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NEW MYTHOLOGY  作者: 宗緋色
大陸横断編
12/71

アヤに頼みたい事


 ミーアは無事にイルミとの自己紹介を終えて、ベンチで項垂れている。余程のプレッシャーがあったのだろう。何やら呪文のようにブツブツと呟いている。〝ほんさい〟? 一体なんの事だか、分からないが······相当ヤバい目をしている。そこまで追い込まれていたのか。

 

 うん。よく頑張ったね。

 

 -と、安堵していたのも束の間。イルミは次にアヤへと視線を移した。ちなみにアヤの心配はしていない。ああ見えて相当根性がある。何せ、クリムゾンの一件で、俺に楯突いた張本人だからだ。あの時の俺の気迫に比べれば、まだ今のイルミの方がマシだと思う。

 案の定、アヤは決心したように自ら一歩前に出た。

 

 「アヤ・ケイシスです」

 「貴方に多くを語る気はないわ。それ程〝興味も無い〟し」

 「······そうですか」

 「へぇ。何か言い返して来ると思ったけど。やっぱり大したことないわね」

 

 ···これは明らかな挑発だ。イルミなりに彼女を試しているらしい。

 

 「それで? 貴方はエトの何なのかしら?」

 「敵ではないですね」

 「······答えになってないわね。その態度も気に入らない。喧嘩を売ってるのかしら」

 

 そう言うと、イルミは〝本気で〟殺気をアヤに放った。先程とは比べ物にならない。尋常ではない。これは意識を失ってもおかしくは無い。

 流石に不味いと思った俺が、アヤに駆け寄ろうとした瞬間、アヤは俺に向かって手を突き出し、必死に微笑んでみせた。

 

 「な、何か試したかったんでしょうけど······。御生憎様ね···。わっ···私はそんな事で〝自分の意思を曲げる気は無い〟···わ。怖いからって······態度は変えない···し、心配しなくてもエト君を裏切ったりなんて···しない······です」

 

 苦しそうにそう言い放つアヤ。その真剣な瞳から本心だと感じ取れる。なるほど、イルミが試したのはそういう事だったのか。

 要は、元々敵だったアヤが信用出来るかを試したらしい。人というのは、死や恐怖を感じた時こそ、その人物の真価が問われる。今アヤはまさに死や恐怖を体感している事だろう。なにせあのイルミが本気で殺気を放っているのだ。あんなものを一点に浴びせられれば、俺でも鬱になる。

 しかし、アヤはそれでも自分の意思を貫いた。自分の思いを打ち明けてみせた。イルミの殺気は本気も本気。嘘を言えば躊躇無く手を出していたであろう事は誰でも分かる。

 

 「······ふふふっ。分かったわ」

 

 イルミもアヤの本心を見抜いたようで、放っていた殺気を鎮めると、微笑みを見せた。······可愛っ-ゴホン。危ない危ない。危うく堕ちる所だった。

 

 「失礼しました。生意気な事を言って」

 「生意気な子は嫌いじゃないわ。むしろ女の子なら多少生意気なくらいが丁度いいものよ。でも、覚えておきなさい。エトを裏切ったり、悲しませるような事があったら〝本気で殺してやる〟から」

 「···ッ! わ、わかりました」

 「うん、よろしい」

 

 アヤの耳元で何かを囁くと、イルミは優しくアヤをギュッと抱き締めた。うん、これは認めたという事でいいのだろう。そして、イルミはステステとアヤから離れるとルカの元へと向かい、何やらガミガミと説教を始めた。ルカは終始ペコペコと頭を下げている。

 

 ······アイツまた何かしたのか?

 

 なんて思っていると、アヤが俺の傍に歩み寄ってきた。

 

 「あれがイルミンスールさんね」

 「ん? あぁ。そうだよ」

 「はぁ。寿命が縮んじゃったわよ。怖過ぎじゃない? あの人」

 「あははは···。···過保護なもんで」

 「そうみたいね。でも、おかげでちゃんと決心出来たわ。これからもエト君の傍に居続けるって」

 「あ、そう? よろし-くぉッ!?」

 

 何ともまぁ突然だった。アヤは不意打ちで俺の頬に口付けをしてきた。

 

