていた場所である〝黒点〟に来ていた。ここは、魔邪の樹海のほぼ中心地で、魔素の量が他を逸している。ちなみに目の前にあるこの超巨大なクレーターは、エトと私が戦って出来たものでは無く、元々ここにこうしてあったものだ。
そして何故かは分からないが、この地盤は魔法やスキルの攻撃はもちろん、物理的な攻撃でも形を崩さない。私が全力で『魔装』した状態で殴りつけても、ヒビひとつ入らなかった程だ。
「うっぷ······。な、なんですかここ···。魔素酔いで気を失いそうです······」
後から来たミーアが酷く表情を崩している。まぁ当然だ。魔力値【50,000】程度では耐えられないだろう。
「確かに濃密な魔素ですね。ここなら吾輩、超巨大化出来そうです!」
「しなくていいわよ?」
「あ、はい。冗談です······」
流石は神獣。魔素に愛されているだけあって、余裕のようだ。ここでならルカはほぼ無敵だろう。無論、私には劣るが······。
「ミーア。まずはここで一ヶ月間、魔力の底上げをしてもらうわ。もちろん、加護の『真祖化』は使ってはダメよ」
「うぅ······。ここで、一ヶ月······」
早速泣きそうな表情を浮かべるミーア。しかし、彼女は吸血鬼固有のエクストラスキルである『魔力吸収』を持っている。この異常なまでに濃密な魔素を吸収し続ければ、以前のエトよりも早く魔力の底上げが出来る筈だ。
「そして、その一ヶ月の間、常に『魔力吸収』をする事」
「あ、あの······。『魔力吸収』は許容量が決まっていて、自分の魔力量よりも多くは吸収出来ないのですけど······」
『魔力吸収』の許容量は、魔力値=魔力量に比例する。彼女なら【50,000】分、私なら【1,440,000】分の魔力や魔素を吸収出来るという感じだ。まぁ私は『魔力吸収』なんて芸当は出来ないが。
つまるところ、私がさせたいのは、許容量を超えて『魔力吸収』をする事で、強引に魔力の底上げをするという事だ。
「知ってるわよ。だから、許容量を超えても『魔力吸収』をし続けなさいと言ってるの」
「そ、そんな!? そんな事をしたら〝魔力過大〟になってしまって死んじゃいます!」
「そうね。魔力を許容量以上に取り込むと魔力過大で内側から肉体が崩壊するわね」
「な、なら······」
「······いいわ。それじゃあ、やめましょう。今すぐ〝ここから消えなさい〟。今後一切の接触を禁ずるわ。もちろんエトにもね」
「そ、そんな······うぅ。ちょ、ちょっと待って下さいっ!」
私の言葉が相当効いたのだろう。とうとうミーアは泣き出してしまった。キツい事を言っているのは分かる。無茶苦茶だということも、薄情だということも自分で理解している。しかし、それでもこれは彼女の為に必要な事で、エトの為でもある。
この先、エトと共に居たいのなら強くならなければならない。悪いが、彼女よりもエトの方が私は大切だ。彼女がエトの足を引っ張るくらいなら、ここで消えてもらった方がいい。その程度の覚悟しか無かったのならエトの傍にいる資格は無い。
「待たないわ。地獄をみることになると言ったでしょ。大層な事を言っていた割に、その程度の覚悟しか無いのならここから消えて国に帰った方があなたの為よ。それじゃ」
「あっ·········」
顔を伏せる彼女にそう告げると、私は小屋に向けて歩みを進めた。ルカも私の思いを感じ取ったようで、彼女に情けをかける素振りを見せることなく、私の後をついて来た。
「よろしいのですか?」
「ええ。問題ないわ。ここで折れるようならそれもいい。強制する気なんて無いし、そこまで面倒を見る義理もない」
