※ 休閑話 1 ~ その頃神界では ~
新年明けましておめでとうございます
今年もよろしくお願いいたします
今回の話しはオマケのようなものです
読んでいただければ嬉しいです
暁が異世界へと旅立った後、神界に残されたターナ達はこれからについて話し合っていた
「さて、妾達はこれからどうすればよいのかのう?」
今しがた暁を見送ったが直ぐにでも暁の傍に行きたいという思いを抑えきれない桜の女神
他の女神達も同様な様でイレーナの指示を待っていた
一刻も早く先程の青年の傍に行きたいであろう異世界からの女神達を微笑ましく思いつつ彼女達のこれからの予定をまとめていく
「そうですね貴女達はこれから他の神達と顔合わせをして、その後この世界での事を学び神としてこの世界に適応してもらいます」
イレーナとターナ達女神は初対面ではなく、何度か顔合わせをした事はあるがイレーナが管理する世界の神達のことは全く知らないのだ
そして本来は地球の存在していた世界の神であったターナ達がこの世界で活動するには、この世界に受け入れられ適応し神としてのこの世界の知識、世界のルールを知る必要がある
他世界からの神の移住は前例があり頻繁ではないが稀におこなわれている
その時に定められたルールであり大前提として、元々存在していた世界の管理神の承諾と移る世界を管理する神の承認が必要で両者からの承諾を得はじめて世界を移れるのだ
神とは元々神界と呼ばれる場所に存在し其処から様々な世界へ配属されるような形になる
神にも位があり管理神であるイレーナとターナ達女神の位では大きな差がある
そしてその位によって世界を任せたりそれぞれに合った神の座に就くのだ
そして現世に降りた神は信仰心によって力を集め存在を保ち、信仰心を保つ為人々を生物を助けている
神界に居る間は力を消費しないが、ずっと神界に居るのは神界と神々を管理する
最高神、創世神が許さず追い出されてしまう
しかし神界に行く事事態は禁止されて居ない為時間を持て余したターナ達はよく神界に遊びに行っていた
その時、管理神による定例会議の為に神界に来ていたイレーナが身分を隠し散策している所に出会い話してみると馬が合った為仲良くなったのだ
その後イレーナが管理神であると知って驚いたが最低限の礼儀をキチンとしていればコレまでどおりで構わないとお許しをもらいそれからも幾度となく交流していた
そして今回暁の事について前々からどうにかできないかと相談していたのだが既に暁が限界であると感じ強硬手段に出ようとしたタイミングでイレーナの方も準備が整い受け入れる事ができたのだ
「貴女方がこの世界にキチンと適応できれば暁さんのもとへお送りします」
「分ったのじゃ!! では早く顔合わせとやらに行こうぞ!!」
「早く・・・行こうっ!!」
「ふむ・・・地球のような神がおらぬと良いがの」
「イレーナ様の世界ですし大丈夫じゃないですかね」
やる気に満ちた様子の桜の女神に天空の女神とは裏腹に神達の性格が心配なターナにどこか楽観的な知識の女神
猪突猛進・・・単純とも言える2人の女神と慎重なターナ、楽観的だが落ち着いている知識の女神
それぞれの様子に目を細め、これからこの世界に吹くであろう新しい風に期待に胸を膨らませずにはいられなかった
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暁を見送った場所にいつまでも居る訳にもいかず、イレーナの管理する世界『ハルアメーラ』の神々が普段存在する街の様な場所の一際大きな建物へと向かった
中に入ると天使や位の低い神が慌しく自身に割り振られた業務を遂行する為、忙しそうに走り回っていた
「此処の最上階には私が普段仕事をしている部屋があります
この建物に様々な神の仕事部屋があり会議をしたりする為の部屋もあります
今回は顔合わせの為に手の空いている者に会議室へ集まるように声をかけておきました
流石に全てを一度に集める事は緊急事態でもない限りできない決まりなので、今回来れなかった者達はまた後日になります
やはり皆それぞれに忙しいですからね」
そう言いながら奥へと進んでいくイレーナについて行く一行
しかし先程まで元気だった二人は緊張したようで動きがぎこちなくなっていた
「う、うむ・・・流石に少し緊張してしまうな・・・」
「・・・(コクッ)」
「ふむ・・・しかし先程の者達の様子を見る限りでは地球とは違い皆真面目に働いているようじゃの」
「あんた達は緊張しすぎよ!それにしてもさっきの人達は凄く忙しそうにしていたわね」
冷静に周囲を観察していた残りの二人は忙しそうに動き回っていた人達のことが気になっているようだ
何か問題が起こっているのだろうか、暁が問題に巻き込まれていないだろうかと少し不安になる
「暁さんは無事ですよ、彼らはいつもあのように動き回っていますから