 「ちょいっ! な、なんぞ!?」

 「うふふっ。何よ、おかしな声出しちゃって。あの人にもさっきされてたでしょ?」

 「ぬっ······」

 

 ぐぬぬ···。まさか見られていたとは。

 

 「ちゃんと上書きしてあげたんだから、当分は〝私だけ〟を見て頂戴ね。馬鹿エト君っ」

 

 そう言って満面の笑みを見せると、アヤはミーアの元に駆け出していった。本当に心臓に悪い。にしても、さっきの言葉の意味はどういう意味なのだろうか。······いや、考えても分からなさそうなので、気にしないでいよう。

 

 

 

 -そして。

 

 無事にイルミを紹介できた所で、本題に移る事にした。

 「-ってな訳で、イシュタル法国に行くつもりだったけど、それは一旦辞めて、魔法学園に行くことにした」

 

 ベンチに座るアヤとミーアとイルミ。なんだか、イルミの両隣に間が空いているが、やっぱりまだ二人にはこの距離を縮める事は出来ないらしい。

 ともあれ、イルミと計画していた内容を話すと、アヤもミーアも納得してくれた。まぁイルミが念を押して言葉を加えてくれたのが大きいが。

 

 「妹さんが魔法学園に······。わかりましたです! でも、どうして私はルカ様と魔邪の樹海に?」

 「······さっき話、聞いてなかったのかしら」

 「あ、いえ。吸血鬼である私が、完璧要塞の魔法学園に入れないという事は理解したのです!」

 

 そういえば、ミーアとアヤを強化する話はしてなかったっけ。

 

 「まぁなんだ。俺が奈落の峡谷に行った時にヤバい奴に出くわしたって言ったろ?」

 「は、はい!」

 「あんな奴はそうそう居ないだろうけど、ミーアよりも強い奴は沢山いるんだ。もちろん、ルカよりも強い奴だっているし、俺よりも強い奴だって必ずいる。···だから、少しでも力をつけて欲しいんだ」

 「自分の身は自分で守れるようにって事ね」

 「アヤの言う通り」

 

 ただただ俺とアヤを待っているだけだなんて勿体ない。その時間を利用して強くなって欲しいのだ。もちろん、ルカもまだまだ強くなれる。

 

 「って訳だから、ミーア。ちょっとの間、頑張ってくれるか?」

 「そういう事でしたら···。エト様と離れるのは······寂しいですけど。エト様の為なら、私······頑張りますっ!」

 

 うん。聞き分けが良くなった。これもイルミのおかげかもしれない。素直なミーアは本当に可愛いと思う。当分は離れ離れになる。だから、少しだけミーアにご褒美をあげる事にした。

 

 「ミーア、ちょっと立ってくれる?」

 「え? あ、はいです」

 

 ベンチからミーアを立ち上がらせると、俺はミーアをギュッと抱き締めた。

 

 「はわっ···はわわわわ!?」

 「ミーア、落ち着いて」

 「は、はい······ですぅ」

 

 俺は今までに無いくらいにミーアを強く抱き締めた。隣のイルミは、俺の思いを感じ取ったようで、微笑みながら視線を逸らし、アヤの頭に手を置いてくれた。そのおかげで、アヤは落ち着いた状態を保てている。

 

 「初めの頃に比べたら、本当に素直になってくれたよね。ありがと」

 「いえ···。そんな······」

 「ミーアが強くなってくれたら、俺も嬉しいんだ。ミーアともっといろんな所へ一緒に行く事が出来るし、いろんな物を見る事が出来る」

 「······はい」

 「ちょっとの間、離れちゃうけど···俺はミーアの事、ちゃんと想ってるからね?」

 「えへへっ」

 

 俺はミーアに思いを伝えると、ゆっくりと体を離し、ミーアの額に自分の額をコツン-と押し当てた。顔が凄く近いが、悪い気はしない。むしろ、少し照れた表情のミーアが愛らしくてたまらないくらいだ。

 

 「頑張れミーア」

 「はいですっ! エト様っ」

 

 久しぶりに甘々なムードを漂わせてしまったが、これでミーアが頑張ってくれるなら、やって良かったというものだ。

 

 「んじゃ、イルミ。ルカとミーアをよろしくね」

 「ええ。任せておきなさい。それよりエト、貴方の方こそ気をつけなさいね」

 「うん。ありがとイルミ」

 