「······そうですか」
なんて言ったが、ここで本当に諦められるとエトに顔向け出来ない。絶対にエトは怒るだろう。でも、だとしても分かって欲しい。もうエトには大切な存在を失って欲しくないから。これ以上、人間らしさを無くして欲しくないから······。
「ルカ。姿を消して彼女についていてあげなさい。でも手助けはダメよ」
「なるほど。心得ました。おまかせください!」
なんだか嬉しそうなルカ。ちょっとムカつく。
「······その笑顔、不愉快ね」
「も、申し訳ございません!?」
「冗談よ。さぁ、早く行きなさい」
「はい!」
ルカは、スーッと霧のように私の前から姿を消した。
「さてと。どうなることやら」
全ては彼女次第。私は彼女の答えを待つ間、小屋に戻ってティータイムにする事にした。
-その頃。
エト様の師匠様であるイルミンスール様は、私の前から消えてしまった。見限られた······? 違う。単に私の意志が弱かったのだ。修行内容は理解した。『魔力吸収』による魔力の底上げ。
この濃密な魔素を吸収し続けるという修行。······怖い。それが本音だった。許容量を超えて魔力過大になった人間や仲間を見た事がある。それはもう······悲惨な光景だった。苦しさにのたうち回り、激しい激痛に表情を歪める。体の至る所から血が吹き出し、爆弾のように破裂する。
そんな状況に自ら陥れというのだ。······怖くもなってしまう。
「······はぁ」
それでも、イルミ様を悪く思う事は無かった。イルミ様が言うことに私も共感したから。私は、エト様の為なら命だって惜しくない-そう思っていた。しかし、いざ目の前に自分の命が天秤にかけられると、私は躊躇ってしまった。死ぬのが怖い、消えたくない、エト様と別れたくない。そんな思いで一杯になった。
「覚悟······かぁ」
こんな時、エト様ならなんて言うのだろうか······。エト様は前に〝自分の命を最優先に〟と言っていた。もう誰も失いたくないから-と。でも、このままでは結局私は足を引っ張ってしまうのだろう。そして、エト様を不安にさせてしまうのだろう。
エト様はとても優しい。このままエト様の元に行っても笑顔で迎えてくれると思う。そして、この先もずっと〝守ってくれる〟筈だ。
「······〝守ってくれる〟?」
不意に私の胸の奥がギュッと握り締められるように苦しくなった。
守られるだけ?
胸の中で自問自答を繰り返す。目の前にエト様が居て、その隣にルカ様が居る。そして、私の隣に·········いや、違う。アヤさんはきっと私の隣じゃなく、〝エト様の隣に〟立っている筈だ。アヤさんはきっと自分の意志を貫く。私の立場だとしても、必ず首を縦に振った筈だ。
······負けたくない。私だって隣に立ちたい。
守られるだけじゃ嫌だ。後ろをついて行くだけなんて嫌だ。······エト様と並ぶアヤさんをただ羨ましそうに見つめるなんて······絶対に嫌だ!
「······死ななきゃいい。耐えればいい。ただそれだけのことです。エト様の為に······エト様の隣に立つために!」
本当の覚悟を決めろ、ミーア・ベル・フォーラ。後悔ならやった後にすればいい。大好きなエト様の為なら、なんだって出来る筈だ。なぜなら-
「恋する乙女は······無敵ですっ!」
覚悟を決めた私は、早速『魔力吸収』を始めた。絶対に生き抜いてみせる。イルミ様をギャフンと、それはもうキャンキャンと言わせてみせる。そして、エト様に〝初めてを〟捧げてみせる!