確かにこの世界の問題は多くありますが・・・そこは後で説明するとして、皆が集まっている部屋に着きましたよ」
着いた部屋の扉からはどこか重々しいオーラを感じ入るのを躊躇ってしまう
「それでは皆さん、行きましょうか」
そう言って返事も聞かず扉を開けるイレーナの後姿を見守る事しかできなかった
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顔合わせも終わりイレーナに案内された部屋の中には書物や巻物が大量に置かれていた
しかしターナ達の顔に先程までの元気は無かった
どうやら地球に居る間は暁の様子を四六時中監視していた為、暫く目を離しているこの状況で暁に何か起こっていないか心配のようだ
どこまでも過保護な女神達である
「それでは、とりあえずは此処でこの世界についてしっかりと学んでいただきます
しかし学ぶ事に神の力を使い知識を本から直接転写する事を禁じます
自身の力で一つ一つ読みすすめていって下さい
これを早く終わらせる事ができればそれだけ早く暁さんの元へと行けます
しかし皆さん、暁さんの事が心配で仕方がない様ですね
こんな事はしたくありませんが暁さんの様子が見れる鏡を用意しました」
本から直接の知識転写を禁止され更に落ち込んだターナ達だがイレーナがそう言い終わると一斉に弾かれたかのように顔を上げイレーナの横にある鏡を見つめる
そこにはビッグ・ボアの死骸を川へと運ぶ暁の姿が映し出されていた
どうやらビッグ・ボアの牙で刃物を作ろうとしているようだ
(形を整える感じの魔法ってあるのかなぁ)
そう言った暁の独り言に即座に反応し目の前の書物から魔術に関する書物を数個引き抜き恐ろしいスピードで読み上げていく
「あったわ!!これね・・・多分コレも必要になるから・・・」
そう言って暁へと情報を送り込んでいく
(えーっと・・・『変形』)
どうやら情報を送る事に成功したようだ
「むむむ・・・こういう事では妾には何も出来ぬからのう・・・」
「・・・ちょっと羨ましい」
「適材適所じゃな」
どうやらコレまでと違い直接暁を助けられる状況で最初の仕事をとられてしまい不満げな3人に得意げな知識の女神
「この世界を早く理解すればそれだけ暁さんを助ける事もできますよ
とりあえずは此処に用意した書物から知識を吸収していってください
それでは私は他にもすべき事がありますので失礼しますね」
そう言って部屋を出て行ったイレーナ
しかし残された女神、特に桜の女神と天空の女神は鏡に映る暁の姿に夢中で気づいていなかったようだ
知識の女神は画面と書物を交互に見つつ暁へと知識を送り込んでいく
本来ならキチンと言葉で教えたいところだがその為には早くイレーナから与えられた課題を終わらせるしかない
そんな知識の女神の様子にターナこと大地の女神も書物へと手を伸ばし読みすすめていく
彼女もまた早く暁の元へと行きたいのだ
「(この調子なら一番に暁の元へ行くのは私のようじゃの)」
今だ書物を読む事もせず鏡に夢中な桜の女神と天空の女神、書物を読んでいるがやはり暁の様子が気になってしょうがない知識の女神
「(確かに気になるが何かあれば他の者が黙ってはおるまい、ならば何かが起きるまでは課題を終わらせる事に専念するとしようかの
私が一番に暁の元へ行くのだ!!!)」
心の中で決意を固め、先を越され悔しがるであろう他の者たちの顔を思い浮かべつつ本を読みすすめていくのだった
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神界の一室に篭り暁の様子を眺めたり書物を読んだりと各々が過ごして暫く経った頃の出来事だった
その頃にはターナも残り3分の1という所まで読みすすめていた
相変わらず暁の映った鏡を凝視し書物に手をつけようとしなかった2人の女神
声も出さず眺めていた二人から初めて声が漏れる
「「暁・・・」」
急に発した声に驚き何があったのかと顔を上げ鏡を見る
其処にはムチを振るう奴隷商に対し怒りを抑え顔をゆがめ一緒に連れていた鬼人族の女に質問をしているところだった
「暁・・・そんなつらそうな顔をするでない・・・」
そう呟く桜の女神に同意するように頷く女神達
彼女達にとって暁のつらい顔は何よりも見たくないものなのだ
暁の様子を眺めていると暁が鬼人族の女を抱きしめたあたりで空気が変わり始める
「・・・羨ましい」
誰かが呟いたその一言
「私達も傍に居れれば・・・」
そう、地球とは違い此方の世界では暁と直接触れ合うことが可能なのだ
「そうじゃのぅ早く傍に行って触れ合いたいものじゃ
・・・さて暁はコレをどう解決するのかのう?」
暁が動くと決め考え事をしていると知識の女神が反応する
「多分だけど隷属の首輪をどうにかしたいんじゃないかしら?