 イルミの笑顔を見届けて、俺は建物の裏で『異界門』を発動させた。ルカ、ミーア、イルミの順に空間の歪みへと消えていく。そして数秒後、ルカから無事に樹海に辿り着いた-と念話を受け、俺は『異界門』を閉じた。

 

 さてさて。一体どうなる事やら。ルカとミーアはどれくらい強くなるのか-そんな事を考えると不思議と笑みが零れる。

 そんな俺の腕にアヤがそっと寄り添うと、ニコッと笑みを浮かべた。これから当分はアヤと二人だ。何があっても彼女を守ろうと決めて、俺達は歩みを進めた。

 

 

 

 

 イルミ達と別れて数時間、空はオレンジ色に光り輝き、真っ白だった辺り一面を朱色に染め上げている。それに夕刻にもなると、ぐっと気温が下がる。

 

 「はい、これ」

 「ありがと」

 

 アヤは買っておいた服を手渡してくれた。うん、モコモコとしているが、めちゃくちゃ暖かい。イルミの話では、ここから一日程進んだ場所に魔法学園はあるらしい。道中何が起こるか分からないので、とりあえず俺は『断魔の指輪』だけをつけておく事にした。ちなみに、イルミと樹海で試したが、『封魔の指輪』をつけた状態でも加護は有効で、スキルも至高の力(マスタースキル)以外は問題ない。まぁ加護を使うといっても『纏雷』の付属魔法である雷属性の魔法くらいだが。それ以外は流石に怪しまれる。

 魔力値【5,000】の奴が使える魔法なんて、限られる。とはいえ、それでも身体能力は常人離れしているので、さほど問題はない。

 

 「とりあえず、私が先に『記憶操作』を使って魔法学園に潜入、新人教師として赴任すればいいのね?」

 「うん。確か、『記憶操作』は一人に何度も使えないんだっけ?」

 「そうよ」

 

 前に聞いていた話によると、アヤの『記憶操作』という反則スキルは、同じ人間に一度しか使えないらしい。解除する事も含めると、二回という事になる。つまりは、最初の『記憶操作』で、俺のこともアヤのことも刷り込ませる必要がある。更には、学園を出る時に怪しまれないように、いつまで-という期限も言っておく必要がある。

 

 「んー。なら俺が編入する分には大丈夫として、いつ学園を出るか-だね」

 「そうね。魔法学園トップの学園長さえ記憶操作しちゃえば何とかなるだろうし、今のうちに決めておかないとね」

 

 とは言ったものの、どうするべきか。ユーリがすぐに見つかれば問題ないが、すぐに見つからないとなると、下手に短期間にする訳にもいかない。魔法学園がどういう場所かも知らない為、どのくらいの期間で調べられるかがさっぱり分からないのだ。

 

 「とりあえず一年間にしておく?」

 「······一年か。もし妹が居ないとなると、後の時間が無駄になっちゃうな」

 「確かにそうだけど、学園って言うくらいだから、退学処分とかもあるんじゃない?」

 「いや、それは俺も考えたけどさ。それだと、アヤが一人になっちゃうだろ? それは嫌だからな······」

 「なーに? 嬉しい事言ってくれるわね?」

 「からかうなって。真面目に考えてんだからさ」

 

 最悪、魔法学園を崩壊させ······る訳にはいかないか。流石にそこまでするのはいろいろと不味い。ここは腹を括った方がよさそうだ。

 

 「よし。一年にしよう。それまでに妹か妹に関することを探し出す」

 「いいのね?」

 「うん。あとはどうにかするよ!」

 「ふふふっ。分かったわ。なら、学園長には学園長の指示で一年間エト君が学園で魔法を学びに来る-って刷り込むわね。私もエト君と同じタイミングで出られるように操作するわ」

 「うん。よろしくね? 本当にありがとっ」

 

 俺の為に······本当にありがたい。俺が笑顔を見せると、アヤも微笑み返してくれた。というか、これで学園長が『記憶操作』に耐性のあるスキルとか持っていたら最悪だけどね。一応、アヤにも言っておくことにしよう。

 