《·········覚悟は決まったようですね》
ルカが姿を消してから数時間が経った。ミーアは一向に顔を出す気配がない。しかし、『魔力感知』によれば、まださっきの場所にいると思われる。
「はぁ······。エトのあほー。なんで私が落ち込まなきゃいけないのよ······」
ああ言った手前、私からミーアに会いに行くわけには行かない。今はとにかく待つしかない。······のだが、考える度にエトの怒った顔が脳裏にチラついてしまう。
「ったく。『自己再生』があるんだから〝死ぬ事は無い〟って気づかないのかしら」
確かに普通の人間やただの吸血鬼なら、当然その身は持たないだろう。しかし、彼女は『自己再生』を持っている。多分、ミーアは吸血鬼の中でも貴族クラスだったのだろう。基本的に吸血鬼は吸血によって、肉体を再生させる。人間や他種族を贄に不死性を持つと言われているのだ。
しかし、貴族や真祖といった高位の吸血鬼は、吸血をせずとも多少の不死性を持っている。流石に真祖や皇帝は別格だが、それでもミーアの持つ『自己再生』は立派な不死性だと言える。
まぁそれだけ精神的に追い込まれてるって事よね······。
どういう結果であれ、彼女の意志を受け止める覚悟をしながら、私は彼女を待ち続ける事にした。
-そして翌日。
「とうとう日付が変わっちゃったか」
相変わらず接触してこないミーア。ルカも戻って来ていない。『魔力感知』によれば、ミーアは今だにあの場から動いていない。
「もしかして気を失ってる?」
流石にこれは-と思った私は、小屋を出てみる事にした。すると-
「なっ······何よあれ!?」
北西の方角で〝ありえない光景〟を目にした。流石に驚いた私は、腰を抜かしてしまい、その場で尻餅をついてしまった。
「あっ······〝消えた〟。あの方角は······」
尻餅をつき、再び北西の方角に視線を向けると、ありえない光景は何事も無かったように消え去っていた。あの方角にあるのは魔法学園だ。······という事は-
「······エトね。全く。本当にデタラメな子」
あんな馬鹿げた事が出来るのはエトしかいない。というか、私にはエトとしか思えない。とはいえ、消えたという事は、上手くいったという事なのだろう。多分だが······。
「······さてと。ちょっと様子を見に行こうかしらね」
仮に気を失っているのであれば、放置しておくのは流石に不味い。私は気付かれないように気配を断ちながらミーアの元へと向かった。
すると-
「······あらら。ふふふっ。やるじゃないの」
目に飛び込んで来たのは、クレーターの中心で座り込みながら両手を合わせて集中しているミーアだった。どうやらミーアは昨日からあれを続けているらしい。
ミーアを中心に大量の血が、円状に飛び散っている。既に魔力過大に陥っているようだ。今も、血が吹き出しては再生するという光景を繰り返している。その姿を見る限り、ミーアの決意は固まったのだろう。覚悟が表情から見て取れる。
「······というか、そうなったのなら報告して来なさいよあの馬鹿」
全くもって使えない神獣だ。どうせその辺でミーアを見守っているのだろう。あとで、しっかりとお仕置きをしてやる事にする。
「さてさて? ステータスはっと······」
ミーアを『魔眼』越しで覗き見る。流石にまだ大きな変化は無いようだ。魔力値が【50,000】と【50,001】とで上下している。当分はこれが続くだろう。私の出番は一ヶ月後のようだ。
「今頃、エトは何してるかなー。ちゃんと学園生徒として楽しんでいればいいけど」
幼い頃からこの樹海で過ごして来たエトにとって、普通の子供としての生活というものは縁遠い存在だった。誰かと触れ合ったり、友を作ったり、誰かと共に何かを成し遂げる事も叶わなかった。いわゆる青春というものを経験出来なかった。
来る日も来る日も戦い方を学ぶばかり。傷だらけになりながら、血反吐を吐きながら、文字通り死ぬ思いで力をつけていった。
そんなエトが年頃の男の子のような生活を経験しようとしている。願わくば、妹ちゃんが無事に見つかって学園生活を満喫して欲しい。
