実験、そして修行開始
街道をゆく俺とアヤ。ルカが言うには魔法学園とクオリオーネ王国の間に遺跡は存在すると言っていた。クオリオーネ王国と魔法学園までの距離は、徒歩で約一日。そして、俺達は既に半日は歩いている。そろそろ遺跡が見えてきてもおかしくはないのだが。
「遺跡ってどんな場所なのかな」
「ダンジョンみたいな感じだと思うけど······」
「······だんじょん?」
「あー······。いや、気にしないで」
「?」
とはいえ、街道を進んでいても見当たりはしないかもしれない。遺跡というくらいだ。森の奥深くとか、洞窟の中···なんて場合もある。
地図を見る限り······うん、ありそうなのは右手の森だ。ちなみに北方大陸の地図はクオリオーネ王国で手に入れていた。
その地図を二人で仲良く覗き込む。『契約の儀』以来、俺とアヤの距離はめちゃくちゃ縮まった。当たり前のように体に触れているし、好かれているのはありがたいが、やっぱり慣れない。俺は圧倒的に女性経験が少ないのだ。
経験人数だって······。って何をカミングアウトしてんだ俺は。
-と、その時。
「アヤッ!」
「きゃっ!?」
俺はアヤを強引に抱き寄せて、木陰に潜んだ。
「ど、どうしたの?」
「シッ-。······あれ」
「え?」
俺はアヤを抱きしめながら、顎でアヤの視線を誘導した。そこには、5メートルを超える巨体の魔獣、スノーマンがいた。まぁ名前の通り、巨漢の雪男だ。
使用魔法は氷属性魔法。魔獣のくせに水属性魔法の上位属性魔法を使いやがる。並の魔法師や冒険者には中々に厄介な相手だ。攻撃力は低いが、火属性魔法に絶対の耐性を持ち、スキルの『氷雪』は、対象者を『凍傷』状態にする。
まぁ当然ながら俺の敵ではない。が、アヤにはちょっと厳しいかもしれない。
「私にはちょっと厳しい相手······かな?」
「今はそうだね」
「······ごめんね。足を引っ張っちゃって」
やはりアヤの口調がちょっと変わってきている。なんて言うか、前よりも更に砕けた感じというか、女の子っぽくなったというか······。
「気にしなくていいよ。俺が直々に鍛えるんだから」
「そう言えばそんな事言ってたね? ······えへへ。ありがとっ」
ミーアはルカとイルミが育ててくれる。その代わり、アヤは俺が直接鍛えるのだ。そこいらの魔法師や冒険者なんて敵じゃないくらいにしてみせる。
「それじゃあ、サクッと倒して来ますかね」
「あ、ねえ? 近くで見ててもいい?」
そう言えば、アヤは気絶してて俺が戦う所を見てなかったっけ?
「うん、いいよ。俺の後ろにいててくれる?」
「はーいっ」
可愛らしい返事をすると、アヤはピトッと俺の背中に寄り添った。俺はそれを丁重にお断りした。何故かって? 非常に動きづらいからだ。ぷくーっと膨れているアヤは置いておいて、俺は『竜化』状態で『反魔法障壁』を発動させた。
「うわぁ······。凄いね。本当に鱗がある···」
アヤは俺の首筋に見えた鱗を指で触っている。そして、俺はある事に気付いた。鱗というのは皮膚と一緒だと思っていたが、触られる感覚が大分と遠く感じる。感覚的には爪に近い。
なんて思っていると、スノーマンが俺に気付いたらしく、高圧的な態度で俺を睨みつけ、四つん這いに体勢を変えた。これは氷属性魔法の『氷の息吹』の前兆だ。
「アヤ? スノーマンがあの体勢になったら、高確率で氷属性魔法『氷の息吹』の前兆なんだ。基本的にコイツらは攻撃力が低くて動きが遅いから、物理攻撃はほとんどして来ない。倒すポイントは、遠距離魔法に触れずに遠距離魔法で攻撃する事」
「ちょ、ちょっと! 丁寧に解説してくれてるけど、その遠距離魔法が来るわ-ッ!?」
うん。確かに『氷の息吹』をぶちまけて来たが、俺の『反魔法障壁』が自動的に展開され、完璧に防いでいる。なので全く問題ない。
「す······すごいっ」
「これが竜族固有のエクストラスキル『反魔法障壁』ね。あらゆる魔法攻撃を無効化してくれる。もちろん魔力値に比例してるから、俺よりも強い奴の攻撃は防げないけど」