 「アヤ?」

 「ん? なーに?」

 「万が一、魔法学園内に『記憶操作』が効かない奴が居たら言ってくれる? その時は魔法学園を外から〝全力で〟攻撃するから。その隙に逃げて」

 「それって、あの化物スキルを使うってこと? 大丈夫? 消し炭になったりしない?」

 「多分、大丈夫······だと思う。やばそうなら手加減するよ。でも、イルミが言うには魔法学園全体に強固な結界が張られてるらしいから、一瞬で消滅なんて事にはならないと思うよ?」

 

 まぁ実際、なんの根拠も無いんだけど······。

 

 「そうなんだ。じゃあ分かったけど、言うってどうやって? 私、遠距離の連絡手段なんて無いわよ?」

 「うん、それなんだけどさ」

 

 問題はそこだったのだが、俺には念話する方法がある。それはルカと同じようにアヤと契約するという方法だ。つまり、俺の庇護下に入ってもらう。

 

 「俺と契約して欲しいんだ」

 「結婚?」

 

 おいコラ。そんな事一言も言っとらん!

 

 「アヤさん···」

 「ごめんなさい、冗談よ。それで、契約って?」

 「つまり、俺の庇護下で俺の加護を受けて貰うってこと」

 「そんな事出来るの?」

 「いや、普通は出来ないよ。特定の地位を確立した者しか加護は与えられない。俺がどうして出来るのかは、俺自身謎なんだけどね。人間で言うなら、教皇とか国王とかかな。他種族も大体同じ。ちなみに、与えられる加護にもいろいろあって、同族同士の加護と他種族間の加護とでは、内容がちょっと違ってくるんだ」

 「ふーん。なんだか、ややこしそうね」

 「まぁね。···で、どう? 契約してくれる?」

 「私がエト君の要求を断るわけないでしょ?」

 

 さも当然と言わんばかりに俺を見つめてくるアヤ。ヤバい、ちょっとドキッとしてしまった。

 

 「そ、そっか」

 「あれれ? もしかして照れちゃった? 顔、赤いわよ?」

 

 近い近いっ! そんなに覗き込むんじゃない!

 

 たまらず俺はアヤの額を小突いた。アヤはとても美人さんだ。こんなに言い寄られれば、流石の俺でも赤面して当然だ。

 

 「っもぉ。痛いなぁ···」

 「アヤがからかうからだよっ!」

 「それで? 契約って具体的にはどうするの?」

 

 『契約の儀』には様々な方法がある。例えば、互いの血で手の甲に刻印を印したり、ルカと俺のように戦って認めさせたり、屈服させても契約は可能だ。しかし、これは相手が本心から認めた時に限る。他には肉体の接触によるものもあったり······なかったり。

 

 「えっと俺と戦っ-」

 「嫌っ」

 「うっ······。じゃあお互いの血を-」

 「いーやっ」

 「うぅ······」

 

 ヤバい。この流れは非常にヤバい。嫌な予感しかしない。是が非でもアダルトな『契約の儀』に持っていく気だ······。アヤは『契約の儀』って名前で、そういう方法もあるのでは-と考えているに違いない。

 

 そりゃあるよ! 確かにあるけどもっ! ···困ったな。というか、どこのハーレム主人公にしたいんだよもぉっ!

 

 「ねえ、他には?」

 

 ぐぐっと擦り寄ってくるアヤ。これは腹を括るしか無いのだろうか······。いや、ダメだ。せめて-

 

 「じゃあ、血を口移しで······」

 「ん〜······うん。分かった。それならいいよっ」

 

 なんだよ、その嬉しそうな笑顔わっ! なんか口調もいつもと違ってるしっ!

 

 

 

 -という訳で。

 

 「じゃ、じゃあ······えっと」

 「こーら。ちゃんと腰に手を回して?」

 「は、はい······」

 

 街道沿いの木陰でひっそりと密着する俺とアヤ。寒さでか、アヤが口から吐く白い息がなんだか凄く色っぽい。アヤの腰は凄く細くて柔らかくて···。漂ってくる匂いも甘くて、なんだかふわふわとした気分になってくる。

 

 ······なんだこれ。めちゃくちゃ可愛いんですけど。

 

 何度も言うが、非常に不味い。冷えた体がアヤの温もりを余計に感じさせて、ジーッと見つめるアヤの瞳はとても綺麗で潤んでいる。

 

 不味い不味い不味いッ! 本当にヤバいよコレ!