「······まぁ不安もあるけどね」
多少なりと不安はある。命の心配は全くもってしていないが、問題は〝女性関係〟だ。エトは、見た目は小さくて、ひ弱に見えるが、強くて優しくて格好良くて可愛い。そんな彼に想いを寄せる生徒も現れるだろう。多分というか、確実に私なら恋に落ちる。既に落ちている者も若干二名いるが、節操なく関係を持たないかが心配でならない。
それに、ここだけの話。エトはめちゃくちゃ〝テクニシャン〟なのだ。伝説の剣士などと呼ばれていた堅物の私ですら、一撃で虜にされた。
「って、この事は言わない約束だったっけ···」
とにかく。その辺りはアヤに任せるしかない。あの子ならちゃんとエトの交友関係を管理してくれるだろう。······多分だが。
そんな淡い期待を持ちつつ、私はミーアの修行を見守る事にした-。
-その頃。
「これはこれは、リエル君。我が魔法学園へようこそおいで下さいました! 会いたかったですよ。あなたのような素晴らしい方が我が魔法学園に来てくれた事を深く感謝致します! 申し遅れましたが、魔法学園学園長のアリスタシア・ウォーランドと申します。これから一年間、よろしくお願いしますね」
深々と頭を下げる学園長のアリスタシア。無事にアヤと合流した俺は、学園長室にて今まさに学園長と挨拶を交わしていた。
「あ、はい。こちらこそお世話になります」
学園長の笑顔にこちらも笑顔で答える。しかし······
《ちょっとアヤさん? なんでこの人、こんなに改まってんの? なんか、目がキラキラしてるし》
明らかに一生徒に向ける眼差しでは無い。というか、もっとふんぞり返ってもいいと思うのだが。それに、素晴らしい方ってのが、むず痒い。
《『記憶操作』時にちょっとね。エト君の事を世界で一番尊敬しているようにしたの》
《えぇー·········》
なるほど。そういう事か。
「既に教員にはリエル君の事を話していますが、一応学園の規則ですので、編入試験を受けて頂けませんか? それによって編入クラスを決めさせて頂きますので。もちろん、リエル君であれば問題なく〝Sクラス〟になると思いますけどね!」
「は、はあ······」
アヤの『記憶操作』は、行動操作や思考操作能力ではない。対象の記憶に情報を刷り込むというものだ。つまり、『記憶操作』であっても、学園の方針や対象の行動や思考を操ることは出来ない。
編入試験なんてちょっと面倒だが、受けざるを得ないということだ。
「学園長、ちなみに編入試験の内容って?」
「我が魔法学園では、生徒達の意志のもとに生徒達は三種類の専門クラスに分けられます。魔法師を目指す魔法科クラス、聖騎士を目指す騎士科クラス、そしてその他を夢見る一般科クラス。鍛冶師や科学者なんかも一般科クラスになります」
「ふーん。なるほど」
「なので、編入先の希望面談と実技試験を行って頂きたいのです。実技試験は、希望するクラスの教員と模擬戦をして頂いて、実力に見合ったランクのクラスに通って頂きます」
つまりは、行きたいクラスの担当教員と戦えばいいだけか。なら、さほど難しくはない。実技試験で助かった。筆記試験なんて言われたらお手上げ状態だ。何せ今まで勉強なんてした事がなかったのだから。
「それでは、希望するクラスをお聞きしますが、どうされますか?」
首を傾げながら学園長は俺を見つめている。んー。どうしたものか。妹が居るとするなら聖騎士を目指す騎士科だろうが、果たして横流しした人材を普通に通わせているのかも疑問だ。
「あの、一つ伺いたいんですけど、他のクラスと交流は出来ますか?」
「えぇもちろん。ただ、授業内容や授業場所はそれぞれ違うので、容易には会えないかもしれませんが」
なるほど。授業内容や授業場所がそれぞれ違うというなら、さまざまな分野が集まった一般科クラスの方がいいかもしれない。普通に考えて、全く異なる分野の授業を同じ場所でするとは思えない。多分、一番この学園の情報を把握出来るのは一般科クラスだ。
「それじゃあ、一般科クラスで」
「そうですよね、魔法科クラ-えぇっ!? 一般科クラスですか?」
「え? あの······ダメですか?」