アヤは口を開いたまま呆然と『反魔法障壁』を見つめている。まぁ確かにこの『反魔法障壁』の魔法陣はめちゃくちゃ綺麗だ。見蕩れてしまうのも分からなくもない。
「さてと。それじゃあ次はこっちから攻撃をしよっか」
ちなみに、俺は基本的に物理攻撃を得意としている。というのも、遠距離攻撃手段が【神羅万象】か『纏雷』の付属魔法である雷属性魔法くらいからだ。属性の優劣は、【火<水<土<風<火】【闇=聖】となっている。上位属性だと、【炎<氷<雷<地<炎】という具合だ。そういう事なので、今回に限っては『纏雷』の付属魔法が有効打になりそうだ。
「アヤ、ちょっと離れてくれる?」
「あ、うん。分かったわ!」
アヤが後退したのを確認すると、俺は『纏雷』を発動して体に雷を纏わせた。己自身を雷と化す『纏雷』。
······いやぁ、何度見てもカッコイイ!
「······次元が···違う」
後ろでアヤが何か呟いている。が、気にすること無く右手を前に突き出す。今回使うのは至近距離の『怒槌』ではなく、遠距離魔法の『雷迎』という付属魔法だ。使った事は無いが、どういう魔法かは脳内で理解する事が出来る。
これは【神羅万象】の『天運万雷』に近い。天から雷撃の塊を落とすというものだ。本当に付属魔法は便利だ。魔力を消費すること無く魔法を振るえる。
「えっ······エト···君? あっ···あれ······何?」
「ん? 俺の雷属性魔法で『雷迎』っていう·········何だあれ!?」
魔法の説明をしながら、アヤの見つめる方向に視線の向けると、そこには空を覆う程の超巨大な漆黒色の球体が浮かんでいた。バチバチバチッ!-と雷鳴を轟かす球体に、俺自身も顎が外れた気分だ。
······え? ちょ、これ落としたらヤバくね!?
多分、というか確実に辺り一帯が消し飛ぶ。『天運万雷』に近いなんて嘘っぱちだ。全くの別物と言える。というか、この大きさは異常だ。こんな規模の攻撃は、至高の力に匹敵する。
え? って事はルカもこれを使えたってこと!?
訳が分からない。とりあえず、これは封印だ。俺は急いで魔法の発動を止めた。そして、テンパってしまった俺は、『纏雷』での光速移動によってスノーマンに近づき、『怒槌』を放った-。
「······はぁぁぁ」
「だ、大丈夫?」
スノーマンをあっさり倒して木陰に腰掛ける。アヤが心配そうに声をかけてくれているが、ビックリして腰を抜かしかけたというのが本音だ。一体何がどうなったら、あんな化物魔法になるというのだ。
という事で、俺は念話でルカに問いかけてみる事にした。
《ルカ〜》
《おぉ、主! 遺跡には辿り着きましたか?》
《いや、まだなんだけど、ちょっと聞きたい事があってさ》
《はい、なんなりと》
《お前の『纏雷』ってあるだろ? あれの付属魔法なんだけど···》
《······はい? あの、主?》
《ん?》
《吾輩の『纏雷』は、雷を纏い、自身を雷と化して身体能力を向上させる-というエクストラスキルですので、主の仰った付属魔法などというものは〝ありません〟よ?》
《·········え? そうなの?》
《はい》
《えっ、じゃあ雷属性魔法に『怒槌』とか『雷迎』とかっていう魔法ってある?》
《いかずち···らいごう? ······すみませんが、吾輩は存じ上げません。お役に立てず申し訳ありません···》
《そ、そっか······。いや、いいんだ。ありがと! 助かったよ》
《はいっ! それでは》
んー。なるほど。どうやら付属魔法というのは特殊なようだ。これはもう少し加護について調べた方がいいのかもしれない。まぁ、こういうもの-と強引に理解してもいいのだが。
「まぁいっか。···っと」
俺はその場から立ち上がってアヤの手をとった。
「どうだった? 念話してたんでしょ?」
「うん、でも分かんなかったよ。とりあえずあれは封印だね。とんだジャジャ馬だよ全く。威力も規模も、俺の言うことを聞きゃあしないし」