 

 今、アヤに迫られたら······うん。多分断れない。行くところまで行ってしまうだろう。第二の俺が臨戦態勢になりつつある。これに気付かれれば最後···。アヤと一線を越えかねない。

 

 ···よし。さっさと終わらせよう。

 

 俺達はお互いに口内を軽く傷つけて血を含む。ちなみに傷はすぐに再生されるが、出た血は消えたりしない。···っと、アヤも準備が出来たようで、クッと唇を突き出してきた。

 

 「いくよ?」

 「うん······来て?」

 

 そんな言い方しないでぇーッ!?

 

 俺の煩悩は破裂寸前だったが、必死に堪えてアヤの唇にゆっくりと触れた。触れた瞬間に開く唇。そしてお互いが自然と絡み合う。濃厚で甘ったるくてトロトロで──────欲情回避の為、以下省略。

 

 

 

 

 -数分後。

 

 「っはぁ···はぁ······はぁぁぁ〜」

 

 無事に『契約の儀』を終えた俺はアヤを背にして、地面に項垂れていた。いやいや、本当にヤバかった。マジで欲情しかけてしまった。

 

 というか、上手すぎるだろうがぁ! 熟練度いくつだこの野郎ッ!

 

 「えへへ。ご馳走様でしたっ」

 「あ、うん。お粗末さまでした······」

 

 アヤは満足気に微笑んでいる。顔が真っ赤なところを見ると、アヤも相当照れているのだろう。心底可愛いと思ってしまう。

 とはいえ、『契約の儀』は完了した。アヤにも加護が付き、念話も出来るようになった筈だ。

 

 《アヤ? 聞こえる?》

 

 俺は試しに念話を飛ばしてみる事にした。すると、アヤはビクッと反応を示して俺を凝視し始めた。しかし、俺の口は全く動いていない。そんな光景を不思議そうに観察している。

 

 《難しく考えないでいいよ。頭の中で話してみて?》

 《えっと······。エトのすけべ?》

 《うん。サラッと失礼な事を言わないでね》

 《へぇーっ! 面白いわねこれっ!》

 《ただ、問題は念話が魔法学園の結界に妨害されないか-なんだよね》

 

 そう。今気付いたが、その可能性は十分にありえる。とはいえ、今後の為にも念話はあった方がいい。

 

 「もし、出来なかったら······魔法を空に向けて放つ···とか?」

 「うん、いいね。そうしよう」

 

 という事で、念話が使えなかった場合の策として、アヤの案を採用した。これでとりあえず下準備はOKだろう。

 

 「それより、さっきから体が異様に軽い······というか、なんだか違和感があるんだけど。これも加護の影響なの?」

 「ステータス更新をしないと、反映はされない筈だけど?」

 

 そう言えば、樹海でルカと組み手をしていた時に、俺も似たような感覚になったっけ。

 

 「そう。ならひとまずステータス更新よね。どうする? 一旦クオリオーネ王国に戻る?」

 「んー。ちょっと待って」

 

 俺はルカに念話を飛ばした。既にわかっている事だが、北方大陸と東方大陸間での妨害はもう無い。今なら念話も飛ばし放題だ。

 

 《ルカ?》

 《はい主! どうされましたか?》

 《悪いんだけど、イルミに魔法学園までの道中、ステータス更新出来る場所が無いか聞いてくれない?》

 《わかりました。少々お待ち下さいっ!》

 

 確か教会がある場所ならステータス更新が可能な筈だ。道中にあればいいのだが······。

 

 《主、お待たせ致しました。教会では無いのですが、クオリオーネ王国と魔法学園の丁度中間辺りに〝遺跡〟があるようで、そこにも真魔鉱石があるとの事です》

 《おー、そっか。分かった。ありがとな!》

 《いえ。くれぐれもお気をつけ下さい》

 《うん》

 

 -という事らしい。

 

 「って事はこの辺かな。アヤ、近くに遺跡があるらしくて、そこでステータス更新が出来るんだって」

 「そうなの? 戻らなくて良かったわね!」

 「だね。それじゃあ行こっか」

 「うんっ」

 

 こうして俺達はステータス更新の為、ルカの···基、イルミの助言の通り遺跡へと向かった。

 

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