「い、いえ。ただ、リエル君は素晴らしい魔法使いだと認知していたもので」
いやいや。期待を裏切って悪いが、俺が使える魔法は『身体強化』くらいだ。『纏雷』の付属魔法もあるが、それを言っているのか? いや、そう植え付けたのはアヤだったか。
《ごめんね。きっと役に立つと思って······》
《ちなみに、アヤはどのクラスの教員になってるの?》
《私? 私は魔法科クラスだよ》
何故魔法科クラスにしたっ! -と突っ込みたかったが、それを俺が言うことは無かった。アヤはアヤなりに考えてそうしたのだろう。まぁ、アヤと接する機会が減るのは考えものだし、ここは遠回りになるかもしれないが話に沿うことにしよう。
「すみません、やっぱり魔法科クラスでお願いします」
「そうですか! 分かりました。では、早速模擬戦の用意をしますので、訓練場に向かってください。アヤさん、案内をよろしくお願いしますね」
「はい!」
こうして、なし崩し的な展開で俺は魔法学園魔法科クラスに通う事になった。
「えっと······ごめんね。私のせいだよね」
訓練場に向かう道中、アヤが申し訳なさそうにそう呟いてきた。まぁ確かに予定は狂ったが、そこまで問題でもない。むしろ、アヤとすぐに落ち合える魔法科クラスの方が、いろいろと楽かもしれない。
「気にしなくていいよ。魔法科クラスなら、アヤともすぐに会えそうだし」
「えへっ。そんなに会いたいんだぁー。ふふふっ」
「はいはい分かったから。それより、ここでは生徒と教員なんだから、ちゃんと接しないとね〝先生〟」
その瞬間、アヤは頭から湯気的な何かをボスッと噴き出した。
「ちょっ···ア-」
「······先生···いいかも。くへへ」
「·········」
心配して声をかけようとしたが、次のセリフを聞いた瞬間にそれを俺は留めた。どうやら新しい扉に手を掛けてしまったらしい。先生と呼ばれる感覚に優越感のようなものを抱いたのだろう。困った先生だ。
-が、流石にこのままという訳にもいかないので、ちゃんとさせておく事にした。
「アヤ。真面目に頼むよ······?」
「あっ······ごめんなさい。ちゃんとするね?」
「うん、ありがとっ」
これでようやく本腰を入れる事が出来る。まずは模擬戦。左手人差し指に付けた『断魔の指輪』、そして学園に入る前に右手人差し指に付けた『封魔の指輪』。この二つも問題なく機能している。
今の俺は、ただの魔法学園生徒だ。だから、それなりの行動をしなくてはならない。
-ということで。
「アヤ。アヤにもこれを渡しておくよ」
「これってステータスプレート?」
「うん。流石に今のステータスプレートをやたらに見せるわけにはいかないからね」
「······へぇ。用意周到というか···流石だね」
俺は前にイルミに頼んでおいた偽のステータスプレートを手渡した。もちろん、俺の分もちゃんとある。ステータスプレートの内容は、こんな感じだ。
名前:アヤ・ケイシス
年齢:二十七歳
種族:人間
加護:-
称号:-
魔法:水属性魔法・氷属性魔法
魔力値:【7,500】
技能:『ES自己再生』・『気配感知』・『隠密』
名前:エト・リエル
年齢:十八歳
種族:人間
加護:-
称号:-
魔法:雷属性魔法
魔力値:【5,000】
技能:『ES自己再生』・『威圧』・『魔力操作』・『魔力感知』・『状態異常無効化』
これが魔法学園での俺達二人のステータスとなる。とはいえ、形だけのものなので、実際のステータスは何も変わっちゃいない。
「俺の場合、『断魔の指輪』の効果でステータスが覗かれる心配は無いけど、アヤはそうはいかないから、あんまり目立たないようにしてくれる?」
「うん。分かったよ。······それじゃあ行きましょうか。リエル君?」
おっ。久しぶりのお姉さんモードだ。
「はい、先生」
これでとりあえずは、準備万端な訳だ。そして俺達は模擬戦会場である訓練場へと向かった。
ここから俺達の新たな物語の幕が上がる-。
次回より、魔法学園編が始まります。
更新ペースが期待に応えられないかもしれませんが、
あたたかく見守って頂けると嬉しいです。