確かそれについての書物をさっき読んだ気がするわ・・・これね」
そう言って前に知識を送ったように暁へと知識を流し込んでゆく
「ふむ、動くようじゃな」
ターナがそう呟くと息を呑み暁の様子を食い入るように見つめる
(お前は絶対に逃がさねぇよ!!)
そう言って暁が人族の男を切り殺す様子に少しだけ悲しそうな顔をする女神達
しかしこの人族の男がやった事、暁の怒りを理解し誰も暁を責めるような事は言わなかった
ただ、暁に人を殺めさせてしまった事が心苦しかったのだ
(俺はもう人族だろうが・・・同族だろうが関係ない!害をなすのなら全てぶちのめしてやる)
そう言って魔物を切り殺していく暁の様子に更に心が締め付けられる
暁から感じた『仲間を危険に晒さない為』敵を排除するという、その思いを感じたからだ
鞭で打たれていた亜人達に虐げられていた自分の姿を重ねたのかもしれない
鬼人族の女に聞いていた人族というもの達の事、実際に目にして感じたその異常さに押さえ込んでいた気持ちが爆発してしまったのだろう
人を殺めるなんて事の無い国で生活していた他者に虐げられても反撃せず自分を押し殺してただ泣いていた心優しい青年に同族を殺めさせるという辛い事をさせてしまっている、ただその事実が彼女達の心に何よりも重くのしかかっていた
「出来れば変わってやりたかったものじゃな」
「そうね、前までなら此処でただ悲しむことしか出来なかった」
「・・・でも今は・・・違う」
「今の妾達は暁に触れ話し助ける事ができるのじゃ」
「その通りです、今の貴女達は彼を・・・暁さんを助ける事ができます
その為にも早く課題を終わらせてください」
何時の間にか部屋に入っていたイレーナに驚く一同
「私も暁さんが気になって様子を窺っていました
先ほどの事があり貴女達の様子が心配になり見にきたのですよ」
そう言って部屋を見渡すイレーナに与えられた課題に一切手をつけてなかった2人の女神は目をそらす
「大地の女神はもうそろそろ終わるようですね、では暫く待ちますので一緒に行きましょう
他の方々は引き続きつづけていてください」
そう言って椅子に座るイレーナに次は一体何をさせられるのかと思いつつ急いで読み進めていくターナ
課題を終わらせなければ暁に会えないと思い出し急いで書物を手に取るがどうしても暁の様子が気になってしまう桜の女神と天空の女神
そんな二人の様子に少し苛立ちを覚えたイレーナは二人にとって恐ろしい事を口にする
「その鏡・・・撤去しましょうか?」
その言葉に慌てて鏡から目を離し読みすすめていく
そんな二人を呆れた様子で眺めていた知識の女神だが彼女達と違い少し余裕があることもあり二人の変わりに暁を見守る異にした様だ
イレーナは、そんな女神達を眺めつつどこからともなく取り出した紅茶を飲んでゆっくりとしていた
「終わったのじゃ、さて私はこの後何をすれば良いのかの?」
「では行きましょうか。どこに行くか、何をするのかはまだ秘密です」
そう言って扉へと歩いていくイレーナの後を着いていく大地の女神を羨ましそうに眺める2人の女神と笑顔で手を振る1人に見送られつつ部屋を後にした
次は暁の方へと戻ります
次章・・・早く投稿できればと思いますので、もう暫くお待ちくださいませ