「まぁいい勉強になったんだし、良かったじゃない?」
「まぁね」
確かに、今がここぞという時じゃなくて良かった。命のかかった場面であんな化物魔法を発動させてしまえば、撃たざるを得なくなっていただろう。そう考えれば、今のうちに試せて良かった。
「ってなると、あとは『雷閃』と『放雷』って付属魔法だな」
というか、別に『纏雷』の状態で発動しなくてもいいんだよな。
俺はこの際だ-と、残りの二つを試して見る事にした。やばそうなら発動を止めればいい。
「えっと······『雷閃』」
そう言いながら右手を突き出すと、手のひらから一直線に目視出来ない程の速さで雷撃が突き抜けていった。
「おっ······おぉぉぉっ!」
いいじゃんコレ! まるで〝超電磁砲〟みたいだ!
「エト君? 今のが『雷閃』? ってやつなの?」
どうやらアヤには見えなかったようだ。しかし、俺の前方は一直線に焼け野原になっている。それに気付いたアヤがもの凄い顔で驚いている。うん、これは使えそうだ。
「えっと······次は。『放雷』-ッ!? 」
「きゃあぁっ!」
俺が両手を広げると、俺を中心に全方向に先程の『雷閃』並の雷撃が迸った。俺は慌てて『竜化』状態で『反魔法障壁』を発動させてアヤを死守した。
「ごめんっ! アヤ、大丈夫だった!?」
「う、うん。ビックリしたけど大丈夫。でも······」
アヤと共に辺りを見渡すと、360度、全方向約数十メートルが灰になってしまった。
「これも封印······よね?」
「そ、そうだね。近くに人がいる時は······封印かな」
結局周りを気にせず使えるのは、『怒槌』と『雷閃』の二つのようだ。ったく。不便な付属魔法だ。にしても、これを魔力消費無しで放てるなんて、どうかしているというものだ。
「でも、やっぱりエト君は凄いのね。安心感が倍増しちゃった!」
「そ、そう? そりゃあ良かったよ」
あははは-と苦笑いの俺。使う身としてはヒヤヒヤものだ。世界征服を目論んでる奴なら、俺の加護やスキルは喉から手が出るほど欲しいのだろうが、生憎俺にその気は無い。俺は妹を救えればそれでいい。
まぁ、仮に妹を救う為に必要なら、世界だろうがなんだろうが、消してやるけどねっ。
「さて。先を急ごっか!」
「うんっ!」
-街道から森に入って一時間近くが経った。
辺りが少し霧がかってきたような気がする。左手にはアヤの手がしっかりと握られているので、迷う心配はない筈だ。とはいえ、だいぶ夜も更けてきた。ここら辺で野営をすることにしよう。
「アヤ、今日はこの辺で野宿するけど大丈夫?」
「うん。エト君とならどこでもいいよっ」
「······やっぱりアヤ、なんか口調変わったよね?」
別に気にする事でもないのだろうが、気になってしまった俺は、とうとうアヤに問いかけた。すると、アヤは不思議そうに俺を見つめ返してきた。
「これが素なんだけど······嫌だった? お姉さんキャラの方が好き?」
「いや、話しやすい方でいいんだけど、なんか違和感があったから」
「クリムゾンみたいな裏稼業をしてるとね? 多少大人ぶった方が立ち回りやすかったの」
「あー、それで〝わよわね〟口調だったんだ」
「あははっ! なにそれー」
そう言いながら素敵笑顔を見せるアヤ。どうやら本当に今の彼女が彼女の素のようだ。なんだか垢抜けた感じがする。
「それじゃあ、そこの岩陰にする?」
アヤは寝床に近くの岩陰を選んだ。しかし、俺には少し試したい事があったのだ。というのも、正直北方大陸で野宿は寒過ぎる。厚着していても風邪をひいてしまいそうになる。まぁ『状態異常無効化』があるから風邪なんてひかないんだけど。
ともあれ、試したい事というのが-
「『異空間固定』」
俺がそう唱えると、目の前に『異界門』と同じような空間の歪みが現れた。大きさは大体、人一人が入れるくらいだ。これは加護の異空間魔法の一つで、『異界門』のように空間同士を繋げるものでは無く、異次元の空間を固定するというもの。つまりは-
なんちゃって異空間部屋というわけだ!
「これなら寒さも暑さも気にしないでゆっくり出来るし、歪みを閉じれば魔獣に襲われる心配もないし! うん、俺って天才かもっ」
えっへへぇ〜。
なんて一人で盛り上がっていると、アヤがまたまた唖然としていた。何度も驚かせてしまっているようで悪い気がする。しかし、そろそろ慣れて欲しい-というのは手前勝手なのだろうか。
「とにかく、中に入るよ?」
「あっ、待って!」
アヤの手を引きながら異空間に入り、歪みを閉じる。『異界門』の中と同じで、上下左右全てが、夜空の星のように淡く光り輝いている。まるで〝宇宙空間〟に居るみたいだ。
「綺麗······。それに不思議···。足は着いてるのに浮いてるみたい。なんだか別世界に迷い込んだみたいだね!」
「そうだね」
まぁ、あながち〝間違ってはいない〟。
「さてと。···『雷閃』」
俺は不意に右手を突き出して『雷閃』を発動させようとした。-が、うんともすんとも言わない。他にもいろいろ試してみたが、加護の付与スキル、付属魔法の一切が発動しなかった。
「ふーん。やっぱりか」
「ん? エト君、さっきから何をしてるの?」
「ううん。気にしないで?」
「そう? なら私、疲れちゃったからそろそろ休むよ?」
「うん。おやすみ」
「おやすみなさぁいっ」
アヤはそう言うと、その場で横になり、着ていた上着を掛け布団代わりに自分の体にかけて瞼を閉じた。一方の俺は、いろいろと試したかったので、アヤから少し距離を置いた。
「えっと······」
俺はおもむろに小型ナイフを取り出した。これは野生の獣を狩った時に使うものだが、俺はそれで自分の腕をスパッと切りつけた。
-プシュッ
「ッ!?」
いってええぇぇぇぇぇっっっ!
俺は心の中で盛大に大声を上げた。というか、調子に乗って切り過ぎた。久しぶりに感じる痛み、傷口から伝わる熱と脈動。やはりこの異空間内では『超即再生』も『痛覚消失』も無効化されている。
「ってマジでやばいな、ホントに切り過ぎた!」
俺は急いで『異空間固定』の歪みを生み出して、異空間外へと出た。すると、一瞬で切り裂けた腕が元に戻り、痛みもすぐに消えた。そして、もう一度異空間戻った。
ちなみに、『異空間固定』は発動者の意思で、持続も解除も可能で、先程のように外に出る為の歪みも任意に生み出す事が出来る。意識下で解除しない限り、『異空間固定』が解除されることは無い。つまり、俺が寝てしまったとしても問題は無い。
死んだ場合は······分からない。というか、考えたくない。
「ふう。俺もそろそろ寝ますか。試したい事は試せたし」
結果、この異空間内において、〝全ての〟魔法、スキル、加護の付与スキルの無効化が確認出来た。ということは-だ。この異空間に放り込まれた奴は、俺が出さない限り一生出られないという可能性がある。
断言しないのは、俺が外に出て歪みを閉じた場合、中がどうなるのかを確かめていないからだ。さっきは歪みを開いたままだった。異空間の維持条件として、歪みを開いたまま-もしくは空間を閉じた時に俺が中に居ないといけない-ということも考えられる。
解除されるという事は、『異空間固定』そのものが効果を失う為、異次元の固定が不能となって、中にある存在も固定出来なくなる。つまり、異空間から弾き出されるということだ。
「ったく。めちゃくちゃだな···。外の魔法って」
-そして。
「っくはァ······」
どのくらい眠っていたのだろう。目が覚めると、俺の腕にアヤがしがみついていた。そして、可愛らしい寝顔で寝息をたてている。たまらず優しく頭を撫でてみると、アヤは嬉しそうに少しだが表情を緩めた。
「······にしてもアヤって結構着痩せするタイプなんだね」
腕から伝わるふくよかな感覚。柔らかいモノに挟まれる感覚は最高です。
「······さてと」
そして、俺は少し考え込む事にした。予想だが、『異空間固定』で生み出したこの異空間は、時間すらも固定している筈だ。つまり、外の世界は一秒も経過していないと思われる。これで魔法やスキルが使えれば時間を気にすること無くアヤの修行が出来るというのに······。
そう言えば、〝あの人〟が言ってたっけ。えーっと······なんだったかな? 確か〝精神と時の······〟うん。もういいや。
「あっ、組み手なら出来るじゃん」
戦闘において、肉弾戦や接近戦は必須だ。自慢じゃないが、魔法やスキル無しの純粋な肉弾戦ならイルミに引けを取らない自信がある。戦闘勘も鍛えられていいかもしれない。
「んじゃ、アヤが起きたら早速組み手をす-んんっ!?」
仰向けで独り言を喋っていると、突然視界が暗くなって口を塞がれた。······この感じ、身に覚えがある。唇から伝わる柔らかな感触。視界のピントを合わせると、そこには目を瞑ったアヤの顔が見えた。どうやら寝ぼけたアヤに口付けをされたらしい。
「んっ······こーら。ったく。油断も隙もないんだから」
「おはよっ。エト···」
「うん。おはようアヤ。でも寝起きのキスは感心しないよ?」
「···ん。ごめん···ね」
どうやらまだアヤは寝ぼけているようだ。言葉が途切れ途切れで、妙に色っぽい表情をしている。というか、そんな顔で囁かれると困る。
「っんん〜···。ふあぁ······。よいしょっ」
アヤは一度寝返りをうつと、ゆっくりと伸びをして起き上がった。今度はちゃんと目覚めたようだ。しかし、だらしなく服がはだけて下着が胸元から見えている。全く、しょうがないお姫様だ。俺は溜め息を吐きながらアヤの服を元に戻した。
「あん。······えっち」
「はいはい。それよりアヤ、ゆっくり眠れた?」
「うん、ばっちり。ちょっとお尻が痛いけど、安心して眠れたよ」
「なら、今度は布団を持ってこないとね」
『異空間魔法』の中には『異空間収納』という便利な機能がある。これは無限に入るアイテムボックスだ。ちなみにこれは今までにもちょくちょく使っている。
とはいえ、難点もある。取り出す際に、収納したモノを意識しないといけないため、入れた物を忘れてしまうと一生取り出すことが出来ないのだ。
その為、本当に必要な物と嵩張る物しか入れていない。
「アヤ、この異空間内では時間も固定されてるんだ。だから、外はまだ夜のままなんだけど」
「うん、非常識スキルにもやっと慣れてきたかも」
「そりゃあ良かった。それでね? この異空間内では魔法やスキル、加護の影響なんかも全部無効化されちゃうんだ。そこで、純粋な肉体強化をここでしようと思うんだけど、どう?」
「え? いいの?」
「もちろん。アヤが望むなら全力で協力するよ?」
「やったぁ! じゃあ、よろしくお願いしますっ」
「うん、任せて」
アヤのやる気と意志を確認した所で、早速始めようとも思ったが、腹が減ってはなんとやらだ。一旦外に出て、食料調達と食事にしよう-とアヤに提案した。アヤは「おーっ!」-と元気よく返事をしてくれた。素の状態のアヤは幾分幼く見える。元々可愛い系だから二十七歳には到底見えない。表情や仕草、話し方も踏まえると、今のアヤは同い歳くらいにも見える。
女性って不思議だ······。
こうして、アヤの修行は幕を開けた-。




